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2022.06.10

勉強へのやる気が出ない中学生を変えるために親ができることを学習支援のプロに聞きました

定期テストの前になっても勉強へのやる気が出ない中学生のわが子。だらだらとスマホを見たり、ゲームをしたりする様子に「どうしたらやる気になってくれるの!」とヤキモキしますよね。勉強しない中学生のやる気を引き出すために親ができるサポートを不登校支援塾「ビーンズ」塾長の長澤啓さんが解説します。

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お話を伺ったのは…

長澤啓さん学習支援塾ビーンズ塾長

福岡県出身。東京大学経済学部卒。大学在学中より、不登校・勉強嫌い・無気力に悩む中学生・高校生のための塾、「学習支援塾ビーンズ」で講師を務める。現在は、自身の経験を活かし、毎月100件以上のやり取りを通じて保護者とのコミュニケーションに注力しているほか、塾長として講師の採用育成プランの策定から、受験対策の立案、経営企画などを行う。

勉強へのやる気が出ない5つの理由

日々の予習復習だけでなく、明らかに「勉強しなくちゃいけない」と分かっているテスト前でも勉強しない中学生のわが子。ましてや高校受験も迫ってくる中だと、保護者の不安は募りますよね。つい怒りたくなってしまいますが、勉強をしないのは、ただ怠けているわけではないそう。

学習支援塾「ビーンズ」の塾長・長澤啓さんは、中学生の子に勉強へのやる気が出ない理由を次のように話します。

【理由①】家庭が安心できる場所ではない

本来、家庭は子どもが社会の中でさまざまなことに挑戦し、削られた気力を回復させる場所です。家庭が絶対的に安心できる場になっていることで、子どもは学校など家庭の外の世界で『またチャレンジをしてみよう』『がんばってみよう』という気持ちになります

「例えば、両親から『なんで勉強しないんだ』『こんな成績で高校受験はどうするつもりなんだ』などと常に詰められていたり、家庭内の空気がギスギスしていたりすると勉強どころではありません。

親から正論を言われるほど、思春期の子どもは反発したくなります。言われたことを素直に行動に移せる子はわずかでしょう。むしろ家の居心地が悪くなり、安心できないために勉強から余計に遠のいてしまいます。

もちろん、わが子への愛ゆえにイライラしてしまうことは仕方ありません。無理のない範囲で少しずつ、子どもを見守れるようになるといいですね。『今日一日、勉強の不安を子どもへぶつけなかった。私、エラい!』くらいからスタートしてみましょう」

【理由②】青春経験が満たされていない

もうひとつ、勉強に向かうために必要なのが“青春経験ができているか”ということ。友達との遊びや部活などの青春をやりきった中学生ほど、受験で頑張れる・成功する傾向にあると長澤さんは話します。

長澤さんのいる学習支援塾「ビーンズ」では、青春経験とは、”同世代と楽しさや前向きなチャレンジ精神ベースで関わる経験”と定義し、2種類の青春経験があるとしています。

ゆるい青春経験

放課後、友達とだらだら過ごして、コンビニに寄り道して帰ったり、スマホでSNSやゲームをやり続けたり、大人からすると無気力、無目的に見えることもある。

熱い青春経験

同世代と一緒に試練を乗り越えたり、挑戦したりすること。例えば、何かの大会や発表などを目指して、部活などで仲間と一緒に汗を流しながら前向きに厳しい練習やトレーニングに励んだり、学園祭などのイベントの準備に一生懸命になったり、スポコン的な雰囲気の経験のこと。

特にゆるい青春経験は、大人からすると必要なことには思えないかもしれません。もちろん熱い青春経験があるに越したことはありませんが、誰もが打ち込めるような何かを学校生活の中で見つけられるわけではないですし、それでも貴重な10代の日々は過ぎていきます。そんな中、子ども達は大人になるために必死に“今”を楽しみ、青春経験を積もうとしているのかもしれません。

