2020.01.08

子どもの競争心は必要か? 現役教師が考える”競争心”の在り方とは 

学校の中で「子どもに競争させたり、点数をつけたりする教え方は良くない」と耳にすることがあります。しかし、本当に良くないのでしょうか。 逆に「点数をつけてあげることで、子どもはやる気になる」という先生に出会ったこともあります。子どもに競争心を持たせることや、点数をつけて教育することは必要なのか、不要なのかを考えてみましょう。

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競争が良くないとされる理由って何?

私が小学生だった頃テストが80点以下の場合、答案用紙に点数を書かないという先生がいました。普段、点数を書かれないことの方が多かったので、時々100点と書かれたテストを見ると、妙にうれしくなったものです。点数が書いていないということは、間違えている箇所が多いということ。間違いを直して正解すると青ペンで〇をつけてもらい、全部○になると青で100点と書いてもらえました。

 

しかし逆に、競争を日常的にも仕掛けるということもする先生でした。クラスの班で“どの班が素早く先生の言う通りにできたか”、“時間通りに自分の席に座ることができたか”、“全員がきちんと宿題をやってきたか”などを競い合いました。

 

この先生は、“競争”の良い点、悪い点を知っていた先生なのだと今では思います。子どもに劣等感を抱かせるようなマイナス面が目立つ競争は良くないと思いますが、競争の全てが悪いとは思いません。

 

子どもに“競争させたり点数をつけたりするのは良くない”と考えている先生は、おそらく次のように考えていると思われます。

 

  1. 間違った問題に×をつけるのは子どもがかわいそう
    小学校低学年の子の中には、問題が解けない、分からないことで泣いてしまう子がいます。×(不正解)をもらって泣いてしまう子もいます。子どもに悲しい思いをさせたくないという思いから、×をつけないということでしょう。

  2. ×をつけると子どもが怒り出す、やる気をなくす
    テストで×をもらったり、悪い点数を見たりして「僕、もうやらない!」「やる気なくした!」と怒り出してしまう子がいることもあります。しょんぼりしてしまう子もいます。このような子を出したくないために×をつけない、点数をつけないということなのでしょう。

  3. そもそも、子どもに競争させたり点数をつけたりなどするべきではない
    「人間の価値はそもそも点数で決まるものではない!」「競争は勝ち負けを決めること。勝った子はいいが、負けた子がかわいそう」と思っているのではないでしょうか。

 

 

 

 

学校では本当に競争をさせるべきではないのか?

しかし、本当に競争させたり点数をつけたりしてはいけないのでしょうか。やる気をなくしてしまう子も中にはいるかもしれませんが、全員がやる気をなくすとは限りません。「次回は頑張ろう」と思う子もいるでしょう。

 

自分が取った点数に落ち込んでいる子がいるならば、「良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!」でも解説した「サンドイッチ法」を使います。「前のテストより10点も上がっているよ。それははあなたが頑張ったからだね」などと声掛けできます。その後「努力は無駄にならないよ。また勉強しておくと、きっと点数が上がるよ」「また頑張ってね」と声を掛けてあげるのです。

 

「良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!」

 

テストは、子どもの人間性の点数ではありません。行為の結果です。子どもの性格、人格に点数をつけることではありません。

 

子どもの行為に点数をつけることを「個別評定」といいますが、その例としてよく挙げられるのが、跳び箱です。きれいなフォームで跳べていたかどうかなど、観点を決めて評定します。フォームなどに点数をつけると、子どもは高い点数を取ろうと前向きに挑戦します。「個別評定」は、子どもを成長させる大切な指導方法の一つです。

 

もし、学校で競争したり点数をつけたりしてはいけないというのであれば、運動会や通知票の存在が疑問化します。

 

