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2024.03.06

スクールカウンセラーとは?役割や仕事内容、相談の仕方を現役カウンセラーがアドバイス

今や当たり前のように小中学校に配置されているスクールカウンセラー。しかし、役割や仕事の内容、相談方法をよく知らない人も多いのではないでしょうか。今回は現役スクールカウンセラーの表広大さんが子どものいじめや教師とのトラブルなど、万が一のときのために知っておきたいことについて解説します。

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スクールカウンセラーとは

平成29年度の学校保健統計調査によると、スクールカウンセラーは、1995年から配置が始まり、平成29年度の時点で全国の公立小学校の78.6%、公立中学校の98.2%に配置されています。

スクールカウンセラーは、教員ではありません。公認心理師や臨床心理士の資格を取得している心理の専門家であり、学校や親とは違う第三者の立場で、不登校や人間関係のトラブル、発達障害、精神的な不調などに悩む児童生徒に対して心のケアやサポートをする存在です。

勤務形態は自治体によります。毎日常駐している学校もありますが、全国的には、非常勤として週に1回や2週に1回程度の勤務が多いでしょう。

スクールカウンセラーの役割や仕事内容とは

スクールカウンセラーが行うサポートとは

教育の専門家である教員とは別の観点から、学校現場で児童生徒や保護者に関わるスクールカウンセラー。カウンセリングを通して、家庭環境や生育歴などの背景を把握し、心理学の観点から専門的な知識に基づくサポートを行い、具体的には次のようなことをしています。

<スクールカウンセラーの行うサポート例>

  • 児童生徒や保護者へのカウンセリング
    ・個別で相談を聞き取り、問題解決に向けて一緒に考え、ときに助言をします。
    ・ストレス対処の方法、適切なコミュニケーションの取り方、どんな行動をしていくべきかなど、カウンセラーとして相談者にあった言動を一緒に考えていきます。

  • 教職員へのコンサルテーション
    ・心理学的な視点から子どもの特性を教職員に伝えます。
    ・心理検査の結果を指導や教育に活かせるように教職員と連携しながら一緒に検討します。
    ・適切な子どもへの関わり方について教職員からの相談に応えます。

  • 児童生徒の学校生活の行動観察
    ・学校での様子を観察することで、子どもの特性を把握し、指導方法や関わり方に活かしていきます。

その他、スクールカウンセラーの仕事として「心理検査を用いた査定(アセスメント)」も含まれています。ただし、スクールカウンセラーが検査そのものを実施するかは各自治体によります。検査を行うための環境などの条件から、実際にスクールカウンセラー自身が心理検査を行うケースは少ないかもしれません。

児童生徒が医療機関や支援センターなどで受けた心理検査の診断結果を共有してもらい、学校生活や先生の関わりにどう活かすかを分かりやすく解説して連携するといった業務を依頼されることが多いでしょう。

スクールカウンセラーは保護者も相談できる

スクールカウンセラーの役割は児童や生徒のケアだけに限りません。保護者を対象にカウンセリングを行う場合もあります。

例えば、不登校状態にある児童生徒の場合、保護者への支援も重要であり、子どもよりも先に保護者のカウンセリングからスタートするケースがほとんどです。

なぜなら、子どもの精神状態は保護者の関わり方に強く影響を受けるからです。

これまでも、保護者との面談を行い、親子の関わり方が変わったことで不登校状態が改善されたり、子どもの情緒が安定したり、友達関係が改善するなどの事例を多く経験してきました。

基本的に保護者の個人的な悩み相談は受けないというスタンスですが、保護者は子どもの状況を改善するための大切なキーパーソンです。保護者もスクールカウンセリングを受けることで状況を改善するきっかけを得られるでしょう。

スクールカウンセラーが扱う相談内容とは

スクールカウンセラーが扱う相談内容は多岐にわたりますが、中でも代表的なものを紹介していきます。

不登校

不登校は平成24年ごろから増加しています。1クラスに複数の不登校の児童生徒がいることも珍しくありません。スクールカウンセリングの相談内容で最も多い案件だと実感しています。

これまでサポートしてきた子どもたちの「学校に行けない」理由は、次のようなことでした。

・嫌な人がいる
・集団の中が苦手
・教室が怖い
・勉強が苦手で授業が苦痛
・学校に行くとドキドキしたり、お腹がや頭が痛くなる
・理由が分からない
 など

これらの理由で不登校になっている家庭に対して、私はスクールカウンセラーとして次のように対応しています。一例を紹介しましょう。

<不登校への対応>

保護者は、“不登校の状態”が問題だとして、なんとか学校に行かせよう(学校へ行く=解決)とする傾向が見受けられます。

ですが、不登校の背景には、発達障害や対人不安、家庭環境から受けるストレス過多など、さまざまな問題があり、不登校はその問題が表面化した行動のひとつとして捉えることができます。

そのため保護者に対して根本にある問題の解決を目指す視点をもちましょうと伝えることがあります。

また、学校に来ることに大きな抵抗がある生徒には、電話相談からスタートしたり、スクールカウンセラーが自宅に訪問してカウンセリングを行うことがあります。
※自治体や学校によっては自宅へ訪問してのカウンセリングは行っていない場合もあります

