子どもの不登校がつらい…親の不安を軽くするためには“今”を幸せにすること【不登校支援の専門家が解説】
わが子が不登校になったら…。子どもの前ではどんな態度で接していても心の中は心配や葛藤でいっぱいになり、中にはうつなどの精神疾患を抱える人もいます。そんな不安を抱える多くの保護者と向き合い、不登校や学習嫌いの子への学習支援を行う「学習支援塾ビーンズ」の塾長である塚﨑康弘さんに不安との付き合い方について話を聞きました。
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自分を責めたり、抱え込んだりしないでほしい
「辛いですよね。学校や社会から責められているように感じて、自分で自分も責めて、中には実際に自分の親やパートナーの親だけでなく、パートナー自身からも責められている方もいます。子どもの不登校に悩んでいる親御さんは、いってみれば自分自身も含めて半径50mにいる全員から責められている、全員敵みたいに感じている状況ですからね」と話すのは、「学習支援塾ビーンズ」の塾長である塚﨑康弘さんです。
子どもの不登校に悩む保護者と向き合う中で、「親御さんにも辛い思いをひとりで抱え込んでほしくない」と感じていると言います。
「本当は親子で幸せになるために生きているし、幸せになって欲しいから子どもに言葉がけをしているはずなのに子どもを傷つけ、親自身も傷つくということを繰り返してしまっているなら悲しいことですよね」
しかし、子どものためを思うからこそ悩む保護者たち。子どもの心の中も取り巻く状況も簡単には変わらない中で心の負担を軽くすることはできるのでしょうか。
カウンセリングへ無理に出かける必要はない
不登校の保護者のケアサポートなどを調べるとケアカウンセリングなどの同じ境遇の人と語り合う会などが見つかります。しかし、塚﨑さんは真っ先にそこへ参加するのではなく、まずは保護者自身が心の安定や余裕をつくったほうがいいのではないかと話します。
「参加してみると分かると思うのですが、そういった場所に参加している方は、すでに自分の中で解決する道筋が見えていたり、子どもの状況や抱えている不安を言葉で人に話せるぐらい考えがまとまっている場合が多いんです。でも、自分のルーティンや価値観を変えることも怖い、人の話を聞き入れる余裕のない状況のまま参加しても、ほかの参加者と自分を比べるだけで辛さが増すだけかもしれません」
ですが、自分の悩みを話せる場所も相手もいないのはつらいことです。やはりひとりで抱え込むという選択肢になってしまいそうですが…。
今、この瞬間を幸せにすることを考える
「家の外には行く場所も話せる人もいないかもしれません。ですが、家の中には、お子さんがいるのではないしょうか。あなたと同じくどこに行ったらいいのか分からない。だけど幸せになりたいという同じ気持ちを抱えた子どもがいます」
塚﨑さんは、まず目の前にいる子どもとこの瞬間を幸せに過ごすということだけ考えて欲しいと話します。
「親御さんは学校復帰や進路など、先のことばかりを見てしまいがちですが、今この瞬間を楽しく過ごし、楽しい思い出だけ作りましょう。進路や将来のこと、親御さん自身のことも含めて簡単に答えの出ないことを考えるのは後回しにしてもいいんです。今、目の前にいる子どもと、子どもの目の前にいる自分が楽しくなる思い出だけを作りましょう」
例えば、子どもと話すときも楽しい話題を選ぶことで表情は和らぎます。
「親御さんも子どももお互いの楽しそうな顔を見ることで幸せ度は増して、心に余裕も出てくると思うんです。単純に楽しい話題のほうが話しやすいですよね。子どもからも親御さんに話しかけやすくなって会話量も増えていけば、自然な流れで進路や今後について話し合える機会も出てくる可能性が高くなります」
「おいしいご飯を食べてうれしい、外にハイキング、ピクニック行って気持ちいいぐらいのレベルでいいので親子でいかに幸せを積み上げていくのかに集中してみてください。そのうち、子どもが学校に行きたいという気持ちに対して『それでもいいか』と思えてきたら最高ですよね」
社会の状況、子どもを取り巻く状況を知る
