テストが不安で泣く…子どもに対して親ができるアプローチ
「テスト前日に緊張して眠れない」「テスト中に焦って頭が真っ白になってしまう」といった経験はありませんか?こうしたテストにまつわる不安な感情のことを、テスト不安と言います。テスト不安を抱える子どもに対して、保護者はどのようにアプローチすることができるのでしょうか?
子どもが抱える「テスト不安」とは
テスト不安とは、テスト前またはテスト中に出てくるネガティブな状態のことを言います。これは、心理的な症状だけでなく身体的な症状も指します。
テスト不安の心理的な症状には、「テスト前になると不安で何も手につかなくなる」「テストのことを考えると泣けてきてしまう」などがあります。
テスト不安の身体的な症状には、テスト前日に眠れなくなる不眠症状が出たり、テストが近づくと体に発疹が出たりというものがあります。
これまでの心理学の分野で行われてきた研究では、テスト不安はテスト中のパフォーマンスを下げてしまうことがわかっています。つまり、テスト不安があることによって、自分の実力を発揮できなくなるのです。
テスト不安が大きい子どもには、テストの問題を解いているときに「自分にはできない」「きっと間違えてしまう」とった、テスト問題とは関係のないネガティブな思考が生じているといわれます。
ネガティブな思考が生じた結果、頭が真っ白になる、冷や汗が出てくるといった症状が出てきます。
そのため、テスト問題に集中できず、実力が発揮できなくなるというわけです。
子どもにとって大きな影響力を持つテストであればあるほど、テスト不安も大きくなります。
小学生の子どもにとっては中学受験、中学生の子どもにとっては定期テストと高校受験、高校生の子どもにとっては大学受験、これらの子どもの人生にとって大きな影響力を持つテストは、子どものテスト不安につながりやすいといえます。
テスト不安を感じる原因
子どもたちのテスト不安を少なくし、テスト本番で実力を発揮できるようにするために、保護者には何ができるでしょうか?
ここで、子どもがテスト不安を感じる原因について考えてみましょう。子どもがテスト不安を感じる原因は3つあります。
1:自己肯定感・自己効力感が低い
自己肯定感とは、ありのままの自分を認め、受け入れる気持ちのことです。自己肯定感が低い子どもは、「テストで良い点を取らなきゃ」と思いがちです。
ありのままの自分ではなく、良い点を取る自分でないと受け入れてもらえないと感じているからです。その結果、テストに対してプレッシャーを感じ、テスト不安になります。
自己効力感とは、自分にはできる、自分には能力がある、と感じる気持ちのこと。自己効力感が低い子どもは、「自分にはできない」「自分には良い点を取る能力がない」と思ってしまうのです。その結果、テストへの不安が大きくなります。
2:テストに対して過剰な思い入れがある
テストに対しての思い入れとは、「絶対に良い点を取りたい」「受験に合格したい」という気持ちです。
適度な思い入れは、テストに向けて努力するための動機づけになります。まったく思い入れのないテストに対して、子どもは努力しないからです。しかし、この思い入れが過剰なものになると、テスト不安の原因になります。
「良い点を取らなければ自分の価値がなくなる」「受験に合格しなければ、これからの人生は真っ暗だ」といった思い込みが、テストに対しての過剰な思い入れになります。
過剰な思い入れがあると、テストのプレッシャーが大きくなり、不安になります。
3:周囲との比較で自分の価値を決めている
「周りの人と比較して、優位に立つことを重要視する」という考え方を、遂行目標志向といいます。
これに対し、「過去の自分と比較して、成長することを大事にする」という考え方を、習熟目標志向といいます。
遂行目標志向の子どもは、テストや受験を前にしたとき、「平均点以上を取りたい」「クラスで10番以内に入りたい」「周りの子にすごいと思われるような学校に入りたい」といった気持ちになります。
一方、習熟目標志向の子どもは、「自分がどれくらいできるようになったか知りたい」「テストの結果を次の勉強に活かしたい」「自分の実力を試したい」といった気持ちになります。
周囲との比較で自分の価値を決めがちな子ども、つまり遂行目標志向の子どもは、「テスト=周囲と自分とを比較し、優位に立つためのもの」という考え方になります。
そのため、周囲と比較して悪い点数を取りたくない、周りより悪い点数を取ったら自分の価値が下がってしまう、という気持ちから、テスト不安を感じてしまうのです。
逆に、習熟目標志向の子どもは、テストの結果を周りと比べることをしないので、テスト不安になりにくいといえます。
テスト不安になった子どもへの対応法
それでは実際に、テスト前や受験前に子どもがテスト不安に陥ってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。保護者が子どもにできる対応法には次の4つがあります。
1:生活リズムを整える
テストや受験が近づき、子どもにテスト不安の症状が出てきたとき、まず心がけてほしいのが生活リズムです。特に大事なのが睡眠時間です。
テストが不安だからといって、夜遅くまで勉強することは逆効果です。
米国国立睡眠財団による推奨睡眠時間を見てみると、6~13歳は9時間~11時間の睡眠が必要です。15~17歳は8時間~10時間の睡眠が必要です。
人は睡眠をとることによって、自律神経のバランスを整えます。眠ることでストレスホルモンの分泌量を正常な状態にし、憂うつな気持ちを軽減さえるため、できるだけ長い睡眠時間を確保するようにしましょう。気持ちの安定につながります。
2:マッサージをする
マッサージには親子の絆を強くし、不安を小さくする効果があります。マッサージをする側、される側ともにオキシトシンと呼ばれる愛情のホルモンが分泌され、安らぎや幸福感が高まるからです。
オキシトシンの効果で、不安が軽くなりストレスが軽減します。さらに、免疫力が高まったり、質のよい睡眠がとれるようになったりするといわれています。
