成長期の胸のしこり、痛みやかゆみの原因は?小児科が回答
小中高生の胸にできたしこり。押すと痛い。「検査が必要?」「乳がんかも!?」と心配になりますよね。しかも、症状は男の子にもできるそう。そこで、成長期の体の変化についての疑問を小児科医の鈴木幹啓さんに聞きました。
胸のしこりが乳がんの可能性は低い
「成長期の子どもの胸のしこりについて心配で受診される親子はとても多いんですよ。ただし、ほとんどのケースに問題はありません」と話すのは、「すずきこどもクリニック」院長で小児科医の鈴木幹啓さんです。自身も2人の娘がいるお父さんで、数多くの子どもをみてきました。
「成長期の胸にしこりができてくるのは、大体8歳ぐらいからといわれています。中には7歳ぐらいからしこりができる子もいますが、しこりは3~5年程度は無くなりません。はじめは左右片側にだけできるケースが多いですが、いずれ両側にできます。
乳房がふくらみ始めるのは、基本的に10~12歳ごろとされているので、胸がふくらみ始める数年前にしこりができ、見た目で胸のしこりに気付く親子が多い印象です」
ですが、気付いていない人も多いだけで、しこり自体はほとんどの子にできるのだそう。
「胸の成長の仕方には2パターンあり、乳房がふくらんできてからしこりが出てくる子もいれば、しこりができてから乳房が発達してくる子もいます。割合でいえば半々なのですが、前者であれば見た目でしこりがあることに気付きにくいので、しこりがあっても気にせずに終わっていくケースが多いと思います。
逆に乳房がふくらむ前であれば、しこりがポコッと出て、パッと見で目立つので気になりますよね。ですが、成長期の胸のしこりは女性ホルモンの影響でできるものなので、心配しなくても大丈夫ですよ」
胸の成長の仕方だけでなく、元々の体型がやせ型だとしこりに気付きやすく、ふくよかだと気付きにくいということもあるそうです。
しこりを押すと痛くても問題ない
見た目だけでなく、痛みでしこりに気付く子もいます。
「乳房がふくらむ前にしこりができて痛いと感じる子は、常に痛むというわけではなく、しこりを指で押したり、うつぶせになって床でしこりが押されたときに痛いという子が多いんですよね。しこりが押されて痛いだけなので、しこりが腫瘍だから痛いというわけではありません。
一方、乳房がふくらんだ後にしこりができた子の場合、乳房の脂肪がクッション代わりになっているのでしこりを押しても『そんなものかな』と思う程度の違和感で終わる子も多いです」
乳房がふくらむ前でも、後でも、胸を押してみてしこりや痛みがあるとドキッとしてしまいますが、しこりがあることも痛みがあることも心配する必要はなさそうです。
成長期と乳がん、しこりとの見分け方
そもそも、成長期にできる胸のしこりと乳がんの腫瘍はまったく違うそう。
「成長期の胸のしこりによる膨らみ方は、まん丸だったり、アーモンドのような横に長い形だったりなど違いはあります。ただ、しこりをつまむとゴムを触っているような感触です」
一方、乳がんなどの腫瘍の場合、中に石が入っているのではないかと思うような硬さなのだそう。
「ほかにも腫瘤は良性だと動きますが、悪性の場合動きません。あとは、乳がんの場合、乳頭から血のようなものが出てくることがあります。
ですが、そもそも乳がんは、妊娠をしていない、やや太り気味の女性が40歳以降にリスクが高くなっていくものなので、思春期の状態で腫瘤が出来ても乳癌じゃない可能性が非常に高く、ほぼ心配ありません」
かゆみはアトピー性皮膚炎が多い
子どもの中には、成長期にしこりや痛みが気になるだけでなく、乳首や乳輪がかゆくなってしまう子もいます。
「かゆみの原因は、アトピー性皮膚炎というケースが多いですね。乳輪はアトピー性皮膚炎が起こりやすいんです。そのため、胸の発達とは関係ないのですが、胸が小さいときは気にしないけど、大きくなってくると気になりやすくなるのでしょう」
かゆみを抑えるためには、アトピー性皮膚炎治療の王道であるステロイドを塗るのがいいそう。
「『ステロイドという強い薬を塗っても大丈夫かな?』と思う人もいるかもしれませんが、塗らないと色素沈着をしてしまうので、ちゃんとステロイドを塗ったてください。
ステロイドは薬の強さが5段階に分かれているので、使用することに不安があるなら弱いものから使ってみてください。どのレベルの薬が効くのかは、炎症の度合いによりますが、ステロイドと保湿剤を併用するのがよいでしょう」
胸の状態は小学生のうちは母親に見せてくれても、年齢があがるほどに人に見せることに抵抗を感じる子も多くいます。早いうちにきちんとケアをすることが大切のようです。
母乳のようなものが出るのは大丈夫?
