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2023.06.02

【イベントレポート】子どもが「学校に行きたくない」と言ったら?小中学生の子を持つ親の悩みに専門家が回答

2023年5月11日(木)にソクたま初のオンラインイベントが開催されました。今回は「新学期の悩みや困りごと」がテーマ。子どもの変化や悩みに対して親としてどう対応すべきなのか……。参加者のリアルな悩みに2名の専門家に答えていただきました。参考になる具体的なアドバイスが盛りだくさんだったイベントの様子をレポートします。

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保護者が悩む「新学期の悩みごと」

『ソクたま』の主な読者層である小中学生のお子さんを持つ保護者の方を対象にオンライン形式で行われた本イベント。編集長 片岡からのメディア紹介後、2つのテーマに関する質問と参加者からの質問に『ソクたま相談室』でもご活躍されている2名の専門家に回答をしていただきました。

専門家紹介

児童発達の専門家

車 重徳さん心理士・カウンセラー

発達心理サポートセンター代表、心理士、カウンセラー、教員、 保育士、介護福祉士。長年、発達障害や学習障害、精神疾患の子ど もや大人のサポートや指導に従事。 「WISC-Ⅴ検査」については、公認心理師や臨床心理士に対しての研修や指導も行っている。

不登校の専門家

関野 亜沙美さん

約 10 年にわたり学校教育に携わり、不登校・発達に悩む生徒、保護者の方の相談を 1,000 件以上担当。 受け持った子どもの約 8 割が大学に進学したなどの実績がある。 これまでの知識と経験を活かし、生徒・保護者だけでなく、教育関係者向けのアドバイザーとして活躍中。

性別で異なる「子どもの変化と悩み」

ーー新学期がスタートして1カ月が経つこの時期は、子どもに様々な変化が出てくる時期と言われています。ソクたまが行った調査でも半数以上の方が「新学期を迎えた際、子どもの言動に不安を感じる変化があった」と回答しました。では、その“変化”とは具体的にどういったものなのでしょうか?

車さん(以下、敬称略)お友達関係や先生との相性が悩みとして多く見られ、学校に合わせることができないという悩みに繋がっていきます。「小1プロブレム(※1)」や「中1ギャップ(※2)」と呼ばれる現象もあります。

※1:小学1年生が学校生活に適応できずに起こす問題行動が数カ月続くこと
※2:中学校進学の際に新しい環境や生活に馴染めず、いじめや不登校などが起きやすくなること

関野さん(以下、敬称略):車さんも言うように、新学期は環境の変化が大きいです。それと同時にGW明けは不規則な生活になりがちで睡眠時間が減り、問題に向き合う体力がなくなることも。偏食から隠れ貧血になっているケースもあり、集団生活に合わせる心身の体力の不足が見られたりもしますね。

ーー性別や年齢によって違いは見られますか?

:女の子はお友達関係や、クラスに馴染めないという相談が多いです。「入学後の3日でその後の1年が決まる」とまで言っていた女子中高生もいました。
男の子だとちょうど学校に慣れ始めて、元々の性格やなまけ癖のようなものが出てくるのに伴って朝起きれなかったり、授業についていけないというのが出てきます。

関野:小学校低学年は、保育園・幼稚園までの遊びを主軸とした生活から、学習を主軸とした生活に変わる時期。その新しい生活への適応における課題が多く見られます。

小学校の高学年になるといきなり学習が難しくなると言われています。今までは順調に勉強ができていたところからつまづきを感じ始めて、勉強における不安から登校しぶりが出てくることもあります。

また、高学年は発達の差が出てきたりスマートフォンが与えられ始める年齢でもあるため、発達に関する問題や対人関係、SNSでのトラブルも高学年から目立ってくると感じています。

ーーそのような悩み・トラブルに対して親としてどう対応するのが望ましいのでしょうか?

