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2021.09.23

「子育ても人生もつまらない」と感じる理由と気持ちを変えていく3つのステップ

大きなトラブルを抱えているわけではなく、はたから見ればそれなりに幸せそうな人生。だけど、心の中では「子育てがつまらない」「こんな私は母親として失格なんだろうな」と感じている…。そんな女性、実は多いのかもしれません。自分よりも家族を優先してきたからこそ感じてしまう「自分の人生への虚無感」。それは、このままにしておいてよいのでしょうか。人には言えない思いを抱える女性たちへ、公認心理士の高橋智世さんが処方箋を届けます。

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今回の相談

子どもが小学生になり、ひとりの時間が少し増えました。ですが、いざ自分のために時間を使おうと思ってもやりたいことが浮かびません。これまで休日は子どもが喜ぶこと、食事も家族が好きなものをと考えてばかりいたせいか、自分の好きなものが分からなくなりました。思い返せば、子育ても家事も業務としてこなしているだけで楽しさや充実感はなかった気がします。こんな私は母親として失格でしょうか。私の人生はこのまま楽しいことは何もないのでしょうか。(40代、小学生の母)

子育てを「つまらない」と思ってしまう理由

子どもが小中学生になり、自分自身も人生の折り返し地点に近づいたとき。ふと「妻でも母親でもない“私”ってどんな人間だっけ?」と感じることはありませんか?

出産前の趣味や好きだったことを想像してもワクワクしない。食べたいものも、行きたい所も特に浮かばない。自分を楽しませる方法が見つからない…。母親としてだけでなく、ひとりの人間として人生に対する不安と戸惑いを感じさせる今回の相談。

公認心理師の高橋智世さんは、相談の中にある「つまらない」という言葉からは、相談者さんが閉じ込めてきたさまざまな思いが想像できると話します。

話を伺ったのは…

高橋智世さん

大学在学中にベトナムで孤児院運営活動に携わり、その後、専門性を深めるために心と体の健康教育についての学んだ後、家庭教師・塾講師・個別指導塾の教室長を経て、養護教諭として7年間勤務。2018年からは「Hidamari Station」を主宰し、発達心理学×ポジティブ心理学×カウンセリングを軸にしたプログラムを構築し、個人向けのセッション・企業向けの研修やメンタルヘルスコンサルタントをメインに活動中。

「この『つまらない』という言葉に行きつくまでには、『つらい』『逃げたい』など、自分の感情を何年も抑え込んできたからこそ出てきた言葉だと思います」(高橋さん、以下略)

「つらい」「逃げたい」と思ってもなかなか口に出すことができない母親たち。背景には、次のようなことがあると高橋さんは続けます。

「まず、『つらい』『逃げたい』『子育てがつまらない』など、本心を言葉にすることで、今まで自分が費やしてきた時間やエネルギーを否定することになりそうな不安があることでしょう。

また、もし家族や友人に本心を打ち明けたときに、自分が傷つけられるのではないか、誤解されるのではないか、という不安もあると思います」

例えば、「つらい」という思いを伝えたとき、「そんなこと言っても、両親もいるし、ダンナさんも働いているし、幸せじゃん」と言われてしまったら、もう何も言えなくなってしまいます。相手は傷つけるつもりはなくても、傷つけられてしまうことってありますよね。

相談すると何を言われるかが予想できてしまうからこそ、『もう言わないでおこう』となってしまう。特に日本人は同調圧力を感じやすい環境にいるので、何を言われるのかということを気にしやすく、“言葉にする”ことはすごく勇気がいることだと思います」

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今はストレスを自覚し始めた時期

では、「つまらない」という言葉で、ようやく本心を言葉にできた相談者さんはどのような状態なのでしょうか。

「母親は妊娠・出産の際に、個人の生活スタイルから母親としての生活に変わる大きな環境の変化がありましたが、環境に変化にはストレスが伴います。変化が大きい分、ストレスも大きかったはずですが、そんなことも言ってられない状態。感情やストレスにフタをしてでもひとりで乗り切るしかなかったはずです。

