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2020.12.30

【専門家が監修】中学生の学習障害(LD)の検査方法や相談先、高校進学について解説します

全般的な知的能力は低くないのに読み書きや計算など特定の分野だけが極端にうまくいかず、学習に困難が生じてしまう学習障害(LD)。発達障害の子どもや親の支援を続けている米田和子さんの監修のもと、学習障害が疑われたときの相談先や、気になる高校進学、親としての注意点などを解説します。

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学習障害が不安ならまずは学校に相談

下記の記事でも解説しましたが、学習障害の場合、子どものサポートは主に教育現場が行います。

【専門家が監修】中学生の学習障害(LD)の原因や特性、学習のコツについて解説します

そのため、「お子さんが学習障害かもしれないと思ったら、まずは学校に相談を」と話すのは、長年にわたり発達障害・学習障害の支援を行う米田和子さんです。

「ただし、中学校では教科ごとに担当教員が変わるため、必ずしも担任の先生が全ての授業の様子を把握しているとは限りません。そのため、担任だけでなく各教科の先生とも連携しながら、子どもにどのようなサポートが必要かを考えていく必要があります」(米田さん、以下略)

また、学校には、学習障害を含めた障害のある生徒への適切な支援のために校内外の連携を行う「特別支援教育コーディネーター」が配置されています。

「学校への相談の際には、特別支援教育コーディネーターと話をして、校内外の関係機関の協力のもとで適切な支援が受けられるようにしましょう」

監修者

米田和子さん日本LD学会特別支援教育士SV

小学校教員として通常の学級担任、特別支援学級担任、通級指導教室担当を30年以上経験。一方で大阪府堺市周辺の特別支援教育に携わる教職員と共に実践・研修活動を展開するほか、親の会を立ち上げ、当事者の保護者としても活動を続けている。現在は、NPO法人ラヴィータ研究所理事長として巡回相談やペアレントトレーニング指導者として活躍。日本LD学会特別支援教育士SVとして講演活動、特別支援教育士やペアレントトレーニングトレーナー養成指導も行っている。また、オンラインによる子育てサロンも立ち上げ、子育て相談の他、応用行動分析によるペアレントトレーニングやティーチャーズトレーニングも実施している。

学校以外の4つの相談先とは

学校に相談したとき、場合によっては、話し合いがスムーズに進まなかったり、「問題ないでしょう」と聞き流されてしまったりすることがあるかもしれません。そのような場合は、学校以外にも相談できる場所があります。

学校以外の相談先には、下記の4カ所などがあります。

教育委員会

各自治体の教育委員会には、特別支援教育担当の部署が設置されています。相談をすると、子どもが適切な支援を受けられるよう、教育委員会から学校側へ働きかけてくれる場合があります。

通級指導教室

通級指導教室とは、大半の授業は在籍する通常の学級で受けながら、一部の授業のみ子どもの障害特性に合った個別の指導を受ける教室。通級指導教室の担当教員は学習障害の特性についても理解しているため、相談もしやすいでしょう。

ただし、障害の種類によって個別に必要な支援や指導の内容が変わるため、在籍する学校にニーズに合った通級が設置されていない場合があります。

また、通級指導教室の教員は複数の学校を巡回していることがほとんど。そのため、教育委員会を通して地域の通級指導教室の担当教員に相談をするとスムーズです。

教育センター

自治体が設置している教育センターでは、特別な支援が必要な子どもに関する教育相談を行っています。それぞれの教育センターが行う教育相談事業については、全国特別支援教育センター協議会のサイトから見ることができます。

また、自治体によっては、発達障害者支援センターの中に教育相談の窓口が設けられているケースもあります。

医療機関

医療機関に相談をする場合は、発達障害を専門に診ることができる児童精神科や小児神経科、発達外来などを受診しましょう。

学習障害の子どもが学校で支援を受けるとき、必ずしも医学的な診断は求められません。しかし、専門の医師による診断や所見を学校側に伝えることで必要な支援を受けやすくなるでしょう。

学習障害の検査方法とは

文部科学省や自治体からは、「学習障害かもしれない」と思ったときに、教員や保護者がチェックできるリストが発表されています。

「児童生徒理解に関するチェック・リスト」文部科学省

このリストでは、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力の中で、どこに凸凹があるのかをチェックすることができます。

また、心理士や医師などが行う知能検査では「WISC-Ⅳ(ウィスク4)」がよく知られています。「WISC-Ⅳ」では、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」の4つの指標と、それらを合算して算出する全般的なIQがわかります。検査結果によってはさらに認知機能を詳細に判断するために、音韻検査やWAVES(見る力を育てるビジョン・アセスメント)などを実施したりすることもあります。

学習障害をサポートするネットワーク

最近では、学習障害をもつ人をサポートするNPO法人などの団体も増え、支援ネットワークが広がりつつあります。代表的なのが、1990年から活動する「NPO法人 全国LD親の会」です。

このような団体が行う講演会や勉強会に参加すると、親同士の悩みや情報を共有できたり、学習障害についての理解を深めたりすることができます

また、学習障害のある子どもに個別指導を行う学習塾もあります。そのような塾では、障害特性を理解したスタッフによる個別指導が受けられます。

子どもに学習障害の疑いがあると、親も動揺し、不安や孤独感を抱えてしまいがちです。しかし学習障害は、一人ひとりに合わせた適切な支援を行えば学力を伸ばしていくことができます。家庭だけで不安を抱え込まず、学校や専門機関と協力することが大切です。

高校入試は特性に合わせた配慮もある

2016年、全ての人が障害の有無によって分け隔てられることなく、人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」が施行されました。

学校では、障害のある子どもの社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)を提供しなければならないとされています。

