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2021.05.18

もし中学生のわが子が「死にたい」と感じていたら?親ができることを精神科医が解説

中学生のわが子に「死にたい」「生きている意味が分からない」と言われたら…。保護者は大きなショックを受けます。大切なわが子の命を守るためには何をすればよいのか、そして、親自身の気持ちをどう保っていけばよいのでしょう。児童精神科医の坂野真理さんに話を伺いました。

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自殺を図る可能性が高い子どもとは

2021年3月、警察庁が公表したデータによると、2020年の19歳以下の自殺者は715人。2016年から年々増加傾向にあり、自殺をした動機をみてみると、最も多いのが、学校問題(234人)人、続いて、健康問題(166人)、家庭問題(142人)となっています。

子どもが「死にたい」と言ったとき、保護者は「なんで?」「理由が知りたい!」「理由を取り除いて解決したい!」と思うかもしれません。

しかし、実際に自殺願望、希死念慮を抱える子どもたちと向き合ってきた児童精神科医の坂野真理さんは、「自殺の要因はひとりずつ違います」と話します。統計にあるような単純にパターン化できるものではなく、要因を知ることは簡単ではなさそうです。

「統計上は学校の問題が一番多いですが、実際には学校と家庭の問題が重なっていたり、『死にたい』と思う要因は人によってさまざまです。そもそも亡くなってしまった人に本当の理由が何だったのかと確認することはできませんよね。

自殺行為に至るまでの過程も、物心ついたときからずっとつらい思いを抱えてきてうつ状態だった子もいれば、これまで全く何もなかったのに、突然自殺を図る子もいます。個々の事情は非常にさまざま。私が専門家として接していても、本当に分からない場合もあります」(坂野さん、以下同)

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ですが、世界の研究・調査を見てみると自殺について次のようなことが分かっているそうです。

「1990年代に出生した1万5千人以上をその後ずっと追跡調査し、子どものこころの分野では世界的に有名な『ALSPAC』によると、自傷行為を1度もしたことがない子どもに比べ、自傷行為をしたことがある子どもは希死念慮の頻度が4.8倍高く、自殺の計画を立てたことがある子どもが12.4倍多い(※1)とされています。

また、別の調査では、意図的な自傷行為の後の自殺率は、0.24%~4.30%で、自傷行為のない一般的な人口と比較して少なくとも10倍高い(※2)とされています」

つまり、自傷行為(リストカットなど)をしたことがある子のほうが、実際に自殺する可能性が高いということ。

特に、幼少時から十分な親子の愛着関係が持てず、対人関係が極端に不安定なタイプの子は、思春期に自傷行為を伴うリスクが高いそう。

※1:Kidger, Judi, et al. “Adolescent self-harm and suicidal thoughts in the ALSPAC cohort: a self-report survey in England.” BMC psychiatry 12.1 (2012): 1-12.
※2:Hawton, Keith, and Anthony James. “Suicide and deliberate self harm in young people.” Bmj 330.7496 (2005): 891-894.

話を伺った人

坂野真理さん児童精神科医

虹の森クリニック院長/虹の森センターロンドン代表(子どものこころ専門医)。東京大学医学部附属病院小児科及びこころの発達診療部、医療福祉センター倉吉病院精神科等を経て、英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学・神経科学研究所(IoPPN)にて修士号取得。現在は、日英両国において子どものこころに関する診療および情報発信を行っている。虹の森クリニック

「死にたい」と言われたとき親が取るべき行動とは

では、わが子の「死にたい」気持ちに対して保護者はどのように向き合えばよいのでしょうか。

「子どもの口から『死にたい』と聞いたら、動揺して何て言ったらいいのか分からないと思うんです。それが親として自然な反応です。逆に『何を言うべきかちゃんと分かっています』という方が不自然ですよね。

それなら、無理に何か特別なことを言おうとするのではなく、親御さんの素直な気持ちである『心配なんだ』ということを伝えてあげるというのがいいと思います」

また、まずは子どもの話を聞く姿勢をもつことが大切だと坂野さん。

「親御さんが本人と話ができる関係性であるという前提ですが、子どもの話を聞いてあげましょう。そのとき、話を聞くポイントというのはいろいろあります。まず、その子がどう思おうと、『話を聞きたいと思っているんだよ』ということを伝えてあげましょう。大切なのは、とにかく話を聞いてあげることです」

【ポイント①】本人の気持ちを否定したり、親の考えを優先しない

子どもの話に対して、「じゃあこうしたら?」「お母さんだったらこうするよ」など、解決方法を知らせるというのは時期尚早。ほかにも、本人の話や気持ちを否定するような「そんなことは大したことないよ」という発言や、「まだまだ人生長いんだから大丈夫だよ」という発言も保護者自身が感じていることであって、子どもが感じていることじゃないのでNGです。

「とにかく話を聞いて、『今つらいんだね』という本人の気持ちだけを受け止めてあげましょう。気持ちを受け止めるといっても、本人が『死にたい』ということを肯定(背中押し)するわけではありません。『死にたいほどつらいんだね。そのつらい気持ちは分かったよ』という受け止め方です」

【ポイント②】沈黙を無理に埋める必要はない

もし、子どもが言葉に詰まって何も言えなくなっても、それはそれで良し。

沈黙ができたからといってたくさん言葉を浴びせる必要はないですし、沈黙を埋めようとしなくていいと思います。沈黙しているなら、それはそれで良くて、ただ一緒に居てあげるという姿勢でいいのではないかなと思います」

