通信制高校とは|学校生活や卒業後の進路、メリット、デメリットをわかりやすく解説します
2020年8月に文部科学省が公表した「学校基本調査(速報値)」によると通信制高校に通う生徒数は約20万人を超えているそうです。しかし、いざわが子が通うとなると、気になること、心配なことがいろいろあるのではないでしょうか。そこで、通信制高校について調査を実施しました。どんな人が通い、どんな高校生活になり、どんなことを学び、どうすれば卒業できる、卒業後にはどんな道が待っているのかなどを分かりやすく紹介します。
目次
通信制高校の特徴や種類とは
通信制高校とは、通信教育で学習する高校です。通信による教育を行うため、登校回数などが全日制・定時制とは異なりますが、卒業要件を満たせば高校卒業の資格を得ることができます。
全日制高校や定時制高校とは、毎日通学する必要がない、学年制ではなく単位制、留年がないという点で異なります。
通信制高校は学校教育法で全国から生徒を募集することを認められています。そのため通信制高校は、入学できる範囲から広域と狭域のふたつに分けられます。
- 広域通信制高校:入学できる地域が3都道府県以上の通信制高校
- 狭域通信制高校:都道府県の教育委員会が管轄し、入学できる地域が学校のある県と隣接するひとつの都道府県であり、多くが公立校であるのが狭域通信制高校
通信制といいながらも、実際には面接指導や特別授業のため年に数日は登校をしなければなりません。
広域制通信制高校の場合、各地にサテライト校が設置されている場合も多いですが、公立の狭域性通信制高校は本校しかない高校もあります。
オープンキャンパスなどの学校を見学できる機会があれば、登校経路なども確認しながら実際に足を運んで通い安いかどうかを確認しましょう。
通信制高校と全日制高校の3つの違い
全日制高校と通信制高校の違いは、主に「学習スタイル」「システム」「卒業するために必要な条件」の3点が異なります。それぞれの違いを見ていきましょう。
学習スタイル
学習スタイル | |
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全日制高校 | 通学し一斉授業がメイン (週5〜6日通学、5〜8時間/日) |
通信制高校 | 自宅で教科書や動画学習がメイン 必要に応じて通学 (年5日程度から週1〜5日など) |
全日制高校は長期休暇や祝日を除き、週5〜6日間通学するのが一般的です。クラスは40人程度で構成されており、基本的にはクラスごとで一斉に授業を受けます。授業時間は朝から日中にかけて、およそ5〜8時間程度が目安です。
一方の通信制高校は、自宅や高校が設置した学習センターで、教科書や動画を用いて学習を進めます。通信制高校は必要に応じて通学するのが一般的であり、年5日程度から週1〜5日など、学校によって通学頻度はさまざまです。
システム
システム | |
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全日制高校 | 学年制 |
通信制高校 | 単位制 |
全日制高校は学年制を採用する学校が多く、各学年で決められた進級条件を満たすことで、次の学年に進級できます。
一方通信制高校の多くは単位制を採用しており、必修科目や推奨科目はあるものの、自分で好きな科目を選んで学習しやすいという特徴があります。
卒業するために必要な条件
卒業するために必要な条件 | |
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全日制高校 | ・修学年度は3年 ・74単位以上の取得 |
通信制高校 | ・修学年度は3年以上 ・74単位以上の取得 ・特別活動の参加(30単位時間以上) |
全日制高校と通信制高校の卒業要件で大きな違いは修学年度が異なる点です。通信制高校では上記に挙げた3点を満たす必要がありますが、場合によっては学校が独自に定めた要件を満たした場合でも卒業できる学校もあります。
通信制高校の単位取得方法
前述の通り、通信制高校は単位制です。単位はレポート、スクーリング、テスト(単位認定試験)で取得していきます。
通信制高校のレポートとは
レポートとは、学校が定めた回数の課題を提出して添削などの指導を受けることです。
多くは穴埋め問題が多いようです。以前は教科書で勉強し与えられた課題をレポートにして郵送するのが主流でしたが、最近ではインターネットを活用したeラーニングを実施している学校も増えてきています。
基本的に通信制高校では、レポートは自宅で行います。
通信制高校のスクーリングとは
スクーリングとは、登校して実際に授業を受けることで、面接指導ともいいます。
レポートでの指導だけでは「課題の意図がわからない」「自分がなぜ間違ったのかを理解できない」「添削に納得ができない」といった学習上の問題が生じることがあります。そういった問題を解消するのが、スクーリングです。
スクーリングの履修回数は各教科・科目ごとに定められており、1単位を修得するのに3回のレポート(添削指導)と1回(1単位時間・50分間)のスクーリングを履修します。
理科、外国語、芸術、保健体育の体育は、スクーリングの重要度が高いため、1単位を修得するのに4~5回のスクーリングが必要です。
各教科・科目とは別に、ホームルームや遠足といった特別活動もスクーリングの対象で、卒業までに30単位時間の履修が定められています。
通信制高校のテストとは
通信制高校のテストは単位認定試験と呼ばれており、全日制高校の定期テストとは異なります。実施回数が年間に1~2回のため、全日制高校の定期テストに比べると1回のテスト範囲も広くなります。
単位認定試験を受験するためには、下記の条件を満たしていなければなりません。
- 決められたレポートを提出していること
- スクーリングの出席日数を満たしていること
