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2024.11.15

就学前検診にひっかかる理由は?検査内容や進学への影響を専門家が解説

多くの自治体で翌年小学校へ入学予定の年長児を対象に行われる就学前検診(就学時健康診断)。何も心配せずに受診したのに、後日、発達検査・知能検査をすすめる通知が届き不安になるケースは少なくありません。検査内容や当日の流れ、ひっかかる理由やその後の検査について、元教員の東美香さんが解説します。

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記事を執筆したのは

東美香さん

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行ってきた。現在は、ブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

小学校の就学前検診の目的、内容とは

小学校へ入学する前の10~11月に行われる就学前検診は、市町村の教育委員会・学校が次年度就学する子どもの心身の状態を確認・把握するために行われる健康診断です。正式名称を就学時健康診断といいます。

また、確認・把握といっても検診の結果により支援級や通常級(普通級)などの就学先を教育委員会に決められることはありません。決定するのは、保護者になります。

教育委員会の役割は検診を実施し、必要に応じて保護者や学校と相談を総合的に判断し、就学先を保護者に通知をすることにあり、小学校は、検査結果を基に子どもがより良い環境で楽しく学習できるよう学校生活に向けたサポート体制を整えていきます。

就学前検診への服装や持ち物、準備は?

服装
就学前検診は1歳、3歳時検診と同じように保護者も子どもも普段着で構いません。保護者は、保護者は保育参観に行くときのような服装をイメージするとよいでしょう。

持ち物
自治体によって異なりますが、就学前検診当日の代表的な持ち物は以下のとおりです。

  • 就学前検診のお知らせ(受付票)
  • 事前の健康調査票
  • 上履きやスリッパ(子どもと保護者それぞれ)
  • 筆記用具

このほかに、予防接種の履歴を確認するための母子手帳、外靴を入れる靴袋などが持ち物に加わることもあります。持ち物は事前に自治体から届く通知に書かれているので、その内容に従いましょう

準備
就学前検診は入学“試験”ではないので、特別な事前準備は必要ありません。ですが、初めての場所が苦手だったり、不安感が強かったりする子には、“心の準備”をしておくとよいかもしれません。

就学前検診は、入学予定の小学校を会場として行われることが多いです。例えば、検診場所になる小学校の写真を見せたり、実際に出向いたりして「ここに行くよ」と伝え、検査内容を伝えておくだけでも子どもの安心感は違います。また、視力検査や自分の名前を書くなど、家でできることは事前に練習してから行くと、落ち着いて検診を受けやすくなります。

就学前検診で行われる6つの検査と面談

就学前検診で行われる一般的な検査の内容は下記になります。

就学前検診の内容

  1. 知能検査
  2. 言葉の検査
  3. 内科検診
  4. 歯科検診
  5. 聴力検査
  6. 視力検査

内科・歯科・聴力・視力の検査は何となくイメージできると思います。そのほか、知能検査では、多くの場合に以下のような検査を行います。

知能検査の内容
  • 自分の名前を書く
  • 手本の直線よりも、長い(短い)直線を書く
  • 「雨の日に使うものは何?」など、物の用途を考える問題

また、言葉の検査では、検査者と子どものマンツーマンで下記のような質問をして「発音に問題はないか?」「苦手な発音はないか?」を検査します。

言葉の検査の内容
  • 自分の名前を言う
  • 検査者が提示したイラストの名前を答える

また、保護者が希望をすれば面談も行うことができ、面談相手は多くの場合、校長になりますが自治体によって異なります。「就学までにどんなことを身につけていけば良いのか?」「就学までに整えておくべき健康面の課題は何なのか?」などをじっくり相談しましょう。子どもが小学校で楽しく学んでいけるのか不安がある人は、面談を希望してみてくださいね。

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就学前検診でひっかかる3つの理由

就学前検診で引っかかってしまうと、大きな不安が押し寄せてきますよね。「短時間しか見ていないのに、何がわかるんだろう?」そう気になる保護者もいるかもしれません。それでは、就学前検診で引っかかってしまう3つの理由を解説していきます。

