【中学生の不登校】転校すれば解決する!? 必要な手続きや学校の選び方とは
中学生が不登校になったとき、子どもの環境を変える方法として転校を考える人もいるのではないでしょうか。不登校をきっかけに転校する場合の心がけや、転校先のパターン別に必要な手続きを不登校支援団体代表の五十嵐麻弥子さんにお聞きしました。併せて転校以外の選択肢も紹介しているので参考にしてみてくださいね。
目次
転校を決めるときに大切なのは子ども本人の意志
不登校の原因が学校にある場合、その原因を解決に導くことは簡単ではありません。むしろ別の学校へ転校するほうが復学できる可能性が高いように感じます。
「子どもに学校へ戻りたい意志があるなら、転校もひとつの選択肢になります。当然のことながら、明らかに元気がない子どもに転校の話をしても心に響きませんが、時期をみて『転校という方法もある』と伝えることは大切なことです」と話すのは、不登校の保護者の会である「ミモザの花~子どもの不登校を考える会」代表の五十嵐麻弥子さんです。
「その“時期”がいつなのかということですが、こればかりは一緒に暮らしている親の感覚でしかわかりません。親が『今なら話を理解してくれそうだ』と感じたときが、そのときなのです。好きなことをしていて気分がいいとき、時間帯を見て頭が冴えていそうなとき、趣味を楽しめるようになったとき、家族以外の人と話せるようになったときなど、お子さんの様子を見て、お話をしてみてください」(五十嵐さん)
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公立か私立か不登校の転校先の選び方とは
また、転校先はどのように選べばよいのでしょうか。
転校先のパターンの例
- 公立校から他の公立校
- 私立校から近隣の公立校
- 発達紹介などの傾向があれば校風の合う私立校
「公立校から他の公立校へ、あるいは私立から近隣の公立校へなど、転校先に公立校を選ぶケースが多いと思います。ですが、発達障害やHSPの傾向が明らかなときは、学校環境そのものが子どもに合っていないことも多いので、転校してもあまり解決にはならないかもしれません」(五十嵐さん)
そのような場合は、少人数制だったり自由な校風だったりする私立を選ぶという方法があるそうです。
また、公立校への転校の場合、小学校時代の知り合いがいると「不登校だったことがバレて嫌だ」と思う子もいるので、その辺りの配慮は必要とのこと。
「ほかにも、制服が苦手だという子には私服の学校を選ぶ、通学に苦痛を感じる子には通いやすいルートの学校を選ぶなど、子どもの負担がどこにあるのかをよく考えて学校選びをするとよいでしょう」(五十嵐さん)
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五十嵐麻弥子さんへの相談ページを見てみるまた、転校にあたり、下記の内容を転校先と確認、相談するようにしましょう。
通学ペースや送迎について
子どもが「いきなり週5日通うのは不安」と感じるのは決して珍しいことではありません。子どもがどんなペースで通えるのかをよく確認し、一人でも通えるのか、あるいは親の送迎が必要なのかなど、子どもと十分に話し合うことも必要です。
学校内のサポートについて
通学するにあたり、不安なことは事前に学校とよく相談しておきましょう。例えば、担任教師についての希望を言うことはできるのか(教師が子どもの苦手なタイプだとうまくいかない可能性があるため)、遅れがちな学習面についてフォロー体制はあるのか、子どもの不安が強まったときの対応をどうするか、スクールカウンセラーや養護教員との連携など、まずは気になる点をリストアップしてみてください。
通えなくなった場合について
場合によっては、再び学校へ通えなくなる可能性もあります。その場合、どのように保護者と学校で協力していくか相談をしておきましょう。
また、実際に学校へ相談する前に、学校までのルートを歩いてみたり、外から学校を見てみたりするなど、通うときのイメージを感じてみるのもいいかもしれませんね。
では、次からは具体的な転校パターンに合わせた手続き方法を紹介していきましょう。
【転校パターン①】公立中学から別の公立中学へ
公立中学に通っていた場合、公立中学は文部科学省の学習指導要領で学習内容が決まっているので、途中で学校が変わっても進度がさほど大きく変わることはないでしょう。ただし、住まいをどうするかによって手続きが変わってきます。
【別の市区町村へ引っ越して転校する場合】新しい環境で心機一転