関野私が一番大事にしているのが「アセスメント」という本人の悩みや強みを深掘る情報収集です。情報を元にどう支援するかを考えて実行していきます。
できれば複数の視点から情報収集をしたり、家族以外からのサポートもできるとよりよいので、祖父母や学校の先生など“家族以外の本人と相性のいい人”についても考えておくといいですね。

情報収集の際に心がけるべきことは、子どもが言うことを否定をしないでとにかく聞くに徹すること。

明らかに犯罪的なことでもまずは否定せず受け止めることが大事です。子どもならではの軽はずみなことを口にしてしまったりしますが、その時に口を挟んだり自分自身の経験を伝えたりするのは避けてください。ぽんぽんと出てくる言葉は表面的なものも多いです。言いよどんだり、沈黙したあとに言うことが本当のことだったりするので発言を待ってあげてくださいね。

また、一番大事なのは関野さんもおっしゃっていたように子どもを取り巻く環境の中で、「子どもが相談しやすい人」を作っておくということ。
そういう人が身近にいないとSNS等で相談相手を募ったりして犯罪に巻き込まれることに繋がってしまいます。

ーー事前アンケートで「家族以外で心を許して悩みを相談できる人がいないようです。内気な子どもは悩みやすいタイプなので、相談相手が複数いた方がいいとは思うのですが、どのように作ったらよいのでしょうか?」と質問がありました。

:誰に心を許しているのかを探ってみるのがいいです。保健室や塾や習い事の先生、主治医、親戚などどこかしらにいるのかなと思います。そして「相談しなさい」と子どもに声をかけるのではなく、親が先回りして大人に「話を聞いてあげてほしい、声をかけてほしい」と依頼をしておいて環境を整えていくのがいいですね。

子どもに「学校を休みたい」と言われたら?

ーー 実際に学校行きたくないと言ってきたら、親として対応が悩ましいですよね……。どう接してあげるのがよいのでしょうか?

関野:“このまま休みが続いたらどうしよう”と親御さんが不安に思うのは自然なことです。ただ、“学校に行かせなきゃ”という気持ちが強くなり、休みたい背景や気持ちの汲み取りが抜けてしまうと“受け入れてもらえなかった”と本音を言えなくなってしまう可能性もあります。なので、サボりたい様子でなければお休みさせてあげるのも一つの方法として大事ですね。

いじめが原因であれば無理する必要はありません。ただただゆっくり休息させてあげてください。

:状況によっても多少変わりますが、やはり休憩が必要なのであれば休憩させてあげるのが大事です。ただ、親としては理由が気になりますよね。親子関係ができているのであれば“休むのは構わない”という前提で理由を聞くのもひとつ。悩みを解決するというより、解き放ってもらうイメージです。大人でも話すことによって心が安らぐというのはありますよね。雑談の中で会話する形がとれるとベストかなと思います。

ーーもしお休みが長い間続いたら親はどうすればいいのでしょうか?

思い切って環境を変えるというのも選択肢として考えてほしいです。特に私立学校に通っている場合“行かないけど学費を払っている”という状況にもなりますし、なにより家の中で悶々と考えていても解決はしないです

多少元気になったらひとりで過ごさせるのではなく、フリースクールや適応指導教室に通って違う友達との関係をもう一度築かせてみるのもいい方法です。そういう施設が近くにない場合は、親の職場に連れて行って勉強やお手伝いをさせている方もいますよ。

関野:学校に行けてない自分に対して自己肯定感が下がってしまう可能性があります。なので子どもに役割を与えたり、ボランティアや習い事などで自己肯定感を上げてあげることが大事です。

プラスで私が大事にしているのは、学習をさせるということです。学力が保証されていないと登校復帰後に学習に不安を感じることになってしまいます。

いまは無料の学習教材がネット上にもあったりするので、親が見れないときは1日分の本人が無理なく達成できるレベル・枚数のプリントを用意してあげるというのもよいですね。

参加者のリアルな悩みに専門家が回答

悩み1

先生との相性が悪くて登校をしぶるようになった場合の対応や、学校との連携について知りたいです。(小学校中学年のお子さんを持つ参加者)

