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2020.02.14

精神科医が解説/不登校中のHSCが抱えるトラウマと心の中で起こっていることとは

とても敏感で感受性が高い気質を持つHSC(Highly Sensitive Child)の中には、学校生活の中でトラウマを抱えてしまう子もおり、そのまま不登校になってしまう子も少なくありません。今回は、不登校になったHSCの心と体で起こっていることについて精神科医の斎藤 裕さんが解説します。

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不登校になったHSCを苦しめている感情とは

以前、下記の記事の中でHSCが「学校に行けない」「学校に行きたくない」のは、2つの理由からだと書いています。

HSCが不登校の原因に?敏感な子どもが負担を感じてないか「学校との相性チェック」で確認しよう
HSCが不登校の原因に?敏感な子どもが負担を感じてないか「学校との相性チェック」で確認しよう
「学校がつらい」「学校に行きたくない」と感じて不登校になる子の多くに、HSCの気質が見られることを知っていますか? 今回は、多くのHSCにとって、学校がどんなふ.....

HSCが不登校になる理由

①気質に合わないことによる拒否反応である

②本来の気質が活かされないまま、本当はやりたくないことをやらされることが多く、自分のペースで「自発的」に「主体性」をもって自分らしく生きることができなくなるなどの結果である

ところが、中には、上記のようなHSC気質の面に加えて、トラウマが関係していることもあります。

HSCは、外向性(社交性)を重要視する学校生活(環境)や人間関係の中で、気質が合わずに多くのストレスを抱えており、「自己否定感」「劣等感」「挫折感」「屈辱感」に苦しむ傾向があります。

また、不登校になると「『学校に行きたくない』と言ってしまった」「学校に行けなくなった」ことで親に迷惑をかけてしまったという「罪悪感」を抱えていることがあり、それらによって身も心も疲弊してしまっていることが多いのです。

また、HSCの中には、HSS(High Sensation Seeking=刺激追求型)、HNS(High Novelty Seeking=新奇追求型)という好奇心旺盛で、新しい刺激を求めようとする傾向を示す気質を強く併せ持つタイプの子が存在します。

HSS・HNSの気質を強く併せ持つタイプの子とそうではない子は、それぞれに、トラウマを抱えた際の態度や行動、あるいは症状の出方に違いが見られると考えていますが、今回の記事では、HSCに焦点を合わせて述べていきたいと思います。

では、次からは、HSCが抱えがちな苦しみが、どうしてトラウマにつながるのかを話していきましょう。

HSCにとってトラウマになること

そもそもトラウマとは何なのでしょうか?

怒りや悔しさ、あるいは恐怖や悲しみなどのネガティブな感情は、外に吐き出したり、誰かに受け止めてもらったりすることがないと、解消されず、心の奥底に押し込められてしまいます。これがトラウマとなるのです。つまりトラウマとは、消化されていない過去の記憶ともいえます。

特に、繊細で傷つきやすいHSCは、虐待的な体験などの深刻なものだけでなく、小さな出来事でもトラウマとなって心に残っていることが多いようです。

HSCにとってトラウマになりやすい出来事

  • 友だちや教師から、からかわれた
  • 仲間外れにされたと感じた
  • 無視された
  • 学校で先生に当てられて答えられなかった
  • みんなの前で恥をかいた
  • 自分は真面目に頑張っているのに、何度もやり直しをさせられた
  • 給食でつらい思いをした
  • ほかの子が怒られるのを見るのがつらい
  • 先生の怒鳴り声が怖い
  • 苦手なこと、やりたくないことを無理強いさせられた

ほかにも、幼少期から「園(保育園・幼稚園)に行きたくない!」と訴えていたにも関わらず、「無理やり行かされた」「やりたくないことをやらされた」ことで、自分の安全や自尊心が脅かされ続け、それが強い不安(トラウマや愛着関係の傷)になって尾を引いている可能性もあります。

そう考えると、不登校になったのは、“自分の安全や自尊心を脅かす環境、関係性から離れるため”あるいは、“自分を守るために殻に閉じこもろうとしている”からだといえるのではないでしょうか。

