「中学受験をやめたい」と子どもが言ったら?親がすべき対応、諦めるかの見極め方とは
親子二人三脚でがんばってきた中学受験。しかし、小6になった子どもが「中学受験をやめる」と言い出したら、どうすればいいのでしょう。今子ども抱える悩みを解決する方法や後悔しない選択のためにできることを受験プロデュースを行う村上敬一さんに聞きました。
目次
親自身が受験の目的を再確認する
今まで一緒に頑張ってきたと思っていたのに、急にわが子から「中学受験をやめたい」と言われたら、やはりショックは大きいものです。
これまで投資してきた時間やお金が頭をよぎり、何よりわが子の将来が心配で、どう対処するべきか悩んでしまうでしょう。このまま受験をさせるべきか、それともやめさせるべきか、安易に判断できないと思うのは当然のことです。
しかし、むしろそれは受験の目的を再確認する良いチャンスだと捉えて欲しいのです。そして、ぜひ「そもそもなぜ中学受験をさせるのか」を今一度よく考えてみてください。
中学受験はいうまでもなく「子どもの将来のため」にするものです。
では、親が望む「子どもの将来」とは何でしょう。中学受験をすれば望む将来に近付けるのでしょうか。そして、その望む将来のビジョンをきちんとわが子と共有して、同じ目的に向かって進んでいるでしょうか。
小学生には「まだ自分の将来について考えて判断する力はないから、親がすべて判断すべき」と思い込んで、子どもの意思を疎かにしてはいませんか。
そもそも、本人が納得していない場合(もしくは「受験は親のため」と無意識に思っている場合)は、モチベーションが保てないために失敗する可能性も高く、仮に合格したとしても入学後に目的を見失ってしまい、不登校や苦労して入学した学校を辞めてしまうなどの問題が起こることも少なくないのです。
それを防ぐためにも、子どもと話し合う前に、まずは親自身が受験の目的を再確認し、判断の根拠を明確にすることが大切です。
子どもの話をじっくり聞こう
親が受験の目的を改めて理解した上で、次に行うべきなのは子どもの気持ちと向き合うことです。
受験や試験は大人ですら大変なストレスがかかるものです。小学生ならなおのこと。そして、自分のために親がどれだけの時間やお金を投資し心を砕いてくれているか、きちんと知っている子は多いです。
だからこそ、「受験をやめたい」というたったひとことを言うために、子ども達は大人が思う以上に勇気を振り絞っています。
「怒られたり、失望されたりしたらどうしよう」と不安に思いながらも本音を言わざるを得なくなってしまった子どもの心に、まずはどうか寄り添ってあげてください。
子どもが話す内容は、ただの甘えや言い訳にしか聞こえないかもしれませんし、色々口をはさみたくなるかもしれません。しかし、親としての意見はいったん横に置いて、まずは子どもの本音を黙って最後まで聞いてあげてください。
親がきちんと話を聞いてくれることや、どんな時も味方だと態度で示してくれることほど、子どもにとって心強いことはありません。
そして、そういう親の言葉なら、子どもも素直に聞こうと思いますし、受験をするにしてもやめるにしても、前向きに、真剣に、考えることができるようになるのです。
問題解決のためには、子どもと感情の応酬をするのではなく、きちんと論理的に「対話」をする必要があります。そのためにも、子どもの気持ちや考えを正しく理解することを大切にしてください。
ただし、「理解すること」と「納得すること」は別ものです。子どもの意見と親の意見をお互いに理解した上で、「親子双方が納得できる落としどころを見つけるための対話」をする必要があるのだということを忘れないでください。
子どもが「中学受験をやめたい」4つの理由
突然「中学受験をやめたい」と言われた親のショックも相当なものですが、子どもにも言わざるを得なかった事情が必ずあります。では、どんな事情が多いのでしょうか。
【理由①】勉強がつらいから
勉強をし続けることは大変なことです。大人にとってはたった数年と思っても、子どもにとってはがまんと試練の連続です。
「頑張っているのに成績が上がらない」
「ライバルと差が付いてしまった」
「塾の授業に付いていけなくなった」
「塾のクラスが落ちてしまった」
「模擬試験で第一志望校の合格判定が著しく悪かった」
「モチベーションが保てない」など、さまざまなきっかけで勉強自体がつらくなってしまい、中学受験をやめたくなる子がいます。
【理由②】人間関係にストレスを感じているから
塾や学校、家庭内での人間関係のこじれなどが原因でストレスを感じて受験をやめたくなる子もいます。
【理由③】友達と同じ公立中学校へ行きたいから
数年にわたる中学受験の期間に子どもを取り巻く状況は変わっていきます。仲の良い友達に誘われて、一緒に地元の公立中学校へ進学したいと思い始める子もいます。
【理由④】私立中学校に行く目的がわからないから
