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2024.10.03

文科省が推進する不登校対策「COCOLOプラン」とは?【わかりやすく解説】

文部科学省が2023年3月に発表した「COCOLOプラン(誰一人取り残さない学びの保障に向けた不登校対策)」は、急増する不登校児童生徒への新しい支援策です。教室だけでなく、さまざまな場所での学びの確保、ICTを使った早期支援、学校の雰囲気の改善など、「三つの柱」を中心に幅広い取り組みが進められています。

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誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策「COCOLOプラン」とは

COCOLOプランの概要

「COCOLOプラン」は、学びの機会をすべての子どもに保障する不登校対策です。2023年3月31日に永岡文部科学大臣が「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について(通知)」という文書を発表しました。

この取り組みの名称「COCOLO」は、”Comfortable, Customized and Optimized Locations of learning”の略で、「快適で個別化された最適な学びの場所」を表しています。

COCOLOプランが目指すのは、教室での授業にとどまらない学習機会の提供。子どもたちひとりひとりのニーズに合わせた学習を保障するための対策を講じていくとしています。この考え方は、従来の学校中心の教育観を大きく広げるものといえるでしょう。

プランの名称には、子どもたちの多様な学び方を認め、支援していく国の姿勢が表れています。教室以外の場所でも、子どもたちの学ぶ権利を守ろうとする新しい教育の方向性が示されているのです。

文科省がCOCOLOプランを策定した背景

文部科学省「COCOLOプラン」

文科省がCOCOLOプランを策定した背景には、不登校児童生徒数の急増があります。2022年度の統計によると、全国の小・中学校で不登校状態にある児童生徒は29万9048人に達しました。前年度から22.1%も増加し、過去最多を記録しています。

この数字が意味するのは、小・中学生の約3.2%が学校に通えていない状況です。過去5年間の推移を見ると、その深刻さが際立ちます。

小学生の不登校割合:2018年の約0.7%から2022年には約1.7%に
中学生の不登校割合:2018年の3.7%から2022年には6.0%に

30万人近い子どもたちが十分な学びを受けられていない現状は、個人の問題にとどまりません。社会の未来を担う人材育成の観点からも、看過できない課題となっています。

新型コロナウイルスの影響も、この傾向に拍車をかけました。生活環境の激変や人間関係の希薄化により、子どもたちの不安や悩みは複雑化しています。不登校の原因も多様化し、従来の対策では十分に対応できなくなってきたのです。

このような状況を踏まえ、文科省が新たな対策として取りまとめたのが COCOLOプランです。これにより多様化する不登校の課題に、より柔軟に対応することを目指しています。

COCOLOプランの目的

COCOLOプランの目的は、多様な背景を持つ子どもたちへの支援体制を整え、すべての子どもに学びの機会を保障することにあります。

2016年に制定された教育機会確保法は、COCOLOプランの基盤となる考え方を示しています。この法律の第13条では、不登校の子どもたちに「休養の必要性」を認めました。これは、多くの不登校児童生徒が精神的な困難を抱えており、学習に向かうのが難しい状況にあることを考慮したものです。

COCOLOプランが掲げる「誰一人取り残さない学びの保障」には、十分な休養期間の確保、周囲の人々からの適切なサポート、個々の状況に合わせた学習環境の提供などが含まれています。不登校の子どもたちが自分のペースで学びに向かう姿勢を取り戻せるよう配慮しているのです。

これは、多様性を認め、個別のニーズに応える教育のあり方を示す重要な取り組みだといえるでしょう。

COCOLOプランの三つの目標

文科省はCOCOLOプランで、誰一人取り残さない学びの保障を実現するため、「三つの柱(目指す姿)」を設定しています。

COCOLOプランを構成する三つの柱

  1. 不登校の児童生徒すべての学びの場を確保し、学びたいと思ったときに学べる環境を整える
  2. 心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
  3. 学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする
文部科学省「COCOLOプラン」

1.不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える

1つ目の目標は、不登校児童生徒が学びたいと思ったときに、いつでも学習できる環境を整えることです。

具体的な取り組みには、以下の5つがあります。

  • 不登校特例校の設置を促進
  • 校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置を促進
  • 教育支援センターの機能を強化
  • 高等学校等においても柔軟で質の高い学びを保障
  • 多様な学びの場、居場所を確保

文科省は全国300校の「不登校特例校」の設置を目指しています。これらの学校では、通常より少ない授業時間数で柔軟なカリキュラムを組むことができ、不登校児童生徒の実態に配慮した学びをおこなっています。

また、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置も促進しています。ここでは、教室に入りづらい児童生徒が自分のペースで学習できる落ち着いた環境を提供しています。

教育支援センターの機能強化も重要な取り組みです。ここでは、児童生徒本人への支援だけでなく、保護者への情報提供や相談対応もおこないます。さらに、NPOやフリースクールとの連携を強化し、地域全体で不登校児童生徒を支える体制を構築しています。

高校では、不登校生徒も学びを継続し卒業できるよう、電話やSNSを活用した相談事業、オンラインでのカウンセリングなど、新たな支援方法が導入されていっています。

これらの取り組みにより、多様な学びの場を確保することで、すべての子どもたちの学ぶ権利を保障し、将来の可能性を広げることが、これらの施策の最終目標です。

2.心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する

COCOLOプランの第2の目標は、「不登校の予防」に重点を置いた早期支援システムの確立です。1人1台の端末を活用して、児童生徒の小さなSOSを早期に発見し、「チーム学校」による迅速な支援につなげることを目指しています。

