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2022.04.29

中学受験後、進学校で落ちこぼれた子の末路、その後とは

過酷な中学受験をがんばりぬいて合格した進学校。有意義な中学生活になるはずが、中間テストや期末テストで散々な結果に…。落ちこぼれてしまった原因は何?はい上がることはできるの?数々の中学生・高校生を見てきた塾講師で、メンタルトレーナー・進路アドバイザーでもある石井知哉さんに話を聞きました。

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進学校で落ちこぼれる原因とは

ほとんどの中学校では、年間5回の定期テストがありますが、思うように点を取れず、成績不振に陥ってしまう子は必ずといっていいほどいます。

入学試験に合格したということは、その学校が求めるレベルには達しているはずですよね。ですから、そもそもの能力が足りない、ということはないのです。それなのに、中学受験を勝ち抜き、進学校に入学した子が落ちこぼれてしまうのはなぜなのでしょう。

それは、中学校の勉強のペースについていけないからです。中学校の勉強のペースについていけない原因として、次の3つが考えられます。

【原因①】中学校の勉強の仕方がわからない

中学校の定期テストは教科数が多いのが特徴です。国語・数学・理科・社会・英語の5教科が基本ですが、進学校の場合はさらに細分化されており、10教科近くになることもあります。その上、1~2ヵ月間の授業で習った範囲が出題されます。

このように、教科数が多く、出題範囲も広いので、普段の授業の予習・復習に加えて、テスト対策の勉強が必要となります。中学受験生なら、塾のテストや模擬テストを経験してきたわけですが、それらとは違った難しさが中学校の勉強にはあるのです。

もちろん、小学校で受けてきたテストとはまったくの別物といってよいでしょう。ましてや進学校であれば、小学校では毎回100点満点を取れていた子でも、中学校では平均点を下回ったり30点台になったり、ということは珍しくないのです。

ですから、テスト対策の勉強の仕方がわからないまま、やみくもに勉強しても、進学校の勉強ペースについていけなくなるのです。

【原因②】部活動が忙しい

中学校に入ると、部活動が始まります。もちろん、入るか入らないかは自由ですが、多くの中学生は部活動に加入します。

運動部も文化部も、放課後の時間に始まり、夕方まで活動をおこないます。

活動日数はさまざまですが、平日は毎日活動のある部もありますし、運動部の場合、土日や祝日に試合で出かけることもあります。

そのため、勉強に使える時間は限られてしまいます。ほとんどの中学校では、定期テストの直前1週間は部活動を休みとしていますが、進学校のハイレベルな授業だとテストも難しくなるため、テスト前の1週間だけでは時間が足りないのです。

このように、部活動が原因で勉強のペースについていけなくなることがあります。

【原因③】中学受験で燃え尽きてしまった

ごくまれなことではありますが、中学受験のハードな勉強で燃え尽きてしまった子も見られます。中学校合格に向けて一生懸命勉強してきた分、合格という目標を達成したことで、勉強への意欲がなくなってしまうのです。

いうならば、気持ちのエンジンが切れてしまった状態。エンジンがかからないまま、中学校生活を過ごしているうちに、勉強のペースについていけなくなるということもあります。

落ちこぼれになった子どもの本音とは

中学校に入ってから、見たこともないような低い点数を取ると、親としては「落ちこぼれてしまった。どうしよう」と不安になりますよね。では、子どもたちは、どのように受け止めているのでしょうか?

親のネガティブな言動が自信を奪う

まず、多くの子は、成績が悪いことを気にしています。

中学受験という勉強の競争を体験してきたわけですから、成績は気になるもの。少しでも良い点を取りたいという気持ちはあるのです。周囲の子と自分を比べて焦ったり劣等感を抱いたり、逆に奮起して勉強に取り組んだりと、表に現れる行動は子どもの性格によって変わってきます。

「落ちこぼれている我が子」に対する親のネガティブな感情や言動が、かえって子どもの自信を奪い、さらなる成績不振につながることもあります。

ですから、子どもの気持ちが空回りすることのないように、親が子どもの性格をつかみ、成績改善に向けた行動へと導くことを目指しましょう。

勉強以外に夢中になるものがある

一方、成績が悪いことを気にしていない子もいます。正確には、ほかに気になっていることがあって、勉強に目が向いていないのです。たとえば、スポーツや音楽、絵画、ゲームなどです。これらに夢中になっているので、成績が悪くても気にならないのです。

