2020.07.07

HSCの中学生が抱える学校や人間関係の悩みとは 精神科医がおすすめする親の対応を紹介

家にいてもひとりで過ごす時間が増える中学生。親子のコミュニケーション不足が心配になりますよね。特に小学生の頃から友人関係や学校生活に悩みの多い子であればなおのこと。そこで、児童精神科医の“まえまえ先生”こと、前田佳宏医師に中学生の心の中や、対人関係に悩みやすく繊細で傷つきやすい特性をもつ子(HSC)の葛藤について話を聞きました。子どものSOSを見逃さない方法とは?

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今回のお悩み

小さいころから繊細で落ち込みやすかったり、周囲の人の気持ちをくみ取り過ぎるところがあった息子。私は「HSCなのかな」という気がしています。そんな息子も中学生になり、学校や友人関係のこと、悩みを私に話さなくなりました。自分の力で乗り越えていく力を身に付けてほしいという反面、ひとりで悩みを抱え込みすぎていないか心配です。親としては、ただ黙って見守ることしかできないのでしょうか。 (中学3年生男子の母)

 

 

部屋にこもることも会話が減ることも仕方がないこと

ひとりで部屋にこもる時間が長くなり、会話する機会が少なくなっていく中学生。コミュニケーションが少なくなれば、親といえど子どもが何を考えているのか分からなくなることもありますよね。

 

お子さんがHSCではなくても「学校生活は楽しいのかな?」「何か親に隠していることがあるのかな?」とさまざまな思いが頭をよぎることもあると思います。

 

中学3年生は、思春期の真っ盛り。発達心理学において思春期とは、一人前の大人になる過程とされ、アイデンティティや自立心が芽生える時期といわれています。

 

思春期の中学生が親に対して口数が少なくなったり、親を避けて自分だけの空間にいたがるのは、「一人の独立した人間として見られたい/扱ってほしい」という気持ちが影響しているかもしれません。

 

親からすれば心配だったり寂しさを感じたりするかもしれませんが、子どもを尊重するという意味では基本的には放っておくのがいいと思います。

 

HSCの子は適応障害、うつ病になりやすい!?

ただ、気になったのは、親御さんもおっしゃっている通り「HSCではないか」という点です。HSCの場合、“人一倍敏感で繊細”という特性がマイナスに作用しすぎて過剰な自己否定が続いて心を病んでしまったり、適応障害やうつ病などの二次障害に進んでしまったりする可能性があります。

 

HSCとは “Highly Sensitive Child”を略したもので、とても敏感で、繊細で、かつ感受性の強さ・豊かさを生まれ持つ子どものことを指す。ほぼ5人に1人が当てはまるとされている。

関連記事:【HSC】セルフチェックも紹介 敏感で繊細…5人に1人が当てはまるHSCとは

 

HSCは普通の子よりも感受性が強く、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)が過敏。また、人の気持ちや感情を敏感に察知し、強く共感や同情をしやすいため感情や情緒が揺さぶられやすい特徴があります。

 

私が相談を受けてきた子どもたちの中からも、大きな音や刺激臭、肌触りの悪いもの、人がたくさんいる場所などが苦手、という声をよく耳にしてきました。どの感覚に過敏なのかは個人差があり、特定の感覚にだけ顕著な場合もあります。

 

適応障害やうつ病などの精神疾患は、HSCだけでなく思春期全般の子に可能性がありますが、HSCの場合はさらに可能性が高いのです。そこで、保護者はどのように対応していけばよいのかを解説していきます。

 

 

 

中学生×HSCの特徴【心の中と学校生活、家での過ごし方】

まずは、直接的な働きかけをする前にHSCについて理解を深めましょう。HSCの特性である“人一倍敏感である”ということがどういうことなのかHSC(中学生)の心や生活に焦点を当てて解説していきましょう。

 

中学生×HSCの心の中

中学生のHSCは、思春期における自我の目覚めも相まって自己否定に陥りやすい傾向があります。

 

冒頭でも説明しましたが、思春期は自分というアイデンティティを確立させたい時期。そのため、他人と自分を比較するようになり、自分に対して劣等感を感じやすい時期でもあります。

 

そんな思春期の特徴に加え、HSCは周りの人の反応をそのまま自己評価に反映させる傾向があり、他人から自分の言動を否定的に受け取られた場合、自分でもそう思ってしまいがちです。

 

HSCにとって思春期は頻繁で過剰に自分を責めてしまいがちな時期といえるかもしれません。

 

 

中学生×HSCの学校生活

そんなHSCは中学校でどのような人間関係を築きやすく、苦手と感じやすいのでしょうか。

 

先ほど人からの評価に敏感と説明しましたが、そもそもHSCは感じる力が人一倍強いために、自己否定とまでいかなくても他人が発する何気ない言動やしぐさ、表情に一喜一憂しがちです。

 

