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2023.07.19

すべての授業を中断し、「GALAXY」をテーマに教科横断型の学びを行うーー普通の小学校とは違う「国際バカロレア認定校」の運動会

“運動会“といえば、玉入れやリレー、大玉転がしなどの競技が一般的ですね。運動会に向けて、一生懸命汗を流して練習した思い出がある方も多いのでは?
国際バカロレア、PYP認定校である山梨学院小学校は、projectと呼ばれる独自の探究型学習に力を入れています。運動会にあたるsports projectもその1つ。子どもたちが自分たちで考え、つくりあげる探究の過程を紹介します。

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動画編集に巨大壁画制作……これが運動会!?

教科横断型のunit学習を基盤とするPYPのカリキュラムを採用している国際バカロレア認定校・山梨学院小学校では、「sports festival」いわゆる運動会に向けての取り組みも、探究型学習が中心となっています。

チーム名からイメージをふくらませた応援旗づくり

山梨学院小学校では毎年5月にsports projectを実施しています。当日までの2週間、すべての授業を中断し、sports projectのテーマに関する探究を行うのです。最終日に、その集大成として開催されるのがsports festivalという位置付けです。

「sports festival 2023」オープニングの様子

まずは、2023年5月に行われたsports festival当日の様子をご覧いただきましょう。

2023年度のテーマは、“GALAXY~遥かなる銀河~”
※テーマはその年によって異なります

子どもたちは、遥か遠い宇宙に思いを馳せ、その歴史や人類の挑戦の軌跡について探究してきました。当日は、Gravity,Meteor,Quasar,Super novaの4チームによって勝敗を競います。

会場を彩る、テーマをモチーフにした巨大壁画。

天井やスクリーンに映し出される華々しいオープニング動画。

全校児童による表現運動。

テーマからイメージをふくらませてつくられたオリジナル競技の数々。

子どもたちによるマイクパフォーマンス。

一般的に「運動会」というと、その名の通り「運動」、つまり「体育」に特化した期間(イベント)であるはずです。

一方、山梨学院小学校のsports projectは、巨大壁画の作成、動画編集、テーマ学習の推進なども期間中の活動に盛り込まれています。「体育」だけに限らず、「国語」「図画工作」「理科」「社会」などの教科を融合させたり、時には教科の枠を超えたりしながら、テーマに関する探究を行っているのです。

子どもたちがつくりあげる“sports project”

山梨学院小学校のsports project、最大の特色はこれらを全て子どもたちが“自分たちの手でつくりあげる”ところにあります。

高学年の子どもたちは、競技・用具・演出・美術・進行・表現・学習推進の7つの担当に分かれ、project全体をマネジメントします。それぞれの係の活動の様子から、どのように子どもたちがsports festivalをつくりあげていくのかを見ていきましょう。

競技係

sports festivalの核となる競技を担う競技係は、テーマに基づいてオリジナルの競技を立案するところから始まります。ボールの動きを惑星の軌道に見立てるなどテーマに対する知識を生かして、ストーリー性のある競技を生み出します。

sports project期間中には、競技係が児童の競技練習をサポートします。その日の練習プランを考え、見本を示したり、アドバイスをしたりしながら、子どもたちの活動の中心となります。

用具係

オリジナルの競技には、さまざまな用具が必要となります。競技係と連携し、決定した競技内容に応じて必要な用具の作成を請け負うのが用具係です。その注文は、「パネル」「箱」「的」などから「UFO!」なんてものまで。どう作るのか、発想力や創意工夫が必要とされます。

演出係

演出係は、オープニング・エンディングの動画の作成や操作を担います。これらの動画では、児童の2週間の取り組みの様子をハイライトで紹介しています。

そのため、各活動の様子を取材して回り、素材となる写真を集めていきます。集めた素材を取捨選択し、音楽や文字情報、時には資料などと組み合わせたりしながら、クオリティの高い動画作品を目指します。

進行係

演出係が作成した動画に合わせて、オープニングやエンディングのアナウンスを担当するのが進行係です。会場を盛り上げられるよう、話すことに特化してスキルを磨いていきます。また、当日紹介する競技内容についての原稿を考えたり、BGMを選定したりするのも重要な仕事の1つです。

美術係

会場を彩る巨大壁画を制作するのは美術係です。それぞれのチーム名やカラーからイメージをふくらませて大きな壁画をつくりあげていきます。その年のテーマに合わせて、スパッタリングやマーブリング、ステンシルなどの技法を取り入れたり、使用する画材や用具を変えたりしながら、イメージを表現していきます。巨大壁画を完成させるためには、仲間との協力・分担が必要不可欠です。

表現係

表現係は、全校児童による表現運動の中核となります。この表現運動は、屈伸や肩回しなどの要素を音楽に合わせてリズミカルに取り入れてあり、競技前の準備体操としての役割も兼ねています。テーマ性・音楽との親和性・体操としての機能性を考慮しながら表現運動を完成させていきます。各学級でも練習できるように模範動画を作成したり、全校練習の際に振付を教えたりします。

学習推進係

学習推進係は、児童のテーマ探究をサポートします。テーマについて探究した内容を生かして、共有スペースに学習コーナーを設置します。また、資料を探したり、教材を作成したりしながら、異学年の児童にテーマについての探究学習を広めていきます。クイズを取り入れたり、動画を活用したりしながら、低学年の子どもたちが楽しく、わかりやすく学べるよう、試行を凝らしていきます。

子どもたちは、これらの活動を通して、1つのprojectの成功に必要なマネジメント力を身につけていきます。その過程では、探究する力やコミュニケーション能力、創造性や主体性がおのずと必要となります。これからの予測困難な時代を生きる子どもたちにとって、自ら考え、実践できる力は、必ずや役に立つことでしょう。

現在注目が集まる探究型学習。もちろん時には教員の手を借りることもありますが、小学生でも全校規模のprojectを自分たちでつくりあげることが可能です。教科の枠組みや一般的な運動会の概念に捉われない活動だからこそ、子どもたちはさまざまな角度からテーマにアプローチし、主体的に学びを深めることができるのです。

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堀之内梢

国立大学教育学部卒業。専門教科の国語を愛し、教科担当制の私立小学校にて勤務。好きな教材は「おにたのぼうし」。好きな文法は品詞分類。学級担任として、多くの子ども・保護者と関わる。現在は教員業の傍ら、教材執筆者・ライターとしても活動中。プライベートでは1児の母。

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