• facebook
  • twitter
  • LINE
  • hatena
2024.07.16

小学生の不登校の原因は?親ができる5つの対応や今後に向けたステップ

小学生の不登校に悩む保護者の心の中は、言葉では表せないほど複雑で苦しいもの。「なぜ学校に行けないのだろう」「私の育て方が悪かったのかな?」と自問自答を繰り返す方も多いのではないでしょうか。
しかし、不登校には様々な原因があり、決して親だけの責任ではありません。
この記事では、小学生の不登校の主な原因を探り、親としてできる5つの具体的な対応策と今後に向けたステップをご紹介します。

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

記事を執筆したのは…

中村 藍先生

支援級・通常級・支援学校等の教員経験20年以上のベテラン。その子に合う学びの場の提案と学校への交渉・相談の方法を、寄り添いながらも具体的に丁寧にアドバイスしてくれます。

小学生の不登校の現状とは?

近年、小学生の不登校が過去最多の水準に達しています。ここでは文部科学省の調査結果に基づいて、小学校における不登校の現状を解説します。

不登校の定義

文部科学省は、不登校の児童生徒を以下のように定義しています。

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの

引用元:文部科学省「不登校の現状に関する認識」

小学生の不登校児数の推移

文部科学省の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、2022年度の不登校の小学生は10万5112人(前年度比2万3614人増)。10年連続の増加です。全体に占める割合は1.7%で、小学生の約60人に1人が不登校の状態にあります。

引用元:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」74ページ

学年別の不登校児童数

次に、不登校児童生徒の数を学年別に見てみましょう。中学校では2年生から3年生でやや下がるものの、全体的には学年が上がるにつれて不登校の児童生徒数が増加しています。中学校への進学時に急増することも見逃せません。

引用元:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」76ページ

小学生の不登校の主な原因とは?

小学生が不登校になる原因にはさまざまなものが考えられます。
文部科学省の調査では、もっとも多い要因は「無気力・不安」。次いで「生活リズムの乱れ・あそび・非行」でした。

※参照元:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」87ページ

公益社団法人 子どもの発達科学研究所と浜松医科大学子どものこころの発達研究センターが文部科学省の委託を受けておこなった「不登校の要因分析に関する調査研究 」からも、不登校の原因を見てみましょう。
この調査は、全国のいくつかの自治体で行われました。
対象者は令和4年度問題行動等調査において不登校として報告された小学3年生から高校1年生の児童生徒。教師回答は1,424名、うち児童生徒回答は239名、保護者回答は200名です。

引用元:公益社団法人子どもの発達科学研究所/浜松医科大学子どものこころの発達研究センター「文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」

次に、個々の原因について詳しく見ていきましょう。

心に関する原因

子どもが成長するに従って起こる、さまざまな心の変化。それらが不登校のきっかけになるケースもあります。

親と離れる不安(母子分離不安)

低学年の子どもを中心に、大人と離れての登校に寂しさや不安を感じるケースがあります。特に、母親と離れる際に感じる強い不安を「母子分離不安」といいます。

例えば以下のような様子が見受けられます。

  • 朝になると体調不良を訴える
  • 学校に行く直前に泣きだす
  • 母親から離れるのをひどく嫌がる

分離不安自体は発達に伴う自然なものです。ただ、不安がとても強く、学校生活や日常に支障をきたすような場合は「分離不安症」と診断されるケースもあります。

※参照元:MSDマニュアル家庭版「分離不安および人見知り」

MSDマニュアル家庭版「分離不安症」

思春期の不安定さ

小学校高学年から始まる思春期には、身体的・精神的に著しい変化が起こります。
自己イメージが変わりやすく、友人関係も複雑に。加えて、学業へのプレッシャーや進路への不安も心を揺さぶります。情緒が不安定になる場合も少なくありません。

これらの要因が重なって登校自体がストレスとなり、不登校になるのです。

※参照元:e-ヘルスネット「思春期のこころの発達と問題行動の理解」

学校に関する原因

学校で起こっている出来事が不登校の原因となっている場合もあります。

いじめや友人関係のトラブル

からかいや仲間外れ、暴力などのいじめを受けていれば、学校に行きたくなくなるのは当然です。また、特定の友達とトラブルになり、互いに嫌な思いをしているケースもあります。

