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2022.09.11

大手旅行会社が「PTA業務代行サービス」開始。「それって、本当に必要?」保護者ら疑問

PTAの活動って、本当に大変ですよね。半強制的なボランティアのために、「有給を取らなければならなくなった」「徹夜で作業した」など泣きを見たことのある保護者も多いのではないでしょうか。そんな現状を解消するべく、旅行会社の近畿日本ツーリストが「PTA業務アウトソーシングサービス」を提供開始。このサービスの概要や専門家の意見を紹介します。

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PTA業務は外注できる時代に?

2022年8月、近畿日本ツーリスト株式会社が「PTA業務アウトソーシングサービス」の提供を開始しました。

持続可能なPTA活動を支えるためのサービスという(PR TIMES

PTA業務は、とても多岐にわたるもの。子どもたちが喜ぶイベントに直結するなら頑張る気も起きますが、筆者がPTA役員だったころ(2021年度)は、保護者向け講習会の企画運営や誰も読まないような広報誌作成など、雑務ばかりで少しウンザリしたことも。

何度も学校に通って、グループLINEで毎日のように打ち合わせをして……。「これで無給だなんて!」とサジを投げたくなったことも、正直一度や二度ではありません。

しかし、近畿日本ツーリストの「PTA業務アウトソーシングサービス」は、これらをすべて一貫して代行してくれるそう。

「印刷・デザイン」「WEBサイト作成」「人材派遣」「イベント関連」「出張授業・学習支援」の5分野からスタートするそうですが、サービス内容は今後順次拡大予定なのだとか。

具体的な支援内容については以下の通り。

  • 印刷・デザイン:広報誌の印刷・デザイン・封入・発送など
  • WEBサイト作成:PTA専用ページを作成することで情報伝達をスピーディーに
  • 人材派遣:各種行事の受付、事務作業など
  • イベント関連:学校行事やPTA主催イベントなどの企画運営、ライブ配信もプロデュース可能
  • 出張授業・学習支援:授業だけでは得られない「学び」をPTAが企画運営

ざっと読むだけででも、「確かにPTAの仕事はこれほどあった……!」としみじみします。それらすべてを丸投げできるなんて、世の保護者は大助かりではないでしょうか。私が役員のころも、ぜひ依頼したかったです!

「時間を子どものために有効活用してほしい」と同社(PR TIMES

PTA代行って、本当に必要?

PTA代行は、とてもありがたいサービスですが、保護者たちは実際どのような印象を持ったのでしょうか?

近畿日本ツーリストがこのサービスを開始したことを伝える「Yahoo!ニュース」の記事(※現在は削除)のコメント欄では、一部肯定的な意見も見受けられたものの、「PTAの存在意義について見直すべき」という声が目立ちました。

コメントに多く挙がっていた声

  • 「外注のサービスを使う前に、もう一度本来のPTAの在り方とは何なのか考え直す必要があるのではないか。PTAは学校業務の便利な下請けではない」
  • 「そもそも、外注するほど手間だと考えるのなら、PTA自体を廃止してしまえば良い」
  • 「効率化や外注議論の前に、そもそもPTAが必要かどうかから考える必要がある」

労働・子育てジャーナリストの吉田大樹さんは、このようにコメントしています。

いま『当たり前』のように実施している事業がどのような意味があるのか理解し、また理解できない場合は廃止したり、規模を縮小したりして、1つ1つの事業を見直していくことが重要だ

労働・子育てジャーナリスト・吉田大樹さん

PTA任意加入の学校が増えてきたといっても、まだまだ半強制的な加入となっているケースは少なくありません。活動を外注に丸投げする前に、PTAという団体はなぜ必要なのかについて議論する必要がありそうですね。

代行する前に考えたいPTAの課題

『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き~』の著書でAmazonベストセラーを獲得した、大塚玲子さん。大塚さんは、「PTA業務アウトソーシングサービス」に対してこのようにコメントしています。

保護者も教職員も会員みんなが自分の意思でPTAに加入している状態であれば、外注もよいと思うのですが、まだそういった状況ではないのではないでしょうか

ノンフィクションライター・大塚玲子さん

また大塚さんは、「外注費として支払うべきは費用は、公費か私費か」という問題についても言及しています。

確かに、そもそもの大前提として「なぜPTAが必要なのか」の理解を得ないと、そこから先に話をすすめるのは難しそうです。

また「PTA業務アウトソーシングサービス」に支払う金額は、市や県から充当されるのか、それとも保護者や教職員から徴収するものなのか……。私費でまかなうとなると、やはりPTA活動への理解は必須と言えるでしょう。

「PTA活動は子どもたちのためにこう役立つ」という明確な指針があるなら理解を得やすいかもしれません。しかし保護者向けの講習会や保護者同士の親睦会など、なぜあるのか不明なものは、いっそ廃止するか、あるいは「存在しなければならない理由」をきちんと公表したほうが良いのではないかと筆者も思います。

外注する前に、まずは存在意義の見直しを。どの保護者も専門家も、PTAを知る人の多くはそう感じているようです。

無償の労働力として便利に扱われがちなPTAですが、「PTA業務アウトソーシングサービス」の誕生により、PTAの在り方が大きく変わろうとしています。

しかし導入する前に、PTAの必要性について保護者や教職員で価値観を共有することが望まれます。本来は「子どもたちのため」に誕生したPTAですが、「今までもやっていたから」ではなく、時代に合わせて柔軟に変化していく時なのかもしれません。

<参考資料>
近畿日本ツーリスト公式HP
KNT-CT HD 子育て世代と学校を応援!業務の委託先をワンストップで提案する「PTA業務アウトソーシングサービス」開始(PR TIMES)

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