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2022.11.21

情緒障害とは?特徴や支援、学校生活や人間関係について専門家が解説

就学時検診や小学校への入学のタイミングで初めて聞くことも多い「情緒障害」。「障害」と聞くと「病気なの?」と不安になってしまいますが、どのように使われる言葉なのでしょうか。公認心理師の川下耕平さんが分かりやすく解説します。

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執筆協力

川下耕平さん学習支援塾すたでぃあ主宰

大学・大学院で、心理学や特別支援教育について学び、発達障害・不登校専門の高等専修学校、公立中学校(特別支援学級)、都立特別支援学校の勤務後、発達障害や不登校、学習が苦手な子を対象とした「学習支援塾すたでぃあ(stadia)」を設立。子ども達の自分なりの学びをサポートしている。

情緒障害の定義や原因とは

文部科学省では情緒障害を下記のように定義しています。

情緒障害とは,状況に合わない感情・気分が持続し,不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し,学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう

文部科学省ホームページより

ですが、国立特別支援教育総合研究所によると下記のように定義されています。

『情緒障害』は教育をはじめ心理学、医学、行政等の多くの分野で使用される用語である。しかし、その厳密で普遍性のある定義はなく、その意味するところは発達障害等の障害概念の変化に伴に変わってきている。

国立特別支援教育総合研究所「発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究

つまり「情緒障害」と言っても立場によって定義が分かれており、明確な定義づけをすることが困難であることが考えられます。

そこで、少し平たく考えてみましょう。

そもそも「情緒」とは何でしょうか。情緒とは、一般的に気持ち、感情を指します。私たちは情緒と共に日々の生活を営み、行動の中にも嬉しさ、楽しさ、悲しさ、寂しさ…など、言葉にできないさまざまな思いや気持ちの揺れ動きがあるものです。

このいわゆる情緒に障害があるとは、“情緒的なものが何らかの不適応、問題行動などを引き起こすこと”と考えられるでしょう。

「なぜ、情緒の問題が生じるか」ということについてはさまざまな原因が考えられますが、一つの例としては、いじめや虐待などによる心理的な傷つきによるものがあるでしょう。しかし、例えば、親子関係に何らかの課題があるから情緒障害になったとは一概にいえません。

情緒障害は、明確に説明しにくいところが特徴でもあるからです。

情緒障害と発達障害の違い

情緒”障害”といわれると、発達障害の一種なのかと思う人もいるかもしれません。

この疑問に対し、情緒障害とは何かを考えていく上で自閉症教育の歴史をまず紐解いていく必要があります。

1969年に東京都杉並区堀之内小学校に情緒障害特殊学級(当時は特別支援学級ではなく、特殊学級という名前でした)が開設されます。この情緒障害特殊学級の対象には自閉症の子ども達も含まれることになりました。当時、自閉症(現在は自閉症スペクトラム障害)は、「保護者の養育態度、環境が原因である」といわれていたことも含めて、自閉症の子と情緒障害といわれていた子の線引きが曖昧であったことがいえるでしょう。当時の自閉症の原因や概念が明確でなかったことが考えられます。

しかし、時代が流れるにつれ、「自閉症は脳の特性である」という考えに改まっていきました。その過程の中で、脳に何らかの特性があると考えられる場合を自閉症などとし、それ以外の心理的な側面が要因として考えられるものを情緒障害と捉えるようになりました。

そして、2009年には「情緒障害特殊学級」を自閉症・情緒障害と分け、「自閉症・情緒障害特別支援学級」として名称が変更されることになりました。  

上記の時代の流れを経て、自閉症も含まれる発達障害と情緒障害の概念の違いが生じ、現在の「情緒障害」という言葉があります。ただし、発達障害によって情緒の障害が併発することもあり、そのような場合を一般的に二次障害と呼びます。

この二次障害は 2 つに大別され、その症状が内面、自己に向く、内在化障害と外面、他者に向く外在化障害に分けられます。

  • 内在化障害とは
  • うつ病、適応障害、不安障害、強迫性障害、心身症、不登校などがあります。
  • 外在化障害とは
  • 反抗挑戦性障害、行為障害、暴力・暴言、非行などがあります。

情緒障害は受診をすべきか

情緒障害=発達障害ではないですが、情緒障害を指摘された子の中には発達障害を併存しているケースがあります。「発達障害なのかもしれない」と不安であれば医療機関や発達障害者支援センターなどに相談するとよいでしょう。

また、不安定な社会状況が続く近年は、家庭の生活基盤自体が不安定な場合もあります。医療だけでなく、福祉の力も借りることが重要です。「受診する」「病院へ行く」という一方向ではなく、さまざまなところからの支援を受けられるように積極的に相談する勇気も必要です。

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情緒障害の症状、特徴とは

情緒障害の症状は、選択的かん黙、チックなどの症状が一般的になじみのあるものだと思います。また、人間関係を構築する上で何らかの課題がありそうな子も「情緒障害」といわれるケースがあります。

