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2023.03.07

大学生の娘の態度が急に反抗的に。これって「遅れてきた反抗期」?

子育てをする上で避けては通れない関門、「反抗期」。中学生〜高校生の時期にみられる傾向にありますが、場合によってはそれが遅れてくることも。今回は、1人暮らしを始めた大学生の娘の「遅れてきた反抗期」に悩んでいるという佐藤さん(仮名)に、公認心理士の高橋智世さんがアドバイスをしてくれました。

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今回の相談

  • 今回の相談者(仮名)
  • 佐藤佳子さん(55歳/群馬県在住)
  • 同居中の家族
  • 夫(娘3人のうち2人は独立、歳の離れた末娘は大学生で1人暮らし中)
  • 相談内容
  • 大学生の3女(21歳)が、今になって反抗期のような態度をとるので戸惑っています。 高校生まではほとんど反抗期はなく、一緒に出かけたり趣味を楽しんだりと良い親子関係でした。しかしここ最近、大学に通い自分の世界が広がりつつあるからなのか、私が小言を言うと過度に反発したり、時にはLINEをブロックしてこちらとの連絡を断とうとします。 娘は現在大学生で1人暮らしをしており、日々どう過ごしているのかを細かく知ることもできません。親として何かできることはないのでしょうか。また、このような状況が今後もずっと続く可能性はあるのでしょうか。

話を伺ったのは…

高橋智世さん

大学在学中にベトナムで孤児院運営活動に携わり、その後、専門性を深めるために心と体の健康教育についての学んだ後、家庭教師・塾講師・個別指導塾の教室長を経て、養護教諭として7年間勤務。2018年からは「Hidamari Station」を主宰し、発達心理学×ポジティブ心理学×カウンセリングを軸にしたプログラムを構築し、個人向けのセッション・企業向けの研修やメンタルヘルスコンサルタントをメインに活動中。

反抗期は「心の成長に必要なもの」

まず、反抗期とは何なのかを整理しましょう。反抗期は人生で2回あるといわれています。最初は幼児期のいわゆる「イヤイヤ期」。母親と一体化している状態から、初めて保育園や幼稚園など、外の世界に触れることで始まるものです。

その次に現れるのが、中学生以降の思春期に起こる反抗期です。これはイヤイヤ期とは異なり、自分の内側からくる「自分は何者なのか」「自分の意志とは何だろう」という自分探しから起こるものです。

いずれも心の発達のために必要なものであり、起こるのが普通です。

今回は思春期に起こる反抗期が、平均的な時期よりも遅れて訪れたというお悩みですね。

実は最近、思春期に反抗期が出てこない子どもが昔と比べて増えており、相談者さんと同じ悩みをもつ保護者が多いんです。

なぜ反抗期が遅れてくるのか?考えられる3つの原因とは

思春期に反抗期がこない原因は大きく分けて3つ。

  1. 1人の子どもに対して複数の大人の目が常にあり「いつも見られている」という感覚で反抗するゆとりがない。また、親が過剰に厳しく、「怒られてしまうかもしれない」と思って反抗したくてもできない状況。
  2. 子どもを過度に甘やかし過ぎている。また、周囲の大人から注意される機会が少なかったり、何でも叶えられたりする環境である(全て自分の思い通りになっている)。
  3. 親の価値観と子どもの価値観が似ていて、子どもがやりたいことと親のさせたいことが一致している。この場合は反抗期が起こらなくてもあまり心配する必要はない。

1のように厳しい環境で反抗できなくなってしまっていることも問題ですが、2のように大人が要望を叶え過ぎてしまうのも、大事な子どもの心の成長を止めてしまうことになります。

親が「助けてあげなければ」「悲しんだり苦しんだりしないようにしてあげなければ」と先回りし過ぎてしまうと、その子の成長の機会を奪ってしまうことになります

心は失敗体験や思い通りにいかない経験をして、「自分の思い通りにしたい」という気持ちが芽生えてこそ成長するもの。それがなければ反抗期はありませんが、心が成長するチャンスも逃してしまいます。
 
しかし、こうした先回りフォローをしてしまう母親は多いです。相談内容の場合、歳の離れたごきょうだいが独立後、1人っ子のように大切にされてきた娘さんということで、2のような状況になっていたのかもしれません。

