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2022.02.22

子どもの感覚過敏をセルフチェック、特徴や正しい対応を知って親も子も生きやすく

音や光、匂いに敏感だったり、服の着心地にこだわりが強かったり、周囲の子に比べて生きづらさを感じていそう。思い当たる場合、感覚過敏なのかもしれません。発達支援に携わる東美香さんが、セルフチェックできる感覚過敏の代表的な特徴や対処法をアドバイス。毎日のモヤモヤが変わっていくかもしれませんよ!

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感覚過敏とは?考えられる原因

忙しいときや心に余裕がないとき、子どものこだわりの強さや不満の声にイライラしてしまうことってありますよね。もし、その原因が感覚過敏にあるなら、正しい知識をもつことで親も子も少しラクになるかもしれません。

感覚過敏とは、五感(聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚)から受け取る刺激を過剰に強く感じてしまう状態のことを指します。刺激の受け取り方や感じ方、度合いは、個人差があり、そのときの体調や気候によっても変わります。

感覚過敏は病気ではなく、ある刺激に対して敏感であるという先天的な気質です。治療をするのではなく、周りが子どもの特性を理解して、環境や対応を適切に調整していくことで、本人の苦しさは軽減していくことができます

感覚過敏は育て方のせいではない

また、感覚過敏の子どもは、”苦手なもの・こと”がどうしても多くなってしまいます。そのため、周りからは「わがまま」「甘やかしたせいだ」などと言われてしまうこともあるかもしれません。

しかし、感覚過敏の子どもの気質を先天的なものあることが多く、育て方で改善できることではありません。決して親の育て方のせいではないので、自分を責めるようなことはしないでくださいね。

感覚過敏の原因は発達障害?

感覚過敏の原因のひとつとして考えられるのが発達障害です。自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害を持つ人は、脳などの感覚処理機能の特性によって、聴覚や視覚、触覚をはじめとした感覚が過敏であることが少なくありません。

しかし、感覚過敏の傾向があるからといって、必ずしも発達障害であるとは限りません。学校での学習や人間関係といった心理的なストレスにより、気分が不安定になったり不安が強くなったりすることで感覚処理にも影響を与えることもあります。

<聴覚過敏についてはこちらの記事でも解説しています>

聴覚優位タイプとは?見るより聞くほうが理解しやすい子の勉強方法を専門家が解説
聴覚優位タイプとは?見るより聞くほうが理解しやすい子の勉強方法を専門家が解説
見ることよりも聞くことのほうが理解しやすく、記憶しやすい特性をもつ聴覚優位タイプの子どもたち。平均的な能力をもつ子どもに合わせた学校の授業の場合、特性とうまくか.....

記事を執筆したのは

東美香さん

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行ってきた。現在は、ブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

感覚過敏チェックリスト

では、次に代表的な感覚過敏を紹介していきましょう。代表的な言動や特徴をチェックリストにしたので、「もしかしたら、うちの子もそうかも…」と思う人は、セルフチェックしてみてくださいね。

聴覚過敏

日常生活の中の何でもない音が過度に大きく聞こえたり、耳に響いたりして、強い苦痛や不快感を感じる症状のことをいいます。

聴覚過敏チェックリスト

  • たくさんの音がする場所を嫌がる
  • 大きな音でなくても耳ふさぎをする
  • ドライヤーや掃除機などの機械音を嫌がる
  • 時計の秒針の音を気にし過ぎる
  • 赤ちゃんの声や甲高い声を嫌がる
  • 突然の音に過剰に驚く
  • 騒がしい場所に行った後に体調不良を訴える
  • 食器と食器が触れる音を嫌がる

嗅覚過敏

洗剤や食事の匂いなど、生活の中にある匂いに反応し、苦痛や不快感を感じることをいいます。人によっては、吐き気や頭痛など、体調に影響を及ぼすこともあります。

嗅覚過敏チェックリスト

  • 洗剤や漂白剤などの匂いを嫌がる
  • 特定のものの匂いを嗅ぐと体調を崩す
  • 周りの人が気づかないくらいの匂いに気づく
  • 普段と違う匂いに敏感に反応する
  • 電車やバスなどの乗り物に乗りたがらない
  • 匂いを何でも確認する
  • 偏食である
  • 集団や人混みを嫌がる

視覚過敏

太陽の光やテレビなど、目から入ってくる刺激に過剰に反応してしまう状態をいいます。目に入る情報量が多い場や状況で、苦痛を感じたり、逆に過剰に見続けたりします。

視覚過敏チェックリスト

  • 太陽の光を過剰に眩しがる
  • 蛍光灯を過剰に眩しがる
  • TVやパソコンの画面を見たがらない
  • 白い紙に書いてある文字を読みにくそうにしている
  • 色の組み合わせで苦手なものがある
  • 人混みが苦手
  • 回転しているものを見続ける
  • 電車やバスなどの乗り物に乗りたがらない