文部科学省は障害の状態として以下のものが挙げています。

  • 食事の問題(拒食、過食、異食など)
  • 睡眠の問題(不眠、不規則な睡眠習慣など)
  • 排せつの問題(夜尿、失禁など)
  • 性的問題(性への関心や対象の問題など)
  • 神経性習癖(チック、髪いじり、爪かみなど)
  • 対人関係の問題(引っ込み思案、孤立、不人気、いじめなど)
  • 学業不振
  • 不登校
  • 反社会的傾向(虚言癖、粗暴行為、攻撃傾向など)
  • 非行(怠学、窃盗、暴走行為など)
  • 情緒不安定(多動、興奮傾向、かんしゃく癖など)
  • 選択性かん黙
  • 無気力

上記を見ても分かるように症状・状態のどこまでが問題なのか、明確には分かりませんよね。まずは困った時には専門の医療機関で相談をし、その状態、症状を客観的に知ることから始めてみましょう。

他人から「情緒障害」といわれてしまうと、その言葉の印象ゆえ親はショックに感じるかもしれません。ですが、「情緒障害」と言われたから社会生活を送ることができないというわけではありません。適切な支援をしていけばその子が生きやすい状態になる可能性は十分にあります。

まずは、周囲がなぜその子が苦しんでいるのか、理解をしていくことが必要となります。「なぜ情緒障害と言われてしまったの?」と原因を探るのではなく、むしろ「これからどうすればいいのか」ということを念頭に子どもと向き合っていってください。

小学校の情緒障害児学級とは

「情緒障害」とされる場合に通う支援級は「自閉症・情緒障害特別支援学級」になります。

知的障害特別支援学級と比較されることが多いですが、下記のような点で違います。

知的障害特別支援学級

基本的に集団での生活レベルの支援が多く、自立した生活、学校卒業後の就労を目指すという指導の大枠があります。

自閉症・情緒障害特別支援学級

その子の特性に合わせた個別性をより重要視されます。少人数の中でその子が何に困難を感じているのかを考えた教育になり、具体的には、その子の学習状況にあった課題が設定され、学級での過ごし方も個別性の高いものになります。

その子の心理的な緊張を感じないような環境で教育が提供されることが多く、普通学級にはない自立活動の授業においても感情のコントロールやソーシャルスキルを伸ばすための学習が設定されるほか、心理的な部分への配慮として保護者への対応も手厚くなることでしょう。

普通級と比べたメリットとは

普通級は大人数で刺激も多くあり、心理的な緊張、ストレスを感じやすい子にとっては、決して「居心地が良い環境」と言えないのが現実です。むしろ、本人が苦しさを感じるものを除外し、心理的な安定を目指した「自閉症・情緒障害特別支援学級」のような環境がその子の成長を促すものになることでしょう。

自閉症・情緒障害特別支援学級に入れない場合の支援

地域によっては、希望していても「自閉症・情緒障害特別支援学級」に入ることができないケースもあるようです。その場合でも子どもにあった環境づくりや支援を考えることはできます。

放課後での支援

学校外においても、特別なニーズのある子のための放課後等デイサービスもあります。

学校での支援

仮に、自閉症・情緒障害特別支援学級に入れなくとも、通級指導教室で指導を受けるという選択肢があります。

また、スクールカウンセラーに相談し、学校生活のサポートをお願いすることもひとつの手です。

とはいえ、学校を取り巻く状況はそれぞれ違います。学校でその子にあった教育が受けられない場合は、民間のフリースクール、子ども家庭支援センター、児童相談所、児童心理治療施設等などの専門機関を活用してみてください。

自分と子どものことで周りがなかなか見えずに、つい悩みを抱え込んでしまい、「誰も助けがいない」と思ってしまいがちです。ですが、周囲というのは素直に助けを求めれば案外、あなた自身に関心を寄せ、助けてくれるものです。ぜひ、積極的に動いてみましょう。

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子育ての苦労を和らげるための方法

積極的に動くことは必要ですが、「親ひとりきりでがんばる」ということではありません。積極的に動く先には、下記のような場所があり、専門的な知識をもった人々が力になってくれるはずです。

  • 医療機関(心療内科・精神科)
  • 子ども家庭支援センター
  • 児童相談所
  • 児童心理治療施設等
  • 発達障害者支援センター
  • 保健センター
  • 教育センター
  • 民間の相談窓口・カウンセリング(「ウチのこは」など)

人間関係が複雑化し、生き方も多様になった現代の社会は、逆に言えば子育ての中で答えが見つかりにくい社会でもあります。家庭の在り様、親子関係、学校の教育も一括りではっきりするものではなくなってきました。だからこそ、はっきりと答えを出そうとせず、むしろ焦らず向き合っていくことが必要かもしれません。

「わが子の問題=自分の問題」と親は自分を責めてしまいがちです。ですが、あなたに必要なのは、自責の念で苦しむことではなく、気持ちを解いていく作業なのかもしれません。

一人で受け止めきれない時は誰かに荷物を半分持ってもらいましょう。相談をすることで解決の糸口が見えることもありますよ。

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川下耕平

川下耕平

大学・大学院で、心理学や特別支援教育について学び、発達障害・不登校専門の高等専修学校、公立中学校(特別支援学級)、都立特別支援学校の勤務後、発達障害や不登校、学習が苦手な子を対象とした「学習支援塾すたでぃあ(stadia)」を設立。子ども達の自分なりの学びをサポートしている。

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