【理由①】健康についての再検査が必要である場合

内科、歯科、聴力、視力の健康面の各検査において、再検査が必要と判断された場合に、再検査通知が届き、医療機関専門の医師による検査をすることになります(自治体によって異なります)。

極端に痩せている、肥満傾向である、虫歯があるなど、それぞれの子どもの状況に合わせて生活習慣の見直しなど専門家によるアドバイスを受けることもあります。

早めに治療に取り掛かることで、入学までに状況が改善される可能性も大いにあります。

【理由②】検診を受けることができなかった場合

初めての場に対する不安が強い、集団に慣れていない、待ち時間に慣れていないなどの理由で、当日検診を受けることができなかった場合に再検査となります。

就学前検診は、次年度に就学する親子が大勢参加するので、いつもと違う雰囲気に戸惑ってしまう子どももいます。

再検査の内容は本来の就学前検診で行うことと変わりませんが、再検査では、ほとんどの場合マンツーマンで行うため集団に慣れていない子どもも安心して受けられることが多いです。

【理由③】発達に関する詳しい検査が必要と判断された場合

発達の面に関しては、下記のような場合に再検査となる可能性があります。

<行動面に課題がありそう>

検査では、検査結果を見るだけではなく検査中の子どもの様子を観察しています。

  • 検査を受けられるか?
  • 一定時間、着席していられるか?
  • 不慣れな場面でも、落ち着いて行動できるか?
  • 検査前後は、同じグループの子どもたちと一緒に行動できるか?

上記のような行動面を観察し、就学後に子どもが困ってしまうことの有無を確認をしています。困ってしまうことが予想される場合に再検査となります。

<指示を理解することが難しそう>

「ここで待ちましょう」「これは何でしょう?」など、検査中にはいろいろな指示や問いかけがあります。

  • 指示に合った行動ができるか
  • 問いかけに合った返答ができるか
  • 年齢相応の受け答えができるか

上記のように指示に対する子どもの様子を観察して、指示を理解することが難しいと判断されると再検査となります。

<年齢相応の発達の目安に到達していないかも>

知能検査などを通じて、年齢相応の発達の目安に到達していない可能性がある場合、再検査となります。

<言葉の発達に課題がありそう>

問いかけへの返答が曖昧だったり、話し方が幼かったり、正しい発音ができていなかったりする場合に再検査の必要があると判断されることがあります。

言葉の発達には、以下の4つの力が必要です。

  • 言われた言葉を聞き取る「聴力」
  • 話したい!という「欲求」
  • 言われたことを理解する「理解力」
  • 発声するための口周りの「運動能力」

再検査の内容は、この後詳しく説明しますが、再検査では上記の発達具合を、より丁寧に検査することで「どの部分に苦手があるのか?」を知ることができます。

また、就学前健診で発達面でひっかかった場合、保護者の了承を得た上で保健所に情報を提供することがあります。保健所とつなげることで、これまでの1、3歳児検診の経過も情報共有して再検査や就学相談に生かします。

就学前検診後、再検査の流れとは

それでは、再検査の通知が来てからの流れを追っていきましょう。ただし、それぞれの項目は、自治体によって異なります。あくまで一例となりますので、詳しくは自治体の通知に従ってください。

①再検査の通知が来る

市区町村によって異なりますが、多くの場合は就学前検診の後日、早ければ検診日の夕方に再検査の連絡・通知があります。通知の案内に基づき小学校などに出向いて再検査を受けます。

なお、再検査の通知が来たからといって発達障害や学習障害、知的障害と診断されたわけではないですし、普通級への就学ができないわけではありません

②再検査を行う~発達に関する再検査の内容~

健康に関する場合や検診を受けられなかった場合の再検査の内容は上記で紹介しているので、ここでは発達面の再検査について解説します。

再検査の内容は、就学前検診時とほぼ同じ内容です。知能検査と言葉の検査をよりていねいに行い、子どものつまずいているポイントを見つけます。

「この課題のどこにつまずいているのか?」「言葉を発する際につまずいている部分は?」を中心に観察し、子どもの理解力・言語力が、どれくらいの発達段階にいるのかを判断します。

また、つまずきの部分だけではなく、「緊張していることが理由で上手くできなかったのか」「集団に不慣れだったからなのか」など、子どもの心にも丁寧に目を向けて検査を行っていきます。

行動面や意思疎通、やり取り、受け答えなど、より丁寧に子どもを観察しながら再検査していきます。

  • 就学後にどのような部分で困りごとが出てきそうか?
  • どんな声かけだと、伝わりやすいのか?

