2020.06.22

思春期は親子関係のリニューアル期。子どもの自立欲求を邪魔しない親の接し方とは?

連載「親子の悩み相談室」4回目となる今回は、思春期を迎えた親子関係の悩みに答えます。子どもにより多少の差はありますが、小学校高学年くらいから始まる思春期。親として悩むことの多い時期ですが、子どもにとっては人間として成長するためのとても大切な時期です。子どもの心の中ではどのような変化が起きているのか、円滑な親子関係を築くためにはどうすれば良いのか。母親の育児相談を行い、多くの事例を見てきた佐藤さんの解説は子どもの年齢関わらず親にとって必読の内容です!

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今回のお悩み

中学生になってから、部屋にこもりがちで何をしているのか分からない息子。思春期なんてそんなものなのかなとは思っていますが、もともと優しすぎたり、周囲に対して敏感で傷つきやすかったりする性格です。情緒不安定になりがちな思春期は生きづらいのではないかなと心配しています。本人が乗り越えていくしかないのですが何も話さない、一緒にいる時間の少ない子どものSOSに気づく方法やフォローの仕方を教えてください。 (中学3年生男子の母)

 

 

 

親とあまり会話をしたがらなくなる、反抗的な態度をとる、深刻な場合だと親に暴力を振るう場合もある思春期。今までスムーズだった親子関係に急にかげりが見え「子どものことが分からなくなった」と悩んだり、親としての在り方に悩んだりする人も多いのではないでしょうか。

 

まずは、思春期を迎えた時期の子どもの心の中で起こっている変化を考えてみましょう。

 

 

思春期の子どもに起こる心理的な変化とは?

思春期の心理的変化を解説する上で、まずは2つの心理学理論を紹介しましょう。

 

 

  • ライフサイクル理論
    発達心理学者・エリクソンが提唱した「ライフサイクル理論」では、人間には年齢ごとに8つの精神発達段階があると解説しています。11歳~18歳頃、いわゆる思春期と呼ばれるこの時期が含まれるのは「青年期」(12歳~22歳)。その発達課題となるのが自我同一性(アイデンティティ)の確立です。エリクソンは、人間のライフサイクルの中でもっとも重要な時期だとも分析しています。

  • 心理的離乳
    心理学者・ホリングワークスの「心理的離乳」という概念も、青年期の特徴を表したもの。家族からの精神的な分離・自立を示す概念で、自我を確立していく心の動きを指します。「自立したい」という欲求はあるものの未熟な部分があるため、情緒的に不安定になります。しかし、この葛藤を乗り越えることが大人として独立するための重要なプロセスであると提唱しています。

 

 

つまり「自我同一性」というのは“自分はどういう人間なのか”を理解することで、これが思春期における一番のタスク(課題)。考え方や行動スタイルなどいろいろと自分で試しながら取捨選択し、「私ってこういう人間なんだ」という総合的な概念を形成する時期なのです。

 

思春期以前の子ども時代は、しつけも含め親から「〇〇しなさい」というかたちで要求されることがすごく多いですよね。しかし、思春期を迎えた子どもにはそれまでの親子関係が通用しないため、親子関係を新しく作り替えたり修正していったりという時期になるのです。

 

 

 

 

一人の人間として自立する上で、あれこれ指示されることに抵抗感が出てきます。友達とのつながりが濃くなり、友達に対しては肯定的な感覚を持ちつつ、親や先生に対しては負の感情を持つのも特徴。ただし実際、親に依存している部分に気付かされる場面もあるものの、「依存したくない!」という気持ちが強いので葛藤に苦しんだ結果が反抗心として出てしまうんです。

 

心理学用語の中に、人から強制されると反抗心を抱くことを表した心理的リアクスタンスという言葉がありますが、人から「あれしなさい、これしなさい」と自由を奪われるような決断を恣意的にされると反抗する傾向にあるのは思春期以外の子、大人でも同じです。2歳のイヤイヤ期もそうですが自我を確立する決定的時期というのは、他者、とりわけ親を受け入れられなくなるのが特徴になります。

 

思春期とは、まさに自分探しの旅。自我の確立を達成していく過程で自問したり、親への反抗が出てきたりするようになるのは人間として発達していく上で必然のことなのです。

 

 

 

 

「うちの子は反抗的な態度を取らないけど、大丈夫かな?」「年齢的に思春期なはずなのに、なんら変わらないけど…」と心配する方もいるでしょう。でも、思春期というのは「反抗すればOK」「反抗しなかったらダメ」ということではありません。抽象的で外側から見えなかったとしても、その子自身がしっかりと自分の意見を持って社会人になっていけるかということが大事になります。

 

思春期の課題である「自我の確立」が成されずにいつまでも精神的に未熟なまま、ずっと親に依存し続けたままでは自立が促されません。

 

 

思春期の特徴は? 親がキャッチできる“サイン”はある?