そもそも本人の意思ではなく「親のための受験だ」と思っている場合、あるいは、仲の良い友達に誘われてなんとなく同じ私立中学を目指しただけの場合などは、何のためにこんなにがんばっているのか分からず嫌になってしまうこともあるでしょう。
ほかにも、少数ですが「志望校の学校公開に行ってみたらイメージと違った」などの理由で目的を無くしてしまう子もいます。
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村上さんへの相談ページを見てみる4つのやめたい理由に合わせた対処法
中学受験をやめるにしても、続けるにしても、中学受験が子どもの失敗経験になったら悲しいですよね。子どもの気持ちに対してどんな対応をすれば、中学受験という経験を成長につなげられるのか、親ができるサポートを紹介します。
個々の対処法の話の前に、やめたい理由に関係なく親として知っておくべき重要ポイントがあります。
中学受験で大切なのは子どもの納得感
まず、安易に「逃げる」ような選択だけは絶対にさせないようにしましょう。困難に立ち向かう前に「逃げる」クセがついてしまいます。
逃げるのではなく、選択をするのです。
そのためには、「中学受験をしなくても高校受験がある」「理系文系の選択や大学受験、そして社会人までのビジョンはどうするのか」など、今後の人生を紙に書いて見える形にして、その第一歩として中学受験をどうするのかを話し合ってください。
実は、成績だけを理由に志望校を下げるという選択も「逃げ」になってしまいます。「子どもが本当に行きたいと思った学校が、今までの第一志望校より下のレベルだった」という場合ではない限り、成績だけで志望校を下げる選択はおすすめできません。
いずれにせよ、中学受験で一番大事なのは「子ども自身の納得感」であることを忘れないでください。これを踏まえて、以下の対処法を読んでください。
【対処法①】勉強がつらい場合
勉強自体がつらくなっている場合は、焦る気持ちから今はまだやるべきではない難しい問題に手を出してしまっていたり、ケアレスミスが多くなっていたりしていることが多いです。
そのせいで、かえって成績が落ち、前段で示したような状態に陥って、勉強がつらくなってしまうのです。
この場合に親ができることは、新しい問題集や難しい問題集を買い与えないことです。なかなか成績が上がらないからといって、次々に問題集を与えるのは逆効果です。それよりも、塾などで使用しているテキストを繰り返し解かせてください。その方が成績アップにつながり、勉強自体がつらいという状況から抜け出せます。
【対策②】人間関係にストレスを感じている場合
人間関係のこじれなどが原因でストレスを感じている場合は、そのこじれを解消しない限り問題は解決しません。親として、まずはストレスの原因となっているものを見極めてください。難しい場合は、対処法も含めて、塾やその他の専門家に相談しましょう。
【対策③】 友達と同じ公立中学校へ行きたい場合
仲の良い友達と一緒に進学したいと思うのは自然な感情です。頭ごなしに否定するのではなく、きちんと「対話」してください。
子どもと将来へのビジョンを共有したうえで、それでも中学受験をやめて友達と同じ中学へ進むのか否かを、子ども自身に選択させてください。本人が納得しないまま進んだ場合、勉強に身が入らなかったり、仮に合格したとしても不登校などのトラブルが起きてしまったりする可能性があります。
【対策④】私立中学校に行く目的がわからない場合
子どもが自分のためではなく親のために中学受験をするのだと感じている場合や、友達に誘われてなんとなく中学受験をしようとしていた場合の問題点は、「子どもが自分の将来のための受験だと思っていないこと」にあります。
この場合も将来のビジョンの共有が不可欠です。将来についての話をしても本人が中学受験に価値を見出せないのであれば、中学受験はやめて高校受験に備えることも考えましょう。
中学受験をやめるかどうか5つの判断基準
子どもの気持ちをケアする一方で、子どもの将来も考えてしまうのが親心です。子どもにも迷いがあったときに「中学受験をやめるか、続けるか」判断する参考となる情報も解説します。
【判断基準①】偏差値だけで判断はしない
まず大前提として、模試の結果(偏差値)だけで受験を続けるかやめるかの判断をするのはやめてください。模擬試験の結果はあくまでも「参考値」でしかありません。そもそも模擬試験ごとに受験する母集団が違うので、偏差値だけで判断することはできないのです。
例えば、四谷大塚の「合不合判定テスト」と首都圏模試センターの「統一合判」では同じ学校でも偏差値が10以上違う場合もあります。
また、四谷大塚の「合不合判定テスト」でも「50偏差値」と「80偏差値」では数値が違います。同様に、日能研の「全国公開模試」でも「R4偏差値」と「R3偏差値」では数値が違います。