気がかりがあれば、何げなく「学校では誰と遊んでいたの?」などと質問し、子どもの反応を見てみましょう。

「実は◯◯君、いじめられていたんだよ」「最近、クラスでトラブルがあったみたいよ」など、周りの子どもたちや保護者から情報がもたらされる場合もあります。知り合いを多く作っておくと、いざというときに役立ちます。

集団生活に適応するストレス

集団生活になじまない子どもも一定数います。人間関係や同調圧力に戸惑いを感じ、登校がしんどくなるのです。

教師との関係

教師の言動に傷ついたり、叱られている友達を見て自分までつらく感じたりするケースもあります。

疑問や悩みがあっても教師になかなか言い出せず、常に不安を感じているーそのような場合、学校は子どもにとってつらい場所になってしまいます。

学習に関する原因

「学校に行きたくない」という言葉の裏には、実は学習の悩みが隠れている場合もあります。

勉強への不安

学習面での困難は、子どもの自信や意欲を失わせます。成績が低下し、以下のような姿が見られたら要注意です。

  • 宿題や学校の準備を嫌がる
  • 学習に関する話題を出すと不機嫌になる
  • テスト前に体調不良を訴える
  • 「勉強が難しくてわからない」「どうせぼくなんて」といった言葉が増える
  • テストやプリントを親に見せるのを嫌がったり、隠したりする

特定の教科や学びのスタイルに対するストレス

全ての子どもが同じ方法で学べるわけではありません。特定の教科や学習方法に強いストレスを感じる子どももいます。
机上での学習だけではなく、学校行事や発表会が不安で登校できなくなるケースもあります

  • 特定の教科の時間になると体調不良を訴える
  • グループワークや発表を極端に嫌がる
  • 教科の得意・不得意に大きな差がある
  • 行事が近づくと学校を休みがちになる

家庭に関する原因

学校だけでなく、家庭環境が原因となる不登校もあります。代表的な二つの原因について解説します。

家庭環境の変化

引っ越しや家族の転職、病気、そして離婚など、家庭生活で起きた出来事が不登校につながります。

親のかかわり方

過保護や過干渉、あるいは放任主義が要因となるケースもあります。

過保護や過干渉の場合、子どもは自分で決めたり行動したりする機会が得られにくくなります。しかし学校では、ある程度自立して行動しなければなりません。したがって、学校生活に不安を感じやすくなるのです。

一方放任主義の場合、子どもは無力感や孤立感をおぼえ、学校での人間関係や学習に影響を及ぼします。学校で使うものの準備や朝食などのサポートが十分でない場合も、学校を休みがちになるでしょう。

大切なのはバランスを取った適切なかかわり方です。しかし、もちろん難しい場合もありますね。親のかかわり方については後ほど詳しく解説します。

健康に関する原因

健康面での要因が不登校につながる場合があります。ここでは、病気やけが、起立性調整障害などについて取り上げます。

病気やけがなど、身体的な不調

風邪やインフルエンザなどの一時的な病気だけでなく、慢性的な疾患やケガの後遺症によって登校しづらくなるケースがあります。例えば以下のような症状です。

  • ぜんそくやアトピー性皮膚炎:発作への不安や、症状による集中力の低下
  • 消化器系疾患:腹痛や吐き気への恐怖、トイレの心配
  • 頭痛:偏頭痛や緊張性頭痛など、慢性的な症状による集中力の低下、授業中のつらさ
  • 気象病:低気圧や悪天候で起こるだるさやめまい、頭痛
  • 骨折や手術後の体力低下: 運動や体育、通学の負担

一見不登校と関係なさそうな病気でも、 学校生活を送るうえでの困難 や 精神的な負担に繋がる場合があります。
また、身体的な理由での欠席が長引くにつれ再登校がしづらくなり、そのまま不登校になる子どももいるでしょう。

起立性調節障害

不登校になる理由の中でも見逃されがちなのが「起立性調節障害(OD)」です。立ち上がったときに頭痛、めまい、倦怠感などの症状があらわれます。血圧や心拍数など自律神経の不調によって引き起こされると言われています。

特に思春期に発症しやすく、午前中に症状が強く現れます。そのため、朝の登校が困難になり、学校生活に大きな支障をきたします。
症状が重くなると不登校やひきこもりに発展するケースも少なくありません。

