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2020.12.25

【専門家が監修】中学生の学習障害(LD)の原因や特性、学習のコツについて解説します

字の読み書きが遅い、計算がうまくできないなど、中学生になったわが子に極端な苦手分野があると不安になりますよね。「学習障害」という言葉が頭をよぎったり、学校から言われることもあるかもしれません。しかし、学習障害は、一人ひとりに合った学び方さえ工夫すれば、しっかりと能力を伸ばすことができます。そこで今回は、発達障害の子どもや親の支援を続ける米田和子さん監修のもと、中学生の学習障害の特徴と適切なサポート方法などを解説します。

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学習障害(LD)とは

学習障害とは、全般的な知的能力は低くないにも関わらず、読み書きや計算などある特定の分野だけが他と比べて極端にうまくいかない発達障害のひとつのこと。英語では「Learning Disability(Learning Disabilities)」といい、略して「LD」と呼ばれています。

学習障害は、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」能力のうちいずれか、または複数の習得が著しく困難で、学習全体に影響を及ぼしてしまうこともあります。

文部科学省によれば、学習障害は次のように定義されています。

学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

引用元:特別支援教育について/文部科学省

学習障害は、米国精神医学会の診断基準(DSM-Ⅳ)によると下記の3つのタイプに大きく分けられます。

  • 読み障害・読字障害(ディスレクシア)
  • 書字表出障害(ディスグラフィア)
  • 算数障害(ディスカリキュリア)

苦手な部分や症状の表れ方は一人ひとり異なり、得意な教科の習得についてはあまり問題が生じません。そのため、意識しないと周囲に理解されづらい障害でもあります。

監修者

米田和子さん日本LD学会特別支援教育士SV

小学校教員として通常の学級担任、特別支援学級担任、通級指導教室担当を30年以上経験。一方で大阪府堺市周辺の特別支援教育に携わる教職員と共に実践・研修活動を展開するほか、親の会を立ち上げ、当事者の保護者としても活動を続けている。現在は、NPO法人ラヴィータ研究所理事長として巡回相談やペアレントトレーニング指導者として活躍。日本LD学会特別支援教育士SVとして講演活動、特別支援教育士やペアレントトレーニングトレーナー養成指導も行っている。また、オンラインによる子育てサロンも立ち上げ、子育て相談の他、応用行動分析によるペアレントトレーニングやティーチャーズトレーニングも実施している。

学習障害の概念の歴史

アメリカでLearning disability (LD)という言葉が使われるようになったのは1960年代といわれています。

当初は「微細脳機能障害(Minimal Brain Dysfunction:MBD)」と呼ばれ、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)や自閉症スペクトラム(ASD)と一括りにとらえられていました。その後、実態が明らかになるにつれて、現在の学習障害に近い概念が広く認められるようになりました。

かつては「言語性LD」と「非言語性LD」の2つに大別されていた時期もありましたが、現在は用いられていません。

現在、医療診断には「ICD」(WHOが作成する疾患の分類)と「DSM」(精神障害の診断・統計マニュアル)が使用されていますが、2013年に改訂された最新の「DMS-V」では、学習障害のことを「限局性学習症」と称し、「ICD-11」でも「発達性学習症」と名称が変更され、「障害」という名称が使われなくなってきています。

一方、日本において学習障害の概念が広がりはじめたのは1990年頃です。

医学的定義と教育的定義には内容に若干の違いがありますが、日本における子どもの学習障害は、原則的に文部科学省が定める教育的定義に基づきます。

教育現場では、明確な医学的診断がついていなくても、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のいずれかが極端に働かず学習に困難のある子どもは、その子の持つ認知特性に応じて支援していくという流れになりつつあります。

「新しい学習指導要領でもこれまで使用されていた障害名ではなく『読みに困難さが見られる』や『書きに困難さが見られる』という症状に対する支援が表記されていることも『ICD-11』『DMS-V』と同様の考え方からきているといえます」(米田さん)

学習障害(LD)の原因は認知機能の凸凹

学習障害は、脳の働きを司る中枢神経に何らかの問題があるために起こると考えられています。

視覚認知、聴覚認知、空間認知など、脳の働きの一部がうまくいかないために、入ってきた情報を整理して関連づけて考えたり自分の考えを表現したりすることができず、読み書きや計算などが苦手になってしまうのです。

