「学校が怖い」原因や心理とは?子どもの不安をやわらげる親の対処法について解説
「学校が怖いから登校したくない」「学校は怖いから嫌だ、行けない」…そんなセリフを子どもから言われたら、毎朝子どもの様子を見てはドキドキしませんか。それは子どもに責任を持つ親として当然の感情です。この記事では子どもが「学校が怖い」と感じる原因から、「学校が怖い」子どもの特徴、そしてそんな親子に役立つ対応策までまとめてみました。明日から「学校が怖い」と言われても、少し堂々としていられるよう、ぜひ記事を読みすすめてみてくださいね。
目次
子どもが「学校が怖い」と感じる原因とは?
子どもが「学校が怖い」と感じる原因についてはっきりしていないことがわかっています。文部科学省の調査で判明しており、「学校が怖い」原因がはっきりしないことに対しても調査が行われているのです。原因がはっきりしないなんて、とてもモヤモヤしますよね。では「学校が怖い」原因がはっきりしない理由についても解説していきます。
「自分でもよくわからない」から「怖い」
文部科学省の資料*1によると、不登校の子に「何がきっかけで不登校になったのか」と原因についてアンケートをとったところ、一番多かったのは「無気力・不安」でした。
そして「無気力・不安」と答えた子の多くが「大きなきっかけがあったわけではない」と回答、そして「抑うつ・不安」からくる「無気力・不安」とは異なることも文部科学省の調査*2でわかっています。何が怖いか自分でも原因がわからないのですから、親に説明することも難しいことが想像できますね。
小さなことが積み重なって「学校が怖い」子どもたち
「学校が怖い」のは「大きなきっかけがあったわけではない」傾向であることはわかりました。それは小さな原因が積み重なったのが原因と考えることもできます。「いじめ」「先生から激しく怒られた」「勉強がわからない」「宿題ができない」「夜眠れない・朝おきられない」といった小さな出来事が積み重なった結果、「無気力・不安」となり、やがて「学校が怖い」という表現になっているものと考えられるでしょう。
「学校が怖い」と感じやすい子どもの特徴や心理とは?
「みんなは登校できるのに、なぜうちの子は学校が怖い、行けないのだろう」「特に原因がないのに怖いなんて、うちの子は繊細すぎるということかしら」など、何かしらの原因を探すのは親として自然なことです。ここでは「学校が怖い」と感じやすい子どもの特徴や心理を4つピックアップしてみました。
親と離れるのが不安
学校は親と離れて行動する場所です。親と離れて行動することがそもそも苦手なら、学校では親と離れる必要があるので不安になるのは当たり前ではないでしょうか。お子さんは親と離れて行動することを嫌がりませんか? もしくは何かを決めるときに親の意見を常に求めていませんか?学校が怖いと感じている子は、就学前にも登園拒否を経験している子がいるそうです。
もう1つ、親が「こういう時はこうしなさい」「これはしてはいけないよ」と事細かに子どもに指示をしている場合も、子どもは「親の言うことを聞かないといけない」と不安になりやすいことでしょう。今朝、お子さんにどんな声かけをしたか思い出してみてください。お子さんが求める前に指示をしていませんか?不安になるような声かけをしていませんか?声かけについては親が意識するだけ言葉遣いが変わりますので、ぜひチャレンジしていってくださいね。
まわりの変化に敏感
学校は時間割に沿って活動する場所であり、また活動に合わせて環境が変化します。つまり、毎日ほぼ同じ生活リズムだった就学前とは大きく異なるということです。活動が変われば、人の動きや表情もかわるのは当たり前のことですが、その変化1つ1つをキャッチしていたとしたら子どもはとても疲れるのではないでしょうか。
このように変化に対して敏感な子は疲れやすく、また不安要因が1つ1つ積み重なった結果なので、はっきりと原因を伝えることが難しくなります。お店のレイアウトに気付くのが早い、家族の表情をいち早く伺う様子が我が子にありませんか?変化に敏感なので、「学校が怖い」という表現につながっている可能性もあるかもしれませんね。
病気や障害をもっている
不登校がきっかけで見つかる障害の1つに「起立性調節障害」(OD)があります。
どれくらいの人がODになるの? | 軽い症状も含めると、 小学生の5% 中学生の約10%の人がなっています。 |
不登校の子はODなの? | 約30〜40%の不登校の子がODを持っていると言われています。 |
