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2022.02.15

離婚のストレスが与える子どもへの影響は?子育て専門の公認心理師が解説します

子どものいる夫婦が離婚する場合、まず悩むのは子どもへの影響ではないでしょうか。子どもが深く傷つくのであれば、離婚すべきではない? けれど、自分(母親)がずっと我慢して暮らすのも正解とは思えません。ソクたまに寄せられたのは、6歳と8歳の子をもつ離婚検討中の母親からの悩み。両親の離婚により生じる心の揺れとそのフォローの仕方を、公認心理師・佐藤めぐみさんに解説してもらいます。

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教えてくれたのは…

佐藤めぐみさん

公認心理師、オランダ心理学会認定心理士。欧米の大学・大学院で心理学を学び、「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は公認心理師として、育児相談室・ポジカフェでの心理カウンセリング、ポジティブ育児研究所での子育て心理学講座、メディアや企業への執筆活動などを通じ、ママをサポートする活動を行う。アメリカ在住。中学生の娘の母親として子育てにも奮闘中。

離婚による子どもへの影響で最も考えるべきは「アタッチメント」

両親の離婚が子どもに与える影響として一番に考えるべきは「アタッチメント」。子どもの人生に最も影響を与える要素と言ってもいいほど重要なものです。

今回お話しする内容の一番のポイントとなるものなので、まずはアタッチメントについて解説しましょう。

アタッチメントとは…

子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子どもは社会的、心理学的な問題を抱えるようになる

という、イギリスの児童精神科医・ボウルビィ博士が提唱した理念。

分かりやすく言うと、「健全な発達のためには、子どもは親からの愛情を確信する必要がある」ということです。

アタッチメントは特に乳児期において重要であり、子どもの心の土台となるもの。乳児期に得たアタッチメントが人間関係の在り方やその子の自己肯定感などの重要な要素に大きく影響を及ぼしていくという点も覚えておきたいところです。

私がカウンセリングをする中でも、親子の親密な関係の不足や脱線が原因となり、子どもに何らかの問題が生じているケースは多くあります。そして、アタッチメントを強化することで問題が解決するというケースも非常に多く見受けられます。

子どもには、それぞれ「お母さんじゃなきゃ嫌だ」「パパ、抱っこして」など親にしか示さない愛着があるものです。そのこだわりの部分が離婚前後でどのように変化するのか。離婚前と離婚後のアタッチメントの状態ではどちらが良くなるのかを検討することが、“子どもへの影響”を考える際のポイントになります。

そして、アタッチメントを基盤に考えると、親の離婚で子どもが感じるストレスは自ずと見えてくるはずです。

親の離婚で感じる子どものストレスとは

6歳と8歳というとある程度は自立してきているものの、まだまだ親に甘えたい気持ちのある年齢でもありますね。

離婚に踏み切れない原因の一つが子どもを思う気持ちであるならば、子どもがどのようなストレスを抱える可能性があるのかを考えてみましょう。

愛情が減ってしまう感覚

両親が離婚をすると、片親とは毎日接することがなくなります。それにより、子どもが感じやすいのが“得られる愛情が減ってしまった”という感覚です。母親のアタッチメントは担保できても、父親のアタッチメントは減ってしまうと感じる可能性があるのです。

「離婚はするけど、お父さんは〇〇ちゃんが大好きだからね」など、子どもへの愛情が変わることはないと伝えても、子どもは「じゃあ、なんで一緒に住まないの?」という疑問を抱いてしまうことが多いようです。

安心感の喪失・不安

もし、離婚により引っ越しが伴う場合、“おうち”から得ていた安心感の喪失、新たな居場所を見つけるまでの不安は否めません。

場所の変化だけではなく、

「おうちに帰っても、お父さんがいない」
「夕飯のときに、お父さんがいない」
「いつもは3人だったのに、2人になった」

といった、子どもが得ていたであろう空気や雰囲気の変化もこれに当てはまります。

また、今まで想像もしていなかったであろう“親がいなくなる”という経験により「お母さんもいなくなってしまうかも」という不安が強くなることもあるでしょう。

環境の変化により生じる戸惑い

小学校低学年くらいの子どもは、他者から見た自分というものが少しずつ認識できるようになっていく時期。そのため、引っ越しや転校、名字の変更といった環境の変化から生じる戸惑いも挙げられます。

戸惑いの種類についてはさまざまですが、よく見受けられるものとしては3つ挙げることができます。

  1. 存在価値の否定
    「友達には両親がいるのに、自分にはお母さんしかいない」という思考が「父親に見捨てられた」「父親にとって自分の存在価値はそれほど高いものではなかったのだ」と解釈してしまう。
  2. 自責の念
    「離婚の原因は、自分にあるのかも」「自分がいい子にしていたら、こんなことにはならなかったのかも」など、自分を悪者だと感じてしまう。
  3. 他者への不信感
    一番に信頼していた親の思わぬ行動により、他者に対しても不信感を抱くようになる。

親の離婚に影響されない子どもの性格・年齢はあるの?

