私は数学ができない……「理系が苦手」な子どもの親がやっている、残念な声かけ
一時期話題となった、理系女子のことを指し示す「リケジョ」という造語。「リケジョあるある」「リケジョの特徴」などと取り上げられ、物珍しい存在かのように扱われてきました。日本は、「男性=理系、女性=文系」というステレオタイプが根強い国です。では、その思い込みはいつから生まれるのでしょう?
「男性=理系」「女性=文系」は思い込み?
日本では、小学生・中学生までは、文系or理系の選択はなく、男子も女子も国語も算数も同様に学びます。小学校教師の筆者が授業の様子を見ていても「男子の方が算数が得意」「女子の方が国語が得意」という圧倒的な差は見受けられません。
しかし、高校1年生の秋ごろになると、文理選択の場面が訪れます。文系?理系?と問われたときに、「男だから理系に進んだ方が……」「女だし、文系でいいかな」といったステレオタイプ的な考え方を耳にします。
理系に進学する割合は男子の方が高いこともあり、なんとなく「男性=理系」、「女性=文系」が一般的というバイアス(思い込み)のもと、文理選択をしてしまう場合も……。理系女子を増やそうと「リケジョ」という造語も生まれましたが、近年では「偏見」「差別用語」であると指摘する声も上がっています。
親や教師の声かけが「文理傾向バイアス」に関係!?
では、「男性=理系、女性=文系」といったイメージは、いつから生まれるのでしょうか?
Institution for a Global Society 株式会社が開発した「Ai GROW(アイ・グロー) 傾向チェックテスト」により、「文理選択を迫られる高校1~2年生の頃」だという興味深い調査結果が明らかになりました。
調査によると、この「文理傾向バイアス」は周囲の人々の声かけや環境が要因となって形成されます。高1~2年生時の文理選択にあたり、教員や友人、保護者などの周囲の人からの「女子は文系」というバイアスを形成するような関わりがあるのかもしれません。
また、そのバイアスが数学のテスト結果に影響を及ぼしている可能性も指摘されています。
TIMSS(国際数学・理科教育調査)(2019年度)によると、中学2年生時点の数学平均点数は男子が595点、女子が593点であり、男女差はないという結果になりました。一方、東京理科大学数学教育研究所の基礎学力調査(2020年度)では、高校3年生時の数学平均点数は、4つのテストのうち3つで男子の方が高いという結果になりました。
アメリカの社会心理学者クロード・スティールの研究が、周りの人に偏見(バイアス)をもって接されると、学業やスポーツ、仕事などで実際にパフォーマンスが落ちてしまうという可能性を示唆しています。
高校1~2年生の時期に「女子は文系」というバイアスが強まり、高校3年生の頃には実際に数学の点数に影響が出ている可能性があるのです。
「文理傾向バイアス」を可視化するメリット
「Ai GROW傾向チェックテスト」は、全国各地の学校で利用され始めています。「IAT(Implicit-Association Test)」という手法を用い、自身が意識していない潜在意識が文系・理系のどちらに強く結びついているかを可視化します。
「文理傾向バイアス」を可視化することは、文理選択の判断材料の1つになるというメリットがあります。
実際に、利用した生徒からは、次のような声も寄せられています。
家族や周りと比べて自分には理系は難しいと思っていたが、結果を見て自信を持って理系に希望を出すことができた
理系に進みたかったが面談でも両親からも文系を進められ迷っていた。理系で希望を出します
また、教員サイドからも、「成績が平均前後の生徒には無意識のうちに文系を進めていたが、文理選択指導における判断指標ができた」「中学から継続的に計測して文理傾向の変化を確認。生徒は進路を早期から意識できるようになった」といった進路指導についてのメリットが挙げられました。
現代社会では、あらゆる職種においてデジタル化が進み、数理科学的なものの見方やスキルが役立つ職種が増えています。「私は理系じゃないから」というバイアスで理系への道を閉ざしてしまうのはもったいない。
文理選択は、自分の道を切り開く第一歩。子どもの可能性を閉ざさないためにも、親はバイアスをかけるような発言に気をつけるべきと言えるでしょう。
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国立大学教育学部卒業。専門教科の国語を愛し、教科担当制の私立小学校にて勤務。好きな教材は「おにたのぼうし」。好きな文法は品詞分類。学級担任として、多くの子ども・保護者と関わる。現在は教員業の傍ら、教材執筆者・ライターとしても活動中。プライベートでは1児の母。