原因は? | ・自律神経の不全 ・過少または過剰な交感神経活動 ・水分の摂取不足 ・心理社会的ストレス ・約半数に遺伝傾向を認める |
症状は? | ・立ちくらみ、頭痛など ・朝起きることが難しい ・立つ、座るは症状が悪化し、寝るとよくなります。 ・午前中に強く、午後は軽くなることが多い ・夜に目がさえて寝られず、起きる時間が遅くなることが原因で、昼夜逆転の生活になりやすい |
病気や障害がない人も、最近の研究ですべての人が朝方生活に向いているのではなく、夜型の生活があっている人がいることがわかっています。つまり、朝早くから行動する学校のシステム自体が自分に合わない子もいる、ということです。
また「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」などといった神経発達症(発達障害)をもっている可能性もあります。家庭や就学前の毎日同じ流れで過ごせていた子も、学校という変化の多い場所では混乱しやすいのが特徴です。また、様々な人とコミュニケーションをとりながら学校は活動しなければならないわけですから、コミュニケーションが苦手な子にとって、学校は怖い気持ちを持ちやすい場所といえましょう。
他にも「限局性学習症(SLD)」、「発達性協調運動症(DCD)」といった障害が隠れている可能性がありますので、我が子に障害があるかどうか知りたい方は一度児童精神科に相談してみることをおすすめします。
まわりに学校に行っていない友達やきょうだいがいる
学校が怖い子どもの特徴として、学校が怖いと表現することをきょうだいから学んでいるという考え方もあります。「学校が怖いと言ってもいいのだ」ときょうだいの姿から知っているというわけです。
また、社会全体に「学校は休まず通うところ」ではなく「学校は休んでもいいところ」といった認識の変化が起こっています。今は小学生の59人に1人、中学生の17人に1人の割合で「不登校」の子がおり、小学生だと2クラスで1人、中学生だと1クラスに2〜3人不登校の子がいることをご存知でしょうか。10年前に比べて、小学生は5.5倍、中学生は2倍という状況ですから、不登校自体が珍しいものでないことは数字が示しています。
きょうだいがすでに不登校で、他のきょうだいが「学校が怖い」と発言した場合、無理に背中を押すようなことがあまり効果的ではないと判断している親御さんも多くいらっしゃることでしょう。不登校の連鎖については具体的な調査が進められていませんが、学校が怖いというきっかけにはなっているかもしれませんね。
「学校恐怖症」とは?
アメリカのA.M.ジョンソンという人が書いた「学校恐怖症」という論文の中で「学校恐怖症」は次のように定義されています。
ここ数年、子どもたちの間で強い不安と結びつき、重度の不登校に至るような一種の情緒的障害があることを精神科医らは認めている。これは、怠学といった一般的な非行とは明らかない区別されうる、確固たる心理神経症的障害の一つである。この症候群はしばしば「学校恐怖症」と呼ばれ、学校への登校と結びついた著しい恐怖によって選別しうる。
―A.M.ジョンソンら 学校恐怖症 シカゴ青少年センター より
「学校をサボりたいとは違う理由で学校に通えない子がいる」「そういった子たちは強い不安がある」ということを昔から示してくれているのですね。
「登校拒否」や「不登校」との違い
「登校拒否」は1970年代から1990年代と少し前に使われていました。今は「不登校」という言葉が使われており、どちらも学校に通えていないという状況は同じです。
「不登校」は「何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)」*3であり、また不登校児童生徒とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的理由による者を除いたもの」としています。*4
「学校恐怖」と「学校不安」という考え方も
欧米では本人に問題があって学校に通うことができない状態を「学校恐怖」、学校側に問題がある場合は「学校不安」と、その原因別に言葉が使われていたこともありました*5。「学校恐怖」は家からの分離不安や人の集団など本人は持つ恐怖・不安が原因であり、「学校不安」は学校への不安や対人間関係、成績に原因があるとしています。ここでも学校に通うことが難しい理由が複雑化していることがわかりますね。
学校が怖い気持ちを放置するリスクとは?
