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2020.10.19

共働きでも中学受験をして良かった! 子どもの個性に合わせたテクニックが成功の要に【中学受験体験談】

二人のお子さんを中学受験に成功させた元井さん。ママ友へのリサーチ、子どもの性格に合わせた塾選び、夫を上手に巻き込む方法など、エピソードとともに盛り込まれた独自の分析が読み応えのあるリアルで濃い内容になっています。お子さん二人は声をそろえて「中学受験して良かった!」と振り返っているそうですが、当時は苦労する点も多かったようです。

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共働きでも中学受験は必至。夫が推進する“中学男子の環境論”

今回の執筆者の家族構成

・夫:会社員。芸能事務所勤務で帰宅は毎日、深夜。
・妻(執筆者):長男の小学校入学・次男の幼稚園入園のタイミングで、フリーのライターとして仕事復帰。
・長男:3年生の2月に大手の中学受験塾へ。5年時に近所の小規模経営の塾へ転塾。通学と通塾は電車を利用。
・次男:長男と3歳違い。3年生の2月から入塾した大手中学受験塾に最後までお世話になる。通学と通塾は電車を利用。

そもそもわが家の夫は、“周囲に影響されやすい男子は環境を整えないとダメ”という中学受験推進派。小学6年生の時に引っ越しを経験した夫は、新しい学校でいわゆる“転校生いじり”を受け、親に頭を下げて私立中学を受験し第三希望の学校に通ったという経験の持ち主です。

そんな微妙な経験から、リベンジ的な気持ちがあったのかもしれません。高校から入学してきた友人が、地元の悪い友達に引きずられて退学する姿を見て行き着いた、夫独自の“中学男子の環境論”が下地にありました。

対する私は公立中学出身だったため、さほど中学受験に熱心ではありませんでした。それでもヤンキーが幅をきかせる中学から、私立の大学附属高校に入学した時は「私立はのんびりした雰囲気で環境がいい」と実感したこともあり、夫婦で中学受験をさせることで意見が一致しました。

受験のプロが考える中学受験のメリット・デメリットは、以下の記事で解説しています。

なぜ中学受験をするの?私立中学のメリット・デメリット、子どもの向き・不向きを解説
なぜ中学受験をするの?私立中学のメリット・デメリット、子どもの向き・不向きを解説
中学受験業界で学年の切り替わる2月。周りが塾に行き始め、わが子の中学受験に悩む家庭も少なくありません。しかし、そもそもなぜみんな私立中学へ行くの? 大学付属校や.....

中学受験率8割の小学校でも、長男と次男とで意識に差が…

目指したのは“本人の実力を生かし切った受験”。実力以上の学校を目指すつもりはないものの、持っているものは最大限に伸ばして受験させたいと思いました。長男は中堅どころまで到達すれば御の字、次男は順調にいけば御三家を狙える、と見込んでの受験でした。

息子たちが通っていた小学校は、地元ではなく隣の区にある公立小学校。2クラス編制でアットホームな雰囲気があったこと、クラスの8割が中学受験をするという中学受験率の高い学校だったことが越境入学させた理由です。それともう一つ。地元の小学校では母子ともども付き合いが深くなりそうで、私が面倒に思ったという理由もあります。

長男は、通塾にも受験にも特に疑問を感じていない様子でした。しかし次男は少年野球に夢中になっていたこともあり、夏季講習も受けずに6年生の夏合宿まで野球を継続。「なぜ受験をしなければいけないか」の押し問答が毎日のように続いて、最終的には「家のルールだから」とほぼ無理やり受験をさせました。

協力できない夫には、妻からの情報開示が肝!

言い出しっぺなはずの夫は塾代を稼ぐ以外の貢献ができないので、長男の時は細かな報告や相談はせずに進めていました。でも、これが失敗の元。願書を出す段になり「やっぱり早慶は受けた方がいい」とか「なぜ千葉の学校を受験するのか」など、長男と私にとっては唐突にも感じる提案や疑問を投げかけてきたのです。

受験の常識は刻々と変化し、大学附属校が輝いていた親世代の頃とは学校選びの基準が違います。塾や学校の説明会に参加せず、現状を把握していない夫はその辺が理解できないようだったので、長男と私で丁寧に説明をして納得してもらいました。

その反省から、次男受験の際には「夫は私を通してしか受験情報を得られないのだ」と心に留め、聞かれなくてもこちらから積極的に情報を開示、理解してもらうに努力しました。説明会での印象や、射程圏内にある学校名を日頃から伝えておくことで、夫も蚊帳の外に置かれた感がなくなったのか意思疎通がスムーズに。受験の際にも突飛な言動はなくなりました。もっとも、夫の希望する大学附属校を受験したというのもあるかもしれませんが…。

フリーランスという職業柄、全てのしわ寄せが自分に!