例えば、友達の返事が普段より少しそっけなかったり、バスの運転手さんの対応がピリピリしていたりすると、例え原因は自分にない場合でも「もしかしたら、僕/私が悪いことをしたのかもしれない…」と心を痛めやすいのです。

 

ただし、5人に1人はHSCといわれており、1クラスに数人はHSCがいると考えられます。中学生ともなれば、自分で居心地のいい友人を探し始めるので、もし同じような特性をもった子同士で仲良くなれば精神的な負担は軽くなる可能性もあります。

 

また中学生になれば小学校時代より、立場による関係性の違いが色濃く出ます。

 

例えば、部活に入って生まれる先輩・後輩関係。スポーツ系であれば上下関係に厳しい部もあることでしょう。 中には、大人でいえばパワハラのような威圧的な態度を取る先輩もいます。

 

HSCは人の気持ちに敏感だったり、声が大きい人が苦手だったりするため、人一倍疲れてしまいます。

 

また、自分ではなく周囲が怒られているだけでも自分のことのように感じ取ってしまう気質もあるため余計に疲れてしまう傾向もあるようです。

 

先輩・後輩関係だけでなく、教員に関しても同じことがいえます。もし教員が怒鳴り声を発していたら、HSCは学校で毎日萎縮して過ごすことになるかもしれません。

 

毎日萎縮して学校生活を送っていれば、どこかでイライラやストレスがピークに達し、反動が生じることも考えられます。ただし不登校(文科省では年間30日以上の欠席としている)になるかどうかは、そのようなHSCの苦痛をどう受け止めるのかにあると思います。

 

 

中学生HSCの家での過ごし方

前述のとおり、外では人間関係やそのほかさまざまな刺激により神経をすり減らしているHSC。 そのため、私が診てきた子どもたちに家での過ごし方を聞いても「静かに過ごしている」と答える子が大半です。

 

趣味のアニメやゲーム、漫画に没頭する子など具体的な過ごし方はさまざまですが、ひとりの時間を持つことで心身のバランスを保っているのかもしれません。

 

また一人での時間には、集中して勉強する子などもいます。HSCは自分のペースで行動したほうが能力を発揮しやすい傾向があるうえ、ストレスへの耐性にも弱い面があります。

 

例えば、勉強においても、問題を解いているときに隣りで見られていたり、せかされたりすると緊張して頭が思うように働かなくなりがちです。

 

集中しているなと思ったら、むやみに声をかけずそっと見守るようにするのが良いでしょう。

 

 

中学生のHSCの考え方、感じ方が少し理解できましたか? 最近では、HSCに関する書籍がたくさん出版されています。興味があれば手に取り理解を深めるのもいいですよ。

 

HSC子育てラボの記事一覧はこちら

思春期の子のSOSに対する親の対応

HSCではなくてもアイデンティティ確立のために心の中で葛藤をし続けている中学生の心は繊細です。大人っぽく見えてもまだ心は大人に比べて未熟。

 

ただし、どんなにおとなしい子や親とのコミュニケーションが少ない子であっても、自分では抱えきれないトラブルや困りごとが発生した時、一度は助けを求めるものです。

 

親が思う以上に、子どもが親に自分の気持ちを伝えるのは勇気がいります。子ども自身も「きっとこの事を親に伝えたら、がっかりさせちゃうかもしれない…と意を決して話を切り出してくれたのかもしれません。

 

できるだけ、SOSには答えたいですよね。 では実際に助けを求められたら、どのように対応するのが良いのでしょうか。

 

 

子どもの不安をまずは受け止めるところから

子どもが不安を伝えてきたら、まずは本人の気持ちを受け止めるようにしましょう。

 

例えば、「学校に行きたくない」とつぶやいたら、まずは「そうか。学校に行くのが辛いんだね」と本人の気持ちを受け止める言葉で返します。

 

親は子どもから「学校に行きたくない」と言われると、「学校で何かトラブルがあったの?」「もしや、いじめを受けているのでは?」とパニックになりやすく、中には、「学校に行かなくなったら、将来はどうなってしまうんだろう…」と勝手に不安を膨らませてしまう人もいることでしょう。

 

しかし、子どもは親の不安にとても敏感です。親の不安定な様子を見た子どもは、「親に言ったら不安が大きくなった…」「自分で何とかするしかないのかな」と心を閉ざしてしまう可能性もあります。

 

親の行動として大切なのは、目の前の子どもの不安に一つひとつ向き合っていくことです。まずは本人の気持ちを受け止めることで、感情が落ち着いてくるはずです。一旦感情を落ち着かせることで、本人の不安を少しずつ整理させてあげましょう。 不安を整理できれば、余計な混乱や心配を軽減させることができ、より細かい部分まで話が進みやすくなるかもしれません。

 

親の主観で判断しない

また、話を聞くときは、まず“聞く”“受け止める”ことを心がけましょう。

 