また、単位認定試験は実施回数が年間に1~2回のため、全日制高校の定期テストに比べると1回のテスト範囲も広くなります。ですが、出題元はレポートになるため、普段レポートをきちんとできていれば難しいものではないようです。もし、不合格となった場合は再テストも実施されています。
通信制高校に通う生徒の特徴
令和2年に文科省が発表したデータによると、通信制高校の生徒には、中学時代以前に不登校状態だった人が半数近く在籍しているようです。
通信制高校には、不登校経験があるなど人間関係に不安を抱えている人、学習に不安を持っている人などが多く在籍しています。そのため、心理面に配慮したサポート体制が整った学校が多数あるのが特徴です。
多くの教職員がカウンセリングやメンタルヘルスといった専門研修を受講していたり、心理に関する資格を所持している高校も少なくありません。どの教員からもメンタル面でのサポートを受けられる学校なら、より安心してスクールライフを送れるでしょう。
通信制高校に通うメリット・デメリットとは
通信制高校では、時間を自由に使いやすく、自分のペースで学習ができるという特徴があります。
これらの特徴はメリットに映りやすいものの、どちらも自己管理が必要なことから、生徒によってはかえってデメリットになる場合もあります。
では具体的に通信制高校に通うメリットとデメリットを説明していきます。
メリット
通信制高校に通うメリットは、主に以下2点が挙げられます。
- 仕事やアスリート・芸能活動
- 自分のペースで、好きな単元の学習ができる
通信制高校は時間の融通が効くため、アルバイトやパートをしながら、正社員で働きながら通っている人もいます。アルバイトや、趣味にも使えます。アスリートや芸能活動を行っている方など、学校に定期的に通うのが難しい人でも高校卒業を取得することができます。
また興味のある教科を重点的に勉強し、能力を伸ばしていきやすいのも、通信制高校に通うメリットといえます。加えて自分で学習計画を立てて実行していく必要があるため、計画性や自主性を育む機会にもなります。
デメリット
一方、通信制高校に通うデメリットは、以下の通りです。
- 生活のリズムが崩れやすい
- 学習が先延ばしになり、課題がたまりやすい
通信制高校は自学自習が基本です。登校日以外は自分の都合で生活しやすいので、夜更かしが続いたり、昼夜逆転しやすかったり、生活のリズムが崩れやすくなります。
学習に関しても学習計画を立てても予定どおりに進めることが難しく、ペースが崩れたりつい怠けてしまう可能性がいます。
レポートもすぐにやらずに「後でまとめてやろう」と考えているうちに、いつの間にか大量にたまり、困る場合もあります。ただし、学習面はサポート校などを活用してフォローしていくことも可能です。
通信制サポート校と合わせて通う人が多い
通信制高校では時間に融通を効かせやすく、自分のペースで学習ができるメリットがある一方、強制力が少ないため学習が先延ばしになりやすいデメリットもあります。
そこで所属している通信制高校の学習をさらにサポートしてもらうため、サポート校と呼ばれる学習塾のような学校もあります。
通信制高校の場合、基本的に勉強は独学で行わなければならなりません。そのため途中で挫折してしまうケースや卒業までに5年以上かかってしまうようなケースも少なくありません。
そこで、通信制高校を3年間で卒業ができるよう単位取得・進級などに必要とされる勉強や生活面、精神面での支援を行うことがサポート校の目的です。
大半のサポート校は通信制高校と提携しており、サポート校入学の際には通信制高校への同時入学が必要です。
ただし、サポート校だけでは高卒の資格(学歴)取得はできません。
サポート校についてもっと知りたい人はこちら
通信制高校卒業後の進学・就職
文部科学省の調査によると、通信制高校に通う人の目的として「高等学校卒業資格を取りたい」が一番多い理由に挙げられています。
ほかにも「大学に進学したい」、「卒業後に就職したい」といった理由も上位を占めており、通信制高校に在学する生徒の6割は高校卒業を希望しています。
進学を目指す場合は、受験を視野に入れて、教科書や学校で使用している参考書だけでなく、志望大学・専門学校の入試に特化した教材を活用したり、場合によっては塾・予備校に通うことも検討しましょう。
就職を希望する場合は、入学時や在学中に、どのような仕事に就きたいのかをよく考えた上で、希望する仕事に必要なスキル(パソコンやカラーコーディネイトなど)があれば、できるだけ在学中の取得を目指すのが得策です。
卒業後の大学進学率は約18%
文部科学省の調査では、平成30年度に通信制高校を卒業した生徒数は56,283人で、そのうち、大学に進学した人は10,104人(18.0%)となっています。また専修学校進学者は12,212人(21.7%)でした。
卒業後に大学進学の夢をかなえるためには「大学受験のための対策、参考書などは充実しているか」「定期的な面談・カウンセリング、模擬試験などのサポートはあるか」「先輩たちの大学進学率や合格実績はどうか」などに着目して選ぶことが重要です。
適切な進路サポートを受けることができれば、希望の進路を実現できる可能性はぐんと高まります。
卒業後の就職率は約23%
文部科学省の学校基本調査(令和二年度)によると、通信制高校を卒業した生徒のうち、約23.1%を占める14,035人が就職をしました。
また同調査では、通信制高校を卒業した生徒の就職先として一番多いのが、「製造業(20.8%)」でした。他にも「宿泊業・飲食サービス業(12.8%)」や「卸売・小売業(11.0%)」が卒業後の進路として多いことがうかがえます。
今はまだ少数派に感じるかもしれませんが、自由な登校スタイルや新しい分野を積極的に取り入れる通信制高校は、今後も着実に生徒数を増やし、高校を選ぶ際の当たり前の選択肢となっていくかもしれませんね。
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