そして今、今度は子どもの手が少しずつ離れていくという2回目の大きな環境の変化が訪れ、今ままで押さえつけてきたストレスを自覚する時期なのではないでしょうか」

しかし、「ストレスを感じていることを自覚しても、そのストレスをどう解消すればいいのか分からない状況」だと高橋さんは続けます。

「これまで何年も子どもや家族のことを優先してきて、自分のことは見てこなかったとすれば、突然、自分の感情を感じ取ろうとしても難しいことです。家族のためにがんばってきたからこそ分からないし、分からないことはおかしいことではないんですよ。焦ったり、不安になったりせず、もう一度自分を知っていけばいいんです」

では、自分自身を知る(取り戻す)ために何から始めたらよいのでしょうか。

好きやワクワクを取り戻す3つのステップ

今の生活に「つまらない」と感じてしまうと、趣味や習いごとなど、好きなことを見つけようと思ってしまう人がいるかもしれませんが、高橋さんよると「突然、好きなこと、やりたいことをして満たされようとするのは、ハードルが高い」とのこと。

「心理学の理論に『マズローの欲求5段階説』というものがあります。人間の欲求を5段階のピラミッドのように構成し、下の欲求が満たされるとひとつ上の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています」

<マズローの欲求5段階説>

「『マズローの欲求5段階説』に当てはめると、好きなことをするというのは、一番上の自己実現欲求なんですよね」

ですが、土台がしっかりしていないとピラミッドが崩れてしまうように、まずは下の欲求から満たしていかないと、せっかく始めても失敗してしまう可能性が高くなるそう。

「ほかのママがSNSにアップしている内容を見て、『みんな自分のやりたいことができていて素敵だな』と焦るかもしれませんが、それに影響されて必要なステップを飛ばしてしまうと、続かなかったときやわくわくしなかったとき、『やっぱり私って変なのかしら』『私なんてどうせ何をしても続かない』と自己否定に入ってしまいます

そこで、高橋さんが提案するのは、「マズローの欲求5段階説」に基づく次の3ステップです。

【ステップ①】五感を”好き”で満たす

「ピラミッドの一番下にある”生理的欲求”とは、学問的には食欲・睡眠欲が注目されがちですが、それらの欲求がすでに満たされている人が多い現代社会では、生理的欲求は『愛されたい』と考える説があります」

とはいえ、夫はもちろん子どもも直接的に「愛している」ことを表現してくれるとも思えません。

「大切なのは、人から愛してもらうのではなく、自分で自分を愛してあげることです。そのファーストステップとして五感を”好き”で満たしてあげましょう」

五感を満たす方法例

  • 視覚……部屋の一角に好きなものを飾る
  • 嗅覚……家族ではなく自分が好きな香りの柔軟剤を選ぶ
  • 味覚……子どもではなく自分が好きなおかずや食材を選ぶ
  • パジャマや寝具を触感重視で自分のために選ぶ
  • 聴覚……好きな音楽を聞く

「例えば嗅覚なら、いい香り、苦手な香りを探す時間を作るということが、自分で自分を愛していると脳が認識するステップになります。自分の好きなものを選ぶ作業をしていくことで前頭葉が刺激され、わくわくしたり感動したりしやすくなります

【ステップ②】安心できる場所をつくる

「2つ目の安心安全欲求なんですが、これはほっとできる居場所や自分の時間をつくることです」

ほっとする時間や場所というのは、お金を払ってどこか特別なところに行くということではなく、部屋の一角に自分の世界を作り、そこで過ごすだけでもいいそう。

【ステップ③】ストレスのない人間関係をつくる

3つ目は所属と愛の欲求ですが、ストレスが伴うママ友グループなどではなく、自分がほっとできるような人間関係をつくれているということ。

「例えば、ステップ①②を行っているうちに、『アロマについてもっと知りたいな』と思ったら、同じ趣味や興味をもつ人とSNSでつながったり、決まったお店で信頼している店員さんとコミュニケーションをとりながらアロマを買ったり。今までつながりがなかった人とのつながりができるのもひとつです。また、そんな相手とお互いを認めあうことで承認欲求も満たされます」

承認欲求を満たされるといよいよ自己実現の欲求です。

いつの間にかワクワクしてる

「欲求5段階は、1段階ずつに切り離されたものではなく、下の段が満たされれば自然と次の欲求に移るようになっています。承認欲求が満たされるまでの過程を踏めば、わざわざ『私の好きなものって何?』と探さなくても、自然にわくわくすることや、やりたいことが見つかりますよ」

