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2020.07.30

ドルトンプラン教育とは?特徴やメリット・デメリット、日本の学校などを分かりやすく解説!

世界7大教育法のひとつ、ドルトンプラン教育。日本ではあまり知られていませんが都内に新しい学校が設立されるなど、にわかに注目を集めています。子どもの自主性を伸ばしたい家庭は注目のドルトンプラン教育の特徴やメリット、デメリット、国内にある学校まで詳しく解説します。

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ドルトンプラン教育とは

生徒一人一人のやりたいことを軸に学習プランを作り、生徒の自主性を伸ばしつつ、社会性や協調性をバランスよく学べる教育法として今や世界各地で知られているドルトンプラン教育。

その誕生の背景にはどんなことがあったのでしょうか。

ドルトンプラン教育が誕生した背景

ドルトンプラン教育が誕生したのは1920年代。アメリカの教育家ヘレン・パーカーストが提唱しました。

当時のアメリカでは全学年が同じクラスで学習する単級小学校が主流。そのため、彼女も学年の異なる40人の生徒を1人で教えていましたが、彼女は生徒一人ずつに個別の課題を与え、それぞれのペースに合わせて学習させていたそうです。

その経験の中で、個別学習の重要性を感じつつも、教師への負担が重すぎることを痛感していました。

よりよい教育法とは何かと模索する中、イタリアでモンテッソーリ教育を学習した彼女は、個別学習に力点を置きつつ、教員の負担が重すぎることを解消する独自の方法論を考案しました。

これが、生徒それぞれに最適な学習プランを提供し、自主的に学習を進められるドルトン教育法のはじまりです。

ちなみに、名前の由来は、彼女がこの方法論を考案し、実施したのがアメリカのマサチューセッツ州、ドルトンにある小学校だったことからなのだそうですよ。

大正時代の日本で広がる可能性もあった?

実は、大正時代の日本でもドルトンプラン教育は新教育運動の代表的な実践理論として紹介されていました。東京学芸大学の資料によると、ヘレン・パーカーストさんが4回にわたり来日講演をしていたという記録も残っています。

ほかにも、1922年には大正自由教育運動の末期に成城学園初等学校で「成城ダルトン・プラン」として導入されるなど実施もされていました。

大正自由教育運動はこちらの記事でも解説されています。

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しかし、日本全体が軍国主義に進んでいく中で、命令通りに動く兵隊を育成する教育がメインとなり、自由な発想を推奨するドルトンプラン教育は急速に衰退。以降、ドルトンプラン教育が日本に再び入ってくるには実に40年以上の歳月がかかりました。

ドルトンプラン教育の特徴とは

では、いよいよドルトンプラン教育とはどういう内容なのかを紐解いていきましょう。

ドルトンプランの教育方針は“自由”と“協働”というふたつの原理から成り立っています。

【原理1】自由の原理について

子どもたちの興味や関心ごとはそれぞれ違い、その子によって有効な学習法や進み方は異なります。

しかし、全員が同じペースで同じように学んでいく画一的な教育では、勉強についていけなくなる生徒、学習進度を落とさなければならない生徒が出るなどの不都合が出てきてしまいます。

【自由の原理】は、子どもたちは誰にも邪魔されることなく、自分の好きな分野の学習を自由に学べる機会を持つべきであるということであり、ドルトンプラン教育は、この原理に従い、目の前のことにじっくりと向き合う姿勢や持続する集中力などを育成していきます。

【原理2】協働の原理について

さまざまな年齢、個性、能力の子どもと交流する機会を設けることで、違った価値観の人ともスマートに交流できる人材を育成する原理のこと。

ダイバーシティが進む現代社会においてとても重要な意味があるように感じますよね。

そして、ドルトンプラン教育には、これらの原理を実現するための学習プランや空間、コミニティとして、“ハウス”、“アサインメント”、“ラボラトリー”の3つの柱が存在しています。

【3つの柱】ハウスについて

ハウスとは、一般的な学校でいうホームルームのことです。ただし、ドルトンプラン教育では、年齢やクラスの違う人たちが一緒に行うのが特徴。

また、担任はティーチャー(教える人)ではなく、あくまでハウスアドバイザー(助言者)という立場で、それぞれの学習をサポートしていきます。年齢や価値観を問わず、多様な人と行動を共にすることで、意見の違う人との話し合い方や大人との付き合い方が自然に身につけられます。

【3つの柱】アサインメントについて

生徒と教師との間で交わされる約束(契約)のこと。具体的には、それぞれの生徒に合わせた授業の方針や課題、レポートなどをまとめたものと考えてください。

子どもたちは、教師と一緒につくりあげた課題やレポートを期限通りに進めていくことを求められます。生徒に合わせた内容で学習意欲を引き出すだけでなく、時間の有意義な使い方や集中力、考える力を成長させることができます。

【3つの柱】ラボラトリーについて

ドルトンプラン教育がほかのオルタナティブ教育と比べて特徴的なのが、このラボラトリーであり、専門教科をさらに深めて学習していくために、担任だけでなく専門分野の教師にサポートしてもらいながらカリキュラムを進めていく場所のことです。

基本的に少人数制のため、集中した話し合いを行うことができ、徹底的に専門分野を研究していくことが可能です。

あくまで“個”に重点をおいて、専門家とともに興味があることを深めていくことができるドルトンプラン教育は、画一的な教育が当たり前といわれてきた保護者世代からすると少しうらやましく感じるほどではないでしょうか。