各模試の違いを理解した上で「参考値」として利用することが偏差値の正しい使い方です。
【判断基準②】親子間や夫婦間で思いが共有できているか
受験に対する意見の食い違いがあって家庭内がギスギスしていたり、親がそのストレスを子どもにぶつけてしまったりする場合、子どもは受験ができる心理状態ではなくなってしまいます。
あくまでも受験は子どもの意思を尊重したうえで子どもの将来のためにするものだという大前提のもとに、家庭内でよく話し合うことが必要です。
もし話し合いができない、あるいは折り合いが付けられないのであれば、中学受験をやめる選択もありです。
【判断基準③】金銭的な問題を抱えていないか
もともと金銭的にあまり余裕はなかったけれど、子どもが本気で受験したいと言っていたからなんとか費用を捻出していたというような場合は、無理に中学受験をする必要はないでしょう。
【判断基準④】状況の変化を理解できているか
地元の公立中学校の評判が良くなかったために中学受験をさせようとしていたけれど、学校の状態が改善したとか、志望校の状況が変わってしまった(校長が変わった、共学化して校風が変わった)など中学受験の動機となった状況が変化した場合は、無理に受験させる必要もなくなります。
【判断基準⑤】子どもの精神的成熟度は大丈夫か
実は、一番重要な判断材料が子どもの精神的成熟度です。成熟度が足りない場合は、中学受験はせずに高校受験を目指したほうが、子どもにとっては良い選択になります。
ただし、精神的成熟度は親が判断することが難しいもの。プロの意見が必要です。まずは通っている塾に相談してみて、よく分からなければ、セカンドオピニオンとして中学受験の知識がある専門家に意見も聞いてみると良いでしょう。
中学受験をやめるか相談は塾や専門家へ
上記の精神的成熟度の見極め以外にも、中学受験について悩んだり迷ったり、不安になったりしたときは、家庭だけで抱え込まず確かな知識をもつ第三者に相談をしてください。
例えば、学力や勉強については通っている塾に相談するのもひとつの方法です。塾は子どもの成績や状態を一番正しく把握しているはずです。模試のデータや授業の様子を根拠に、合格の可能性や志望校を変えるべきかなどについても詳しい話が聞けると思われます。
しかし、「中学受験をやめさせない」という方針をあまりにも強く押し付けてくるような場合は、ほかの専門家へ相談してみると良いでしょう。
例えば、教育・子育てのオンライン相談を行っている「ソクたま相談室」には、私をはじめ、気軽に相談できて受検に対する知識も豊富な専門家がたくさん揃っています。親子ともどもストレスでつらい状況に追い込まれてしまう前に、私たちをうまく活用してください。
この記事を書いた村上敬一さんに相談してみませんか?
ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、オンライン上で村上さんに勉強や受験に関する悩みを相談できます。
村上さんへの相談ページを見てみる中学受験をやめる判断の時期は?
受験が迫る中、中学受験をやめるのか、続けるのか早く結論を出さないといけないと焦ってしまうかもしれません。
ですが、金銭的な問題がないのであれば、受験をするか否かに関わらず、受験勉強そのものはギリギリまで続けさせた方が良いです。直前になって本人がどうしても受験したくないと言うのであれば、やめれば良いのです。
ここで、親子で考えて欲しいことが2つあります。
中学受験をしないのであれば、塾での勉強は必要ないのでしょうか。
私は必要だと考えています。中学受験をしなくても、塾レベルでの勉強を続けることはその後の人生に大いに役立ちます。
中学受験をやめることや不合格になってしまうことは、失敗なのでしょうか。
私は失敗でも無駄でもないと考えています。中学受験に合格するか否かは、ただの結果論です。中学受験は単なる人生の分岐点のひとつに過ぎません。そもそも中学受験合格をゴールと錯覚すべきではないし、中学受験の結果だけで子どもの人生が決まるわけでもありません。
中学受験をする本当の意義は、下記の2つです。
- 効率良くかつ効果の高い学び方を覚えること
- どこまで頑張れるのかという自分の限界を知ること
この2つを意識しながら学べるようになった子は、結果として受験に合格しやすくなりますし、仮に不合格だったとしても中学校以降の学び方がまったく変わってきます。
中学受験は生涯を通じて役に立つ「学び方」を習得できる良い機会なのです。 中学受験をするにしてもやめるにしても、常に「何のために受験するのか」「受験勉強を通して何を学ぶのか」という目的意識を持って過ごしてください。そうすれば、どんな判断をしても、親子ともに後悔の少ない人生を送ることができるはずです。
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