「学校の何が怖いの?」と本人に理由を聞いてもわからなかったから様子を見ている、そういえば小声で「怖い」と呟いたことがあったが再度聞くと面倒だから触れないでいる、と我が子とのやりとりを思い出した人もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは「学校が怖い」と思っている気持ちを放置したらどうなるか、いくつかのパターンをご紹介します。
勉強や友だちに対してマイナスに受け止めやすくなる
「怖い」というマイナスの感情を学校に持っていると、学校以外の場所でもマイナスの感情を抱きやすくなります。例えば宿題をやろうと思っても、授業で先生が注意されたことが思い出されてやる気がなくなる、お店で友だちに声をかけられたら、学校で別の友だちとうまくいかなかった経験からスムーズに返事ができないことがあるかもしれません。
病気や障害の発見が遅くなる
「起立性調節障害(OD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如多動症(ADHD)」などの障害を持っている場合、適切な支援を受けることでお子さんの困り事が減るきっかけになります。ODの子は、朝はダラダラしているようにしか見えませんし、夜には元気になるので、本人のわがままではないかと親が思うのは当然かもしれません。ですが、ODは神経調節の機能不全などが原因ですので、本人の意思とは関係なく身体が反応してしまう障害です。ASDやADHDの子も適切な支援を受けることで、他人に暴力を振るってしまう(他害)・自分で自分を傷つけてしまう(自傷)といった二次障害の防止につながります。
学ぶ意欲が弱くなる
学ぶ意欲が弱くなると、新しい生活や知らない状況にますます対応しにくくなります。学校が怖い状態だと、学校で学ぶ意欲は低下します。学校以外で学ぶ機会を保障できればよいのですが、学校が怖いため学ぶ機会が減った状態が続くと、この先生きていくために必要なスキルを身につけようとする意欲が育ちにくくなります。それは知らないことだらけの世界で生きていくことになりますので、まずます不安や恐怖も感じやすくなるのではないしょうか。
学校が怖い子どもに対し、親がとるべき対応とは?
学校が怖い子は、小さな出来事が積み重なって「学校が怖い」状態になっている可能性があること、また、学校が怖い気持ちを放置しておくとデメリットが多いことがわかりました。では「学校が怖い」子どもに対して、親はどうサポートしたらいいのでしょう。ここでは障害や病気の可能性がない子に対して親ができるテクニックを3つ取り上げてみました。
我が子の「怖い」を整理する
「怖い」気持ちはどこからきているのか、丁寧に探っていきましょう。原因を特定するようなお医者さんの気持ちではなく、どちらかというと名探偵になったつもりで取り組むとよいかもしれません。どの名探偵も普通の人が気づかないような小さな証拠を積み上げていくことで事件を解決していますよね。
「そういえば最近、家でも物の置き場が変わるとすぐに気がつくようになっている」「前は元気いっぱい遊ぶのが好きだったけど、今は読書がブーム。もしかしたら外遊びに誘われるのは嫌なのかもしれない」と前後の出来事と一緒にメモをしておくと、相談機関で役立つかもしれません。
また「学校が怖い」以外にもどんな場面で「怖い」と表現するか確認してみることも大切です。「わからない」イコール「怖い」のか、「変化する」イコール「怖い」のか、我が子の表現を観察すると怖い気持ちを整理しやすいかもしれませんね。
親や子だけで抱え込まない
親と子だけで抱え込むと負の感情がループしやすく、問題解決に時間がかかる場合があります。「学校が怖いなんて悩みは、恥ずかしくて誰にも言えない」「父親に伝えたら子どもを叱ってかえって大変なことになる」と親子だけで学校に怖い気持ちを抱えていませんか?