また、思春期の女の子の下着には、黄色や白の粕のような、母乳のようなものがついていることもありますが、心配ないのでしょうか?
「出ているのは母乳の成分ですが心配ありません。魔乳(まにゅう)といって、赤ちゃんのときに出ている子もいるんですよ。赤ちゃんの場合は、自分の女性ホルモンではなく、体に残っているお母さんの女性ホルモンのせいで出ているんですけどね。
ただ、もしチーズの粕のようなものが下着についているのではなく、ピュッと液体が出るような場合は病院に相談に行ったほうがよいかもしれません。高プロラクチン血症という病気の可能性があります」
高プロラクチン血症とは
母乳をつくるホルモンである「プロラクチン」が高くなっていること。不妊や生理不順の原因になります。
「ただし、アトピー性皮膚炎の子の場合は、浸出液の場合があります。肌がただれたりすると、じくじくと出てくる汁のことですね。その浸出液の塊が下着についているという可能性もあるので、やはりステロイドや保湿剤で治療をしていく必要があります」
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男の子も胸が膨らみ、しこりができる
胸がふくらむのは女の子というイメージがありますが、男の子も胸がふくらんだり、しこりができることがあるそうです。
「12~14歳ぐらいの思春期になると男の子にも男性ホルモンだけでなく、女性ホルモンが分泌されてくるので乳腺が発達します。そこから3~5年は胸が少しふくらんだり、しこりが消えなかったりします。大体、高校を卒業する頃まではこのような胸の状態になっていても問題はありません」
また、体を鍛えるために飲んでいるプロテインが男の子の胸の発達に拍車をかけるというウワサもありますが…。
「プロテインには大豆由来のものも多いですが、大豆にはエストロゲンという女性らしさをつくる環境ホルモンが含まれているので、たくさん摂取することで胸がふくらんだりしやすくなる可能性もあるかもしれません」
女性と同じぐらい胸が大きくなってくるようなことが無い限り、思春期が終わっていくとともに胸は男性らしいものに戻っていきます。
「『男の子なのに胸にしこり?』『男の子なのに胸がふくらんでる?』とびっくりするかもしれませんが心配する必要はありませんよ」
成長が早すぎ、遅すぎなら病院へ
胸のしこりや痛み、かゆみは心配する必要がないケースがほとんどのようですが、体の変化が早すぎたり遅すぎる場合は、治療をしたほうがいい場合もあるようです。
「パッと見て『胸が大きくなっている』ということが分かるのが乳房の発達で、思春期の始まりです。もし、それが7歳6ヵ月よりも前の場合、『思春期早発症』の可能性があります。
思春期早発症は、一時的にみんなより早く身長がグッと伸びるのですが、その後、伸びが止まってしまい、最終的な身長が140cm~150cm前半になってしまうなど、低身長になってしまいます。そのため、体の発達があまりにも早く始まる子の場合はホルモン療法で進行を止めることがあります」
一方、13歳になってもなかなか体の変化がみられない場合も治療が必要なのだそう。
「一番心配なのはターナー症候群という染色体異常の病気です。ターナー症候群の場合、兆候として低身長ということがあり、13歳を過ぎても身長が低くくて乳房も全然発達しないとなると可能性が高くなります」
ターナー症候群の子には第二次性徴が現れず、妊娠もできないので、医師としてはかなりつらい宣告になるそうです。
「ターナー症候群の場合、社会的に低身長になり過ぎないように伸ばし、乳房をふくらませて女性らしい体にするなどのホルモン治療を行います。ただ、身長を伸ばすためには、年齢的に限りがあるのでなるべく早く治療を始めたほうがいいですね」
前述の通り、胸のしこりができ始めるのは7、8歳で小学校低学年です。「こないだまで赤ちゃんだったのに」「成長期には早いんじゃないの?」と焦ったり、神経質になったりするのも親心です。
「体の変化が始まってくると寂しい思いもしますけど、それは立派に成長してる証拠なので、見守ってあげて下さいね」
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エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。