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2023.06.28

自ら考え、学ぶ子が育つ。国際バカロレア認定校・山梨学院小学校の「教科の枠組みを超えた学び」の形

諸外国をはじめ、日本国内でも国際バカロレア認定校が増えてきました。その学習の特徴とは?
今回は、日本で初めて系列の幼稚園と併せての9年間を通じたカリキュラムで国際バカロレア認定を受けた山梨学院小学校の実践を踏まえてご紹介します。

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国内外で注目されている国際バカロレア教育

グローバル化が進む現代の社会において、国際的に活躍できる人材の育成に注力したいと考える保護者が増えている近年。高い関心を集め、国内外で話題となっているのが「国際バカロレア教育(International Baccalaureate、IB)」です。

海外の大学進学に役立つディプロマ資格(※大学入学資格)の取得等のメリットとともに、リーダーシップや探究心を育てるその学習スタイルやカリキュラムに注目が集まっているのです。

山梨学院小学校の「子どもが主体の学習活動」の様子

国際バカロレアは、スイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムを指します。

国際バカロレアは、年齢によって

  • PYP(Primary Years Programme):3~12歳
  • MYP(Middle Years Programme):11~16歳
  • DP(Diploma Programme):16~19歳

と区分されます。

日本の学校過程における年齢区分とは少しズレが生じていますが、学習者の年齢に応じてテーマや教科を設定し、国際的な視野を育成することに重点を置いたプログラムになっているのがその特徴です。

令和5年3月時点で、世界159以上の国・地域、約5600校において国際バカロレア教育は実施されています。日本国内でも注目が高まり、年々国際バカロレア認定校・候補校が増えています。

国際バカロレアの目指す人物像とは

国際バカロレアは、その使命を以下のように掲げています。

国際バカロレア(IB)は,多様な文化の理解と尊重の精神を通じて,より良い,平和な世界を築くことに貢献する,探究心,知識,思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。IBのプログラムは,世界各地で学ぶ児童生徒に,人がもつ違いを違いとして理解し,自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として,積極的に,そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。


文部科学省IB教育推進コンソーシアム

その使命を達成すべく、国際バカロレアでは「10の学習者像」を設けています。

  1. 探究する人
  2. 知識のある人
  3. 考える人
  4. コミュニケーションができる人
  5. 信念を持つ人
  6. 心を開く人
  7. 思いやりのある人
  8. 挑戦する人
  9. バランスのとれた人
  10. 振り返りができる人

これらの学習者像の達成を目指すことで、国際的な視野を持ち、より良い・より平和な世界を築くことに貢献できる人材に育つよう期待しているのです。

山梨学院小学校の「共に学びを深める」学習の様子

AIやコンピュータをはじめとする科学技術の台頭が叫ばれる昨今。単純な作業や操作、データ処理などは人間の手を離れつつあります。これからは人間にしかできないクリエイティブな思考や問題解決能力、主体性や協調性がよりいっそう重要視される社会になるといわれています。国際バカロレア教育で育成しようとしているのは、まさにそういった素養なのです。

自ら考え、学ぶ探究心。自分とは考えの異なる他者を尊重し、協調できる人間性。未知の世界を切り拓き、これからの未来を担う子どもたちには必須の力であるということができるでしょう。

IB認定校・山梨学院小学校の教科融合型学習

では、実際に国際バカロレア認定校では、どのような学習がくり広げられているのでしょうか?

今回は、日本で初めて系列幼稚園と併せての9年間を通じた幼小一貫プログラムでPYP認定を受けた山梨学院小学校の実践をもとにご紹介します。

山梨学院小学校の校舎

山梨学院小学校は、2019年2月に国際バカロレアのPYPの認定校として承認されました。国際バカロレアの学習基盤である“探究型学習”をベースに、教科融合型、そして時には教科の枠組みをも超えた独自の「unit学習」を展開しています。

探究型学習。まさにこれこそがPYPの特長であり、日本の従来の学習スタイルと大きく異なる点です。

小学校での学習といえば、1時間目の国語では物語文『ごんぎつね』を、2時間目の算数では割り算の筆算を、3時間の社会では……と学びが教科ごと・時間ごとに分断しているイメージがありませんか? また、学習方式も教師が黒板の前に立ち、自分の席に座った子どもたちに教えるというスタイルがスタンダードな授業風景ではないでしょうか。

