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2022.06.01

子どもがイラッ。親が子に言いがちな「ずるい言葉」に隠された“裏側の意図”とは

中学生をすぎ、思春期や反抗期を迎えた我が子に、つい強い口調になってしまったり、決めつけ、押し付けのような言い方になってしまったりして、親子関係がぎくしゃくするというご家庭も多いのではないでしょうか。
今回は、『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』の著者、森山至貴さんに、ずるい言葉とは何か、親子間で使われがちな、ずるい言葉についてお聞きしました。

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「ずるい言葉」って何?

もともとは、普段私が教えている大学の学生たちに、『他人に言われて嫌だった言葉』を聞き、それらはなぜ言われて嫌だったのだろうか、というところからスタートしたんです。

それらには、言われてイラッとしたりモヤモヤしたりするのに、とっさに相手に言い返せない内容という共通点がありました。本書ではそういった言葉を集め、『ずるい言葉』と呼ぶことにしました。

学生から話を聞いているうちに、この『ずるい言葉』には、次の二つの共通点があることに気づきました。

  1. その発言を受け入れざるを得ないが、結果としてこちらが不利益を被ってしまう。また、その発言の背後には違う思惑がある(裏側がある)
  2. その言葉の裏側の意図になんとなく気づいても、言われた側が瞬間的に言い返せないような内容である(パッと聞いた感じは、自分のことを思ってくれているような内容だったりもする)

ここで言う『違う思惑、裏側の意図』というのは、悪意、もしくは善意だけれど、それが勘違いに基づいている、ということが多いと考えています。

なぜこういう言葉を『ずるい言葉』と呼ぶかというと、その言葉を言われた側は何がどう嫌なのかをとっさに表現できないし、仮に表現できたとして相手にはっきり『嫌だ』と言うと『相手のせっかくの気持ちを無下にした』ことになりかねないからです。

どちらに転んでも言われた側にとってよくない状態になる言葉って、ずるいですよね。

ここまでお話しした『ずるい言葉』は、親子間で使われることも少なくないと思います。次に、本書でも紹介している具体的なフレーズや単語を挙げて、それがなぜずるいのかを見ていきたいと思います」

親子間で使われる「ずるい言葉」

「あなたのためを思って言っているんだよ」

「受け取り側がこの言葉をずるいと感じるのは、一言で言えば『それは私のためになっていない』と感じるからです。

子どもですから、見通しが甘かったり判断が軽率だったりする場合ももちろんあります。そのときにしっかりと正すことは重要だと思います。

しかし、納得できる説明や言葉もなく、ただ『あなたのため』とだけ言われて考えを押し付けられると、言われた側は『自分の言い分を聞き入れてもらえず、無理矢理それにフタをされてしまった』という気持ちになってしまうのです。

誤解がないように言うと、『あなた(子ども)のためを思っている』こと自体を否定するわけではありませんし、子どももそれ自体が嫌なのではないと思います。『あなたのことを思って言うけど、◯◯するべきだ』の、〇〇の部分の納得できる理由や説明がなく、ただ押し付けられる形が受け入れがたいのです。

〇〇の説明の部分がないと、子どもは自分の言い分を通そうとして『あなたのためを思っている』という部分こそ否定しなくてはいけなくなってしまい、結果的に『本当は私のことなんて思っていないくせに!』と、子どもが親に対して敵意を持つこともあるわけです。

これを避けるためには、親子間であっても相手を尊重して説明をすることが重要ですし、『あなたを思っているかどうか』ではなく、内容の部分について話し合えるようにすることが大切だと思います」

「普通は〜だよ」

「『普通は』という言葉を言われると、多くの人が『私という個性や人格を持っている個人を尊重していないのではないか』と感じると思います。これは大人も子ども関係なくそうではないでしょうか。

実際、この言葉が使われる場面のほとんどでは、相手を個人として尊重していないことが多いです。つまり、『普通は』という言葉が、人それぞれの気持ちや好きなもの、考えがあるということを全く考慮しない、という宣言になってしまっているのです。

また、『普通は』という言葉の最も『ずるい』ところは、個人の考えを否定したり無視したりしているのは親ではなく『具体的ではない誰か』なっている部分にあります。『普通はみんなそうしているんだから』と、誰か分からない『みんな』に意見を言いくるめられているような形になるのです。厳しい言葉で言えば、発言した側が『責任逃れ』をしていることになるんですね。

そんなふうに世の中の『普通』を押し付ける一方で、『うちはうち、よそはよそ』なんて言っていたら、いよいよ一貫性がなくなってしまいます。

しつけや教育を全て論理的に説明するのは現実的ではないかもしれませんが、こういったダブルスタンダードになってしまうのは、子どもが不信感を持つ大きな要因になることを忘れないようにしたいですね」

親子で「ずるい言葉」について考えるには?

この本の内容を、親子間で話題にするのは少し難しいかもしれませんね。

でも、あえて言うとすれば、この本を読んでいる親の姿を子どもに見せることには、意味があるのかなと思います。同じ目線で、言葉について考えているよ、ということが伝わりますよね。

あとは、ご家庭の本棚に置いておき、お子さん自身も身近にある「ずるい言葉」について考えてもらえれば良いのかなと思います。この本は、友人間や教師と子どもの間で交わされる言葉を使用例とあわせて載せているので、共感したり「この言葉って……」と思い当たったりする具体的な経験もあるかもしれません。

なぜ親は「ずるい言葉」を使ってしまうのか? 

本書を読んで『ずるい言葉』を知ることは、親自身を守ることにもつながると思います。

親が子どもに『ずるい言葉』を使ってしまうのは『失敗させてはいけない』『間違った選択をさせてはいけない』と思うからこそではないでしょうか。そんな親心があるからこそ、子どもの失敗を防げなかったときに『親である自分のせいだ』と思って自分自身を責めてしまい、さらに『ずるい言葉』を言ってしまうこともあるかもしれません。

こうなると、個人としての子どもをますます尊重できなくなる、自分のことも追い込んでしまうという悪循環が生まれてしまい、健全な親子関係でなくなる恐れすらあります。

『ずるい言葉』の正体を知り、互いに違う人間であることを尊重しつつ『あなたはそう思っているんだね。私はこう思っているよ』ということをしっかり伝えるのは、親子であっても適切な距離感を保つことにつながります。それが親自身の精神的な余裕を生むのではないでしょうか」

本書はもともと、若い世代の日常のモヤッとした気持ちを明らかにするために書かれたものであり「家庭での教育に使ってはいけない、もしくは使われるべき言葉」が紹介されているわけではありません。

しかし、親子間でありがちな『ずるい言葉』のずるい理由や、それがもたらす影響を考えることは、大人になりつつある子どもとよい関係を気付く上で大きな意味があるのではないでしょうか。

「親が子どもを管理する親子関係」から、「互いに尊重し合う親子関係」を築くヒントとして、読んでみるのもいいかもしれません。

お話を聞いたのは…

早稲田大学文化構想学部准教授 森山至貴さん

専門は、社会学、クィア・スタディーズ。本記事で紹介した『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』(WAVE出版)のほかにも、『「ゲイコミュニティ」の社会学』(勁草書房)、『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書)などがある。

<参考資料>

「10代から知っておきたい あなたを閉じ込める『ずるい言葉』」(WAVE出版)森山至貴

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