思春期の心理的変化が表面に出てくる子の場合、分かりやす特徴として挙げられるのは“親との距離感”。例えば、今まで手をつないでいたのに手をつながなくなるとか、触れてくる機会が少なくなります。また、今まで素直に返答していたのにコミュニケーションに屈折性が見えるようになる。親の感触でいうと「感じ悪い」とか「素っ気ない」と感じるような部分です。そういう言動や距離感といった特徴で気づくことが多いでしょう。

 

しかしながら、思春期は子どもの性格や個性というよりもこれまで築いてきた親子の歴史がサインとして表出する傾向にあります。心理学では、この時期の親子関係は二分化すると考えられています。

 

  1. 規則について明白でゆるぎない態度を持ちつつも、温かく子どもを支える親の場合は、その子どもたちは青年期を通してほとんど大きな問題を起こすことはない。

  2. 親が権威主義的で厳格な規則を持ち、子どもに対し温かさに欠ける態度をとる場合、もしくはあまりにも甘すぎる場合、子どもはより多くの情緒的トラブルや行動の問題を示す傾向がある。

 

思春期はあるべきもの、自我の確立をしないまま大人になってしまうと子ども本人が困ることになります。しかし、相談者であるお母さんもそうですが、思春期を迎えたわが子とのコミュニケーションに悩む親は多いことでしょう。

 

次章では、親子の関係性や子どもとの接し方で気をつけたいことについて解説しましょう。

 

 

思春期の子どもと接する時にポジティブな感情を見落とさないで

相談者であるお母さんは、15年わが子を見てきて息子さんの性格やタイプをよく理解しているのが分かります。子どものことを気に掛けているからこそ生まれる悩みですし、以前の記事で解説した親としての“察する力”は十分なのではないかと思います。この点は、親として自信を持ってくださいね。

 

【“察する力”について解説した記事はこちら】

ママ友の態度や子どものことが気になり過ぎる。マイナス思考への処方箋はある?

 

 

 

 

思春期の子どもは、友達との関係に重きを置きます。友達と自分を比較し、友達から自分はどう映るのかを気にしながら「自分はどういう人間なのか」と自問していきます。

 

この時期は特に、子どもに「何かあった?」「どうだった?」と聞いてもまともな答えが出てくることは少ないでしょう。したがって、思春期の子どもへの接し方としては「何かあったら相談に乗るからね」という受け入れ態勢を示すことが大事です。

 

思春期といえど、例えば“いま話題の美味しいスイーツが手に入った”となったら「やった!」となると思うんです。思春期というものにフォーカスし過ぎると、その子のポジティブな感情を見落としてしまうことがあります。親が心配するあまり、悪いところばかりが気になってしまうんです。

 

友達と笑って遊んでいたりご飯をモリモリ食べていたり、そういう喜びや楽しい感情というのは思春期の子どもでも必ずあるので、そのタイミングで「何かあったら、相談してね」と声を掛けてもいいですね。親ならそのタイミングが分かるでしょうし、自分の経験談を話すのもいいですよ。「お父さんも、昔は〇〇だったんだよ」とか、こういう時代があって当たり前なんだって。過去の美談を話すのではなく笑い話や失敗談なんかを話しながら、その流れで「だから、困ったら相談すればいいから」と話してみてくださいね。

 

また、子どもから話してくれる内容をしっかり聞いてあげることも忘れないでくださいね。“きく”という言葉には、3つの種類があります。聞く・聴く・訊くお子さんとの会話で、“訊く”が多くなっていませんか? それだと、親が矢継ぎ早に質問するばかりで肝心な子どもの心の声はキャッチできません。そうではなく、まずは子どもが積極的に話したいことに耳を傾ける、“聴く”ことで話の切り口が見出せる可能性も高くなります。親が押す力を引っ込めて、来るものを受け止めてあげるという対応がこの時期には特に大切です。

 

 

親子関係の軌道修正は思春期を迎えるまでに

相談者さんのお子さんはすでに思春期を迎えていますが、この記事を読んでいる読者の中には、まだ思春期を迎えていないお子さんも多いでしょう。もし、お子さんの思春期までまだ時間があるならぜひ一度、親としての在り方や親子関係について考えてみてください。

 

私の経験から、思春期の心の問題が深刻化しやすい家庭の特徴として2つ挙げることができます。

 

 

  1. 甘やかし
    何でもかんでも“子どものため”といろいろやってあげるケース。子どもに負の感情を持たせないようにと先回りしてあげたり、失敗しても親がフォローしてあげたり。また、子どもの欲求を簡単に満たしてしまうのも“甘やかし”に当たります。親子関係が“甘やかし”でつながったものである場合、思春期を迎えた子どもは親に指示的な態度をとることが多くなります。子どもに尽くしてきたあまりに、それが悪い方に出てしまうんですね。