統計によれば、ODは中学生の約10%に見られる比較的多い病気です。さらに、不登校の約3〜4割にODが併存しているとされています。

※参照元:一般社団法人日本小児心身医学学会「起立性調節障害」

概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害は、体内時計の周期と外界の24時間周期が適切に同調できずに生じる睡眠障害です。

人間の体内時計は約25時間であり、地球の24時間とは約1時間ずれています。通常、このずれは光、食事、運動、社会的な活動などによって修正されます。しかし、これがうまくいかないと、入眠や覚醒が望ましい時間にできなくなり、不登校の原因となるのです。

このような状態では、朝起きられない、夜眠れないといった不規則な睡眠パターンが続きます。また、無理に外界の時間に合わせようとすると、眠気、頭痛、倦怠感、食欲不振などの身体的な不調が現れます。
学校に通う年代の子どもは、時間通りの登校が難しくなり、不登校の要因となりがちです。

※参照元:e-ヘルスネット「概日リズム睡眠障害」

その他の原因

不登校になる要因は、必ずしも一つではありません。以下に、不登校の背景にあるかもしれないその他の原因についてお伝えします。

発達障害などの可能性

文部科学省の調査によれば、学習面または行動面で著しい困難を示す小学生は、全体の10.4%。40人学級ならクラスに約4名在籍している計算になります。

もちろん、このような子どもたちの全員が発達障害ではありません。しかし、何らかの特性を持っている可能性があり、学校生活において以下のような影響が考えられます。

  • 友達とのコミュニケーションが難しい
  • 集団行動になじめない
  • 感覚過敏により教室の環境に適応できない
  • 学習面での困難(読み書きや計算など)

これらの特性ゆえに、友達関係がうまくいかなかったり、集団になじめなかったりします。結果として、登校への不安や抵抗感が強くなるのです。

【発達障害の子どもの不登校】親ができる対応や家での過ごし方は?相談先や事例も紹介
【発達障害の子どもの不登校】親ができる対応や家での過ごし方は?相談先や事例も紹介
発達障害の子どもが不登校になると、親は対応に悩むことが多いのではないでしょうか。適切な関わり方や家庭での過ごし方を知ることは、子どもの心と生活の安定に大いに役立.....

生活リズムの乱れやあそび、非行

生活リズムが乱れたり、遊びや非行に走ったりして不登校になるケースもあります。

  • 夜型の生活リズムにより、朝起きられない
  • ゲームやSNSに没頭し、夜更かしが習慣化
  • 友人との付き合いが深夜に及ぶ

これらの状況が続くと、学校に行く意欲が低下し、不登校につながる可能性があります。

不登校の小学生のために親ができる5つの対応とは?

子どもの不安や悩みに寄り添い適切に対応すると、少しずつ解決の糸口が見えてくるはず。ここでは、不登校になった小学生のために親ができる5つの対応について紹介します。

対応①子どもの気持ちを受け止め、寄り添う

不登校になった直後、子どもは心身共に疲れています。親としては「このままずっと登校できなくなるのでは」と不安にかられますが、まずは子どもの思いに寄り添いましょう。
結果として、それが解決への近道になるのです。

子どもの話に耳を傾ける

子どもが何を感じ、何を考えているのかを知るためには、まず話をしっかりと聞くのが大切です。子どもが好きなアニメやゲームなどの話題で話しやすい雰囲気を作るところから始めましょう。

子どもの話には、親が納得できない言い分や「それは違うんじゃないの」と言いたくなる部分があるかもしれません。しかし、途中で遮らず、子どもが話し終わるまで聞き続けましょう。そして、「そうか、あなたはこう思ったんだね」と受け止める姿勢を大切にしてください。

「休んでも大丈夫」と伝える

不登校になった子どもの多くは、罪悪感を抱えています。親は焦る気持ちを抑え、「休んでも良い」と言葉で伝えてあげましょう。子どもは安心できる環境の中で、心身のエネルギーを充電し、自分を取り戻していきます。