一方、私は長男の小学校入学と次男の幼稚園入園と同時にフリーのライターとして復帰。仕事が軌道に乗った頃に、長男の塾通いが始まりました。仕事量が調整できるため学校行事に合わせて休みも取りやすいだろうと選んだフリーの道でしたが、これもまた悩ましい結果になりました。

雑誌とライター契約をしたタイミングと長男の塾通いのスタートがちょうど重なり、鬼のように忙しい毎日がスタート。

共働きゆえに感じた“後ろめたさ”と親自身の体調管理の大切さ

塾のある日はお迎えに合わせて帰宅したり、遅くとも19時には帰宅して夕食を作るようにしました。しかし、時には帰宅途中にお弁当を買って走って帰るなんてことも…。「申し訳ない」「こんな母親は失格だ」と泣きたいような気持ちになったこともありますが、いま考えれば仕事をしなければ私立進学も危ういわが家の家計状況なら仕方のないこと。私立中学に進学すれば、毎日手作りの弁当を嫌というほど食べさせられる!」と腹をくくればよかったなと思っています。

学校説明会や塾の保護者会にはあらかじめ仕事は入れずに参加し、塾ママ同志の探り合いランチには仕事を理由に断るなど、仕事を盾に上手に立ち回る術も習得。しかし問題だったのは、原稿を書く時間の確保です。「寝る時間を削ればなんとかなる」と自分で調整が可能な分、原稿は夜中に回して昼間はフル回転。しかし睡眠時間を削って体調を崩すことが増え、実母や姑にSOSを出したこともありました。

母親が体調を崩すと子どものサポートができないどころか家全体のリズムが乱れ、リズムを取り戻すのに時間がかかります。食事や睡眠時間の確保など、子ども同様に親の体調管理にも細心の注意を払いました。

塾選びにリビング勉強、プリント整理…共働き・野球一家だからこその約束

夫の会社は11時始業と朝は遅いものの帰宅は毎日、夜中という業界。出社前の夫が家事を手伝ってくれることはありませんでしたが、朝の時間を使って受験に関する相談や報告をしていました。

夫の協力が得られない以上、母子で乗り越えるしかないと覚悟を決めましたが長男入塾のタイミングで私も雑誌の仕事が決まり、朝から晩まで取材に駆け回ることが多くなりました。勉強の内容やペース配分に関しては子どもと話し合い、子ども自身が「自分で決めた」という意識を持たせるようにしました。

塾選びは通塾日を基準に。宿題は平日に必ず終わらせる!

長男・次男ともに地元の少年野球チームに入り、夫はその監督・コーチをしていたので、週末は完全に野球一色。6年生になるまでは週末授業がない、唯一の大手中学受験塾に入塾することを決めました。

週末にまとめて勉強時間が確保できないので“平日に必ず宿題を終わらせる”ことを条件に長男は5年生の終わりまで、次男は6年生の夏まで野球を続けました。結果的にはこのメリハリが、受験には良い効果があったように思います。

通塾日を基準にした塾選びでしたが、メリットもありました。

帰宅してから夕食を取る形式だったためお弁当を作る手間がなく、帰宅時間(5年までは20時半、6年は21時半)に合わせて食事を作ればOK。塾への往路は、まだ明るいので自力で。通い始めはお迎えもしていましたが、わが家は最寄駅から徒歩2分と近かったので、5年生以降は1人で帰宅してもらうことも増えました。

勉強は親の目の届く場所で、口出しはせず“見守り”を徹底

わが家にはまだ子ども部屋を設けていなかったので、リビングに長めのテーブルを置き半分は食事に、もう半分を勉強や仕事に使いました。勉強は私の目が届くリビングでやってもらい、質問があればすぐに聞ける環境に。人目があるせいか子どもは勉強に集中せざるを得なくなり、私も家事と見張りを同時進行できるので「本当に勉強をしている?」と疑心暗鬼にならず精神的に平和だったと感じています。

塾からは、「解法が違うので親は教えないように」と言われていました。つまり親の役割は、“教える”のではなく“見守り”。私にとっても「今は算数をやっている」「集中力が切れてるな」と把握できる程度の距離感が、ちょうど良かったと思いますね。

