現役教師がアドバイス。いじめ対策と親が避けるべきNG行動
文部科学省の「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2019年のいじめの件数は54万件を超える過去最多数となっていることが明らかになりました。近年増え続けているいじめ問題について、学校はどのように対策や対応をしているのでしょうか。気になる学校の対策や対応、また学校と家庭の連携、いじめとの向き合い方。小学校教員として8年勤務、現在は小学校の非常勤講師として教育現場に立つ現役教師のアドバイスを紹介します。
目次
いじめについて、学校は具体的にどのような策を立てている?
子どもは怒られるよりも褒められたいという欲求の方が高く、大人の前では良い子として見られたいもの。自分がいじめをしていると大人に知られないように、多くのいじめは大人の目が届かない子どもたちの世界で起こっています。
各学校では一人でも多くの子どもを救うために、さまざまな取り組みが行われています。まずは参考までに、ある学校での取り組みを紹介しましょう。
いじめを事前に回避するために
- 日ごろの様子を観察
- 日記の提出
- 定期的ないじめについてのアンケートの実施
- 学校内や学級内に相談ポストを設置
もし、いじめが発覚した場合、私の学校では次のような流れで対応をしていました(場合によっては、保護者を交えることもあります)。
いじめが発覚した場合
1. 被害児童、加害児童とそれぞれと個別面談
子ども同士の圧力や言いにくさをできるだけ除いて話ができるよう、個別で担任が事情聴取を行います。また、別で話を聞くことはお互いの刺激をできるだけ最小限にするという目的もあります。いじめのきっかけ、具体的にどんな被害があったか、どんなことや人が関わっているか、それぞれの気持ちなどをできるだけ具体的に聞き取っていきます。
2. 学年主任や管理職等(場合によってはスクールカウンセラーなど)への相談~解決案思考
状況判断ができたら同学年担任や学年主任、管理職などに相談をし、これからのことについて考えていきます。
3. 被害児童、加害児童両者の話し合い
保護者に方針を報告し、必要な場合は両者交えての話し合いの場を設けます。この話し合いや解決策を講じるまでの期間は、長期に渡ることもあります。
4. 経過観察、学校内や保護者への現状報告等
ひと段落ついたあとも、子どもの様子や現状報告などを保護者にこまめに伝え、子どもも親も安心して学校に通える環境を作っていきます。
わが子のいじめを知ったら…学校への連絡方法はどうすればいい?
いじめについての相談を学校としたい時は、主に以下のような連絡方法があります。
連絡帳
毎日、確実に教師が目にするため気付いてもらいやすいのですが、自分の子ども、関係のない子どもに内容を知られる可能性があります。「相談があるので、お電話いただけますか」など、いじめの内容には触れずに連絡帳に記すのが良いでしょう。
手紙
子どもに中身を知られることはありませんが、子どもに託すため渡し忘れや紛失のリスクがあります。また、いじめというデリケートで難しい問題のため教師が返事を書くのに時間が掛かることもあります。手紙を子どもに託す際は渡し忘れのないよう、連絡帳に「手紙を持たせています」と書き、「お返事は電話でも構いません」と書いておくと、担任は返事に困らずにリアクションしやすいでしょう。
電話
教師に状況が伝わりやすいという反面、時間が合わない可能性があります。他の先生が電話に出た場合や担任が不在の場合、都合の良い時間に連絡をしてもらうように伝言を残しましょう。
対面
日程調整は必要ですが、具体物を見せたり子どもを交えての相談をしたりすることができます。都合の良い日程を担任に聞き、できるだけ合わせるようにします(いじめという事の重大さから、学校側もできるだけ調整をして早めに対応するように努めるはず)。他の保護者や子どもたちに目撃され、勘付かれる可能性が心配であれば子どもたちがいない放課後の時間、外が暗く見通しの悪い時間帯などを選ぶと良いでしょう。
もちろん、状況はさまざまでそれに対して適した連絡の取り方は異なります。したがって、一概に「この連絡方法がおすすめ!」とは言い切れません。子どもの状態や周りの状況などを考え、コンタクト方法を選ぶべきです。
例えば子どもが「誰にも知られたくない」と思っているのに、連絡帳に書いてしまったり学校訪問をしたりしてしまうと、他の子どもに知られたり勘付かれたりする可能性があります。そうなると「誰にも知られたくない」という子どもの思いに反してしまい、親が子どもを傷つけてしまうこともあるのです。
これはやめて! 教師が避けてほしい親の対応
いじめという問題には、大人の慎重な対応が大切です。よく考えて行動すれば上手くいくようなケースも、自己判断やたった一つの行動で、状況を悪化させることもあるのです。事態を悪化させてしまうのは、以下のような対応です。
- 自分の子どもの話だけを鵜呑みにする
- 直接、相手側の子どもや親に話をしたり叱ったりする
- 無視しなさいという指導
- 連絡帳での長文連絡
いじめの問題が発覚した場合、当人たちの話を聞くことはもちろん周りの子どもたちの話、その時の状況などあらゆるものを総合的にみてフェアな話し合いが成されなければいけません。子ども一人の話だけで事を進めていくのではなく、どんな思いでその行動に至ったか、どのような気持ちなのかなど丁寧に理解していかなければいけません。自分の子どもの話しか聞かなかったり感情的になったりすることは、他の子どもにとっては一方的なただの押し付けになってしまう場合もあります。
子どもに対し「無視しなさい」「関わらないように」と言う保護者もいますが、子どもたちは無視できない理由や環境があるからいじめをしたり、いじめにあったりしてしているのです。「無視しなさい」の一言で片づけられてしまうのは、子どもにとって苦痛でしかないでしょう。
何ページにも渡る連絡帳での長文連絡は、担任が正しく理解できない場合があります。しかも、賢い子どもは長文で連絡帳に何か書いてあるとういうだけで「何かあるな」と感じるはず。いじめに関わる子どもの心はとてもデリケートですので、できる限り刺激を減らしてあげることが大切なのです。
子どもも親も心のケアを
いじめがきっかけで、子どもの心が不安定になることはよくあります。しかし、それは子どもだけでなく親も同じ。いじめという問題に関わった子どもや親は、少しでも不安を解消できるような心のケアが大切です。
被害児童
今までの苦しみや悲しみを理解・共有し、味方がいるということを実感させましょう。普段から悩みを聞いたり、同じ立ち位置に立って考えてあげたりして「一人ではない」という心強さを持たせましょう。それが子どもの勇気につながります。
加害児童
被害児童だけではなく、加害児童の思考や気持ちを聞いてあげるのは大切。いじめに至った経緯や気持ちなどをよく聞き、「理解した」ということを示してあげましょう。しかし、考えは理解した(把握した)としても、悪いところはきちんと指導をするべきということは忘れないように。加害児童の多くは、反省しています。これからは、弱い者に標的を向けるのではなく周りに頼っていいという雰囲気作りをしてあげることも必要です。
被害児童兼加害児童
自分の意思でいじめをしたのではなく、“誰かの存在を恐れて(あるいは命令されて)いじめをした”被害者でもあり加害者でもあるというケースがあります。この場合も、子どもの考えや気持ちを理解してあげるということを第一に接しましょう。話を理解してあげずに悪いことだけを叱る、親の思いだけを押し付けるということは、子どもにとっては苦痛になります。
保護者
いじめに関わった親の中には一人で抱え込んだり、考え過ぎたりしてしまい、精神的にきつい思いをする人も多くいます。悩みは一人で抱え込まず、家族や学校と共有しましょう。子育ては、親だけがするものではないのですから。
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