教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2017.12.30

ピグマリオン効果の落とし穴。「ほめる」と良いというのは本当なのか?

「人は周囲から期待をされると、期待されないよりも成果を出す」という、ピグマリオン効果。 ほめることはやる気を生み出し、学力向上につながる、と思われていますが、果たして本当はどうなのでしょうか。

  • rss
  • google
  • bing

ピグマリオン効果とは

1964年にアメリカの教育心理学者R.ローゼンタールが行った実験(※1)で、サンフランシスコの小学校で「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名付けたテストを実施しました。

その内容はごく一般的な内容のものでしたが、教師にはこのテストによって今後の成績の向上が予測できる特殊なテストであると伝え、テストを受けた生徒の中から無作為に抽出した生徒について、教師に「この生徒たちは今後の成績が伸びる」と伝えたのです。

その後、選ばれた生徒とそうではなかった生徒との成績の伸びを比較すると、選ばれた生徒の方が成績の伸び率が高かったという結果になったことから、「人は周囲から期待をされると、期待されないよりも成果を出す」という結論が導かれて、ピグマリオン効果として広まっていきました。

 

そして、ほめることはやる気を生み出し、学力向上につながる、という風潮が加速することになっていったのですが、果たして本当はどうなのでしょうか。

 

ピグマリオン効果の落とし穴

この実験で期待をかけている子が教師の想定よりもできない、となれば、教師は自分自身の指導法の課題を研究し改善しなければならない、と感じるかも知れません。そして、期待をかけている子の成績を上げようとより目をかけていくことにも繋がるでしょうから、公平に授業をしていたとは言えないかも知れません。ですから、この実験自体の信憑性は若干疑わしいのではないかと感じます。

しかし、確かに、子どもは期待をかけられていると自覚すると自信を持ち、努力する意欲が向上するということはあるでしょう。

そこは否定をしませんが、それを単に「ほめれば成績が向上する」という結論にもっていくのは乱暴なのではないかなと思います。

 

ほめたときの落とし穴とアドラー心理学

ほめることは良いこと、という先入観が先行し、ほめることにデメリットはない、と信じてむやみにほめる方もいるのですが、ほめることにも落とし穴があるので要注意です。

 

有名なアドラー心理学では、ご褒美のようにほめることは、ほめられなければ頑張らない子になるとしています。

では、どうすれば良いのか。それには7つの勇気づけと呼ばれる技術(※2)が必要です。

①加点主義

②ヨイ出し

③プロセス重視

④協力原理

⑤人格重視

⑥聞き上手

⑦失敗を受容

その中で、特に取り組みやすい部分を2点に絞って抜き出して紹介していきたいと思います。

 

加点主義

①の加点主義は、減点方式ではなく加点方式で言葉をかけていこう、というもの。要するに何ができていないか、に注目するのではなく、どこが良くなったのか、という進歩や成長を共に喜ぶ姿勢での言葉がけです。

例えばサッカーを習っている子どもに対する言葉がけの場合、減点方式なら「1年間も続けてきて、その程度の活躍しかできないなんて才能ないね。」となるのでしょうが、加点方式なら「前回の試合と比べて、全体によく走れるようになったし、顔も上がるようになったね。」という具合です。

 

プロセス重視

③のプロセス重視は文字通り物事に取り組んでいる時の途中経過に注目する姿勢です。

私たち大人はどうしても経験上、その先の結果が見えてしまったりするもので、子どもに対し「なんて要領が悪いんだろう」「こうすれば簡単にできるのに」と感じてしまい、結果を急ぎ手や口を出してしまいがちです。

しかし、子どもにとってみれば、単に未経験のことに慣れていないことに一生懸命に取り組んでいるだけなのかも知れませんから、自分で乗り越えることを見守るということも大切なのです。

 

ここでのプロセス重視というのは、そうした子どもの立場に立ちながら、子どもが出した結果よりもそこまでに行なったことに寄り添う態度で、子どもの実力に則して、小さな進歩や時には退歩を受け入れる姿勢ともいえます。

例えばテストで満点を取った子どもに言葉がけをする場合、結果重視なら「満点とってすごいね!とっても嬉しいわ」となるでしょうし、プロセス重視なら「これまでコツコツ復習ノートを作って毎日見直してきたからだね。私もとてもうれしいわ」という感じでしょうか。

 

では、結果を純粋にほめてはいけないのか

アドラー心理学では結果をほめることは良くない、とされていますが、私は結果をすごいとほめるのではなく、共に喜ぶという姿勢で関わるということなら、結果に対してほめるということはそこまで悪いとは思えません。

やはり、大きな大会で勝利した子どもに、純粋な気持ちで「やったね!すごいね!」とほめてはいけない、というのはどこか寂しい気もします。

 

むやみにほめるというのは避けた方が良さそうですが、ここぞという時に共に喜び、大いにほめるというのはお互いの気持ちをつなぎ、共感と感動を分かち合う上でも必要な行為とも言えるでしょう。要は使い分けということですね。

 

※1:Rosenthal, R. & Jacobson, L.:"Pygmalion in the classroom",Holt, Rinehart & Winston 1968

※2:「勇気づけの心理学」

 

諸葛 正弥

諸葛 正弥

所属:諸葛正弥教育総合研究所株式会社 代表取締役/大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けています。 また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く関わらせて頂いております。 http://www.t-skill.com/m-style/index.html http://www.jhb.or.jp/seminar-415

\ SNSでシェアしよう /

  • rss
  • google
  • bing
  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう

    最新情報をお届けします