これまでの臨床経験から、不登校の子が突然学校や教室に行けるようになることはあまりないと感じています。

少しずつ学校生活に慣れていくプロセスが必要で、最初は、放課後登校、相談室登校など教室以外の登校から始め、段階的に授業の一部を受けてみるなど、本人が安心を感じられる足場を学校でしっかり作りながら一歩ずつ進めていきます

発達の課題

児童生徒の生活の大変さや問題の背景に、いわゆる発達障害やその傾向が隠れているケースが多くあります。いわゆる発達障害とは、自閉スペクトラム症やADHD(注意欠如・多動症)やSLD(限局性学習症)などが代表的なものとして挙げられます。

私が担当してきたケースでは、本人の辛さや大変さが周囲から理解されていないケースもありました。そこで、私はスクールカウンセラーとして次のような対応をこころがけています。

<発達の課題に対する対応>

これまで自分の大変さや辛さを分かってもらえてなかった子どもは、自分の気持ちを親や先生に分かってもらえるだけでも大きな助けになります

そして、本人の気持ちを理解するためにも、行動観察や心理検査から特性を的確に把握することが大切になります。臨床心理学の専門家としてスクールカウンセラーが特性を把握し、必要に応じて保護者や教員と情報を共有しながら子どもが過ごしやすくなる環境づくりを模索していきます。

人間関係のトラブル

人が2人以上集まる場には、常に人間関係のトラブルが起きる可能性があります。考え方や価値観の違う20~30人が集まる学級では、トラブルがないほうがおかしいくらいです。

学校における人間関係のトラブルには、次のようなものが挙げられます。

・仲間はずれ
・小競り合い
・恋愛関係や友達関係の嫉妬
・人との関わり方の不得手さ
 など

ほかにも、小中学生はまだまだ自分中心で考えることも多くあり、感情や行動のコントロールがうまくできないことも多々あります。

<人間関係のトラブルに対する対応>

人間関係の悩みには、カウンセリングを通して自分の気持ちに気づいてもらったり、適切な行動について一緒に考えたりします

まず、人間関係での悩みを感じたときにどんな気持ちだったかをカウンセリングの場で時間をとって振り返っていきます。自分の気持ちをしっかり感じて、感情を認めてあげることができると、辛さが軽くなることがあります。

また、友人関係で自分の気持ちや考えが上手く伝えられない子には、伝え方やセリフを一緒に考えます。その場で練習することもよくあります。友人関係で失敗した経験を振り返って、違う言い方や態度を試してみることを行います。

不安や焦りやイライラを感じやすい子には、呼吸法などのリラクゼーションのスキルを伝えて一緒にやってみます。

以上のように、人間関係やコミュニケーションの様々な対処スキルを提供して、自分自身で問題解決ができるように成長をサポートしていきます。

家庭の悩み

児童生徒の悩みは学校内のことに限りません。家庭環境や親との関係についての悩みも多く聞きます。複雑な家庭環境の場合は、家庭の環境調整や家族との関わり方についてアドバイスが必要というケースもあります。

<家庭の悩みに対する対応>

児童生徒が家庭内でできる対処はそう多くないかもしれません。しかし、感情の処し方や行動面でできることを一緒に考えていきます。

また、保護者が望めば家庭の悩みに対して、子どもだけでなく保護者へのカウンセリングを行うケースもあります。夫婦関係の不和や保護者のメンタル面の不調が子どもに影響しているケース、子どもとの関わり方やコミュニケーションの仕方に改善が必要なケースがあるからです。

この記事を書いた表 広大さんに相談してみませんか?

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スクールカウンセラーに相談することで、これらの課題解決のヒントやきっかけが得られるケースは少なくありません。

スクールカウンセラー自身がサポートできなかったとしても、解決のためにほかの方法や福祉関連の相談先などを紹介することで家庭の状況が改善できることもあります。

スクールカウンセラーへの相談の流れ

カウンセリングを受けるまでの流れは次のようになります。

児童生徒がカウンセリングを受ける場合

児童生徒がスクールカウンセラーに相談する流れは大きく2つあると思います。

  • パターン①
    担任教員や養護教諭など、自分が話しやすい教職員に相談して、スクールカウンセラーにつないでもらう方法

  • パターン②
    児童生徒が直接スクールカウンセラーに申し込む方法。学校によっては、児童生徒が意見や相談を自由に投函できる仕組みがあります。

保護者がカウンセリングを受ける場合

保護者のカウンセリングは、担任教員からすすめられて相談にいたるケースが多いです。困りごとがあるからといって保護者からスクールカウンセラーへの相談を希望するという選択肢はまだ多くないように感じます。

もし、今現在、相談したいことがあるという人は、担任教員を通して申し込みをしてみてください。もし、担任教員に知られたくないような事柄の場合は学年主任や教頭などの管理職に直接お願いしてもよいでしょう。

相談内容は担任教員に知られるもの!?