逆にいえば、興味あることに夢中になれるエネルギーをもっています。このタイプの子はそのエネルギーが勉強に向かえば、見違えるほど成績が上がる可能性を秘めています。

ですから、子どもがいま夢中になっていることを禁止したり取り上げるより、メリハリをつけて勉強に向かう時間をつくることを目指すと良いでしょう。

落ちこぼれといわれた子のその後

進学校で落ちこぼれた子がその後どのような道をたどるのかは、気になるところですよね。これまでに私が見てきた子ども達には、大きく3つのパターンがありました。

【パターン1】必死にくらいついた

なんとか成績を持ち直して、中学校のレベルにくらいついていったパターンです。

成績が思うように伸びないなかでも試行錯誤しながら、あがいてもがいて、必死になって進学校のレベルについていったというもの。持ち直すタイミングは人によって違いますが、最終的にはこの道を辿る子が多い印象です。

【パターン2】V字回復した

下がっていた成績が持ち直すどころか、まるでVの字のグラフを描くようにジワリジワリと成績を上げていき、気がついたら上位にいたという子もいます。

レアケースではありますが、単純に効率の良い勉強の仕方がわかっていない子、勉強以外に夢中なものがある子に見られます。こういう子たちが、効率の良い方法を身につけて勉強に集中するようになると、逆転劇が起こります。

【パターン3】環境を変えた

こちらもレアケースではありますが、別の中学校に編入したり高校で外部受験したりと、環境を変えたパターンです。

「せっかく中学受験をして入った進学校を諦めちゃうの?」とネガティブな見方になりがちです。しかし、転校して学習レベルや周囲の人間関係などの環境を変えたことで、うまく仕切り直せたというポジティブな効果が生まれます。

親子でよく相談した上で子どもに合った学校を探す必要がありますが、家の引越しと同じ様に、環境を変えるという道もあるのです。

成績を巻き返す勉強法5つのポイント

進学校で落ちこぼれたと感じていても、「もう終わり」ということはありません。成績も人生も巻き返すことは可能です。

実際に、成績が落ちこんだ後、以前より楽しそうな人生を送る子を数多く見てきましたし、ほかならぬ私自身も「クラスでビリ」「数学の中間テストは100点満点中8点」という落ちこぼれ経験者です(すごい進学校ではありませんでしたが)。

だからこそ、声を大にして「落ちこぼれても巻き返すことはできる」ということを伝えたいとも思います。

成績を上げるために重要なのは勉強の仕方であり、ポイントは5つあります。

【ポイント①】学校の授業は集中して受ける

学校の勉強の基本は、1にも2にも学校の授業です。教師の話をしっかり聞く、教材を読みこむ、真剣に問題を解くなど、授業を集中して受けることが、内容理解の土台です。

100%理解するのは難しいかもしれませんが、集中して受けていれば少なくとも半分以上は理解できるでしょう。

学校の授業は毎日6時間前後あるのですから、その内容を独学で身につけるのは、極めて難しいことです。もしそれができているなら、そもそも落ちこぼれていないはずです。

ですから、学校の授業をおろそかにしているようだと、たとえ毎日塾に通い、家庭教師をつけたとしても、落ちこぼれからの巻き返しどころか、悪化するおそれすらあるのです。

【ポイント②】毎日の復習を大切にする

人間の頭は忘れるようにできています。そのため、たとえ授業をきちんと受けて内容が頭に入っても、しばらくたてば忘れてしまいます。そこで、毎日の復習が大切です。

授業で習ったことを、その日のうちに家で復習することで、記憶が定着し理解も深まります。わからない箇所も早めに発見し解決につなげられるので、次の授業内容がわかりやすくなります。

特に授業時間が多い上に積み重ねの要素が強い数学と英語は、毎日復習をすることで、格段に効果が出ますよ。

【ポイント③】教科書に戻る

ハイレベルでハイペースな進学校の授業では、教科書を使わないことも多く、難しい問題集やオリジナルのプリントなどを中心に授業が進みます。

そのため、日々の家庭学習や定期テスト前の勉強もオリジナル教材ばかりに目が行きがちです。

ですが、オリジナルの教材は、教科書に書かれている基本的なレベルの内容が省かれていることが多いのです。「基礎的なことは教科書を読んで自分で解決できるよね」というスタンスで進むのが進学校の授業なのです。