不安やプレッシャーから解放されて気持ちが楽になると、解決策を見つけるための第一歩につながりやすいのです。

母子分離不安への対応

母子分離不安を抱える子どもに対しては、安心感を大切にしましょう。

言葉で説明するよりも、母親がそばにいる体験を与えるのが効果的です。
母子分離不安は、特定の物事に対する具体的な心配ではなく、「何となく寂しい」「何か悪いことが起こりそう」といったモヤモヤした感情。「大丈夫よ」「心配しすぎじゃないの」といった言葉では、子どもの感覚的な不安を拭い去るのは難しいのです。

両親で対応する際に気をつけたいのは、父親と母親の言動の不一致です。子どもへの接し方が違っていると、子どもは混乱します。

家庭の事情で、両親が揃って対応できない場合もありますね。そのようなときは、家族以外の力を借りましょう。複数の大人がさまざまな役割を担うことで子どもを支えるのです。

自立を促すためには成功体験も有効。例えば、一人でおつかいに行く、友達と遊ぶ約束を守るなど、達成できそうなタスクを与えてみましょう。「できた」という経験の積み重ねで、分離のストレスは和らぎます。

同じく、段階的な分離練習も効果的です。最初は親と一緒に、徐々に短時間だけ一人で過ごす時間を増やしていき、分離への不安を軽減していきましょう。協力が得られるなら、祖父母宅で過ごすなどの経験もおすすめです。

対応②生活リズムを維持する

生活リズムが乱れる原因は、人間関係や勉強のストレスによる不眠や、ゲームなどさまざま。 

心身の健康を回復させ学校生活に復帰しやすくするためにも、生活リズムを維持しましょう。

起床時刻と就寝時刻を守る

学校へ行かなくなると、真っ先に乱れがちなのが起床・就寝の時刻です。しかし、ここは親のふんばりどころ。登校していた頃と同じ生活リズムを守りましょう。どうしても朝起きられないときは医療機関の受診も選択肢です。

ゲームやスマホ、タブレットはルールを決めて使わせる

学校へ行かずに好きなだけゲームやスマホに触れられるとなれば、生活リズムは必ず乱れます。

厳しく制限しすぎる必要はありませんが、「親の管理下で使うもの」という前提は崩さないようにしましょう。子どもの気持ちに寄り添うのは、言いなりになることではありません。使用時間や場所のルールを具体的に決め、分かりやすく提示するのがおすすめです。

対応③家庭での居場所と役割を与える

家庭は、不登校の子どもにとって安心できる居場所であるべきです。同時に、家族の一員としての役割を与え、「自分はここで重要な存在なんだ」と感じられるようにできると良いでしょう。

安心して過ごせるよう、家族で協力する

不登校の子どもにとって、家庭はリラックスできる貴重な場所です。その環境を守るためには、家族の協力が欠かせません。

子どもの前での夫婦げんかは控えましょう。また、親の関心は不登校の子どもに集中しがちですが、きょうだいも寂しさや不安を抱えている場合があります。きょうだい児との時間も大切にして、がんばりをたくさん認めてあげましょう。

お手伝いをさせ、頼りにする

家族の一員としての役割は、子どもの自尊心や責任感につながります。

年齢や発達段階に合わせたお手伝いを頼みましょう。簡単なもので構いません。
料理の手伝いや洗濯物たたみ、ペットの世話など、できることを少しずつ増やしていけると良いですね。
「助かるよ」「ありがとう」と、感謝の気持ちを伝えるのを忘れずに。ポイントは、「やらされている」ではなく、「自分が必要とされている」と感じられるようにすることです。

対応④学習面でサポートする

不登校になると、どうしても学習面の遅れが心配になりますね。

しかし、焦って無理に勉強させようとするのは逆効果です。子ども自身の「勉強したい」気持ちが、結果的に学習の遅れを取り戻す一番の近道となります。
子どもが元気になってきたな、と思ったら、「どんな勉強ならできそう?」と聞いてみましょう。

学校以外の学びの場を検討する

学校以外にも、学習をサポートしてくれる場所はたくさんあります。

【1】教育支援センター(適応指導教室):不登校児の学校復帰を支援する場所です。在籍校の出席扱いになります。

自治体によって設置状況や支援内容は異なるので、利用を検討する際には在籍校や教育委員会に問い合わせて情報収集をしましょう。

※参照元:文部科学省「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果

【2】フリースクール:

不登校の子どもに対し、学習活動、教育相談、体験活動などを行う民間の施設です。従来の学校とは異なるカリキュラムや方針で運営されており、費用も多岐にわたります。

一部のフリースクールでは、地域の小中学校と連携し、在籍校の出席扱いとなる場合もあります。学校以外の選択肢として、子ども自身の様子や希望、家庭の経済状況などを考慮のうえで検討してみましょう。

※参照元:文部科学省「フリースクール・不登校に対する取組」

民間の塾や家庭教師:不登校に特化した塾や家庭教師も増えています。学習の遅れに対する個別指導や得意分野を伸ばす活動など、様々なニーズに対応しています。

母子分離不安の強い子どもや個別指導が向いている子どもの場合は検討してみると良いかもしれません。

自分に合った学びの場で得られるのは、学習習慣だけではありません。先生や他の生徒と関わる中で、自信や意欲を取り戻せる可能性があります。

家庭学習に取り組ませる

【2024年4月最新版】小学生向けのおすすめオンライン塾34選!選び方や注意点も解説

無理のない範囲で、家庭学習を進めてみましょう。おすすめは学校で使用していた教材です。授業内容とのずれを防ぎ、「学校の先生に丸付けしてもらおう」と再登校のきっかけにもなります。

また、最近は無料で利用できるオンライン学習や動画教材も増えています。視覚的に楽しく学べる教材は心強い味方。ぜひ、YouTubeなどを探してみましょう。同じく、教育番組やドキュメンタリー番組などで知識を深めるのも有効です。

場合によっては学びのスタイルを検討する

学習の遅れや集団への不適応が原因で不登校になっている場合は、学び方の見直しも選択肢になります。これまで通常の学級で集団指導を受けていた場合、以下のような道が考えられるでしょう。

【1】通級指導教室:子どもの障害による困難を改善・克服するため、一人一人の状況に応じた指導を受ける場所です。

ことばの教室とは?支援内容や対象となる子、通うための手順を解説
ことばの教室とは?支援内容や対象となる子、通うための手順を解説
ことばの教室は、言語面で何らかの障害がある子どもに対し、指導や支援を行う教室です。どんな子どもが対象になり、どんな指導が行われているのでしょうか。通うことで期待.....

【2】取り出し指導:決まった教科や時間だけ、別室で個別に指導を受けます。学習のサポートなどに使われることの多い指導です。

【3】特別支援学級への入級:特別支援学級とは、障害のある子どもが学習上または生活上の困難を克服するために設置されている少人数の学級です。子どもの実態やニーズに合わせて、よりきめ細かな教育が受けられます。

いずれの場合も、所定の条件を満たす必要があります。学校と相談しながら進めましょう。

対応⑤学校や専門家と連携する

不登校の子どもをサポートするうえで大切なのは、家庭だけで問題を抱え込まず、学校や専門機関と連携することです。子どもにとってより良い学習環境を提供できるだけでなく、親自身の心も楽にしてくれるからです。

学校内の支援体制

不登校期間中にも学校と連絡を取り合い、子どもの状況や家庭での様子を伝えましょう。学校側からも情報を得ることが大切です。

しばらくは学校のことは考えたくないという子どももいるかもしれません。また、親自身も学校に不信感を抱いている場合もあるでしょう。しかし、寄り添ってくれる先生を見つけ、連携することをあきらめないでほしいと思います。多くの学校では、以下のような支援体制がとられています。

  • 管理職(校長・副校長・教頭)
  • 担任や学年主任
  • 特別支援教育コーディネーター
  • スクールカウンセラー
  • 生徒指導担当
  • 養護教諭

担任には話しづらいことも、他の先生になら話せるかもしれません。

また、子どもによっては、学校用務員さんや事務職員さんなどとのかかわりを楽しみに登校できる場合もあります。親もできるだけ多くの教員やスタッフとつながり、情報交換できると良いですね。