テスト不安が大きくなっている子どもへのマッサージによって、オキシトシンの分泌が促される時間を作ることが大切です。
3:深呼吸をする
子どものテスト不安が大きくなっているとき、ストレスによって自律神経の働きが乱れている状態です。
このとき、心と体にさまざまなストレス症状、不安症状が現れます。自律神経の乱れは、深呼吸によって整えることができます。
テスト不安が大きく、子どもにストレス症状が出ている時、交感神経が有意になっています。深呼吸をすることで副交感神経が優位になるため、緊張や興奮が和らぎリラックスできます。
また、深呼吸で酸素をたくさん取り込むと、疲労回復の効果もあり、セロトニンという幸せホルモンの分泌が促され、気持ちの安定につながります。
4:声掛けをする
前述した通り、テスト不安には3つの原因があります。
テスト前日に不安になっている子どもには、「明日のテストで良い点を取るあなたでも、悪い点を取るあなたでも、どちらでも大好き。ありのままのあなたが大好きだよ」といった声かけをしてみましょう。
テストに対して過剰な思い入れがある子どもには、「入試に受かっても落ちても、あなたの価値は変わらないよ。これまでの努力にこそ意味があるんだよ」といった声かけをしてみてください。
周りと比べて悪い点数を取ってしまうかもしれないと感じて不安になっている子どもには、「テストは自分の成長に気付くためのものだよ。テストで、できるところや得意なところを探そう。」といった声かけが効果的です。
大好きなお母さん、お父さんからの声かけで、気持ちが安定するはずです。
テスト不安を事前に防ぐための対策法
ここまで、テスト不安になってしまった後の対処法を紹介しましたが、できれば子どもをテスト不安にさせたくないですよね。
ここからは、子どもをテスト不安にさせない方法、つまりテスト不安を事前に防ぐための方法をご紹介します。
1:自己肯定感・自己効力感を高める
自己肯定感・自己効力感の低さは、テスト不安につながります。
常日頃から、自己肯定感・自己効力感を高めるような関わり方をしておけば、テスト不安になりにくい子どもになります。
子どもの自己肯定感・自己効力感を高めるような関わり方には次の5つのポイントがあります。
- ありのままの子どもを受け入れる
- 子どもの頑張りを褒める
- 子どもの失敗を前向きにとらえる
- 自然や文化に触れる機会をたくさんつくる
- 小さな成功体験を重ねる
どんなあなたでも大切だよ、あなたがあなたでいてくれるからうれしい、といったメッセージを常日頃から伝えていきましょう。
子どもをほめるときは、子どもの能力や結果ではなく、頑張った過程をほめるようにします。
たとえ、何か失敗したりうまくできなかったりしたときも、お母さん、お父さんからの前向きな言葉かけで、「失敗してもやり直せばいいんだ」と安心することができます。
キャンプや登山、海水浴など、自然の中でいろいろな体験をしたり、自然の中で遊んだりすることは、子どもの自己肯定感を育てるといわれています。
読書や芸術などの文化に多く触れていると、興味関心が広がり、学びの楽しさを知ることができます。
自然や文化に触れ、遊んだ経験、学んだ経験の中で、小さな成功体験を積み重ねましょう。
2:テストへのプレッシャーをかけない
子どもをテスト不安にさせないためには、常日頃からテストに関するプレッシャーをかけないことが大切です。
子どもは、親の気持ちをくみ取ります。テストや受験に対して、親の思い入れが強くなればなるほど、子どもの思い入れも強くなっていきます。
子どもがテストへのプレッシャーを感じないよう、保護者自身がテストに対するとらえ方を見直してみてください。
「うちの子どもには、テストで良い点を取らせたい」「何としてでも受験に合格させたい」といった気持ちがないでしょうか?
また、「良い点が取れないならば、これまで勉強させてきた意味はない」「受験に合格できなければ、塾に通わせてきた時間とお金が無駄になる」といった考え方をしていないでしょうか?
テストや受験は、子どもの長い人生にとっては一つの通過点にすぎません。
テストや受験で結果を出すことではなく、テストや受験を通して頑張る過程に、成長のきっかけがたくさんあります。
結果がどうであれ、テストや受験を経験する中で、人として成長していく子どもの様子を喜べる気持ちのあり様でいてください。お母さん、お父さんの気持ちが子どもに伝わり、子どもはテスト不安になりにくくなります。
3:他人ではなく過去の自分と比較させる
子どものテスト不安を小さくするためには、他人との比較ではなく、過去の自分と比較して、成長に目を向けさせることが大切です。
他人との比較で自分の価値を決める考え方を遂行目標志向と呼びました。
親が遂行目標志向の考え方をしていると、その子どもも遂行目標志向になるといわれています。
「平均点は取れるようになってほしい」「高い偏差値の学校に行ってほしい」「上位にいられるようになってほしい」といった考え方は、すべて他人との比較で生まれてくるものであり、遂行目標思考だと言えます。
子育てをしていると、ついつい周りの子どもと比べ、遂行目標志向の言葉をかけたくなってしまうことがあります。
そんなときは、意識して習熟目標志向のメッセージを子どもに伝えるようにしてみてください。
習熟目標志向のメッセージとは、「テストは、自分がどれくらいできるようになったか知るためのものだよ」「テストの結果を次の勉強に活かそう」「入試は自分の実力を試す機会だよ」というように、過去の自分と比較して、成長することを大事にする考え方です。
常日頃から、こうしたメッセージを伝え続ければ、子どもがテスト前に大きな不安におそわれることはなくなります。
テスト不安の原因と対策についてここまで話を進めてきました。
子どもをテスト不安にさせないためには、常日頃の子どもとの関わり方が最も大切だといえます。
子どもをテスト不安にさせない関わり方を心がけてみてください。
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