具体的な取り組みは、以下の3つ。

  • 1人1台端末を活用した心や体調の変化の早期発見を推進
  • 「チーム学校」による早期支援を推進
  • 1人で悩みを抱え込まないよう保護者を支援

ICTを使った心と体の変化の早期発見では、子どもたちの様子を毎日見守り、子どもや保護者が簡単に先生やカウンセラーに相談できる仕組みをつくります。令和5年2月の時点で、全国411の市や町がアプリなどを使って把握しており、580の市や町が導入を検討しているとのこと。

「チーム学校」による多方面からの支援では、教師、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、養護教諭、学校医などの専門家が連携。それぞれの専門分野を生かした最適な支援につなげています。こども家庭庁とも協力し、福祉の部門と教育委員会が一緒になって、子どもたちと保護者を幅広く支える体制もつくられていっています。

保護者への支援強化も、大切な取り組みです。学校に行けない子どもの保護者がひとりで悩まず、適切な支援につながれるよう、各教育委員会に相談できる窓口が設けられています。また、カウンセラーやソーシャルワーカーが関係する機関と協力して、保護者を支える体制を強化しています。

これらの取り組みによって、子どもたちの小さな変化を見逃さず、保護者も含めた支援の仕組みを構築することで、すべての子どもたちが学べる環境づくりが進められています。

3.学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする

3つ目の目標は、学校をすべての子どもたちが安心して学べる場所にすることです。子どもたちの声を大切にしながら学校の雰囲気を「見える化」し、共通認識を持って改革に取り組んでいくとしています。

ここでの具体的な取り組みは、次の5つです。

  • 学校の風土を「見える化」
  • 学校で過ごす時間の中でもっとも長い「授業」を改善
  • いじめ等の問題行動に対しては毅然とした対応を徹底
  • 児童生徒が主体的に参加した校則等の見直しの推進
  • 快適で温かみのある学校としての環境整備
  • 障害や国籍言語等の違いに関わらず、いろいろな個性や意見を認め合う共生社会を学ぶ場に

まず、学校の風土や雰囲気と欠席日数の関連性を踏まえ、風土等を知るためのツールを整理。このツールを用いて、子どもたちの授業の満足度や先生への信頼感、学校生活の安心感などを調べ、改善していきます。

次に、学校生活の多くを占める「授業」をアップデート。1人1台の端末を使い、子どもたちの学びの進み具合や興味に合わせた学びをおこなうとしています。

いじめや学校での暴力などの問題には、毅然とした対応をし、犯罪と思われる行為があったときは、すぐに警察に通報する仕組みをつくることで、安全な学校が保たれます。

また、子どもたちが自主的に校則の見直しやルールづくりに参加できるようにしていくとのこと。校則をホームページに載せる等の取り組みも進めていくようです。

同時に、学校全体を楽しい学びの場にするため、心地よくあたかい環境づくりを目指していくとのこと。

最後に、障がいの有無や国、言葉の違いに関わらず、すべての子どもたちが一緒に学べる環境を整えるとしています。

文部科学省「COCOLOプラン」

これらの「三つの柱」に基づき、学校・行政・民間が協力して、すべての子どもたちが安心して学び、成長できる学校をつくることを目指してーー。COCOLOプランによって子どもたちを取り巻く環境が変わっていくといいですね。

COCOLOプランの現状と課題

COCOLOプランは、不登校の問題を解決するための前向きな取り組みですが、多くの課題も抱えています。予算と人員が足りないのが、その最大の壁です。

また、学校に行けない理由の1つである「授業についていけない」という問題は、ただオンラインの環境を整えるだけでは解決できません。ひとりひとりの学び方に合わせた教え方が必要ですが、これにも人員が必要になります。

また、COCOLOプランが推進されているとはいえ、「学びの多様化学校」は全国的にまだあまり多くありません。そのため、民間のフリースクールと協力することが大切な選択肢になっています。

これらの問題に対処するには、予算の使い方を工夫し、資源を効率よく使う必要があります。同時に、先生を増やしたり、専門家(相談員やソーシャルワーカーなど)をもっと活用したりすることも大切です。

COCOLOプランで掲げた理念を実現するには、これらの課題をひとつずつ乗り越えていく必要があります。それと同時に、それぞれの地域の状況に合わせて柔軟に対応し、常に評価して改善していくことも求められます。

不登校の問題をすぐに根本解決することは難しいでしょう。しかし、COCOLOプランで策定した取り組みをおこなっていけば、学習の機会を手にする子どもを増やしていくことはできるはずです。「誰一人取り残されない学びの保障」という理念を実現するため、各家庭でできることも考えてみたいですね。

<参考サイト>
文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)について」
文部科学省「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律等について」
ReseEd「不登校者数・いじめ件数が過去最多…文科省調査」
ニュースク「【2023年最新版】2022年度 都道府県別「不登校生徒数」と年度別不登校人数の推移」
寺子屋朝日「​COCOLOプランとは 不登校の現状と誰一人取り残さない教育に向けた課題」
みんなの教育技術「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)とは?【知っておきたい教育用語】」
issues「不登校対策COCOLOプランとは|背景とポイントを解説」
ReseEd「誰一人取り残さない「COCOLOプラン」増加する不登校対策」
sure for All Children「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)について
Hug Kum「COCOLOプラン」とは。不登校の現状から主な取り組みまでチェック【新時代の教育を考える】
教育機会確保法と不登校支援COCOLOプランについて知ろう!

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