学校の先生に直接相談することが難しければ、教育委員会や市役所の窓口、専門機関など、自分に合うところを探してみましょう。オンラインのカウンセリングなどは、ママ友関係などを気にせず相談できると人気です。気になっていることを人に話すことは、要点が整理されやすく、また直接の解決とはならなくても問題に対する視点を増やすことができます。人に話すことが苦手な方も、文字やチャットのみで相談でき、アドバイスをもらえるサービスもありますので、ぜひ一度トライしてみましょう。
親自身の問題を整理、取り組む
「学校が怖い」原因は、親自身が受けてきた教育やしつけにあるケースです。親が不安になりやすいタイプであれば、自分の目が届かないところにいく子どもが心配で声をかける回数が多くなるのも当然でしょう。また「学校自体によい思い出がない」といった親は、そもそも学校に対して不安がありますから、子どもの認識も「学校はよくないところ」になりがちです。
子どもが「学校が怖い」と伝えてきて、自分(親)はどうしていきたいのか(親は学校に行ってほしいと思っている)、子どもとの気持ちに入れ違いはないのか(子どもは学校ではないところで学びたいと思っている)、なぜこの問題を解決したいのか(親自身は学校が好きだから、学校が怖いと言われると親の過去を否定された気持ちになっているなど)、といった親自身が持つ問題を整理していきましょう。
家族から高圧的なしつけをされたといったいわゆる「毒親」的な過去がある場合は、気持ちの整理をする際に気力や体力を消耗します。一人で無理に解決しようとせず、親自身が専門機関につながりましょう。親の問題を整理し解決することは、子どもにとってもプラスになりますよ。
学校以外の子どもの居場所の選択肢とは?
学校が怖いと感じる子どもに学校以外の居場所を見つけることはできます。文部科学省は2023年に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(cocoloプラン)」を発表、様々な居場所作りが公でも始まりました。「学校が怖いのなら、別の場所でいいから学んでほしい」「子どもに合う場所で、怖い気持ちを回復させ、自信を取り戻させたい」、そんな保護者の願いも受け止めてもらえる選択肢をご紹介します。
放課後等デイサービス
学校に通っている原則18歳未満の子どもが利用できる支援施設です。学校が終わった後や土日にも通うことができ、その子にあった支援計画に沿って活動します。放課後等デイサービスは福祉サービスのため、市役所等で「受給者証」をもらう必要があります。お住まいの福祉事務所や福祉課に放課後等デイサービスが使えるかどうか聞いてみるとよいでしょう。
適応指導教室(社会教育センター)
主に教育委員会が設置している不登校対策の教室です。適応指導教室に通級すると、出席扱いになるのが魅力ですが、利用するためには様々な条件があり、現在通っている学校との打ち合わせが必要です。担任の先生やスクールコーディネーター、お近くの適応指導教室(社会教育センター)に直接確認してみましょう。
【参照】全国適応指導教室・教育支援センター等連絡協議会 会員
フリースクール
民間のサービスなので利用する人が自由に選ぶことができます。利用するためには料金が必要ですが、その分、特色のあるサービスやきめ細やかな対応をしてくれる場所が魅力です。通学のスタイルも様々ですので、まずは資料を取り寄せる、見学に行ってみるなど、我が子にあうかどうか確認するところから始めるといいかもしれませんね。
デジタル機器の活用
タブレットやパソコンも現代を生きるわたしたちには大切な学習道具です。メタバース(仮想空間)にアバター(自分のキャラクター)を作り、画面の中で仲間や支援者との会話を行うこともインターネットで行われています。通学時間0分、家にいながら、自分にあった学習を進めることができ、人とコミュニケーションする機会もありますので「学校が怖い」と感じている子にとってはスモールステップを踏みやすい場所といえます。不登校支援を行なっているメタバースについては、無料相談やフリートライアルを実施しているところがありますので、一度アクセスしてみましょう。
まとめ
「学校が怖い」と感じる子についてまとめてみました。
- 原因は1つだけではなく、小さなきっかけが積み重なっている
- 子ども自身が怖い気持ちを持ちやすい、障害があるといった原因もある
- 学校が怖い気持ちを放置するとデメリットが大きい
- 学校が怖い子もその親も気持ちを整理することが大切
- 学校が怖くても、学ぶ場所はたくさんある
「怖い」は人間が持つ大切な感情の1つです。「怖い」からこそ、人間は知恵を寄せ合い、協力してこれまで生き延びることができたことを考えると、怖い気持ちに対して少しは前向きな気持ちになれるでしょうか。今「学校が怖い」と親に伝えている場合はもちろん、これから先「学校が怖い」と伝えてきた時にも、この記事を参考に親子のペースで進んでいってくださいね。これからも応援しております。
文中資料引用元
*1 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
*2 不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要
*3義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律
*4児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
*5木村慶子(1996) 登校拒否の診断学-学校恐怖症と学校不安の鑑別- 慶應保健研究第14巻第1号
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