子どもの成長を認めるとともに、親の「子離れ」が必要

さて、1人暮らしをしている娘さんが「遅れてきた反抗期」を迎えているということですが、娘さんはまさに今、独り立ちしてうまくいかなかったり、大学での出会いによって「みんな自立しているんだ」と気付いたりして焦っている状況なのだと思います。

そうして心が発達しようとしているときに、これまで通り親のアドバイスや手助けが入ると、反射的に「自分でやりたいんだ!」と反発してしまうのです。

今まで反抗期がなかった分、親御さんは戸惑うかもしれませんが、本人の中に探し求めているものがあり、それを自分で見つけたいともがいている証拠です。自分で達成してみたいという欲求があるときに、親からの「求めているよりも大きな愛」があると、それを拒絶したくなってしまうんですね。

関わり方のポイントとしては、距離を保ってあげるということ。「どうしても困ったときは私たちがいるからね」と伝え、基本的には心理的に離れて見守ってあげましょう。

ここで重要なのは、「どうしても困ったときは私たちがいるからね。大切に思っているよ」など、言葉で伝えてから距離をとること。これがないと、子どもは突き放されたような気持ちになり、頼ってはいけないんだと思ってしまいます。そして失敗したときに「だから言ったでしょう」などと言われることを恐れて、本当に助けてほしくても言えなくなってしまう可能性があります。

子どもも本当はすごく不安に思っているはずです。口出しはせず、何かあったときに帰れる拠り所になってあげましょう。相談者さんの娘さんは1人暮らしをされているとのことなので、心がホッとするような贈り物を送るのもいいかもしれません。

反抗期は、互いの心理的分離のためでもあります。反抗期がきたときが、子どもとの距離を変え、「管理する」という意識から卒業するときです。親子ではなく、対等な人間関係を築いていくスタートだと思い、接してみてくださいね。

20歳を過ぎて始まった反抗期、一体いつ終わるの?

反抗期がいつ終わるかというのは、どの親にとっても大きな悩みですよね。

基本的には、反抗するものがなくなったときに自然に終わっていくものです。つまり、親側が子どもから卒業してあげると、子どもも反抗するものがなくなるので反抗期は終わります。「心理的に子育てから卒業する」と考えてよいでしょう。

前述のように親が意識的に距離を取り、関わり方やサポートの在り方を変えていけるようにしましょう。

「シャボン玉」から「ボール」の関係になろう

本記事を読んでいる方の中には、「うちの子はまだ反抗期が来ていない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そういった方に今から覚えておいてほしいのは、中学生以降は親としてのサポートではなく、対等な人間同士のサポートに切り替えていく意識をもってほしいということです。

具体的にいうと、中学以降は親が子どもに「与える」関わり方ではなく、いくつかの選択肢を「選ばせる」関わり方に切り替えてみてください。

そうすることで、その中から選ぶ、もしくは全てを拒否するなど、子どもの反応の変化が見えやすくなります。心理的に少しずつ子どもから距離を置くことで、「突然反抗期が来た!」と驚かずに済むのです。

私はこのようなお悩みをもつ方に、いつも「シャボン玉とボール」の話をします。

互いに自立していないときの親子は、2つのシャボン玉のようにくっついたり、ときには1つに一体化してしまうものです。しかし中学以降、両者の距離感は2つのボールとなります。ボールはぶつかってもシャボン玉のように一体化することなく、互いをはじきあうこともあれば、どちらかを凹んでしまうこともあるでしょう。

すぐには難しいかもしれませんが、親も意識的に子どもから離れ、子どもが心理的に自立すると同時に、趣味や仕事など子育て以外の軸を中心として生きていけるようになるとよいですね。

話を伺ったのは…

高橋智世さん

大学在学中にベトナムで孤児院運営活動に携わり、その後、専門性を深めるために心と体の健康教育についての学んだ後、家庭教師・塾講師・個別指導塾の教室長を経て、養護教諭として7年間勤務。2018年からは「Hidamari Station」を主宰し、発達心理学×ポジティブ心理学×カウンセリングを軸にしたプログラムを構築し、個人向けのセッション・企業向けの研修やメンタルヘルスコンサルタントをメインに活動中。

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