「ゆるくても熱くても青春経験を楽しんで、子ども達はようやく『あとは勉強だけだな。がんばろう』という気持ちになることができます。”だらだらしている”というと、何もしていないように感じるかもしれませんが、十分に青春を謳歌しているんです。『だらだらも飽きるまでさせないと次のステップにいけない』と思って見守ってあげてください」

【理由③】勉強への「~べき論」が強い

勉強嫌いの子をサポートしている「ビーンズ」には、『うちの子は本当に勉強へのやる気がなくて…』『あの子は勉強なんかしなくていいと思っているようで…』といった保護者からの相談が毎日のように舞い込んできます。

しかし、実際に子ども達と話すと「保護者に伝わっていないだけで勉強や偏差値にものすごくこだわっている中学生が多い」とのこと。

「保護者に対しては『勉強なんてしたくない』と言っている生徒でも、これまでずっと『勉強は大事だ』と言っている親の姿を見てきているので『勉強しない=ダメな人間』という価値観が刷り込まれています

そのため、保護者には言うことはできなくても、信頼関係が築ける大人ができると『世の中に出たとき、勉強ができていないと駄目なんじゃないか』『偏差値が高い全日制高校に行かないと落ちこぼれになるんじゃないか』『大学に行けなかったら、大企業の社員にはなれず、そのままホームレスになるんじゃないか』という、大人からすると『えっ?』と思うような保守的な進路観を話し出します」

そんな子どもたちにとって、結果次第でダメ人間認定をされてしまう気がするテストや受験は、とても怖いものなのかもしれません。

「『不安なら今すぐ勉強をすればいいじゃないか』と思うかもしれませんが、失敗のリスクが高いので怖くて立ち向かえないんですよね。そこにさらに保護者が『なんで勉強しないの』『このままじゃどこの高校にも行けないよ』とプレッシャーをかけると、恐怖心が増えていくばかりで勉強に立ち向かう余裕もやる気も無くなっていきます」

【理由④】勉強した先の明るい未来を信じることができない

今、世の中には子ども達が未来に希望をもてなくなるようなニュースが溢れています。果たして、未来の世界に希望を持てない子ども達は、“将来”のために勉強しようと思えるのでしょうか。

「今の中学生たちは、社会や自分の将来に対して恐怖と不安を抱いています。『勉強して大企業に入ってもこき使われてボロボロになるだけ』という将来像では勉強をする気にはなれません。基本的に子どもたちは恐怖や不安を原動力にして勉強を頑張ったり、進路を考えることはできないのです」

【理由⑤】実は外でがんばっている

保護者は子どものことをすべて知っているような気がするかもしれませんが、果たしてそうなのでしょうか?

「受験生の子が家に帰ってきてスマホやゲームをしているのを見て、親御さんは『勉強を全然しない』『受験が近いのに!』と思うかもしれませんが、外ではすごくがんばっているかもしれませんよ。

例えば、受験直前になると、塾では勉強をすごくがんばっていて、不安を抱えながらギリギリまで自分を追い込んでいる子って、不安でがんばっているからこそ家に帰るとダラダラするんですよね。でも、そこで保護者が『なんで受験が近づいているのに勉強しないの!』と詰めてしまうと、子どもの心が折れてしまうことがあります。

受験期の子がスマホやゲームをしていたら、ガミガミ言いたくなるのはわかります。ですが、そこで頑張れる中学生は皆無です。効果がないどころか、最悪、追い込まれた子どもが家庭内暴力を起こす可能性すらありますから、グッとこらえてください」

勉強にやる気が出ない中学生がスマホをさわっている写真

中学生が勉強にやる気が出る3つの親のサポート

上記の5つの理由を踏まえて、保護者ができることはあるのでしょうか? 