スクールカウンセリングは、子どもの学校生活をよりよいものにするためのものです。そのため、実際に子どもと関わる担任教員や管理職には、ある程度相談内容は共有されると考えてください。

しかし「担任教員との折り合いが悪い」「担任教員の言動に疑問がある」など、担任教員に関する相談をそのまま担任教員本人に伝えることはないでしょう。子どもや家庭に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

また、担任教員だけでなく学校に共有されたくないことは、スクールカウンセラーにその旨を伝えれば配慮を得られると思います。

カウンセリング回数は、ケースバイケースです。1~2回で終わることもあれば、年単位で継続する場合もあります。相談の進め方自体もスクールカウンセラーと話し合って決めていくことになりますので、希望があればぜひ伝えてみてください。

スクールカウンセラーへの相談事例

次に相談事例をいくつか紹介します。ただし、守秘義務を守るため、個人が特定されないように一部を変更したり、複数の事例を重ねたりしています。

長期の不登校から教室復帰

相談者は、中学3年生のA子さん。人間関係のこじれから学校や教室に恐怖心を持つようになり1年以上にわたって不登校の状態でした。最初は母親とのカウンセリングからスタートした後、A子さんの了解を得て自宅に訪問し、カウンセリングを数回行いました。

カウンセリングでは、本当は学校に行きたいと思っていることや、ではなぜ行けないのか、今後どうしたいのか、など、本人の気持ちを丁寧にヒアリングしていきました。

そして、カウンセリングを始めて2ヵ月くらいたった頃、まずは教室ではなく相談室で過ごすことで、学校に登校できるようになりました。

その後、学校に慣れてきたところで、少しずつ教室へ復帰。高校受験では見事志望校に合格し、卒業をしていきました。

厳しい家庭環境による愛着の問題を克服

友達や教員に暴力をふるっていた小学5年生のB君。カウンセリングをしてみると、両親が離婚し、父親とのふたり暮らしの中でB君自身がしつけと称して父親から鉄拳制裁を受けていたことが分かりました。

そこで、私はカウンセリングで、彼が感じている家庭での大変さ、困難さに共感的に関わり、気持ちを分かるように話をしていきました。

仕事の関係で父親とのカウンセリングはできませんでしたが、担任教員には父親と密に電話連絡を取ってもらうようにしました。すると父親は、担任教員という子どもについて相談できる存在ができたことで、B君との関係をより大切に感じるようになり、関係を改善しようと心がけていきました。

数ヶ月後にはB君の行動が落ち着き、友人関係が改善。教員とも安定した関係を築くことができるようになりました。

このように問題解決へ至るまでには、子どもや保護者の置かれている環境や本心で何を思っているかを把握することが重要になります。

スクールカウンセラーに相談する時のポイント

カウンセリングを受ける際、中には自分の考えをうまく話せないと不安に思っている子も、何を話していいか分からないという子もいると思いますが心配する必要はありません。

うまく話せなくても大丈夫

カウンセリングには、自分のことを話すことで考えが整理されていく側面があります。相談したい出来事が起きた時にどんな気持ちだったのか、振り返ってみることで初めて自覚できることがあるはずです。

話していくうちに自分が望む状態やどうなりたいのかをより明確にしていくことができることでしょう。

「どうすればいいのか分からない。どうなりたいのかも分からない。でも、とにかくどうにかしたい!」こんなあいまい状態でもOKです。

そもそも自分の考えや感情をはっきりと話せる児童生徒の方が少ないでしょう。もし現状をなんとかしたいと考えているのであれば、思い切って相談してみてください。「何をどう話せばいいか分からない」を相談のテーマとしてもいいですよ。

問題解決の味方を増やそう

カウンセリングで「相談をする」「他の人の力を借りる」ということそのものが初めての経験だという人もいます。自分の悩みを全く知らない人に相談することそのものに抵抗を感じる人もいるかもしれません。

しかし、身近に力になってくれる存在があるだけでも相談する価値はあると思います。自分の味方をたくさん増やしていきましょう。スクールカウンセラーはその一人になれると思います。

余談ですが、心理カウンセリングの金銭的な価値は、相場として60分程度の相談で1万円前後です。最近は、オンラインカウンセリングや保険診療の中で自己負担が少ないカウンセリングもありますが、スクールカウンセラーの利用は、無料で受けられるというメリットも大きいと思います。

カウンセリングの効果は、経験しないと分からないかもしれません。ですが、何か解決や改善したいことがあれば、心理学の専門家であるスクールカウンセラーへの相談を検討してみてください。

この記事を書いた表 広大さんに相談してみませんか?

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表 広大

臨床心理士。家族関係の改善をサポートするプロのカウンセラー。二児の父。10年間の上場企業勤務の後に臨床心理学専門大学院を修了。金沢心理カウンセリングルームJON(https://japan-counseling.com/)を主宰し、親子や夫婦関係に悩みを抱える人が充足感や幸福感を感じられるカウセリングや講座を提供する。あたたかな家族関係を持ち、自然体で自由に自分を表現できる環境づくりを実践している。

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