ただし、どこにどのような問題があるのか、障害の明確な原因はまだわかっていません

脳の一部の機能不全によって起こるものですから、本人の意欲や努力によってどうにかなる問題でもありません

しかし、一見障害があるようにはみえないため「怠けている」「頑張ればできるはず」などと誤解されやすく、子ども自身がやる気を失ってしまう恐れがあります

「一人ひとりの顔が違うように、脳の働き方もそれぞれ違います。その中で脳の働きに凸凹があると、学習面でのいろいろなつまずきが出てしまいます。大多数の学び方に無理矢理合わせようとするのではなく、その子の不得意な部分をどのようにサポートしていくかを考えることが大切です」(米田さん)

たとえば視力が悪ければメガネをかけるように、認知機能の凸凹を補うにはさまざまな方法があります。学習障害があっても、自分に合った学び方さえわかれば学習する能力を発揮できるようになるのです。

学習障害(LD)の3つの症状と特徴

ここからは、読字障害・書字表出障害・算数障害の3タイプの特徴を紹介します。

なお、同じ障害に分類されても、全ての人に同じ症状があらわれるわけではありません。また、読字障害と書字表出障害など、いくつかの特徴が同時に当てはまる場合もあります。

読み障害・読字障害(ディスレクシア)

「読む」という作業には、文字の形を判別する、文字を思い出す、文字を音に変換する、文章を理解する、といった多くの過程が必要です。この流れのどこかにつまずきがあると、読む能力に困難がある「読字障害(ディスレクシア)」の症状となってあらわれてしまいます。

例えば、耳から入る音の認識が弱く「か」という音が「あ」や「た」に聞こえることがあります。音韻認識の弱さから音と文字の対応が難しく、文字から音が想起しにくいために読めないということが生じてきます。文字を流ちょうに読めないと読解にもつまずきが生じます。

また、文字の見え方に問題があり、ぼやけたり黒いかたまりになって見えたりする場合もあります。文字がうまく読めないと、結果として書くことも困難になるため、読み書き障害とも呼ばれます。

読字障害(ディスレクシア)の例

  • 新しい文字をなかなか覚えられない
  • 「わ」と「ね」、「る」と「ろ」など似ている文字を間違える
  • 黙読が苦手で、読み飛ばしや読み違い、適当読みが多い
  • 「っ」「ゃ」「ょ」といった小さい文字を認識できない

読む能力に困難がある読字障害は、読み間違いやすい単語に色をつけて目立たせたり単語や文節で区切ったりすると、読みやすさを向上させることができます。また、IT機器を使ったディジー教科書(※)や読み上げソフトによる支援も始まっています。

※パソコンなどで文字の拡大・色強調、音声再生などを同時に行える教材のこと

書字表出障害(ディスグラフィア)

書字表出障害(ディスグラフィア)の特徴は、文字を読んだり意味を理解したりすることはできるのに、書くのが極端に苦手なことです。

文字を書くときは、文字の構成と意味をきちんと理解した上で、思い通りに手先を動かさなければなりません。

この記憶や動作の面でつまずきがあると、「読めるのに書けない」という事態が起こりやすくなります。

また、視覚認知や空間認知が悪いために、文字の形がゆがんで見えたり、本来は3本ある線が2本に見えたりすることもあります。

書字表出障害(ディスグラフィア)の例

  • 文字がマス目や列から大きくはみ出す、形や大きさのバランスがバラバラ
  • 左右逆転の鏡文字や、認識できない文字を書く
  • 文字に余分な線や点を書く、または線や点が足りない
  • 板書ができない、時間がかかる
  • 覚えている字をなかなか思い出せない

漢字の「へん」と「つくり」のバランスが悪い場合などは、補助線の入ったマス目のノートを使うことで書きやすくなります

また、正しく漢字を覚えるためには「『上』という字は点が線の上にある、『下』は点が線の下にある」など、成り立ちを理解することが効果的だともいわれています。

板書が困難な場合には、タブレットで黒板を撮影したり時間を延長したりするなどの合理的配慮を学校側に求めることも可能です。

算数障害(ディスカリキュリア)