集中力が途切れているようなら、一問一答方式の問題集を私が読み上げて息子が答える勉強に切り替えさせるなど、目先を変えたり気分転換を提案したりするのが私の役割でした。

家事が終われば、私も同じテーブルで仕事に取りかかるので、子どもにとっても“自分だけが勉強をしている”という孤独感とは無縁だったようです。私が頭を抱えながら原稿を書く姿を見て、「苦しいのは自分だけじゃない」と励まされた部分があったのかもしれません。

長男の受験時は次男も小学生だったので一緒に宿題や勉強のまね事をするなど、なるべく静かに過ごさせました。寝室にテレビを設置して離れた場所でテレビを見てもらったり、時間を決めてゲームをさせたりすることもありました。

共働きだから心掛けた“子ども主体の勉強”。親がフォローするのは…

勉強の計画立ては親子一緒に

5年生の秋頃から、宿題以外にも毎日少量ずつ行う“毎日勉強”が加わりました。理科・社会の“覚える”教科を中心に、受験までに問題集を複数巡取り組む勉強スタイルです。これは長男の個人塾の独自指導でしたが、大手塾に通っていた次男にも応用しました。

家庭学習の内容とペース配分がより複雑になったため、本人とよく相談し一緒に計画を立てました。子どもだけで考えると張り切って量を多くし過ぎたり、逆算した計画が立てられなかったりするので私と一緒に計画を立て、トライアル期間を設けて精査。

無理な計画は本人の自信喪失になり、楽勝過ぎれば結果につながらないので、“逐一、計画を立て直して実行する”を繰り返しました。計画は大人と一緒に考えますが、取り掛かる順番や終了時刻などは本人に任せて、私は口出ししないように努めました。

中学受験は親子の受験ともいわれますが、受験当日に親が一緒にテストを受けられるわけではありません。受験する学校は、“子どもが通う”のです。子どもには「受験は自分の進学先を決めるもので、自分の人生に関わる問題である」と少しずつ伝えていき、自分事として捉えてもらうようにしました。そうすることで「専業主婦のママほどケアしてあげられない」と私もマイナス思考に陥らず、「主役は子ども。親は塾代を捻出して健康を支えるのが仕事!」とすっきりした気分になったものです。

塾のプリント整理は試行錯誤してベストな方式に

長男・次男ともども、塾では問題集ではなくプリント教材を使っていました。そのため、膨大な分量のプリント整理が親の仕事。当初は帰宅後や翌日に行っていたプリント整理でしたが、家事や自分の仕事との両立で私のイライラは最高潮に…。

数々の失敗を通して私が行き着いたのは、教科ごとに場所を決めてとりあえず重ねておくこと。そして2ヵ月単位でファイリングできれば上等、くらいの緩さで管理しました。ひもで結ぶ、ビニールに日付を書いてまとめるなどさまざま々な方法を試しましたが重ねるのが一番手っ取り早く、古い教材を探し出すのも簡単でした。

ファイリングには、適性サイズのしっかりしたファイルを購入するのもポイントです。コストを抑えようと100円ショップのファイルを使ったこともありますが、表紙が柔らかく取り扱いがしにくいためストレスになりました。

次章からは長男と次男、それぞれの中学受験についてお話しします。

おっとり長男は、やる気満々すぎた“背伸び受験”

長男は人と争わせてもやる気が出ず大手塾では中くらいのクラスから抜け出せなかったことから、5年生に上がるタイミングで転塾を決意。

ママ友リサーチで見つけた評判の個人塾へ転塾

まずは周囲のママ友に端からリサーチをかけ、評判や口コミを聞き集めました。その中で“小規模塾だけれど、なぜか男子の進学成績が良い”という個人塾を聞きつけ、仕事の合間に塾長に話を聞きに行きました。元大手塾の講師で教材はオリジナルで作成したもの、「基本をとことん身につけることが受験の近道」というスタンスに納得。

他塾も見学した方が良いか悩みましたが、私にも本人にも時間的余裕がなく、家から電車で一駅という好立地だったこともあり転塾を決意。カリスマ性を感じられる塾長で褒め上手なこともあり、長男も転塾には前向きでした。

中学受験に関わる子どもの精神的成熟度

転塾後は理解力がグングンと上がり、本人にも自信がつき「新御三家」といわれる学校に受験を決意。親からみると目標高めの受験校でしたが、志望校選びは本人のやる気に直結するため長男の意向を尊重しました。

