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2019.10.30

家庭でも実践できる! 子どもの理解力が高まる“教えない授業”とは?

「教えないのに子どもは勉強ができるようになる!?」「教えないで教えるって何!?」と思った人もいるでしょう。多くの子どもは、話だけずっと聞かされる授業では学習内容を理解しません。教師や親が教える時には、できるだけ言葉を発しない方が子どもは学習内容を理解するのです。どうしてなのでしょうか。今回は、学校で実際に行われている”教えない授業”について紹介しましょう。

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“聞く”だけの授業では子どもが理解できているか分からない!

大学での講義は90分から100分で1コマというのが一般的です。この時間、教壇に立ったままで話し続ける教授は大変ですが、聞いている学生も疲れてしまいます。場合によっては、教授が伝えたいことを聞く側が理解できないということもあるかもしれません。

黒板に何も書かずに話し続ける教授もいます。しかし、途中で“書き言葉”で話されると意味が分からなくなることがあります。例えば、話の中に出てくる“かのう”というワードが、“可能”なのか“化膿”なのか。目で見れば漢字で意味を判断できるため意味がすっと分かります。一方、言葉だけで聞くと“可能”か“化膿”のどっちなのかと悩んでいるうちに話が進んでしまって混乱する場合も…。ここで、話の意味が分からなくなってしまうのです。

今の時代、学生に質問して答えさせたり、あらかじめ調べさせたことを発表してもらったりというようにただの講義だけではない授業をする教授もいます。教育学部などでは、模擬授業を学生にさせるような授業もよく行われるようになってきているようです。大学時代には、私も体育などの模擬授業(学生が先生となって授業する)を受けたことがあります。その後で「ここは良かった、あそこはこうしたらもっと良くなる」と学生の意見を出したり、教授から評価をもらったりするという授業です。大学の講義・授業でもやはり、“学生が活動する”、“作業する”という形式の方が楽しく学べました。講義・授業内容も、ただ話を聞いているだけより学習内容を早く理解、習得することができたと実感しています。

ここまでは私の大学時代の経験ですが、現在の小学校で行われている授業はどんな授業なのでしょうか。小学生が学習内容を理解するにはどのような授業が良いのでしょうか。

子どもの主体性を育む“教えない”授業

そもそも“教えない”授業とは、どんな授業なのでしょうか。一方的に教師だけが、1時間ずっと子どもに話し続けるような授業ではありません。もしかすると、しっかり説明した方が良いという子もいるかもしれません。しっかり教えてあげた方が良いのではと考える教師もいるかもしれません。中には、しっかり説明した方が学習内容を理解できるという子どももいるでしょう。しかし、私が出会った子の多くは「こうなるから、こうなってくるね」と何回か説明し、話し続けていくうちに表情が曇っていくのです。そこで「分からなくなった人?」と聞くと、最初に説明した時よりも多くの子の手が挙がりました。

先輩教師から教えてもらったのは「子どもは、教師が説明すればするほど分からなくなる」ということ。もちろん、“教えてはいけない”というのは教師が全く話さないということではありません。教師は授業中、一方的に質問などせずに話し続けていてはいけないということなのです。

小学校で行われている“教えない”授業とは、“子どもに作業や活動を通して分からせる”授業。子どもに主体性を持たせる授業とも言えます。

私が教育関係のセミナーで、“授業の仕方・教え方”を学んでいた時のことです。“逆数”と“割合”の授業でした。講師の「ノートに、このように書きなさい」という指示のままノートに書いていたのですが、しばらくすると私は「どうしてこの数字をノートに書かないといけないんだろう」と考え始めていました。講師は「どうしてこの数字になるのか、考えなさい」とは言っていません。しかし、どんどん指示されることによっていつの間にか考え始めていたのです。

講師が「ここでは、こうなるからこの数字が出てくる。この数字が出てくるから次にはこの数字になる…」などのように説明していたら、私はただ単に聞いて書いていただけになっていたかもしれません。子どもは“先生が教えない、説明しない”方が分かるようになる、できるようになるという理由はここにあるのだなと感じながら授業を受けていました。