触覚過敏

特定の物の触り心地を嫌がったり、逆に好んだりするなど、触覚に過剰に反応する状態のことをいいます。何かが身体に触れることにも敏感に反応します。

触覚過敏チェックリスト

  • 身につける洋服に過剰にこだわる
  • いつも同じ服を着たがる
  • 決まった素材のものしか着ない
  • 洋服のタグを過剰に嫌がる
  • 手に砂や泥、水がつくのを嫌がる
  • マスクを着けられない
  • 靴下を履きたがらない
  • 手をつなぎたがらない
  • 急に触れると過剰に驚く

味覚過敏

特定の食材、食感のものしか口に入れられない、味が混ざると食べられないなど、口の中が過剰に敏感な状態のことを指します。

味覚過敏チェックリスト

  • 同じ物しか口に入れない
  • 特定の食感を嫌がる
  • 揚げ物や魚など、特定の食べ物を嫌がる
  • 偏食がある
  • 特定のものを食べると吐いてしまう
  • 濃い味付けを嫌がる
  • カレーやシチューを食べたがらない
  • 味や食感が混ざるのが苦手

症状や特徴はすべてが当てはまるというわけではなく、強度も人によって違います。ただ、当てはまる項目があった場合、「子ども自身もどうしようもなくて苦しんでいるのかもしれないな」と思って接してみてあげてください。

感覚過敏を改善するために観察を

子どもの行動には必ず原因があります。「どうしてこの音を嫌がるんだろう?」「どうして人が多いところに行くと、体調を崩すんだろう?」などの子どもの態度が気になったら、まずは子どもの行動・様子をよく観察し、メモをしてみてください。

子どもの観察用メモシート

日時場所・状況子どもの様子・状態
例)1/13ショッピングモールに行く帰宅後、吐き気を訴える

上記の表はあくまで一例で、書き方はどんな風でも構いません。スマホにメモをするのも便利ですよね。

ただし、メモを取るときに大事したいことは、「どのような状況のときに」「どのような様子・状態になったか」という視点です。自身の気持ちなどの情報は加えずに事実のみを書いてください。

観察やメモを続けると、子どもが「どのような状況が苦手なのか」「結果、どのような状態になるのか」が分かるようになり、適切な対応を知る手がかりになります。

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鈍感すぎる(鈍麻)場合もある

ここまで感覚”過敏”の話をしてきましたが、感覚への刺激は、「過敏ではなく、鈍感すぎる(鈍麻)」という場合もあります。過敏な反応の方が表に出やすいので、”鈍感さ”には気づきにくい面がありますが、感覚が鈍感すぎて困ることがあります。

感覚が鈍感すぎる場合は、以下のような様子が見られるかもしれません。

  • ハサミや包丁で指を切っても気づかない
  • 熱いお湯がかかってもやけどするまで気づかない
  • 怪我をしても気づかない
  • 刺激がほしくて、身体や頭を叩いてしまう

上記のように、感覚鈍麻の場合は、痛みを感じにくかったり、刺激不足を感じてしまったりします。暑さや寒さも感じにくい一面があるので、周りが理解して環境調整をすることが大変重要です。

感覚過敏の子にNGな対応とは

感覚過敏は、ガマンすることで刺激に慣れていくようなものではありません。”苦手なもの・こと”を我慢させたり、慣れさせようとしたりする対応は、プラスにはならないのです。

また、無理強いすることもNGです。“苦手なもの・こと”を無理にさせたり、無理に関わらせることは、苦痛以外のなにものでもありません

感覚過敏の子に対して、我慢させる・慣れさせる・無理強いすることは、NGだと覚えておいてくださいね。

感覚過敏の子のために親ができること

では、苦痛を感じているわが子にできることはないのでしょうか。

感覚過敏自体を改善することはできませんが、嫌な刺激を取り除く・減らす、別の刺激に変えるといった対処をして、適切な環境調整ができると、子どもは落ち着いて生活していけますよ。

家庭でできることや、学校に対応してもらいやすい配慮、お願いの仕方を紹介していきます。

聴覚過敏への対応

聴覚過敏の子どもへの対応として代表的なのはイヤーマフです。

苦手な音がする場所、場面などでイヤーマフを着けることで、不快な音を軽減することができ、落ち着いて生活しやすくなります。

学校へお願いするときは…

学校での使用を伝える際に、子どもが「どんな音が苦手なのか」「どんなふうに不快なのか」「どのような場面で使用させたいのか」など、具体的な症状や使用シーンを学校に伝えた上で配慮をお願いしましょう。

嗅覚過敏への対応

嗅覚過敏の子どもへの対応は、以下のようになります。

  • 苦手な匂いの洗剤類を使用しない
  • 外出時はマスクを使用する
  • 匂いを確認してから、購入・使用する
  • 好きな匂いのするものを持ち歩く

苦手な匂いをシャットアウトするために一番効果的なアイテムはマスクです。100%とは言えませんが、不快な匂いを軽減できます。

学校へお願いするときは…

「どんな匂いが苦手なのか」「家庭でどんな対応しているのか」「学校でどんなふうに対応してもらいたいか」を伝え、配慮をお願いしましょう。
最近は、香りの強い柔軟剤を使う家庭も多く、つらいと思いますが、保護者同士で直接配慮をお願いをしようとするとトラブルになる可能性もあるので注意しましょう。