結論からいうと、親の離婚に影響を受けない子どもはいないといえるでしょう。ただし、子どもの年齢や性格によって影響の大小はあるかもしれません。

例えば、

  • 物事の変化を好まない保守的な子…新しいことにチャレンジするのが苦手/いつも同じぬいぐるみがないと不安になる
  • 新しい環境への順応に時間がかかる子…クラス替えや進級のタイミングになると、学校に行きたくなくなる

といったタイプの子どもは、離婚から受ける影響が長引く可能性が予測できます。

年齢による影響については一概に断言することはできませんが、0歳から18歳までの父子関係を見ると、多くは幼児から小学校低学年くらいが一番距離が近い関係性です。相談者のお子さんは6歳と8歳ですから、父子関係に問題がないのであれば影響はあると考えられます。

また、先述したように乳児期はアタッチメント形成にとても重要な時期です。父親がいなくなるという状況を理解していなくとも、離婚によって十分なアタッチメントが得られなくなるのであれば、その子の心の安定に影響を及ぼすことになります。

子どものために親は離婚を諦めた方が良い?

ここまでの解説を読んで、「子どものために、離婚は諦めるべきなのだろうか」と感じた人は多いのではないでしょうか。しかし、私が言いたいのは「諦めましょう」ということではありません。子どもとの生活や関係性について、離婚した場合としなかった場合の両方から十分に検討することが大事ということです。金銭的な面も含めて、総合的に考える必要があるのです。

まず考えたいのは、今(離婚前)の家庭の状況がどのくらい子どもに悪影響なのかということ。そして、それは離婚後に改善されるのかを考えてみてください。

また、一人で子育てするという労働力という観点からも母親への負担は否めません。その中で自分がどのくらい子どもに対して余裕をもてるかという点も現実的に考えた方が良いでしょう。

もっとも、その後の生活を考えるまでもなく今すぐ離婚すべきケースというのはあります。

身の危険があるなら迷わず離婚して

すぐにでも離婚すべきケースとしては、

  • 身体的虐待
  • 性的虐待
  • ネグレクト
  • 心理的虐待

といった厚生労働省の「児童虐待の定義」に当てはまる事象に当てはまる場合です。また、父親が母親に対してDVを行っている場合、それを子どもの前で行っているとしたら心理的虐待に当たります。

母親、子どもどちらかに身の危険を感じているのであれば、踏みとどまる必要はありません。母と子だけになった方が今より良い状況を迎える可能性が大きいのであれば、諦める必要は全くないのです。

離婚までの期間はどのくらい必要? 子どもにはどう伝えればいい?

もし、離婚を決断するのであれば次に考えたいのは子どもへの伝え方です。ケース・バイ・ケースで何がベストかを判断するのは難しいものですが、子どもが両親の離婚という事実を受け入れる最初の大切なステップであるため、心への影響を最小限にする工夫が必要になります。

うそはつかず、全ては言わず

嘘はつくべきではありませんが、全てを言う必要もありません。真実の一部は伝えつつ、子どもがより受け入れやすい理由にした方が良いでしょう。

  • お父さんは不倫をしていた
  • お父さんに借金があった
  • お父さんが嫌いになった

など、相手を非難するような理由で原因を伝えることは避るべきと私は考えます。そして、「お父さんが〇〇だから、大変なの」など、愚痴をこぼして子どもにカウンセラー役を担わせるような言動もNGです。

血のつながりがある父親を否定されることで、子ども自身も否定されたような気持ちになることがあります。

また、新たな人間関係への不信感につながることもあるでしょう。例えば、自分(子ども)が結婚を考える時期が来た時、母親が話していた父親の話を思い出して相手の男性を信頼できなくなる可能性もあります。

夫のせいで苦しんできたのであれば、悪者にしたい気持ちはあるかもしれません。けれど、悪口やうそは誰も得することがないものです。

年齢に応じて少しずつ伝えていく

小学校低学年くらいの子は、結婚や離婚の意味について理解できていない部分が多くあります。そのため、年齢に応じて受け入れられるような内容で伝えることも大切です。

「好き同士じゃなくなったから」という伝え方は事実であるし分かりやすいように感じますが、子どもに大きなショックを与えることになります。

「自分に原因がある」と子どもに思わせてはいけない

子どものせいで離婚に至ったという印象を与えるのも、絶対にNGです。特に、夫婦げんかのトピックが子育てのことが多かったのならなおさら注意すべきでしょう。

もし、その夫婦げんかが子どもの前で行われていた場合「自分がいなければ、けんかにならないのかもしれない」と思うことは大いにあり得ます。

離婚の時期は子どものタイミングに合わせて

DVなど、離婚までの期間を待っていられないような急を要するケース以外であれば、子どもの立場に寄り添い、できる限り影響を最小限にする期間を設けるのが得策です。

  • 学年の区切り
  • 進学のタイミング

など、子どものタイミングを考慮します。

離婚による引っ越しや名字の変更などは、小学校低学年の子であっても周りの目が気になるものです。できるだけ影響が少ない時期を選んであげましょう。

早めに伝えれば、子どもの心の準備は整う?