    このケースに多いのが、“物を与えて解決する”という関係性。例えば、おもちゃは買ってあげて終わりというもの。本来は、そのおもちゃは一緒に遊ぶことで生きてきます。でも、「買ってあげたら喜んでくれた」とそこで満足してしまうと、結果的に親との絆が緩んでしまうんです。忙しくなるとどうしても、甘やかすことは簡単なのでしてしまいます。しかし「お母さんは、ごねたり騒いだりすれば言うことを聞いてくれる、買ってくれる」と学んでしまうと、親を振り回すような習慣が身に着いてしまい、思春期が大変になってしまうのです。

    “甘えさせる”ことと、“甘やかす”ことは違いますので、甘えさせるけれど、甘やかさないのがポイントになります。


  2. 厳しすぎる
    親の思い描く“良い子”に育てようと思うあまり、子どもの意思以上に親自身の意思を前面に出し、結果的に厳しくなりすぎることで、子どもが“自我”に迷い爆発を起こすケース。親が何でも決めてしまうため、その子は自分の意見を持たずに成長し、大人になっても自分で決められない人間になってしまいます。

 

こういった親子は衝突が発生すると、子どもが親を責め、それに対し親がショックを受けることも多く、怒り・不安・葛藤など負の感情が入り乱れた状態に陥りがちです。

 

いずれにしても思春期は、これまでの親子関係の“悪い癖”が加速してしまう傾向にあります。親子関係に問題があると感じているのであれば、思春期を迎える前にできるだけ早く軌道修正を行うことが大切です。

 

 

 

 

思春期前の子どもとは、“遊び”で絆を強めよう

共働き夫婦が増えたこともあり、今のお母さんは本当に忙しいですよね。でも、やはり親子の関りが極端に減ると、関係に影響が出てきてしまいがちです。忙しいご家庭におすすめなのが、遊びの力です。遊びには、心理学でいう「アタッチメント」、つまり情緒的結びつきを強める働きがあることが知られているので、その力を活用しましょう。短くてもいいので、濃く遊ぶことを心掛けてください。15分とか20分とか「帰ったらママと遊べる」と明確に分かれば子どもは楽しみができるし、それが親子の絆になります。

 

親子関係を強める目的なら、競う遊びより協調し合える遊びの方が望ましいと言われています。バトルなどの戦う遊びが好きで子どもから「それがやりたい」と言うのであればいいのですが、親からは一緒に作り上げるもの、お菓子作りや料理、工作、パズルなどを提案してみてください。親子で分担、兄弟で分担し協調し合って一つのものを作り上げる共同作業的な遊びというのはすごく良いんです。

 

ただ「20分集中して遊ぶ」と決めていても、どうしてもそれに応えられないこともあるでしょう。そういう時は、きちんと謝ることも大切です。親が謝ることができないと子どもも謝ることはできません。子どもに叱り過ぎちゃった時もそうですし、自分の非を認めるというのは親が見せるべき姿。子どもにとって、親の行動も観察学習になりますから。

 

 

 

 

「思春期はこういう時期なんだ」と見守ることも大切

思春期の子どもに対して親ができるのは、“信じてあげること”、“温かく見守ってあげること”。これまでのように抱っこしたり一緒にお風呂に入ったりというのが解決法にならず、一筋縄ではいかない部分も多いでしょう。

 

しかし、相談者のお母さんは第一段階である気付くことはできています。目の届いた育児をしているからこそ、「あれ?」と気付くことができたのではないでしょうか。思春期のうち、親が悩む反抗期というのはだいたい12~15歳くらい。第二反抗期と言われるものですが、それがずっと続くわけではありません。振り返ってみると「中3の時ががひどかったな」「あのひと夏がピークだった」という一過性のものです。親子関係をこじらせないようにある程度は子どもを見守る、「こういうものなんだな」という受け止めも大事。

 

子ども自身が放つ気配を感じ取ってあげつつ「学校に行きたくない」「食欲がない」というところまで来たら突っ込んだ方が良いと思いますが、今の段階ではそういう心配はないのかと思います。今は見守る、タイミングがあれば「相談するのよ」とちゃんと伝えておくことができることなのかと思います。

 

 

 

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佐藤めぐみ

佐藤めぐみ

公認心理師、オランダ心理学会認定心理士。欧米の大学・大学院で心理学を学び、「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は公認心理師として、育児相談室・ポジカフェでの心理カウンセリング、ポジティブ育児研究所での子育て心理学講座、メディアや企業への執筆活動などを通じ、ママをサポートする活動を行う。ドイツ在住。中学生の娘の母親として子育てにも奮闘中。

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