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2022.03.31

学校行事は思い出作りじゃない。コロナ禍で失われた運動会や修学旅行、子どもにどう影響する?

新型コロナウイルス感染症によって、学校現場ではさまざまな工夫や対策が施されています。各教科の学習は家庭学習やリモート授業などを駆使して、学び残しがないように進められてきましたが、一方で「学校行事」はどうでしょうか? 規模を縮小した、延期になった、もしくは中止が決定したものが一つはあるのではないでしょうか? 
「思い出作り」「親に学校での姿をみてもらうもの」と思われがちな学校行事ですが、実は子どもたちの成長にとても重要な役割を担っています。
今回は、学校行事の教育的役割と、コロナ禍で失われたことによる影響についてまとめました。

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学校行事とは

学校行事といわれると、運動会、文化祭、入学式などが思い浮かべられるかと思いますが、具体的には以下のような内容が含まれています。

  • 入学式
  • 健康診断
  • 遠足
  • 大掃除、地域清掃
  • 学習発表会(文化祭)
  • 避難訓練
  • 自然宿泊教室
  • 修学旅行
  • 卒業式

「これも学校行事?」と驚くものもあるのではないでしょうか。実は、これ以外にもたくさんの学校行事があります。

学校行事の目的

学校行事は、単なる思い出づくりのための催しではありません。

学校行事での体験的な活動を通して、集団への所属感や連帯感を深め、公共の精神を養っていくことが目標であることが、学習指導要領にしっかりと定められています。

仲間と関わり、協力する体験を通して、社会や集団の形成者としての資質・能力を養うことが、学校行事の大きな目的ということです。

上記は学校での指導上の目標ですが、それ以外のものとして「子どもたちが学校に行く動機」につながっているとも考えられます。

文部科学省が2021年度に行った全国学力・学習状況調査では、「学校に行くのが楽しいと思うか」の問いに「そう思う」と答えたのは、小6で48%、中3で43.4%だったのだそう。この質問で肯定的な回答が50%を切ったのは、調査開始以来、初めてのことだったようです。

休校が続き、多くの学校行事がなくなった2020年度の翌年のアンケートと考えると「行事の中止・縮小」がこの結果に大きく関係していると考えることができるでしょう。

学校行事は、子どもたちの学校生活での大きな楽しみであり、学校に行く理由の一つになっているのです。

学校行事も進路に関わる成績に含まれる?

学校行事もれっきとした教育課程ということがわかると、「それって成績に関係するの?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし実際のところ、国語科などのように観点別評価、評定などはなく、通知表では活動の様子を文章のみで記されていることが多いです。

「それならば、進学や受験にあまり影響はないのでは?」と感じるかもしれませんが、前述のように、学校行事は「社会や集団の形成者」として必要な力や視点を養う場であり、体験です。

つまり、社会人として必要なことですから、ないがしろにしていい内容ではありませんよね。

コロナでどんな影響が出ている?

2020年は、多くの学校行事が中止や縮小されました。2021年度もまた、縮小されたり、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行により、年度末の行事が急きょ中止となった学校もあるのではないでしょうか。

そのような流れの中で、実際に現場の先生方からは「子どもたちに覇気がない」、高学年に関しては、「例年の6年生よりもリーダーシップや学校全体をまとめる力が育っていない」という声が聞かれます。

また、子どもたちにとっても楽しみにしていたものやこつこつと準備していたものがなくなってしまい、無力感や虚無感を感じているという声も少なくありません。

学力のように数値で明確に出てくるものではありませんが、学校行事の喪失はそれよりも子どもたちの心の成長に大きく爪痕を残しています。

学校行事で育みたい力とは

運動会

運動会は主に、「心身の健全な発達や健康の保持増進」はもちろん、「規律ある集団行動の体得」「責任感や連帯感の涵養、体力の向上」などがねらいとされています。

実際に、競技はもちろん、運動会ではいくつかの組に別れて競うために、学年を超えて集団で協力する場面がありますよね。

そこでは、高学年が低学年に動きを教えてあげたり、ふだんあまり話さない子どもたちが連帯感を持って準備や練習に励みます。そのような経験が、協力して行動する大切さに気付くきっかけとなります。