ですから、学校の授業内容がわからなくなったら、教科書に戻りましょう。教科書で基礎から理解を補うことで、疑問点の解決や授業の理解度アップにつながった子は大勢います。

【ポイント④】わからないことはすぐに解決する

勉強は、ピラミッドをつくることに似ています。レンガにすき間ができたまま積み重ねても不安定で、いつか崩れてしまってピラミッドは完成しません。

同じように勉強は「わからない」を放置しておくと、次の「わからない」につながり、結果的に「何がわからないかがわからない」ということになりかねません。実は、落ちこぼれといわれる子のほとんどが、この”わからないの連鎖”にハマっている状態です。

ですから、わからないことはすぐに解決するようにしましょう。

疑問点が出てきたら、学校のテキストや授業ノート、教科書で調べて解決する。それでもわからなければ教師や友達に質問する。

毎日の復習は、疑問点の早期発見にも役立ちますよね。こうして、ピラミッドのレンガを1段目から丁寧に積み上げていくように、勉強も疑問点を1つ1つ解決していきましょう。

【ポイント⑤】長期休みを有効活用する

日々の学習や定期テスト対策の勉強の仕方を工夫することで、落ちこぼれから巻き返しやすくなります。

これに加えて、夏休みや冬休み、春休みなどの長期休みは巻き返しの大きなチャンスです。学校の授業のペースについていけない子でも、長期休みの間は授業がないので先に進みません。その間に、前の学期や学年に習ったことをおさらいをして、遅れを取り戻すことができますよね。

少なくとも私の記憶するかぎりでは、この5つのポイントをすべて実践して、それでも落ちこぼれから巻き返せなかった子はいません。学年に関係なく、始めるのに遅すぎるということはありません。

逆にいえば、この5つをおろそかにしていると、いつでも落ちこぼれてしまうおそれがある、ということです。

進学校で成績不振のとき親ができること

子どもが落ちこぼれたときに親はどのような心構えで接すればよいのでしょうか?

何よりも大切なのは、子どもへの信頼を維持することです。「うちの子は落ちこぼれだ」と思うことで、「どうせやってもダメだから」という気持ちが生まれます。

そういう親のネガティブな気持ちは、日常の言動を通じて子どもに伝わるのです。子どもが「やればできるようになる」というポジティブな気持ちをもてなくなり、勉強にも身が入らず、自信がないのでテスト本番でも力を発揮できない。こうして、子どもが本当に落ちこぼれになってしまう、ということもあるのです。

そのためにも、1回のテストの結果だけで判断しないようにしましょう。テストですから、良いときもあれば悪いときもあります。大切なのは、その結果に至ったプロセスに目を向けることです。

良かったときは、どういう努力をしたことが良かったのか。悪かったときは、どういう努力をすればよくなるのか。過去の結果に一喜一憂したり、ほかの子と比較したりせずに、子どもの未来に向けて「いま何をするべきなのか」を親子で考えるようにしましょう

また、親子だけで抱えむのではなく、ほかの人に相談することもおすすめします。

特に、通っている学校の教師ですね。学校の勉強のことなので、学校の教師からの助言が役立ちます。その学校のカリキュラムにそった家庭学習の方法や、過去に似たような悩みを抱えた子の事例など、アドバイスをもらえることでしょう。

風邪は引き始めに治したほうが良いのと同じく、勉強も早めの立て直しが肝心です。「成績が良くない、落ちこぼれだからダメだ」と悲観することはありません。巻き返すための勉強法はあるのです。未来志向で前向きに歩んでいけるよう、応援しています。

石井知哉

教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー。高校受験Webサイト「School Post」(https://school-post.com)主宰。塾指導歴20年以上。小学生から大学浪人生まで、教科を問わず個々の成長を引き出す指導を得意とする。現在は、個別指導塾2校舎を統括する傍で、千代田区麹町に超少人数制個人指導道場「合格ゼミ」を開設。長年の経験と知見を記事にして発信中。アイデアと文面の大半は、こよなく愛するビーグル犬との散歩中に生まれる。

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