<母親になって後悔>子どもは愛しているけど…女性たちの悲痛な声
今年3月に発売され、現在も話題の書籍『母親になって後悔してる』(新潮社)をご存知ですか? 「母親にならなければよかった」「母親という役割が重荷、向いてない」といった、これまで封印されてきた「母親たちの本音」を開放するきっかけとなりそうな本書。SNSを中心に共感を集めています。
子どもは愛しているけれど
イスラエルの社会学者・社会活動家であるオルナ・ドーナトさんによって書かれた『母親になって後悔してる』(鹿田昌美/訳・新潮社)。NHK「ニュースウォッチ9」をはじめとするメディア等でも取り上げられ、発売から半年が経過してもなお、話題書として書店に並ぶ一冊です。
本書に登場するのは、「母親になったことを後悔している」と感じている、26歳から73歳までの23人の女性。なかには、すでに孫もいる「母であり祖母でもある女性」も含まれています。うち20人は、仕事をしたことがある・または現在働いている女性です。
「母になって後悔している女性」というと、我が子のことを疎ましく思っていたり、憎んだりしているのではないか、というイメージを持つかもしれません。
しかし、そうではありません。本の中に登場する女性のほとんどが、「母親になった後悔の気持ちと、我が子を愛おしいと感じる気持ちは異なる」と述べています。
「子どものことが大好き。それは、自分の後悔の念とは無関係」「子どもは愛しているが、お母さんでいることは好きじゃない」「ただ、母親というものに向いていない」など、我が子を「素晴らしい存在」「いいところがたくさんある」と感じ、彼らの世話をきちんとしながらも「母親でいたくない」という気持ちを抱えていることが浮き彫りになっていきます。
「母になることを望んでいた」という決めつけ
妊娠・出産ができる身体的機能を持っている女性が母親になるのは自然な選択。つまり、「すべての女性は出産すべき」という社会的前提がある。本書はそう述べています。
しかし、母親になることを積極的に望まない女性も当然います。本書に登場する女性のなかにも、「母親になりたいと思っていたわけではなかったが、自然な流れで」「(子どもを産んで母になることに関して)特に何も考えていなかった」「そもそも、子どもが好きではなかった」などと答えている女性もいます。
「子どもを産んでから後悔の念を感じていても、口に出せない」「子どもに知られたら、傷つけてしまいそうで言えない」と、苦しさを抱える女性たちが多数登場しているのです。
母親になったとたん、何が起きても「でも、あなたが望んで産んだんだよね?」「後悔なんてしているはずがないよね?」という決めつけがなされ、自分の正直な感情を口に出すことすら許されない。それも、母親であることにしんどさを感じる一因かもしれません。
常に「母であること」から逃れられない
本書では、子どもが身の回りのことをできる年齢になっても、成人して自立しても、孫を持つ年齢になってもなお、「母親であるということからは逃れられない」ことに苦痛を感じているという女性たちの意見が述べられています。
たとえ子どもと離れているときでも、母親としての自分を意識せざるを得ず、完全には気が休まらない。子どもを産んだ時点で、「母ではない自分としての人生」が永遠に失われてしまったことに対して、後悔やしんどさを感じている女性も多いようです。
子どもを愛していて「良き母(良き祖母)」でありながらも、「本当はひとりで映画を観たり、ラジオを聞いたりしているほうが自分らしい」「良い母として振る舞っているけれど、本音ではそのことに重要性を感じていない」という意見も登場します。
セカンドシフトという苦痛
現代は共働き家庭もふつうとなり、子育てと仕事を両立させやすい社会の雰囲気は醸成されています。
しかし、働く子持ち女性のほとんどが、お金をもらってやる仕事と、仕事が終わってから無給で行う家事や子どもの世話、すなわち「セカンドシフト」を行き来し、スケジュールをやりくりし、常にプレッシャーを感じ葛藤していると本書には綴られています。
仕事以外の時間も、子どもの習いごとの送迎や宿題の面倒などに使う必要がある。そしてそれは、父親より母親に負担がかかりがち。「子どもは大好きだけれど、本当は、自分の時間を仕事などの『母であること以外』に注ぎ込みたい」という率直な意見も書かれています。
まったく役割の異なる二つの空間を日々行き来する生活が絶えず続き、「母親なんだからやるのは当たり前」と見られてしまえば、うまく言語化できないモヤモヤが積み重なり、疲弊してしまうのも自然のことではないでしょうか。
「後悔してる」と言ってもいい社会に
冒頭でお伝えしたように、本書に登場するのは「子どもを恨んでいる母親」「責任感のない母親」ではありません。むしろ、子どものことを考えている愛情深い女性がほとんどです。
「母親になって後悔している」という感情が存在すると社会に受け入れられること。母親のプレッシャーが少しでも軽くなる世の中の空気になっていくこと。「母親、やめたい」という気持ちを持つことと、母が我が子を大切に想う気持ちはまったく別のものであること。
そういったことへの理解が進み、母親たちが「本音」も吐露できる社会になっていくことで、子どもを持つ女性のジレンマが軽減されていくのではないでしょうか。
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1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経てライターとして活動。主に女性の生き方、ワークスタイル、夫婦・子育て、社会問題などのジャンルで執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。