また、今この瞬間を幸せになることを考えながら、心が安定してきたら社会の状況、子どもを取り巻く状況についての情報収集もしてほしいと塚﨑さんは提案します。
「以前の記事でもお伝えしたように現在、不登校傾向にある中学生の数(文科省が定めた不登校=年間30日以上の欠席ではなく、1週間以上連続欠席、教室以外にいる生徒なども含めた日本財団による調査で明らかになった数)は、約33万人で10人に1人が不登校傾向にあることが分かっています」
<日本財団の調査や不登校の現状、原因についての記事はこちら>
中学生が不登校になる原因は?統計には出てこない本音の理由とは【不登校支援の専門家インタビュー】
しかし、このような不登校についての現状を知らない保護者も多く、自分の子どもだけに焦点を当てすぎて考え、悩んでしまうのだそう。
「実際に10人に1人が不登校傾向にあるとすれば、1学年が100人の場合、10人は不登校傾向にあるということ。もし、不登校になったことで『うちの子だけが…』と考えているのであれば、不登校傾向の子がいかに多いのかという事実を知るだけで不登校という状況に対する意識が少し変わるかもしれません」
さらに、「不登校かどうかに関わらず、教育事情や将来を生きるのに本当に必要なスキルは何かなど社会の状況などを深く考えずに子育てをしている家庭というのは意外と少なくないのでは?」と塚﨑さん。
「正しい情報を持たず子育てをするのは真っ暗闇の中にいるのと同じようなことなのではないか」と話を続けます。
「子どもの人生をトロッコに例えると、親御さんが唯一知っている“普通高校を出て偏差値の高い大学に入れば幸せになれるだろう”というレールを真っ暗闇の中で走っているようなものです。ただし、そのレールの先には確実に明るいゴール(幸せ)が待っているわけではありません。ただ、親御さんも走ったことがあるから走っているだけ。
しかし、不登校になるというのは、そのレールから外れてしまうということですよね。
そうなると別のレールの上を走り出すわけですが、辺りは真っ暗闇なうえ、親御さんも知らないレールなので、その先に崖があるのか、どこかで途絶えてしまうのかも分からなくて不安を抱えながら進んでいかなくてはなりません。怖いですよね。
ですが、社会の状況、子どもをとりまく状況などを知っていけば周りが少しずつ見えてくるようになるのです。もしかすると近くに違うレール(ほかの進路)があるかもしれないし、これまで走っていたレール(通っていた学校)が車輪(子ども)に合っていないということが分かるかもしれません。
そのことにもし気づくことができれば、より子どもが幸せになるための言葉がけや行動が変わるのではないかと思います」
焦らず親子で幸せになるステップを重ねていこう
ただし、これまで走ってきたレースを見直すということは保護者が自分が信じてきた幸せについてなど価値観を否定することになってしまう場合もあり、保護者自身に心の安定や余裕がないと心のバランスを崩してしまう可能性もあるとのこと。
「例えば、『東大を出て企業に就職するよりも高卒で天職に就いたほうが幸せ度が25%アップするというデータがある』という場合、親御さん自身のがんばりや人生を否定されるような気がしてとてもつらいと思います」
だからこそ、まずは親御さん自身が子どもと一緒に今、この瞬間を幸せに生きて自分の心に余裕を作ってほしいと塚﨑さん。
彼の経験では、不登校に悩む保護者の約3割は「幸せになるためにはしっかりと進路の事、将来の事を考えなきゃいけないんだ」と思い込んでいる印象なのだそう。
「不登校の道のりはスロープのようなもの。段々とのぼっていく中に進路や将来の話があります。無理にジャンプしたり、焦って登ろうとすると余計につらくなるだけですよ」
これまで不登校になる原因や親の対応、高校受験など進路や社会との向き合い方などのアドバイスをしてきてくれた塚﨑さん。次回の記事では、彼が主催する学習支援塾「ビーンズ」で行っているキャリア教育について取り上げます。不登校の子にこそキャリア教育が必要だと語る理由とは?
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エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。