離婚が決まったからといって、あまりに早い段階で伝えるのはおすすめできません。夫婦間で行うことは多くあると思いますが、子どもにとっては「なぜ、一緒に住んでいるの?」と理解に苦しむことになります。

だからといって、「来週から、別々に暮らすね」という突然の報告も唐突です。特に、父子の関係が良い場合はショックが大きくなります

どの時期に子どもに伝えるのが良いかは、子どもの性格を考えながら夫婦でしっかり話し合って決めていけるとベストだと思います。

離婚の影響を最小限にするために。親が子どもにできることとは

離婚後に、最も重要になるのがアタッチメントの再構築です。離婚という決断が避けられないとしても、子どものアタッチメントはしっかり担保してあげる必要があります。

親子の時間を確保する

親子の時間を意識的に確保しましょう。

時間をうまく回せなくなると、どうしても子どもとのコミュニケーションにひずみが生じるため、アタッチメント形成に悪影響となります。一人で家庭を回さなければならない場合、効率や時間の使い方を見直すことから始めます。

24時間の組み直しを行い、祖父母やファミリーサポートなど周りのサポートをうまく活用して時間を稼ぐことも視野に入れてみてください。

質の濃い親子時間でアタッチメント形成に工夫を

アタッチメントは、1日ずっと一緒にいれば形成されるというものではありません。短い時間であっても、大事に使うことが求められます。

ポイントとなるのが、傾聴です。子どもの話をしっかり“聴く”。話を聞くというと「学校どうだった?」「どんなことがあった?」など、どうしても親は“訊く”ことが多くなるものです。しかし、親の方から次々質問するのは子どもの話を聴くことにはなりません。

子どもの話を聴くというのは、子どもから発話したものに対して耳を傾けること。それが自分にとっては興味のある内容でなかったとしても、子どもが話し終わるまでしっかり聴いてあげましょう。

また、子どもが好きな遊びで一緒に遊ぶのもおすすめです。遊ぶという行為は「アタッチメントプレイセラピー」という療法にも使われるほど、短時間で強く親子を結びつける力があります。

ご飯やおやつなど、テーブルを一緒に囲む時間を大切にする。お風呂や抱っこなのスキンシップも良いでしょう。

もし、子どもが一人になる時間がどうしても増えてしまうような場合は、置き手紙に一言残したり、携帯でメッセージを送ったりと独りぼっちと感じないで済む工夫をしてみてください。子どもが抱く孤独感に対し、「お母さんは、いつもここにいるよ」と言葉で示してあげるのも一つの工夫です。

言葉や行動で子どもに愛情を伝えよう

子どもが頑張ってくれていることに対しては、「お母さん助かってるよ」という感謝の気持ちを伝えるのも大切です。

「大好きだよ」という言葉で愛情を伝えるのも良いですが、いってらっしゃいのハグや寝る前の読み聞かせなど、子どもが安心する母子の“儀式”も効果的です。

子どもの寂しい気持ちに寄り添って

ふとした瞬間、子どもが寂しくなるときもあるでしょう。そんなときは受け入れる、寄り添うというのが一番です。

子どもが「言ってはいけない、自分の心にしまっておこう」と思ってしまうと、つらい思いを長く引きずってしまうかもしれません。子どもが気持ちを正直に表してくれることは、親としてはありがたいことなのです。

「そんなふうに思っていたんだね」「分かったよ」と気持ちを受け入れ、「話してくれてありがとう」と伝えましょう。

泣いているのなら、泣けるだけ泣かせてあげることも大切。子どもが表した素直な気持ちに対して「そんなに、くよくよしないで」「もう、泣かないで」「元気出しなさい」と言ってしまうと、子どもは素直な気持ちを伝えることができなくなってしまうかもしれません。

この記事を解説してくれた佐藤めぐみさんに相談してみませんか?

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以上お伝えしてきましたが、離婚とひとくちに言っても、そのケースはさまざま。記事の中で解説した内容に当てはまらない人も多くいると思います。無理にあてがわず、役立ちそうなことがあれば参考にしてみてください。

また、離婚は夫婦の問題、個人的な問題ではありますが一人で答えを出すのは難しいこともあります。そんなときは、専門家に相談してみるのも一つの方法です。どういった心の準備が必要か、離婚後にどのような取り組みが必要かをアドバイスしてもらえるはずです。

子どもの性格などを踏まえ、わが家にはどういった方法が良いのか。子どもの様子を第三者に分析してもらい、生活をどう組み立てていくかを一緒に考えてもらうのは精神的な助けになると思います。

相談することで気持ちの整理ができますし、子どもはもちろんお母さん自身の安心にもつながるはずですから。

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濱岡操緒

岩手県出身。大学卒業後、ゲーム会社で広報宣伝職を経験した後、ママ向け雑誌やブライダル誌を手掛ける編プロに所属。現在はフリーランスのエディター&ライターとして活動中。一人息子の中学受験で気持ちに全く余裕がない中、唯一の癒しとなっているのが愛犬と過ごす時間です。

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