関野:最近の学校は複数の先生でひとりの生徒を支援していきましょうという“チーム支援”の体制が基本になっています。

相性というのはどうしてもあるので、担任の先生を飛ばして学年主任の先生や本人と関わりのある先生に相談をしてもいいと思います。

相談があったら学校では個別のケースの対応を検討する会議が行われるので、保護者は子どもと学校の調整役になれたらいいですね。

担任の先生以外に相談することに抵抗があれば、スクールカウンセラーに相談するのもおすすめです。実は子どもだけでなく保護者も利用することができるんですよ。

悩み2

娘が仲良くなったばかりの友達から「距離を置きたい」と言われたそうです。背も小さく男の子にからかわれることも。こういう時はどのような声掛けが最善?間違ったことを言っていないか不安になります。(小学校低学年のお子さんを持つ参加者)

:内容が間違っているかというよりは、“お母さんはこう思う”というスタンスでお話をすればいいと思います。実は“親がなにを言うか”よりも“誰が言うか”が大事だったりします。親が何回も言うよりも、その子が信頼や尊敬している誰かに言われると届くことも多いんですね。

なので“家族以外に相談できる人”の話にも通じますが、親がそういう人を見つけて「こういうことを言ってほしい」と根回しをして伝えてもらう。その方が親の気持ちが早く子どもに届くんじゃないでしょうか。

悩み3

小3の娘がクラスで自分だけまだ友達ができないことに悩んでいます。人間観察力が鋭く人との関わりに臆病になる傾向があります。自分から声をかけようと努力はしているようですが「一人でいるのは嫌だ」と学校に行くのが辛い様子です。

関野:いまは同学年と人間関係を築くのが苦手という生徒さんは多くいて、休み時間などのフリーの時間を過ごすことが辛いと思います。先生と連携して気にかけてもらったり、例えば保健室の先生に自分から話しに行けるような環境を保護者の協力を得て作れるといいですね。

もしくは、人間観察力が鋭いという強みをもっているので、クラスのなかでこんなことが気になっているということを担任の先生に報告して、先生のサポートをする役割を担ってみるのもひとつです。親御さんは「困っている人がいたら声をかけてみたら?」など、声かけのきっかけのタイミングを教えてあげるのもいいと思います。

「保護者の心の健康も大切に」専門家からメッセージ

ーー最後に、保護者のみなさまに一言メッセージをお願いします。

関野:質問の中でご自身のことを“毒親”とおっしゃっている方もいましたが、こういったイベントに参加されているということは決して毒親ではなく、一生懸命なだけなんだと思います。自分のせいでおうちの方が辛い思いをしているのは子どもも辛いはずなので、自分はダメだと思わずに発散してほしいです。

各自治体には「子育て世代包括支援センター」があり、保護者のサポートをしてくれるところもあります。ひとりで抱えずに、『ソクたま相談室』も含めた相談機関に頼って、保護者の方の心の健康も大切にしてほしいと思います。

:私の専門は「WISC」という知能検査ですが、知能だけではなくて、“一般常識はあるのかな?”“お友達の気持ちを察せられるかな?”といったことも検査でわかります。視力検査や聴力検査と同じで、それが分かるとその子が抱えている悩みも見えてくるんですね。

『ソクたま相談室』でも相談や検査の依頼も受けています。子どもの状態を知って対応を検討することもできるので、もしなにかあれば利用してみてください。

WISC検査の専門家、車 重徳さんに相談してみませんか?

ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、オンライン上で車さんに子育ての悩みを相談できます。

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「ソクラテスのたまご」編集部

大人のための子育て・教育情報サイト「ソクラテスのたまご」で、子育て・教育の専門家150名以上の取材協力や監修のもと子育てに関する確かな情報を発信中。子育て・教育の悩みに特化した日本最大のオンライン相談サービス「ソクたま相談室」を運営。編集部員は、全員が子育て中の母親、父親です。|公式インスタグラム公式LINE

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