また、今自分がどの段階にいるのかを振り返り、今の自分はどこのステップにいるんだろうと、自分の立っている位置を確認することも大切なことなのだそう。

人が不安に感じるのは、実態がわからないときや、先が予想できないときです。今の自分の状態を客観的に見ることは安心につながりますよ」

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過ぎた時間はすべて無駄ではない

今の自分に落ち込んでしまうと、つい「自分は人生を間違えたのか」などと、過去の選択を後悔すなるなど、過ぎた時間に気持ちがいくこともあります。

「後悔することが悪いということはありません。時間を巻き戻すことはできませんが、同じような岐路に立つかもしれないときに向けて、『なぜ、自分はその選択を間違えたと感じているのか』『どうすればよかったか』『何を大切にすればよかったのか』という風に考えることができれば、過去のすべては未来での選択に活かすことができます

今回の相談者は40代。未来を選択する機会も少なくってきているように感じますが…。

「子育てをしてきた10年間で得たものがひとずつ書き出してもらうと、『いかに効率よく料理を作るか』『気の合わないママ友とやり過ごすにはどうしたらいいか』など、10年前とは比べ物にならないほど、色んな能力が身についていると思います。

例えば、社会に出て働いていなかったとしても、あなたの成長が止まっていたわけではありません。

これからの時代は個人の力をどう活かすかという風潮になっていますから、子育てや家事の中で得たものを認めてあげてください。少なくとも、母親の『忍耐力』『空気を読む力』『タイムマネジメント力』はレベルが高いと思いますよ」

この落ち込みはうつ?更年期?

一方で、もし落ち込み過ぎて「うつ病なのかも」と心配になったときは、医療機関に相談したほうがよいのでしょうか?

「医療にかかる基準は体の変化です。

  • すごく暑くなる
  • すごく寒くなる
  • 眠れない
  • 気持ちが沈む
  • 制御できなくなるくらい気持ちがハイになる

などの様子が7日以上続いた時点で、病院へ行くのがタイミングとして一番いいです。ただし、うつ病だと先入観をもって受診するのではなく、『このまま放っておいても大丈夫かチェックしてもらう』ぐらいのスタンスのほうがよいでしょう」

この状態を我慢して乗り越えてしまうと、一旦、問題はなくなるかもしれませんが、次の波のときは回復に時間がかかってしまうそう。

「『ちょっとおかしいな』と思ったときは、心の状態や婦人科系のことを相談できるいいきっかけです。あまり状態が悪くないうちに受診をすれば、医師や病院との相性も自分できちんと判断できるようになります。

もし、病院へ行くことがハードルになる場合は、カウンセラーや心理の専門家に相談してみてください」

言葉にできない感情こそカウンセリングへ

カウンセリングも人によってはハードルが高いと感じるかもしれません。

「『カウンセリングってどう相談すればいいのかわからない』という人もいるかもしれませんがうまく説明できなくても構いません。それを引き出すのがカウンセラーの仕事です」

相談の糸口は「最近モヤモヤしちゃって」「気分が上がりません」ぐらいの内容でいいそう。何となく感じていることを話せばいいのです。

「今回の相談者さんも糸が絡まっている状態だと思いますが、ひとりでほぐそうとしても余計に絡まってしまうこともあります。一緒に紐解いていくのがカウンセラーの役割です。

5本くらい絡まっていると思っていたけれど実際には1本なこともあるし、『今後絡まらないためにこうしていきましょう』というアドバイスもできるかもしれないので、気軽にハードルを下げてカウンセリングを受けられるようになればいいなと思います」

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あなたの人生はつまらなくない

「ストレスは毎日蓄積されて続けると、ストレスを受けていることすら分からなくなってしまうこともあります。ですが、自分の声は自分で聞こうとしないと聞こえません

他人の声は自然と聞こえるのでそちらばかり気にしたり、集中してしまったりすることで、自分の声をもう何年も聞いていないという人も多いかと思いますが、ぜひ自分の声を聞くために、3つのステップから始めてみてください。あなたの人生は決してつまらないものではありませんよ」

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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