子どもの気持ちをちゃんと聞くまえに、「学校に行かないなんて恥ずかしい!」「学校に行きたくないなんて誰でも思うこと」などと価値判断(主観で評価して認めたり、否定したり判断すること)をしないこと。

 

話の最中も「話してくれてありがとう」という姿勢で聞くと、余計な圧をかけることなく子どもが話しやすい雰囲気をつくることができると思います。

 

 

 

中学生のHSCには特性を肯定することが大切

さらに、HSCであれば下記のようなことも意識しましょう。

 

特性を好意的に受け止める

HSCは他人からの評価を自己評価につなげやすいとしましたが、それはマイナスの評価に限ったことではありません。 好意的な評価も自己評価につなげやすいのです。

 

子どもを過剰な自己否定に陥らせないためには、親が日ごろから子どもの特性を理解し、好意的に受け止めている姿勢を常日頃から見せてあげましょう。

 

例えば、HSCには集団行動が苦手という特性のある子が多いのですが、「学校で団体行動をするのが苦手だ」と親に打ち明けたときに「中学生にもなって団体行動が苦手だなんて!」と親が返すと、子どもは「団体行動が苦手な自分はダメな子なんだ」と自己否定に陥ってしまいます。

 

ですが、「集団行動が苦手でもいいんだよ。ひとりのほうが集中できるんだね、それでいいんだよ」と、特性に対して親が肯定的に受け入れていることを日頃から伝えるようにすると、自己否定を少し緩和できるかもしれません。 自分を理解し、肯定的に捉えてくれる存在は、本人にとってとても心強いはずです。

 

 

SOSに対して過剰に反応しないこと

では、どのようにSOSに接すればいいのかというと、最初にお伝えしたような思春期全般の子への接し方に加えて、特に気をつけてほしいのは、過剰な反応をしないということです。

 

例えば、「え?どうしたの!?」とその場で大きなリアクションを取ったり、「明日、学校に行ってくるから!」と話を大きくしようとしないこと。本人のペース、トーンに寄り添いましょう。

 

話すといっても、最初はポツリと単語だけだったり、場合によっては無言が続いたりすることもあるかもしれません。

 

しかしそんな状況でも、本人にとっては気持ちを整理する大事な時間なのかもしれませんので、本人の気持ちを受け止め、見守る姿勢を心がけてくださいね。そのうち徐々に話してくれるかもしれません。

 

 

HSCには周囲の理解、協力が必要なことも

また、HSCの認知度は徐々に高まりつつあるといっても、教育現場での常識といったところまではきていません。本人にはコントロールしがたい特性であるにも関わらず、周りから誤解されていることもあるでしょう。

 

親や本人だけで解決できないような要因がある場合は、担任の先生に特性を理解してもらえるよう、働きかけるのもいいですね。学校で誰か一人でも特性を理解してくれる存在がいることは、子どもにとって助けとなる部分は大きいと思いますよ。

 

 

子どもの成長に合わせた距離感を心がけて

思春期は子どもを取り巻く環境が一段と広がり、複雑な人間関係が作られていく、自立に向けた大切な時期。親からすると「昔はあんなになついてくれたのに…」と寂しさが募ることもあるでしょう。

 

しかし子どもにとって、困ったときに最も助けてもらいたいと思い浮かべる人はやはり親です。大事な時にSOSを話してもらうためには、日頃の些細なやりとりのなかで、本人の行動を尊重しつつ、本人の気持ちに穏やかに関心を示すなど、程よい距離感を保ちながら接してみてください。そうすることで、SOSを話しやすい関係が育っていきます。

 

親として精一杯対応しても、なかなか親子間だけでは関係性を改善しにくいケースもあります。少しでも悩みがあったら、一人で抱え込まず、担任の先生や養護教諭、スクールカウンセラー、児童精神科医に相談してみてもいいかもしれません。 周りの助けを借りながら、子どもにとってベストな状況を考えていけるといいですね。

 

<構成・執筆>ソクラテスのたまご編集部

 

下記の記事では、同じ中学生(思春期)の子がいる保護者からの質問に公認心理士の佐藤めぐみさんもアドバイスしています

思春期は親子関係のリニューアル期。子どもの自立欲求を邪魔しない親の接し方とは?

 

前田佳宏

前田 佳宏

医師7年目の児童精神科医。通称まえまえ先生。精神保健指定医。専門はPTSD、HSP、発達障害、愛着トラウマなど。都内のクリニックにて、認知行動療法、マインドフルネスや家族療法などをベースとした、統合的なストレスケアを用いて、児童や大人の悩みに日々向きあっている。渋谷で哲学対話『ゲーテカフェ』を主宰。現在は専門性を活かし、コーチングの普及にも力を入れている。カフェと散歩と旅が好き。LINE@:https://line.me/R/ti/p/%40623rezui Twitter:@littleri07 HP:https://littleringed.org

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