【ポイント③】焦って答えや意見を求めない

「子どもの悩みを早く解決したい」という焦りや、「子どもの思いを尊重したい」という思いから、子どもに「どうしたい?」と意見を求めてしまうのも辞めましょう。

「『どうしらいいのか分からない』というのが子どもの本音だと思います。年単位で取り組んでいく分野なので、今すぐ、すべて解決しようとは思わず、子どもの気持ちに寄りそっていくようにしてください」

親に素直に話せないのも思春期の素直な反応

子どもの話を聞くのは大切なことですが、思春期真っ只中の中学生だかたこそ保護者に話したくないと思うケースも少なくないそう。

「親と距離を置きたいという子どもも多く、子どもがなかなか心を開かないということもあると思います。親に迷惑をかけられないから話したくないという子もいますしね。ただ、子どもの話を聞く存在は親御さんじゃなくてもいいんです。子どもが心を開けないような親はダメという話ではなく、子どもが話しやすく信頼できる相手であれば親戚でも、教師や医師、カウンセラーでもいいんです。無理に『親である私が何とかしなければ』と思う必要ないと思います」

相手は大人ではなく、同年代の友達でもいいそう。そして、今の時代ならではなのが、気持ちを打ち明けられるのはインターネットを通じて知り合った相手という子もいると坂野さん。

「インターネットを通じた関係は、大人から見えないし、どんな会話をしているのか分からないから怖い面もありますよね。とはいえ、子ども自身は(インターネット上の人間関係に)親御さんが入ってくるのは嫌でしょうし、難しいですよね」

そこで、裏の手として坂野さんが教えてくれたのは、身バレしないように自分もネットを通じて子どもと繋がること。

「以前、インターネットの世界に閉じこもっている子がいてSNSを通じて交流をしたことがあります」

ただし、ショッキングなことが書かれていても動揺せずに子どもの前では何も知らないフリをしなければならないことを考えると親にはハードルはやや高そうです。

万が一のときに備えたプランを考えておく

また、難しいのは子どもとの距離感です。心配のあまり子ども物理的にも精神的にも子どもから離れられなくなってしまいそうです。

「その気持ちは分かるのですが、ずっと親御さんがそばにいて見張られている状況はお互い疲れてしまいます

また、覚えておいてほしいのは、親御さんがどんなことをしても自殺行為を100%防ぐということは難しいんです。例えば、精神科の病院では自殺するリスクを考えて紐やコード類は禁止、窓は少ししか空かないなど、さまざまな手立てをしていますが、それでも100%防ぐことはできません」

では、保護者には心配しながら子どもの心が回復していくことを待つことしかできないのでしょうか?

「自殺行為を100%防げないとしても命を守るためにできることはあります。エマージェンシー・プランというか、緊急時のプランはきちんと用意をしておきましょう

専門機関と相談しながら、〇〇というときは精神科へ、△△というときは一旦いのちの電話に電話しましょう、□□というときは地域の相談窓口へ連絡しましょうなど、考えられる状況に対してどのような対応を取るのかというプランを用意しておくのです」

子どもがもし、何か行動に移した場合、一緒に暮らす家族が発見する可能性が高いですが、そのとき冷静に考えて適切な行動を取れる保護者は少ないと思います。あらかじめ連絡先をまとめておくことは重要そうです。

「死にたい」中学生について相談できる機関とは

では、エマージェンシープランを作成するためにも、保護者はどこへ相談すればよいのでしょうか。

「地域によっては相談窓口が用意されている自治体もあると思いますが、本当に重症リスクだったら、とにかく医療機関に電話をしなさいっていう話になりますし、精神科に相談するのがよいでしょう。

ただし、精神科によっては『中学生は診ていない』という場合があり、そうなると小児科へ相談すると思いますが、小児科でも『精神科的なものは受けていません』という場合があります。その場合は、役所の福祉課やスクールカウンセラーなどに相談してどこに連絡をすればよいのか聞いてみてください」

また、精神科へ相談する場合、子どもが受診を拒否するケースも考えられますが、保護者だけでもいいのでしょうか。

「その点は医療機関によってルールが異なります。『本人が来ないと、診察はできません』というパターン、『一旦ソーシャルワーカーが親御さんの話を聞きます』というパターンもあります。まずは、受診を考えている医療機関に問い合わせてみてください」

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過去ではなく今、現在を変えていくことを考えよう

子どもが「死にたい」と感じている事に対して、「私の育て方が悪かったのかもしれない」「私が親として未熟なせいだ」と自分を責めてしまう保護者もいることでしょう。

「そんな風に悩まれるということ自体、保護者さん自身が子どもへの接し方を見つめ直し、子どもとの関係を一生懸命考えてるという意味だと思うので、きっとこれまでもきちんと子どものことをケアされてきたのではないかと思います。

ただ、過去の何がどのように影響したかは、結局分かりません。たとえば、明らかな原因がなくてもうつになることもあり、ハッキリした因果関係は分からないのです。

過去がどうだったかということは、すごく気になると思いますが、少なくとも、過去を消すことはできません。

過去に何があったにせよ、とりあえず現在の時点から、『今をどうやって過ごそうか』『今日一日何ができるか』という風に考えを変えてみてください。その転換点があるだけでも、子どものこれからが変わると思います。今を一緒に生きていく先に未来が見えてくるかもしれません」

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神田司

神田司

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

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