心の傷はHSCをさらに傷つきやすくさせる

また、覚えておいて欲しいのは、“敏感な子(HSC)は、一度心に傷を抱えると過剰に敏感(過敏)になり、さらに傷つきやすくなる”ということです。敏感性が高いほど、その傾向が強く出ます。

つまり、一旦トラウマを抱えると、ささいなことにも過剰に反応するようになり、ストレスに対する抵抗力(ストレス耐性)が下がってしまいます。その結果、さらに傷つきやすくなって、トラウマを重ねていくという悪循環にはまってしまうのです。

そして、ストレスから逃れるために、〝解離〟という防衛機制を無意識のうちに身につけていくことがあるのです。

解離とは…

耐えきれないほどのストレスを受け、物理的に逃げ出すことができない時、意識が変容したり記憶が飛んだりすること。「ボーッとしている」「授業に参加してはいるけれど成績がかんばしくない」「忘れ物が増える」などで表れることが多い。

表に出ていない心の傷に気付いて

さらに、不登校中の子どもは、学校から離れて過ごすことで直接的なストレスから解放されます。時間が経過するにつれて落ち着いていき、以前のような笑顔も見られるようになり、問題なく過ごしているかのように見えることでしょう。

しかし、学校で負った心の傷が、表に出ていないだけで思いのほか深くなっていることが往々にしてあるのです。

心の傷を修復するためには…

怒りや悔しさ、恐怖、悲しみなどのネガティブな感情を、「怒鳴る」「わめく」「思いっきり泣く」といった方法で外に吐き出して解消することが必要です。心の奥底にあったものを外に出すことで、ようやくその時の出来事や体験が過去のものとなり、「時間とともに忘れていく」ことができます。

逆をいえば、ネガティブな感情を自ら外に吐き出したり、誰かに受け止めてもらったりなどの処置が施されないと、解消されず心の奥底に押し込められたままになり、心の中にはトラウマ記憶として残ってしまうのです。

学校から離れて、学校に関すること以外の面では元気に見えても、消化されていない感情を吐き出してつらかった出来事や体験を過去のものにしない限り、トラウマ(トラウマ記憶)は心の中に残っています。

トラウマを抱えた子どもは、「また嫌な思いをするのかな」「また傷つくのかな」「また恥をかくのかな」「また何か失敗をするかもしれない」ということに敏感になっています。そのような状態で、学校に行くよう勧めててしまっても、「行かなければいけない」と子どもが思うほど、本人の体は動かなくなっていきます。

元気そうに見えても本当はモヤモヤしていて、今までずっと抑え込んできたもので一杯であるということを忘れずに見守ってみてください。

いい子として生きる習慣を見直そう

不登校中のHSCが元気そうに見える理由は、親や大人の意向を敏感に感じ取ろうとするHSCの特性にもあります。自分のことは後回しにして、親や大人の意向に沿うような行動を取ろうとする傾向があるのです。

つまり、無意識のうちにネガティブな感情を出さずにいい子として生きる習慣を身につけてしまっているのです。さらに、トラウマを抱えたHSCの中には、「学校に行けないことで親に迷惑をかけているのではないか」という後ろめたさなどもあって、過度にいい子として振る舞うケースも少なくありません。

ただ、そうしたケースでは、思春期・青年期以降になってから、対人関係におけるストレスや何らかの挫折をきっかけに、不安障害やうつ、摂食障害や依存症などの問題、そのほか結婚後の夫婦間や子育てに関わる問題が表面化してくることも少なくありません。

子どもの心の中で起きていることを表に出さないままでいると、心の中にトラウマとして残り、その後のわが子の人生に大きく影響してくるのです。

HSCの概念も含め、「トラウマについてもっと早くに知ることができればよかった」と話す保護者やHSCだった人(HSP)は多いものです。

子どもの将来に対して「大丈夫だよ」言えるよう、まずは、不登校になった子どもの心の中で今起きていることを親が認知してあげてください。

そして、「いい子である必要はない」「いい子じゃなくてもいいんだよ」「ありのままの感情を出していいんだよ」ということを伝え、いい子である習慣を見直すことも考えてみてくださいね。

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