家を引っ越して転校をする場合のメリットは、元の学校の人間関係からも離れて心機一転できるのが最大のメリットです。転校先の周囲の人たちも不登校が理由で転校したとはわかりづらいため、子どもも後ろめたい気持ちなく新しい環境に臨めるでしょう。
ただし、転校先が同じ市内の場合、部活や塾などのコミュニティが被って完全に1からやり直すというわけにはいかないかもしれません。
また、兄弟がいる場合、兄弟も転校させなければならないので、兄弟が新しい環境になじめるかという新たな問題が発生する可能性も考えておきましょう。
引っ越して転校の手続き
- 在籍校に転校したい旨を連絡
- 在籍校から「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取る
- 役所に「転出届」を提出
- 新居先の役所に「転入届」を提出
- 新居先の役所で「住民票」を発行
- 新居先の市町村の教育委員会に「住民票」を提出
- 新居先の市町村の教育委員会で「転入学通知書」を受け取る
- 新しく入学する学校に「転入学通知書」「在学証明書」「教科書給与証明書」を提出
引っ越して転校をする場合は、学校への転校の手続きと、引っ越しに関わる市役所への転出転入手続きの2つの手続きが必要になります。
また、転校する際に在籍していた学校に発行してもらうのは、その学校に在学していたことを証明する「在学証明書」と在学中の学校で使用している教科書(出版社)が一覧となった「教科書給与証明書」です。
【引っ越しをせずに転校する場合】家族への負担は少ない
公立校から公立校への転校は、新しい学校の学区に転居する必要があるというのが基本ですが、最近は、不登校という事情を理解し、転居をしなくても転校できることがあります。
中学校と教育委員会と保護者が話し合いをし、やむを得ない事情があると教育委員会から認められると、引っ越しをせずに校区外の中学校に転校できます。
同一市(区)内で転校する場合の手続き
- 在籍校に転校したい旨の連絡
- 在籍校から「在学証明書」と「教科書給与証明書」を受け取る
- 新しく入学する学校に「転入学通知書」「在学証明書」「教科書給与証明書」を提出
【転校パターン②】私立中学から公立中学へ
私立中学から住んでいる地域の公立中学に転校することは可能です。小学校が公立だった場合、小学校時代の友人と再会でき、懐かしい友たちや慣れ親しんだ環境に戻れることになります。
公立中学は義務教育なので退学はありませんが、私立中学は不登校が長く続くと退学処分となる場合があります。また、公立中学に転校し、のちに高校受験をする際に提出する内申書に不登校期間があることが記載され不利益になることがあります。
私立中学から公立中学へ転校する場合の手続き
- 在籍校に転校することを連絡し、「在学証明書」を受け取る
- 居住地の教育委員会に転校手続きについて相談する
【転校パターン③】公立中学・私立中学から私立中学へ
私立中学によっては、転入生の募集を行っている学校があり、転入試験をクリアすれば、転校することができます。各都道府県の私立中学高等学校協会のホームページに転・編入についての情報が掲載されています。
また、編入の条件は、海外からの帰国や国内転勤による転居に限るといった条件になっている場合もあります。不登校の場合でも編入が可能なのかは、各学校に問い合わせましょう。
希望の学校が決まった場合、学校によって手続き方法や条件が異なります。下記のようなことは、転入可能かどうかの確認の際に、下記についても聞いてみるとよいかもしれません。
- 転校が可能か(欠員があるか)
- 試験はあるか
- 学校見学ができるか
- 現在の学校との学力に差はないか
- 学習スタイルは変わらないか
私立中学へ転校する場合、転学試験を受ける必要があります。ただし、試験の合否に関わらず在籍していた私立中学には戻れない場合があり、合格できなかったら公立中学への転校になる場合もあることを覚えておきましょう。
私立中学への転校手続き
- 転入試験を受けたい学校、もしくは各都道府県の私立中学高等学校協会に連絡
- 試験を受ける
- 合格したら在籍校に連絡
- 転校先のへの提出書類を在籍校で揃えてもらう
- 必要書類を転校先へ提出
転校しないで学び続ける5つの方法
現在は学び方も多様化しており、今の中学校に籍を置きながら、転校することなく学習することも可能です。
フリースクールや不登校対応塾