合理的配慮とは、障害をもつ人々も教育や就業、その他の社会生活において平等に参加できるよう、個々の障害特性や困りごとに合わせて行われる配慮のことです。

中学校の授業や高校受験などにおいても、学校側はこの合理的配慮を可能な限り提供することが求められています。

学習させる前につまずきの原因を知る

学習障害をもつ子どもに対する合理的配慮を考えるとき、「『数学がダメ、英語ができない』などと教科で判断するのではなく、つまずきの原因で見ていくことが大切です」と米田さんは話します。

同じ「漢字テストの点数が悪い」という結果であっても、間違い方にはそれぞれ特徴があります。

たとえば…

「日」が「目」、「氵(さんずい)」が「冫(にすい)」など細部の間違いが多い場合は、視空間認知の悪さや不注意が考えられます。

覚えているはずの漢字をなかなか思い出せない場合は、語想起や視覚記憶が悪い可能性があります。

「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のどこにどんなつまずきがあるかによって、必要な手立ては変わります。まずは間違い方のルール性を見つけることが、学習障害に対するサポートの第一歩です。

高校入試における合理的配慮

学習上の困難と必要な手立てがわかれば、学校において下記のような合理的配慮を受けることができます。

実施されている合理的配慮の例

  • 文字を読みやすくするためにプリントやテストを拡大コピーする
  • 黒板の文字をノートに写す代わりにデジカメやタブレットで撮影する2
  • スマートフォンやタブレットの音声読み上げ機能を活用する
  • 学習内容の習得のための時間を別に設定する

などが挙げられます。

また、高校入試においても、国公立の学校には、障害の特性に応じた合理的配慮が義務づけられています(私立学校の場合は努力義務)

たとえば、試験時間の延長や別室受験、文字の拡大、タブレットやパソコン入力による回答などの実践例があります。

ただし、受験時に合理的配慮を求めるには、それまで中学校で行われてきた支援の実績や医師の診断書などに基づく申請が必要です。

申請方法や対応できる範囲は自治体や高校によっても異なるため、中学校と連携の上、事前に確認をしておきましょう。

学習障害がある中学生の進学先の選び方

最近では、学習障害をはじめ発達障害のある子どもへのサポート体制が整った高校も増えています。

「進学先は『根気よく面倒をみてくれるかどうか』『子どもが得意な面を発揮できるか』という視点で選ぶことが大切。最近は、単位制や通信制の高校を経て大学に進学するケースも増えています」と米田さん。

実際に高校の説明会や学校見学に足を運ぶほか、親の会などのネットワークを利用して情報収集をすることもできます。

なお、フリースクールを検討する場合は、学習障害の特性を理解したサポートが受けられるかどうかがポイントとのこと。運営母体や目的によってタイプがさまざまなので、特徴をしっかりと見極める必要があるでしょう。

二次障害にならないよう親が気をつけるべきこと

脳の認知機能の凸凹である学習障害は、本人の努力だけでどうにかなるものではありません。思うように学習が進まずにつらい思いをしているのは子ども自身。しかし、周りからは「勉強が嫌いだから怠けているんだろう」などと誤解を受けやすく、それが自尊心の低下や不登校といった二次的な問題につながってしまう恐れもあります。

米田さんは「親として一番大事なのは、子どものどういうところができて、どういうところができないのかを知ること。そして、できないところは『頑張りなさい』ではなく、どうやったらできるかを子どもと一緒に考え工夫することです」と言います。

「なぜできないの」と責めたり、「頑張ればできる」と熱心に励ましたりすることが、子どもの気持ちを追い詰めてしまう可能性もあります。焦りや不安を感じてもぐっと抑えて、子どもが自分の力を発揮できる環境を整えていきましょう。

思春期ならではの注意点とは

思春期である中学生は、子どもから大人へ移行する、心のゆらぎが大きい時期。親のアドバイスを素直に聞き入れてくれなかったり、周りと違うことをするのを嫌がったりする年頃でもあります。

思春期の「ペアレント・トレーニング(ペアトレ)」も多く行っている米田さんによれば、中学生の学習障害の場合は、障害の特性と思春期の特徴の両方を知ることが必要だそう。

子どもが頑張っていること、頑張ってもうまくいかないことを受け止めた上で、困ったときに相談してもらえるような信頼関係を築くことが大切だといいます。

「中学生は反抗期もあって、いきなり発達検査をすすめても反発されてしまうことがあります。そんなときは、普段から授業のノートなどをチェックしつつ、勉強で何か困っていることはないか聞いてみてください。『ここがうまくいかなくてつらいよね。でも、やり方を変えればうまくいく方法があるから、それを調べてもらおう』という声掛けをすれば、本人も前向きにとらえてくれると思いますよ」

「適切なサポートを行っていけば、子どもの行動もきっと変わっていく」と米田さん。

親子に自信と笑顔が増えるよう、子どもの気持ちに寄り添いながら、できること、得意なことに力を発揮できるように応援していけたらいいですね。

<参考資料>
『AD/HD、LDがある子どもを育てる本』月森久江 監修/講談社
学習障害の中学生の子を持つ親御さんへ〜困難解消のためにできること〜 | キズキ共育塾
障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備(文部科学省)
学習障害(LD)のある子どもの合理的配慮 – 発達障害教育推進センター
高等学校の入学試験における発達障害のある生徒への配慮の事例

加藤朋実

加藤朋実

広告代理店、企業の広報を経て、2008年よりフリーランスライターとして活動。子育て、ライフスタイル、教育、医療、住まい、グルメなど、幅広いジャンルで執筆を行う。人物インタビューや企業インタビュー、イベント取材など、取材経験も多数。そのほか、コラム原稿や書籍原稿の執筆なども手掛けている。趣味は音楽鑑賞と読書、野球観戦。プライベートでは一児の母。

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