算数障害(ディスカリキュリア)には、計算問題ができない、図形が理解できない、文章題がわからないなど、つまずきのある機能によってさまざまなタイプがあります

たとえば、計算ができない子どもに多くみられるのが脳のワーキングメモリの問題です。

ワーキングメモリの機能が弱いと見たことや聞いたことを一時的に記憶しておくこと(短期記憶)が難しいため、なかなか暗算ができません。

また、空間認知が弱く筆算を書く際に桁がずれてしまい、その結果、計算を間違うといったケースもあります。

算数障害(ディスカリキュリア)の例

  • 繰り上げや繰り下げの仕組みがよくわからない
  • 筆算式がきれいに書けない
  • 数を記憶することが難しい
  • 文章題で何を問われているかがわからない
  • 計算式で使う記号を理解しにくい

筆算式で桁がずれてしまう場合は、書字表出障害と同じくマス目のあるノートを使うことで、位を揃えて計算がしやすくなります。

また、文章題を解くことが難しい子どもには、文章を絵や図に置き換えたり、キーワードになる言葉をマーカーで目立たせたりすると理解を深めやすいといわれています。

中学生で学習障害に気づくきっかけは?

米田さんいわく、「中学生になって学習障害があることがわかった子は、小学校時代は無理をしながら頑張ってきたケースがほとんど」とのこと。

しかし、小学校の授業には何とかついていけても、中学生になると教科書の字は細かくなり、量が増え、授業の進行スピードも速くなります。そのため、これまでと同じように勉強していても成績が上がらず、保護者が「もしかして学習障害なのでは?」と気づくことが多いのだと言います。

一方、授業などでの学習の様子から、学校側から「発達検査を受けてみては」とすすめられ、その結果学習障害がわかるバターンもあります。

英語学習がきっかけでわかることも

日本語では、たとえば「あ」という平仮名に対しては、必ず「あ」という音がつきます。しかし英語では、「A」というアルファベットは必ずしも全ての単語で「エー」と読むとは限りません。さらに小学校で習うローマ字では「A」は「あ」と読みます。

読字障害(ディスレクシア)がある場合、このような表記と読みの不一致により「英語が覚えられない」「読めない」という状態が起こりやすくなります

また、学習障害のある子どもは、中学校で使用される英語用の細かい罫線のノートが非常に使いづらいのです。視覚認知が弱いと小さな字が書けなかったり、「2」と「z」が判別できなかったりします。そのような場合は、罫線の幅が広いノートを使うと学習を進めやすくなります

学習障害はしつけや育て方とは関係ない

学習障害は、視覚認知や聴覚認知、空間認知など、脳の機能の一部がうまく働かないために起こるものです。決して親のしつけや育て方によるものではありません

また、脳の機能不全であるため、本人のやる気や努力不足のせいでもありません。「本当に困っているのは子ども自身。できないからといって責めないことがとても大切です」(米田さん)。

学習障害の症状には個人差があり、適切な勉強法を見極めるには「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のどの部分につまずきがあるのかを知ることが必要です。

次回の記事では、学習障害の可能性を感じたときの相談先や、学習サポートの仕方、気になる高校進学についてなどを解説します。

<参考資料>
『AD/HD、LDがある子どもを育てる本』月森久江 監修/講談社
学習障害の中学生の子を持つ親御さんへ〜困難解消のためにできること〜 | キズキ共育塾
「学習障害」とは?知っておきたい症状と特徴について|ベネッセ教育情報サイト
学習障害がある子どもの勉強方法。向き合い方や指導のコツとは|家庭教師のファミリー
学習障害(LD)とは?学習障害の症状3種類、年齢別の特徴、診断方法について詳しく説明します
「学習障害」とは?知っておきたい症状と特徴について
学習障害がある子どもの勉強方法。向き合い方や指導のコツとは
日本児童青年精神医学会機関誌『児童青年精神医学とその近接領域』第58巻 第3号 2017年6月1日発行 

加藤朋実

加藤朋実

広告代理店、企業の広報を経て、2008年よりフリーランスライターとして活動。子育て、ライフスタイル、教育、医療、住まい、グルメなど、幅広いジャンルで執筆を行う。人物インタビューや企業インタビュー、イベント取材など、取材経験も多数。そのほか、コラム原稿や書籍原稿の執筆なども手掛けている。趣味は音楽鑑賞と読書、野球観戦。プライベートでは一児の母。

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