ドルトンプラン教育のメリット・デメリットについて

 では、次に上記のような特徴をふまえたドルトンプラン教育がを受けることでどんなメリット、デメリットがあるのか考えていきましょう。

メリット①子どもの個性を伸ばせる

一般的に、集団の中ではみ出さないように行動を強制されることも多い既存の日本の学校教育では、個性を伸ばしずらい傾向があります。

子ども自身も個性的であることにコンプレックスを抱いたり、個性があるためにいじめの対象になったりと理不尽な悲劇が発生します。

しかし、ドルトンプラン教育は、“人はそれぞれ違って当たり前”というスタンス。個性を尊重するような経験を多く積むことができます。このことは、自分自身の個性を伸ばすために生きるのではありません。他人の個性を尊重し、伸ばすことができる人材に育っていくのです。

メリット②子どもの探究心を伸ばせる

ドルトンプラン教育の主体はあくまで生徒。子ども自身が学びたいことを好きなだけ掘り下げられる上に、ラボラトリーなど探求を支援する仕組みが充実しています。そのため、子どもの頃から特定の分野にとことん没頭し、探究心を伸ばすことができます。

アインシュタインやスティーブ・ジョブズ、パブロ・ピカソ、エジソンなどの偉人たちを見ても、1つのことに没頭したことがある経験は、新しい価値を創造するために有益です。ドルトンプラン教育なら、ラボラトリーでの経験を通して“没頭力”を磨くことができます。

メリット③自立心や責任感を伸ばせる

ドルトンプラン教育は、自由で放任的な教育法のように見えるため、「無責任な子どもが育つのではないか?」という懸念が抱く人も一部います。

しかし、自分の学びたいことを選択したり、アサインメントを遵守したり、集団の中で常に個として意識して行動することで、自立心や責任感、自己管理能力などを伸ばしていくことができます

自由の裏には責任がであるということを若いうちから理解させることができるので、本当の意味での自立心や責任感を養うことができます。

もちろん、いいことだけではありません。日本のドルトンプラン教育の現状には、下記のようなデメリットも考えられます。

デメリット①学べる学校が日本では少ない

日本ではまだ片手で数えるほどしかドルトンプラン教育を受けられる場所がありません。地域としては、東京と名古屋のみ。

たとえ興味を持ったとしても、それ以外の地域に住んでいる方からするとハードルは高いといわざるを得ません。

デメリット②進学率が明確ではない

前述の通り、ドルトンプラン教育を用いた学校教育の歴史は長い休眠期間がありました。そのため他の教育法に比べて、学校にも、教師にも、事例がまだまだ蓄積されていない状態です。

現状、ドルトンプラン教育を受けることで“こんな風に成長していく”という方程式が固められている段階ではなく、表面化していない課題や問題点が眠っている可能性も完全には否定できません。日本においてはまだまだ未知数の教育法といえます。

また、ほかの多くのオルタナティブ教育と同じく、ドルトンプラン教育も“生きていくための力を養うこと”を重視しています。進学率や偏差値の向上などを求めるのであれば、別の教育法や学校を検討した方がいいかもしれません。

ドルトンプラン教育が受けられる日本の学校

前述のとおり、日本でドルトンプラン教育が受けられる学校は、以下の2カ所になります。

ドルトン東京学園 中等部・高等部(東京・調布)

ドルトンプランの原理「自由と協働」を踏襲し、しっかりと実践していこうというのが基本方針です。

特徴的なのは、ドルトンプランとICT教育を融合させていること。学校行事にSTEAMフェスがあったり、アサインメントをクラウド上で管理していたり、デジタル化が進んでいます。

また、カフェテリアやアクティブスペース、ラウンジなど施設も充実。株式投資ゲームを学習に取り入れている生徒もいるなど自由な学びが実践されているようです。

ドルトンスクール(東京・渋谷/愛知・名古屋)

1970年に開校し、50年近く実践のノウハウを蓄積している幼児教育と小学生の放課後教育のスクール。放課後教育といっても、習い事のように毎回特定の何かを学ぶのではなく、時間割が組まれている塾のようなスタイルです。提携しているニューヨークのドルトンスクールの元校長をスーパーアドバイザーに招いたこともあるようです。

一条校として文部科学省に認可されているのは、「ドルトン東京学園」のみですが、今後、ここから巣立つ子どもたち次第で学校は増えていくかもしれません。また、新設校のため、進路は明らかではありませんが、学校を運営するのは、進学種の「河合塾」であることを考えれば、卒業後の学歴を無視することは考えにくいのではないかという予想もできます。

ドルトンプラン教育の本について

最後にドルトンプラン教育についてもっと深く知りたい方に向けて、いくつか書籍を紹介します。

世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書/おおたとしまさ(大和書房)

教育ジャーナリストであるおおたとしまささんの著書。モンテッソーリ教育、シュタイナー教育など、世界各国の教育法について分かりやすく解説しています。

ドルトンプラン教育だけでなく、さまざまな教育理論について学べぶことができ、広い選択肢の中からわが子に合った教育法を見つけていきたいと考えている保護者におすすめの1冊です。ドルトンプラン教育の入門書としても最適です。

ドルトン・プランにおける「自由」と「協同」の教育的構造/伊藤朋子(風間書房)

ドルトンプラン教育について、かなり深いところまで学ぶことができる良書。基礎的なことから詳細な内容までが十分に盛り込まれているので、この理論に共感し、学問として追求していくなら欠かせない書籍といえるでしょう。

グローバル化やICT化で教育だけでく社会全体が変革を迎えている今、新たな時代を自分らし生きていける人間に育てるため、コミュニケーション能力、探求心を磨くドルトンプラン教育は注目しておきたい教育法のひとつではないでしょうか。

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