不登校の中学生が学校以外で学んだり、友達と過ごしたりする機関としてフリースクールがあります。フリースクールは、公的な機関ではなく、個人や民間、NPO法人によって運営されているケースが多く、形態はさまざまで活動内容もさまざまです。
入学資格は決まっておらず、異なった年齢の子どもが集まっています。学校のようにカリキュラムも決まっていません。
不登校対応塾は、精神面のケアサポートをしながら、子どもが休んだ期間の学習支援をします。一般的な塾では対応してくれない面まで手厚く対応します。オンライン授業、家庭教師、通学教室など様式はさまざまです。多くの不登校生徒を対応してきた不登校担任教師が、ひとりひとりの抱える不安や悩みに寄り添いながら指導してくれます。
不登校の子に対する塾の記事はこちら
通信制中学
通信制の高校は聞き慣れるようになりましたが、通信制高校のなかに中等部が併設されている学校もあります。勉強のサポートがあり、同じ悩みを持った友人と出会える可能性もあります。
通信制高校の付属の場合、そのまま系列の高校に進学しやすくなります。また、入学する前に学校の雰囲気や学習環境に触れることができるので自分に合っているのかを確認することができます。
ほとんどの通信制中学がフリースクールと同じく通っていた中学に籍を置きながら通うことができます。
ホームスクーリング
ホームスクーリングとは、学校に行かずに家庭で学習を行う教育方法です。インターネットの普及により、自宅に居ながらも学習できる環境が充実してきました。学習アプリやインターネット教材などを使えば、学校のカリキュラムに沿った学習も可能です。
また、カリキュラムも家庭ごと決めることができるので、子どもの理解度や興味に合わせて学習を進めることができるのはメリットです。
環境が問題で不登校になってしまった場合、ホームスクーリングなら精神的負担やストレスが少なく、リラックスした環境で勉強ができるでしょう。
海外留学・親子留学
引っ越して転校するよりもさらに新しい環境で、新しい学びができるのが留学です。当然ながら知っている人のいない環境にあるので周囲の目を気にすることなく再出発をすることができます。また英語などの語学が習得できるほか、留学経験を履歴書に書くことができ、進学・就職に役立つ可能性もあるかもしれません。
しかし、海外生活どころか復学することにも不安がある場合、子ども一人で行かせるのは不安ですよね。そこで、子どもが単身で留学するケースではなく、親子留学という選択もあります。親子留学は半年~1年以上の留学が対象となり、子どもは学生ビザを、親は国によりガーディアンビザ(保護者ビザ)を日本で取得して行きます。
留学先の紹介や手続きなどは、留学のコンサルティング会社に相談してみるとよいでしょう。
高校進学支援サポート
中学校が不登校になってしまっても高校進学に向けてサポートしてくれる機関もあります。例えば、「KTCあおぞら高等学院」は通信制高校に高校生活準備教室「くれっしぇんど」を設けており、高校でうまくリスタートが切れる支援をしています。
登校と在宅どちらもサポートを受けることができ、学校に行く練習、中学の基礎から学べる高校受験学習サポート、社会性を身に着けるコミュニケーションサポートが用意されています。
ここまで転校する手続きや在学のまま学び続ける方法を紹介してきましたが、どんな選択をしても子どもに合っている、続けられるという保証はありません。
不登校から転校することを気負い過ぎないで
「子どもは不登校になったことを自分の“失敗”と感じているケースが多いですね。だからこそ、転校するときには『次こそがんばるぞ』という気持ちが強くなります。保護者としては、期待も不安もあると思いますが、“励まし過ぎず、無関心過ぎず”というスタンスで暖かく背中を押してあげてください。
また、背中を押すだけでなく、子どもが頑張りすぎて息切れしてしまわないよう、家庭でも注意深く見守ってあげてくださいね」(五十嵐さん)
もし、また行けなくなったとしても、「あなたの責任ではない」「環境が合わないこともあるんだよ」などと説明をして、失敗体験の上塗りにならないよう心掛けておきましょう。
「転校先での学校生活がうまくいかなかったとしても、保護者が自分自身や子どもを責める必要はありません。義務教育の場合、中学校は必ず卒業できます。また、社会復帰にはいろいろな道筋があるので『こういうこともあるんだな』と冷静に受け止めてあげてくださいね」(五十嵐さん)
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