私は、適度な競争心を子どもに持たせることが大切だと考えています。子どもがやる気になったり熱中したり、自信を持てたりするような競争であれば良いのではないでしょうか。もちろん、中には良くない競争があることも確か。今ではほとんど見かけなくなりましたが、宿題忘れや忘れ物の表のようなものが当てはまります。宿題忘れの表は子どもたちに宿題を忘れさせないための競争ですが、宿題を忘れた子は表にシールを貼られるため、マイナス面がはっきり出てしまいます。また、忘れ物表に関しても明日までに必要だと分かっていても家庭の事情で用意できないなど、子どものせいではないことがあるかもしれません。このような競争、評価の仕方は良い指導だとは言えません。

 

しかしながら、子どもの劣等感につながらないような適度な競争心を育むことは大切なことだと思うのです。

 

 

 

 

競争社会に対応できる子どもに育てよう

適度な競争心はなぜ必要なのでしょうか。いま現在の社会では、“競争”が多いからです。それゆえ、競争社会でも生きていけるようにすることが必要なのです。子どもの中学・高校・大学入試も、学校に入学するための競争と捉えることができます。

 

「銀座まるかん」の社長・斎藤一人さんは、今の現実社会は「競争社会」だと言っています。

 

「学校にいけば学校の中で競争があるし、会社に行けば社員同士の中で競争がある。さらには同じ業界、国と国とも競争しあっているんです。それで、この競争も人生の修行なの。どんな修行かというと、競争し、戦い、ときには負けることがあっても、それでも人を憎まない、めげない、ひがまない、さらにはそんな中でも人を助けることができますっていう、修行なんですね」

『変な人が書いた世の中のしくみ』齋藤一人著 サンマーク出版

 

学校で、子どもたちに百人一首をやらせることがあります。百人一首をやらせる前とやらせた後に、先輩教師から教えてもらった言葉を子どもに伝えます。「勝っておごらず、負けて腐らず」。

 

「勝って喜ぶのは問題ない。いけないのは負けた相手をバカにすることだ。負けて悔しがるのもいい。悪くない。泣いても構わない。いけないのは、ずっと泣きっぱなしでいること。相手はルールをきちんと守って勝ったのに相手がズルをしたなど、勝った相手を悪く言うことだ」と話します。

 

今すぐに受験をしないという子も近い将来、競争することになります。競争社会で連続して勝ち続けることができれば問題ないですが、勝ち続けることは大変なこと。時には負けることもあるでしょう。その時のために「自分を褒めることのできる子は伸びる! 子どもの自己肯定感を高めよう」でも書いたように、“挫折の経験”をさせておくことも大切です。

 

適度な競争心が必要なのは、“競争社会に適応できるだけの力を持った子どもに育てる”ためだと言えるのです。

 

「自分を褒めることのできる子は伸びる! 子どもの自己肯定感を高めよう」

 

 

家庭でも競争は必要か?

以上のことからも、“適度な競争心”や“劣等感を持たさない競争”は必要です。しかし、集団を相手にする学校教育と集団が相手ではない家庭教育とでは少々、事情が異なります。

 

「良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!」でも書いたように、きょうだい間で競争させることは比較してしまうことにもなります。したがって、家庭での競争はふさわしくないと言えそうです。

 

良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!

 

ただし“子どもが自分自身と競争できる”ように意識させることは可能であり、必要なこと。例えば「今日は5つの漢字の練習をしよう」と思っていたら、5つの漢字をきちんと練習できるようにすること。5つ練習しようと思っていても遊びたいから練習しないということでなく、練習してから遊ぶということができるようにするのです。子どもが、自分の目標を達成できたかどうか確認してあげるだけでも良いのではないでしょうか。

 

子どもが劣等感しか持てないような競争は良くありませんが、適度な競争心を持たせることはこれからの競争社会を生きていく上でも必要なこと。子どもの行為に点数をつけることも悪いことではありません。子どもたちが“適度な競争心”を持てるように育てていきたいですね。

 

須貝 誠

須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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