自治体の相談窓口

学校以外にも、相談できる公的機関は数多くあります。

【1】児童相談所や児童相談センター、児童家庭支援センター:不登校に限らず、子育ての悩みや子どもの行動問題を相談できます。

※参照元:こども家庭庁「児童相談所一覧」

【2】ひきこもり地域支援センター:子どもが家から出られなくなった場合や、ひきこもりが心配な場合におすすめの相談先です。

※参照元:厚生労働省「ひきこもりの相談窓口」

医療機関

専門家によるカウンセリングや親自身のケアを受けたい場合は、児童精神科やメンタルクリニックなど、近隣の医療機関を調べてみましょう。

先ほど紹介した起立性調節障害や概日リズム睡眠障害が疑われる場合も、医療機関の受診が改善につながる場合があります。

親の会・支援団体

不登校児をもつ家族にとって、同じ悩みを持つ親同士のつながりは大切です。

全国には不登校児の親の会や不登校の子どもとその家族を支援する団体がたくさんあります。身近に相談できる相手が少ない場合や、不登校を乗り越えた先輩の話が聞きたい場合におすすめです。

※参照元:NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク

NPO法人 カタリバ

不登校の子にしてはいけないNG対応とは?

不登校の子どもへの対応は、親にとって大きな課題です。しかし、良かれと思った行動が逆効果になることもあります。ここでは、3つのNG対応を紹介します。

NG①無理に登校させようとする

登校を無理強いすると、子どもはさらに学校から遠ざかってしまう可能性があります。時間をかけて子どものペースに合わせることを最優先にしましょう。

子どもの心と体の回復を最優先に考え、焦らずにサポートすることが大切です。

NG②不登校の原因を追求する

次に避けるべき対応は、「不登校の原因を追求する」ことです。

「なぜ学校に行かないの?」と無理に聞き出そうとすると、子どもは責められていると感じるかもしれません。それに、子ども自身も学校に行きたくない理由をはっきりと言語化できないことも多いのです。

子どもが安心できる環境を作り、自分の話をしたいと思えるまでじっくりと待つことが大切です。

NG③家庭だけで抱え込む

不登校は、家庭だけで解決できる問題ではありません。

学校やスクールカウンセラー、外部の支援団体などに相談することで、新たな視点や解決策が見つかります。

同時に忘れないでほしいのは、親自身のケアです。学校に行けず苦しむ我が子をサポートするのは、親にとってもきわめて負担の大きいこと。「私がしっかりしなくては」とがんばり続けると、親自身の心も折れてしまいます。

周りの人に相談したり、自分1人で好きなことに没頭できる時間をもったりしましょう。必要ならカウンセリングも検討してください。

不登校になった直後~今後に向けた対応のステップ

不登校は、子どもによって状況や原因が異なります。一人ひとりに寄り添った適切なサポートが必要です。不登校になった直後からの対応を4つのステップに分けてご紹介します。

ステップ①心身をじっくり休ませる

不登校になった直後は、子どもの心身の回復が最優先です。家庭内の環境を整えましょう。

安心できる居場所づくり

  • リビングや子ども部屋に、クッションやブランケットを用意し、くつろげるスペースを作る
  • 好きな本や漫画、ぬいぐるみなどを近くに置きリラックスできる環境を整える
  • マッサージや入浴剤を使ったお風呂などのケアを行う

栄養バランスの取れた食事

  • 子どもの好きなメニューを中心に、栄養バランスを考えた食事を作る
  • 食事の時間や量を強制せず、子どもの食欲に合わせる

ストレスを解消できる活動

  • 散歩や軽い運動など、屋外で気分転換できる活動を一緒に行う
  • 塗り絵やお絵かき、粘土遊びなど、創作活動を通じて気持ちを表現できる機会を作る

大事なのは親自身も楽しむ姿を見せることです。焦らず、子どものペースを尊重しながら、少しずつ回復に向けてサポートしていきましょう。

ステップ②自信と意欲をとりもどす

子どもに少し余裕が出てきたら、次は自信と意欲を取り戻すステップに移ります。子どもの笑顔が増えてきたタイミングで、不登校になる前にがんばっていたことや好きなことの活動量を増やしていきましょう。エネルギーや自信を取り戻せる場合があります。小さな成功体験の積み重ねで自己肯定感を高めることも期待できます。

何かに挑戦する時間

  • 子どもが興味をもっている習い事
  • 家でできるプログラミングや動画編集、音楽や英語のオンラインレッスン
  • 運動不足解消にもなるダンスやストレッチ
  • 気持ちが向いてきたら、学習再開もおすすめ