修学旅行

特に思い出作りのイメージが強い修学旅行にも、教育的なねらいがあります。「普段と異なる生活環境の中で見聞を広め、自然や文化などに親しむ」ことのほか「よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積む」こととされています。

修学旅行先の文化に触れて見聞を広げるということの他にも、旅行先での生活規範を守ったり、一人だけわがままな行動をとらずに、家族以外の集団で生活することを経験します。

家族といるとどうしても甘えてしまうことも、学校行事での体験を経て、いろんな人と気持ちよく生活ができる力をつけるのです。

文化祭(学習発表会)

文化祭には、普段の学習の成果を発表すること以外にも、子どもたち自身がお互いに努力を認めながら協力して、やよりよいものをつくり出す経験ができることにねらいがあります。

そしてお互いに発表し合い、よさを見付け合う喜びを感じられることで、自分や周りの成長に気付き、これからの意欲を伸ばしていくのです。

中学校の文化祭では放課後遅くまで残って準備をしたという経験がある方も多いのではないでしょうか。そのような経験を通して、自然と友達を認め合い、一緒に頑張ることの重要性を身につけていくのですね。

入学式・卒業式

「入学する学年や卒業する学年以外の子どもには関係のない行事なのでは?」と思われがちなこれらにも、全学年にとって出席の意味があります。

儀式に参加することで、学校生活に折り目をつけること、また、厳粛で清新な気分を味わって、新しい生活への動機付けとすることがねらいとされています。

厳かな雰囲気の式に参加することで、自分自身の学年の区切りもつけて、次へのはずみにすることが期待されているということですね。また、そういった式に参加する機会自体が、マナーを身につけることにもつながります。

その他にも、大掃除などの行事では、社会奉仕の精神やボランティア精神を養うことがねらいとされています。

代表的な学校行事だけを見ても、学校生活だけにとどまらず、社会生活を営む上で重要な力を養う役割があることがわかるかと思います。

学校行事のコロナ禍での工夫

上記のような子どもの力を養うために、各地では、以下のような工夫がされているようです。

  • 入学式や卒業式は、1年生や6年生以外の学年は教室からリモート参加する。
  • 学習発表会の発表を各クラスごとにテレビ中継で見る。
  • 運動会を午前と午後で学年ごとに分けて行う。
  • タブレットを使い、距離を取りながらの学年間での遠足準備の協力をする。

引き続き、密になるのは不安という面もありますが、上記のような工夫をこらしつつ、子どもたちにとって必要な力が育ってほしいですね。

学校行事の穴埋めは家でできる?

学校行事の一番の目的は、学校全体で協力して、連帯感を深め、公共の精神を養うことです。

そのため、「公」とは正反対の「私」の場である家庭で、中止や縮小した学校行事の代わりをするというのは難しいことかもしれません。

しかし、子どもたちが学校で頑張ったことや練習してきたことを「頑張ったね」と認めて労ってあげることはできます。子どもたちの頑張りを家庭でも評価してあげることで、「無駄じゃなかった」と思えるようにするのが大切です。

「コロナだったんだからしょうがない」という言葉よりも、前向きな言葉をかけるようにしたいですね。

これまで、経験することが当たり前だった学校行事がなくなっているのは、子どもたちの成長に大きな影を落としています。

学習の遅れや運動不足など、コロナがきっかけでさまざまな課題が浮き彫りとなりましたが、学校行事の喪失による経験の不足にもぜひ注目し、家庭での声がけや頑張ったことの賞賛を意識的にしてみてはいかがでしょうか。

<参考資料>
朝日新聞デジタル「学校行事の中止、親や社会はどう向き合えば…発想の転換も必要?」
文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別活動編」
文部科学省「令和3年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料」
・文溪堂「道徳と特別活動」2021年2月号、2022年3月号

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