一方、PYPの探究型学習では、学びを教科ごとに分断させるのではなく、教科を融合させたり、時にはその枠組みを超えたりしながら、子どもたちが主体となり、テーマについての探究を行います。

山梨学院小学校の授業「金融・経済博物館をつくろう」
山梨学院小学校の授業「野菜販売所づくりに挑戦」

教科を超えて学びが広がる、PYPの6つの領域横断型テーマ

PYPでは、プログラムの基盤として以下の6つの領域横断型テーマを提供しています。

  1. Who we are / 私たちは誰なのか
  2. Where we are in place and time / 私たちはどのような場所と時代に生きているのか
  3. How we express ourselves / 私たちはどのように自分を表現するのか
  4. How the world works / 世界はどのような仕組みになっているのか
  5. How we organize ourselves / 私たちは自分たちをどう組織しているのか
  6. Sharing the planet / この地球を共有するということ

教員側は、学習者の発達段階に応じてこの6つのテーマをもとに探究型学習を位置付けていきます。

例えば、6年生の「unit3 北海道卒業旅行project」では、テーマ「私たちはどのような場所と時代に生きているのか」のもと、中心的アイデア「生活空間や様式、規則や法則を見つめることで、自分と他者や物事との関係が見える」を核に探究を進めていきます。

unit3 北海道卒業旅行project 探究学習の様子

本州の中央部に位置する山梨県と、北の大地の北海道とでは、その自然環境や生態系、暮らしや人々の営みの歴史に大きな違いがあります。北海道の特産物。気温や気候。地形の特徴。生息する動植物。アイヌ民族の人々の伝統や生活。そして、学校がある山梨県との比較。国語に社会、理科……子どもたちはさまざまな教科の視点を融合・横断しながら探究を深めていきます。

unit3 北海道卒業旅行project 探究学習の様子

教員は、それぞれの教科の視点からテーマに対してどうアプローチできるのかを考え、unitを位置づけます。教科担任制の山梨学院小学校では、その学年を受け持つ担当教員で綿密なミーティングを開きます。

社会の授業の様子

学校での授業はもちろんのこと、時には校外に出て本物に触れることで学びを深めることもあります。

unit5 芸術project 山梨県立美術館にて
unit3 summer project 新潟県妙高市にて

unitの終末には学習のリフレクションを行い、テーマに対する達成度を振り返ります。また、探究過程を示すレポートを発行することで、子どもたちだけではなく保護者とも探究の様子をシェアします。

卒業時には、PYPの集大成 “EXHIBITION”が開催されます。PYPのカリキュラムのもと学んだ成果を、教員・保護者・そして他学年の児童と共有します。

PYPの学習の集大成EXHIBITION

国際バカロレアで育める次世代型スキル

子どもたちはこのような学習プロセスをくり返す中で、自ら考え学ぶ探究心や互いを尊重する協調性を育んでいきます。

社会で直面する課題は、1つの教科に限られたものではありません。教科の学習で学んだ知識や技能を融合させて考えたり、多角的な視点・さまざまな立場から検討したりすることで、課題解決に向けて試行錯誤していく必要があります。

PYPで身につける学習スキルは、次世代を担う子どもたちのこれからに必ずや役立つことでしょう。

次回は,全学年に位置付けられているUnit「sports project」、いわゆる運動会の様子をご紹介します。きっと運動会といわれて抱く一般的なイメージとは大きく異なるはずです。国際バカロレア認定校ならではの、子どもたちが自分たちの手で創り上げる「sports project」のレポートもぜひお楽しみに!

山梨学院小学校の、人工芝のオクトーバー運動場

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堀之内梢

国立大学教育学部卒業。専門教科の国語を愛し、教科担当制の私立小学校にて勤務。好きな教材は「おにたのぼうし」。好きな文法は品詞分類。学級担任として、多くの子ども・保護者と関わる。現在は教員業の傍ら、教材執筆者・ライターとしても活動中。プライベートでは1児の母。

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