“教えない”授業とは? ~算数の場合~

私が経験したように、授業中に教師ができるだけ言葉を発しないで作業の指示だけをすると、子どもは無意識のうちに「どうしてこうするんだろう」「どうしてこうなるんだろう」と考え始めます。例えば、繰り下がりのある引き算を教える時。子どもには計算の手順だけ指示を出し、どうしてその順序で計算するのかは説明しません。

算数の勉強では答えを正しく出すのも大事だけれど、どうしてそうなるのか意味を教えるのも大事だと考える教師もいますが、私は意味よりも先に正しく答えを出せることを優先すべきだと考えます。よく例に出されるのは「世の中には意味や理由が分からなくてもできればいいことも多い」ということ。テレビの画面になぜ画像が映し出されるのかが分からなくても、スイッチの入れ方さえ分かればテレビを見ることができますよね。

計算の手順を指示しておけば、子どもは筆算しながら自然にどうしてそうするか考え始めているものです。実際に授業をしてみると、鉛筆を持つ子どもの手が止まったり、表情が変わったりします。例えば「10と書きます」という指示では、10と書くだけだからすぐに書けます。しかし子どもは「ここでどうして10と書くのかな」と疑問に感じるため、書こうとせずに鉛筆を持つ手が止まるのです。私が教育セミナーで模擬授業を受けた時と同じです。

小学校の算数では、凸凹のある長方形の面積を出す問題があります。教師が解き方の手順を示してその通りにやらせることもできますが、既に長方形の面積の出し方の学習が済んでいるのであれば「先生がひと目見て分かるように、ノートに解き方を書いてね」と言うだけで済みます。教師が説明しなければ、子どもは面積の出し方を自分で考えて解き始めるのです。様々な方法が出されるので、子どもに黒板に書かせたた後どのように考えたのかを説明させ、皆でそれを共有します。こうすることで、子どもは“自分で考える”、“作業する”という活動、本当の意味での理解につながるのです。

親が子どもに教える時も“教えない”テクニックが使える

学校の授業だけではなく、家庭で子どもに勉強を教える時も同じです。

“教えない・話さない”で子どもに“作業・活動”をさせることで子どもが自分から自然と考えるようになることは、家で親から教わっている時も同じ。学校で行われている“教えない”授業を参考にしてみましょう。

例えば、算数の図形の問題、正方形の定義で考えてみます。どのようにすれば“教えない”で“教える”ことができるのでしょうか。「4つの角がみんな直角で、辺の長さが全て同じ四角形を正方形と言います」」ということを教える時にやりがちなのが、図を書きながら「ここに直角がひとつ、ここで2つ…みんな直角だね」と説明してしまうこと。しかし、これでは教えることになってしまうのです。

私がよくやっている方法(先輩教師から教わった方法)を紹介します。学校でのやり方ですが、家庭でも“教師”の部分を“保護者”に替えることで実践できます。

“教えない”教え方のハウツー

  1. 教師が定義を読む。
  2. 子どもに読ませる。
  3. ノートにそっくりそのまま書かせる。
  4. 書いたら声を出して覚えさせる。ここで、見ないでも言えるように練習させる。
  5. 学校では隣の席の子同士で覚えたか確認させる(「お隣さんが覚えたら座ります」と指示してから始めます)。家庭では子どもが覚えたかどうかを親が聞いてあげます。
  6. 見ないで言わせる。言えない場合は見直しをさせる。
  7. 教師が「4つの角がみんな直角で、辺の長さが全て同じ四角形のことを何と言いますか」と子どもに問題を出します。「正方形です」と答えられたらOKにします。
  8. 「正方形とは何ですか」という問題も出します。「4つの角がみんな直角で、辺の長さが全て同じな四角形です」と言えればもう大丈夫。

指示を出したり問題を出したりといったことはしていますが「正方形は4つの角がね…」などと、意味を全く説明せずとも分からせることができます。これが“教えない”で“教える”ということなのです。「実際に正方形の図は書かないの?」と思った人もいるでしょう。しかし、図の形を理解することと図を書くことは別の要素の学習なのです。実際に図を書く時、先に覚えた定義は大いに役立つはずです。

算数以外でも何らかの定義を教える時、或いは定義でなくても何かを覚えさたい時にも使えます。ぜひ、家庭でも試してみてください。

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須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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