社会貢献活動

  • ボランティア活動など、できる範囲で社会貢献活動に参加する
  • 身近な家事もりっぱな貢献

新しい挑戦で大切なのは達成感と成功体験です。

小さな目標を達成できたときは、大いに褒めてあげましょう。将来の夢や目標について考えるきっかけとなるかもしれません。

ステップ③外部とのつながりをつくる

自信や意欲が少し回復してきたら、外部とのつながりを作るステップに進みます。

学校以外の学びの場

  • 教育支援センター(適応指導教室)、フリースクールなどを探す
  • 塾や家庭教師の体験授業を受ける

人とのかかわり

  • 家族や友人と出かけたり、遊んだりする
  • 夕方の公園にふらっと遊びに行く

学校とのかかわり

  • 担任やスクールカウンセラーと連絡をとり、近況を伝えたり学校の様子を聞いたりする
  • 友達に手紙を書いたり電話をしたりする

学校以外のコミュニティに参加することで、新しい人間関係を築き、自信や意欲を取り戻すきっかけになることがあります。また、子どもが安心して話せる大人とのつながりも期待できます。並行して、担任やスクールカウンセラーなど学校との連携も維持しましょう。

ステップ④これからに向けて考える

最後は、子どもの将来に向けて考えていくステップ。大きく分けると、選択肢は「今の学校への再登校」と「他の場所での学び」の2つです。

再登校

不登校の期間を経て元の学校に戻ります。無理せずスモールステップで進めることが大事です。仲良しの友だちに迎えに来てもらうことで登校しやすくなる子どももいるので、依頼できそうなら連絡をとってみましょう。

また、好きな給食メニューや行事の日に合わせて、短時間でも登校してみるのもおすすめです。遠足や修学旅行に参加し、徐々に再登校できるケースもあります。

教室に入ることに抵抗があるなら「 保健室登校」や「別室登校」という方法もあります。学校と相談してみましょう。

再登校とは言っても、「数日間は登校できたけれどまた欠席」ということもあるかもしれません。長い目で見守るようにしてください。

学校以外の学びの場

在籍校への再登校を選ばず、教育支援センターやフリースクールへの通学を続ける方法もあります。また、以下のような選択肢もあります。

  • 「中学校入学までは家で過ごす」と割り切って決める
  • 他校への転校を検討する

6年生後半になってからの不登校や、中学校に対する期待が大きい場合は、小学校卒業まで登校しないと決めてしまうのも一つの方法かもしれません。

今の学校に明らかな要因があるなら、他学区の公立小学校や私立小学校への転校も選択肢にはなります。しかし、転校自体が大きなストレスになる可能性を考えると、十分な下調べと準備が必要です。

不登校を「かけがえのない経験」に

不登校は、決して取り返しのつかない失敗ではありません。子どもの気持ちを尊重しながら小さな変化や成長を喜び合うことで、必ず光が見えてきます。

不登校とのつき合い方は人それぞれ。短期間であっさり再登校する子どももいれば、数年間という年月を経て学校に戻る子どももいます。また、学校以外の場に自分の居場所を見出し、生き生きと学び続ける子どもも多いのです。

いずれにしても、不登校の経験を通して親子の絆がさらに深まり、子ども自身にとっても良い経験となったケースはたくさんあります。

焦らず、家族だけで抱え込まずに、専門家や周囲のサポートを積極的に活用しましょう。

あなたも中村藍先生に相談してみませんか?

ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、中村先生にあなたの悩みを直接相談できます(秘密厳守)。

中村藍先生への相談はこちらから

子育てのお悩みを
専門家にオンライン相談できます!

「記事を読んでも悩みが解決しない」「もっと詳しく知りたい」という方は、子育ての専門家に直接相談してみませんか?『ソクたま相談室』には実績豊富な専門家が約150名在籍。きっとあなたにぴったりの専門家が見つかるはずです。

子育てに役立つ情報をプレゼント♪

ソクたま公式LINEでは、専門家監修記事など役立つ最新情報を配信しています。今なら、友だち登録した方全員に『子どもの才能を伸ばす声掛け変換表』をプレゼント中!

中村藍

支援級・通常級・支援学校等の教員経験20年以上のベテラン。その子に合う学びの場の提案と学校への交渉・相談の方法を、寄り添いながらも具体的に丁寧にアドバイスしてくれます。

\ SNSでシェアしよう /

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

ソクたま公式SNS