など、就学後を見据えて子どもを観察し、より良い支援方法を考えていきます。

③再検査で要観察になると就学相談へ

再検査により要観察と判断された場合、関係者(教育委員会・学校・保護者など)が集まり、次年度の就学についての相談を行います。

具体的には下記のような内容(一例)について話し合われます。

  • 普通学級に在籍するか
  • 支援学級に在籍するか
  • 学校での学習以外にも通級指導教室に通うのか

これらの相談は「子どもにとってより良い学習環境(子どもが困り感・困りごとの少ない環境)はどこなのか?」という点に重きを置いて話し合われます。

また、必要に応じて現在通っている保育園や幼稚園へ普段の子どもの様子を聞き、「子どもがどんなことで困っているか?」「どんなときに困った行動が出るのか?」などを学校などに伝えるとより子どもへの理解が深めやすくなります。

④教育委員会から就学先の通知が届く

再検査や就学相談を経た後、教育委員会から「どの学習の場がその子に適切か」という通知が届きます。

通知の内容は、就学前検診・再検査での子どもの様子、就学相談の内容などを総合的にみて、教育委員会がその子にとっての最適な学習の場を判断したものになります。

⑤就学先を最終的に決定するのは保護者

記事の冒頭でも解説しましたが、教育委員会からの通知がいかなる内容であっても子どもの就学先を最終的に決定するのは保護者です。教育委員会からの通知は、保護者が考える上で参考とする情報でしかありません。

どうしても決めかねるなど、就学先決定に不安がある場合は、教育委員会や学校(校長先生)に相談してみてください。

確認・相談しておきたいこと

  • 普通学級の場合は、どんな支援が受けられるのか?
  • 支援学級ではどんな学習をするのか、どんな支援を受けられるのか?
  • 支援学級在籍の場合、普通学級の子どもたちとの交流はあるのか?
  • 通級教室を利用する場合の学校の授業との連携は?

以上のことなど、得たい情報を相談し、就学前にしっかりと不安をなくしておきましょう。

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再検査は子どもを深く理解するいい機会

就学前検診に引っかかるとショックを感じたり「どうしてうちの子が?」「どんな小学校生活になるの?」など、いろいろ不安が出てきたりしますよね。

ですが、再検査は子どもにとってより良い学習の場を考えるいい機会です。ぜひ、考え方の視点を前向きに変えてみてください。

最終的に就学先を決めるのは保護者です。「子ども本人にとって一番落ち着いて学べる場はどこか。楽しく過ごせる場はどこか」ということを一生懸命考えて、子どもの特徴を深く理解しようと努めることは、小学校以降、悩みやトラブルが出てきた際に最善の道を選ぶヒントになるはずです。

また、マンツーマンで行われる再検査だからこそ「入学までに何をすべきか」という具体的なアドバイスももらいやすくなることでしょう。そのアドバイスを実践していくことで入学までにぐんと成長する可能性もあります。

就学前検診や再検査を、よりよい小学校生活に役立ててくださいね。

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東美香

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。 繊細で気難しい息子(6歳)の母。 教員時代は、「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行う。また、息子が繊細で気難しいことで、“子育てにおける困り感”・“お母さんの心のモヤモヤ”をたくさん経験。 「特別支援教育と息子の育児で得た学びを“今”困っているお母さん・お父さんに伝えていきたい。」、「お子さん・お母さん・お父さんの困り感を減らしたい。」の思いでブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

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