視覚過敏への対応

視覚過敏の子どもへの対応は、その過敏さが出る状況で対応が違います。

  • 外で過剰に眩しさを感じる場合
    (対応例)サングラスや偏光レンズメガネをかける
  • パソコン、スマートフォンを見ると不快を感じる場合
    (対応例)ブルーライトカットフィルムを貼る・カラーフィルターを設定する
  • 白い紙に書いてある文字が読めない場合
    (対応例)パソコン用メガネをかける、色のついたノートを使用する、色付きの透明下敷きを重ねる
  • 人混みや公共交通機関で体調不良になる場合
    (対応例)こまめな休息をとる、乗り物に乗っているときは目を閉じる

学校へお願いするときは…

「不快感を感じる場面・状況」と「そのときにお願いしたい対応」を伝えましょう。色のついたノートなど必要なアイテムは、子どもにとって好ましい色のものを家庭で準備するほうがスムーズです。

味覚過敏への対応

味覚過敏の子どもへの対応は、以下になります。

  • 本人が食べられる食感、味付けにする
  • 給食をお弁当に変更してもらう
  • 給食は、食べられるものを食べる
  • 周囲の理解を得ておく
  • 成長とともに食べられるものは変わっていくことを知る

味覚過敏の子どもにとって一番の苦痛は、苦手なものを無理に食べさせられることです。中には、コロッケなどの揚げ物を食べると「痛い」と感じることもあるようです。

「痛いものを無理に食べさせられる」なんて苦痛ですよね。成長とともに食べられるものが変わっていくこともありますので、長い目で見守ってあげたいですね。

学校へお願いするときは…

給食で対応をしてもらう際には、「どんなものを食べるとどんなふうに苦痛なのか」「苦手なものを無理に食べさせないでほしいこと」を伝えて配慮をしてもらいましょう。

触覚過敏への対応

触覚過敏の子どもへの対応は以下のようになります。

  • 苦手な服は無理して着ない、着させない
  • 気に入ったさわり心地のものを触る時間を作る
  • 周りの人に「急に触れないで」と伝えておく
  • 周囲の理解を得ておく

身につけるもので苦手な素材があれば、可能な限り避け、身につけても大丈夫な素材を探しましょう。苦手な刺激を減らし、別の刺激に変えてあげることが大切です。

マスクが着用できない場合は、フェイスシールドにしたり、ゴムが耳にかからないタイプのマスクにしたり、マスクが着けられないことを示すシールやバッチなどを着けるなどの対応があります。

学校へお願いするときは…

「どんな素材が着用できないのか」「どんな風に感じるのか」「どんな対応をしてほしいのか」などを伝え、理解を得られるようにしていきたいですね。

感覚過敏の悩みについての相談先

感覚過敏のため日常生活で困りごとが多く、家庭や学校だけでは対応が難しい場合は、医師や臨時心理士等、発達の専門家に相談し、子ども・親の不安感を軽減することが大切です。

主な相談先は以下のとおりです。

  • 小児科
  • 子育て支援センター
  • 発達相談センター
  • 児童発達支援センター
  • 子ども家庭支援センター
  • 保健所・保健センター

専門家に相談し、より良い対応方法を知ったり、必要な機関につないでもらったりすることで、不安感が軽減されていくかもしれません。

この記事を書いた東美香さんに相談してみませんか?

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ここまで、具体的な対応例を紹介してきましたが、感覚過敏の子どもへの対応で一番効果があるのは全面的に味方になってあげることです。わが子の”苦手なもの・こと”を知り、受け入れ、寄り添ってあげることが、子どもの苦痛を大きく和らげるはずです。

子どもは成長します。周りに寄り添ってくれる人がいた場合、苦手なもの・ことも、成長に伴って子どもなりに受け入れていくことでしょう。そして、次第に子ども自身が不快感を減らす方法も見つけていけるようになると思います。

子どもに寄り添い、味方になり、健やかな成長をサポートしてあげたいですね。

<参考資料>

感覚過敏の神経生理過程が明かす自閉スペクトラム症者の感覚経験/井手正和、国立障害者リハビリテーションセンター研究所

発達障害児者の感覚の問題に対する評価と支援の有用性の調査/厚生労働省

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東美香

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。 繊細で気難しい息子(6歳)の母。 教員時代は、「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行う。また、息子が繊細で気難しいことで、“子育てにおける困り感”・“お母さんの心のモヤモヤ”をたくさん経験。 「特別支援教育と息子の育児で得た学びを“今”困っているお母さん・お父さんに伝えていきたい。」、「お子さん・お母さん・お父さんの困り感を減らしたい。」の思いでブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

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