【サポート①】家庭内の会話を増やす

家庭を絶対に安心できる場にするためにも、親子の会話量は多い方がいいそうです。ただし、ポイントは子どもに会話のキャッチボールを求めないこと

「子どもは保護者の話を聞いてないふりをしていても全部聞いています。ひとりごとのように親がべらべら話し、子どもが食いついてきたら深堀りをしてあげれば十分です。さらに、会話の中で子どもの視野を広げて、保守的な学歴観や過度にネガティブな将来像を変えて、気持ちを楽にしてあげられたらいいですね」

では、どんなことを話せばいいのでしょうか

【会話ネタ①】親自身の楽しい、うれしい話をする

「中学生は、身近に迫った将来の話をされると身構えてしまいます。そのため、保護者の仕事の話など、子どもにとっては他人事で遠い将来の話をしましょう。

話すのは、仕事でうれしかった話や楽しかった話にしてください。例えば『プロジェクトがうまくいってうれしいんだよね』『打ち上げで飲んだビールがキンキンに冷えてておいしかったんだよな』というようなことを話せばいいんです。

『意外と将来にも楽しいことがあるんだな』と明るい将来像を子どもの深層心理に刷り込んでいくことで、子どもが進路を考え、勉強をしてくれる可能性も高まります」

【会話ネタ②】ニュースの感想を言う

一緒にテレビを見ているときに感想を言うのもよいそうです。

「ニュースの事柄は、多くの子どもたちにとっては他人事なので、気軽に思っていることを口に出しやすいんですよね。『そうか』とあいづちを打つなどして話に乗ってあげてください」

また、子どもがもし勉強をしようと思ってテキストを開いても言葉の意味、文章の意味が分からなかったらモチベーションをキープするのは難しいかもしれません。ですが、対策として国語力を養うためにもニュースを見ながらの会話が役立つことがあるそうです。

「子どもの国語力の無さにはいろいろな原因がありますが、1つが語彙力です。日々の会話の中で子どもの中に”言葉に対するイメージ”を増やしていければいいんですが、日常の会話の中で使われる言葉って限られますよね。その点、ニュースにはさまざまな言葉が出てきます。

例えば、ニュースでコンテナ船が出入りしている映像、閣僚会議をしている映像が出て、『貿易に関して…』という話が出ると、子どもの中で『あれが貿易か』という感じで、言葉とイメージが紐づいていきます。そこに親子の会話で関連する話題もできればさらに言葉とイメージを紐づけていくことができます」

【サポート②】話を聞かない子どもを追いかけない

本人のためを思って話しているのに、子どもが反抗的な態度を取ったり、話を聞こうとしなかったりすると、聞いてくれるまで話し続けたくなりますが…。

「例えば、子どもが話の途中でその場を離れたり、イヤホンを付けて話を聞かないような態度を取ったりしたら、それは子どもが心のシャッターを降ろしたサインです。そこで追い打ちをかけたり、イヤホンを取ったりしてシャッターをこじ開けたら、子どもの逃げ場がなくなり身を守るために攻撃的な態度を取るしかなくなります。心配は募ると思いますが、一旦撤退しましょう」

【サポート③】完璧な子育てを目指さない

子どもが勉強しないことに悩む保護者の中には、保護者自らががんばり過ぎていたり、完璧を求めすぎている場合があります。

「子どもにとって絶対正解の接し方や言葉がけというのはないかもしれません。ですが、保護者がニコニコしているほうが、子どもは家庭で安心できますし、家庭で安心できると、進路を考え、勉強へ向かうエネルギーを蓄えることができます

今は、いくら成績が悪くても進学できる高校はあり、その後の進路も子どもの気持ち次第でさまざまな道があります。保護者が「それなりの高校に進学させないと子どもの将来が閉ざされる」と自分を追い込む必要はありません。”高校受験まで”という期限で子どもの将来を考える必要はないのかもしれません。

「学校や塾など勉強を教えるプロはいますが、子どもの心身の健康を見て、守れるのは保護者しかいません。まずは、子どもが健康で安心して過ごせるように、保護者が少しだけ、子どもとの関係で”力を抜いて”接することを試してみてください。すぐには無理かもしれませんが、ご家庭での子どもの様子が変化していきますよ」

浜田彩

浜田彩

ソクラテスのたまご編集部のメンバー。環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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