しかし、結果はやはり第一志望には届かず第二志望に合格。結論からいうと、精神的に幼かった長男に中学受験は少し早かったかなという印象があります。大学受験時にはこちらが驚くほどの力技で第一志望の国立大学に合格したので、子どもの精神的成熟度も受験には大きく影響すると感じています。

しっかり次男は納得するまで動かず、最後まで受験に後ろ向き

受験の3ヵ月前まで「なぜ受験しなければいけないのか」と、後ろ向きだった次男。しかし大手塾のクラス分けテストや点数で席順が決まるシステムに燃えるタイプだったので、長男のように転塾はしませんでした。

追い風となったのは次男自身の“気付き”

4年生まで順調だった成績は、5年生で中だるみ。中くらいのクラスまで落ち込みましたが「このクラスの雰囲気は自分には合わない」と奮起し、上位クラスに返り咲きました。当時を振り返り、次男自身は「この頃、日々の学習の積み重ねが受験勉強に直結していると腹落ちして、そこから前向きになれた」と話しています。

学校選びは「受験に邪魔されず野球をやりたい」「野球強豪校に行きたい」という野球基準で、早い段階で大学附属の中学校受験を決心。結局、一校も学校見学はせずに受験に挑みました。親としては御三家を狙わないのは無戦敗のような悔しさもありましたが、第一志望の大学付属中学校に進学を決めました。

共働きでもそうでなくても中学受験に違いはない!

人と争う気持ちが希薄で、理解するまでに時間のかかる長男は小規模個人塾。プライドが高く戦闘意識を刺激されると燃えるタイプの次男は大手と、子どもの個性に合った塾選びは中学受験の肝になったと思っています。

脇道にそれますが長男次男ともに、スイッチが入って受験に前向きになったタイミングはそれぞれで、親きっかけではありませんでした。「親が子どもを変えられる」「親がどうにかしなければ」と思うのは、完全なる親の思い込み。逆に考えれば専業主婦でも共働きでも、子どもに影響が出るほどの違いはないのだと思います。

最後に、共働きで子どもに中学受験をさせた経験者としての実感をお話ししたいと思います。中学受験を振り返ると、デメリットもありますが実は「共働きで良かった」と思うことばかりなんです。

経験者が実感! 共働きの中学受験のメリットとデメリット

メリット

  • 親が受験にのめり込み過ぎず、塾にお任せする気持ちになれる。
  • 子どもの自立心・主体性を育てやすい。
  • 子どもの塾代・進学費用と思えば仕事のやりがいにつながる。
  • 夫が私の仕事に理解を示してくれる(受験・私立学費にはお金がかかることを説明)。
  • 子どもと一緒に勉強や仕事をする時間が作れる。
  • 先の長い私立進学の学費を準備できる。

デメリット

  • 仕事への制約(早帰り・やりたかった仕事を諦めた)。
  • 仕事の途中で話しかけられたり、読み合わせや一問一答などに付き合ったりと仕事が進まないことも。
  • 私に負荷がかかり体調を崩すこともあった。

思考の転換が大事! 共働きで中学受験を乗り切る考え方のコツ

  • 学校説明会は欲張らず“雰囲気が分からない学校”、“本当に行きたい学校”に絞る。広報担当者の話よりも、生徒の雰囲気や通学している人の話の方が役に立つ。
  • 塾の保護者会は、ほどほどに。私の場合は煽られているような気持ちになったため、2回に1回程度の参加に抑えた。
  • お迎えや弁当作りなど、“してあげられない”ことを数えず「中学受験ができるわが子はなんて幸せなんだろう」とプラスに考える。
  • 4年生から始まる3年間の受験勉強で、中だるみの時期は必ず来る。でも弛緩があってこそいざという時に力が入ると割り切り、放置することも大事。

共働き、特に母親が働いている姿を見せることは、中学受験のみならず子どもを育てる上でメリットが多いと私は思っています。共働きを理由に中学受験や仕事を諦めず、親子で無理をしないちょうど良い道を見つけられたらベストなのではないでしょうか。

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元井朋子

大学卒業後、編集プロダクションや業界新聞などを経て、フリーの編集ライターへ。街紹介サイトや子育てサイトでの記事執筆で、トータル1000件以上の学校や子育て支援施設、ママサークルなどを取材。現在は実用本の編集・ライティング、人物インタビューなどを中心に活動中。2人の息子の母。

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