忘れ物が多いのはなぜ?理由と対策を発達支援の専門家がアドバイス
いろんな方法を試しても忘れ物が多いわが子。人間だからたまにはミスをすることがあっても、あまりに頻繁だと、「忘れ物をしてしまう理由があるのではないか」「もっと適した対策法があるのではないか」と悩みが深くなっていってしまいますよね。今回の相談者さんも子どもの忘れ物に悩むママのひとり。発達支援の専門家である小笠原真巳さんが送ったアドバイス内容とは?
今回の相談
- 今回の相談者(仮名) 白井道子さん(32歳/愛知県在住)
- 同居中の家族 娘、夫
- 相談内容 小学4年生の娘の忘れ物が多くて悩んでいます。学校への持ち物は一緒に準備をするなど対策ができますが、学校から渡され、提出しなければならない書類なども渡してくれないので困ってしまいます。忘れ物をしないようになってほしいですが、そもそも今後、社会生活を送れるのか不安です。
忘れ物がなくならない意外な理由
小学1年生の頃から忘れ物が多かったという白井さんの長女。親子で一緒に準備をしたり、チェックリストを用意することで、4年生になった今は、学校へ持っていく際の忘れものは減ってきたそうです。
しかし、体操服や給食袋、提出が必要なプリントなどを、学校から持って帰ってくるのがいまだにできず、白井さんは悩んでいます。
「プリントはその日に渡してくれることはほぼなく、毎週末まとめて持って帰ってきます。体操服は何週間も持って帰ってこないことも…。
その都度、娘には注意をしているのですが、『分かった』と答えるだけで、翌日も持って帰ってくることを忘れてしまいます。宿題もするべき内容は分かっていても、ドリルやノートを学校に忘れてきているのでできません。3日1回は宿題をせずに学校に行っている状態です」(白井さん)
学校では担任に注意をされているようですが、本人はあまり堪(こた)えてはいない様子。「先生に注意されたから気を付けよう」と改善していく感じはみられないそうです。
忘れ物が減らないのは困っていないから
そんな白井さんの長女の様子を聞き、小笠原さんが気になったのは”本人に困った感がない”ということでした。
「今の話を聞いていると、忘れ物をしていることに対して娘さん自身は困っていない気がします。例えば、給食袋や体操服を持って帰らなくても、本人が汚れが気にならなければ困らないし、プリントも娘さん自身が直接困るわけじゃないですよね。
だから、娘さん自身が困るような状態になったら、しっかり覚えて対処出来るような気もするんですよね」(小笠原さん)
しかし、これまでも「忘れ物をしてはいけないよ」ということは、何度も伝えてきた白井さん。忘れ物を無くすためには、娘さん自身が“お困り感”を感じるまで待つしかないのでしょうか。
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子どもが悩むほど困っていないとしても、ルールやマナーを教えなくていいわけではありません。
では、「忘れ物に気を付けよう」と子どもに思わせるためにはどうしたらいいのでしょうか。
「ごほうびを用意するのはどうでしょう。例えば、『プリントを持って帰る』『体操服を持って帰る』ということを白井さんから娘さんへ伝えますよね。その結果、すべてを持って帰ることはできなくても、1つでも持って帰ってくることができたら、『よくがんばったね』と認めてあげてください。
そして、子どもがうれしくなるようなごほうびをあげます。“忘れ物をしない=うれしいことがある”ということが、子どもの行動をいい方向へ変えていくきっかけになるかもしれませんよ」(小笠原さん)
ごほうびは、好きそうな文房具や本を買ってあげたり、ゲームの時間を少し伸ばしてあげたり、一緒に買い物に行ったりなど、本人がワクワクできるようなことなら何でもいいそう。日常会話の中で子どもの喜びそうなことを考えてみましょう。
「ただし、『〇〇をしなければ、買ってあげないよ』という子どもを脅すような言い方はしないでくださいね」(小笠原さん)
発達に合わせた行動の変え方
相談をしていくうちに、白井さんの「忘れ物が多い」という不安の奥に、発達への不安があることを感じ取った小笠原さん。もし、忘れ物が多い理由が発達の遅れにあるとしたら、どうすればよいのかを話します。
「もし、精神年齢が実年齢よりゆっくりだとしたら、状況を理解するためのイマジネーションが追いついていない可能性があります。だとすれば、分かりやすく伝えてあげるようにしてください」(小笠原さん)
例えば、プリントを持って帰ることを忘れているときは、「学校からのプリントが手元に届かないことで、お母さんは困っている」と状況を言葉にして説明した上で、「だから、持って帰ってきて欲しい」と、どんな行動をすればいいのかを教えます。「言わなくても分かるだろう」という考え方はやめましょう。
「ただ、白井さんの娘さんのように本人が困っていない場合、言い続けても行動に移せるのは5回に1回ぐらいだと思います。ですが、先ほど伝えた動機付け(1つでもできたらごほうびをあげる)をして行動しやすい状況を作ることで、行動が習慣化されていき忘れ物は減っていくと思います」(小笠原さん)
また、1年生の頃から親子で一緒に準備をしてきたことで、家から外に出るときはだいぶできるようになっていることを挙げて、「すでに学校の準備をするということはクリアできていますよね。そのように1個ずつ出来るようにしていくことが大切です」と話す小笠原さん。
「最終的なゴールはひとりで忘れ物なく行動できるようになることですよね。ただ、いきなりそのゴールにたどり着くのは難しいことです。今の子どもの状況からどんな段階を踏んでいけばいいのか、ゴールにたどり着けそうか、子どもの様子を観察しながら計画を立ててみてください。
『何歳だから〇〇ぐらいできないと』と考えると、どうしても、できないことに目が向いて苦しくなってしまいます。『1つずつ』『小さなこと』でもいいんです。できるようになったことに目を向けられるように小さなステップを積み重ねていきましょう。親子のペースで大丈夫ですよ」(小笠原さん)
発達について心配なら相談に行こう
今回は、忘れ物に焦点を当てて相談をした白井さんですが、「もし、発達について心配なのであれば、自治体の『子ども家庭センター』などへ、相談に行くのもいいですよ」と小笠原さんはアドバイスします。
「客観的な事実として発達検査で子どもの状況を知ることができ、必要に応じて療育や支援を受けることができますよ」(小笠原さん)
カウンセリングを終えて…
「自治体の子育て相談の予約が取れず不安な思いを抱え続けていましたが、話しやすい専門家の方に相談できて気持ちが前向きになりました。できることから1つずつ取り組んでいこうと思います」(白井さん)
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