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2024.09.26

毒親に育てられた長女が抱える生きづらさとは?その特徴と対処法を徹底解説

「毒親の長女って、どうしてこんなに生きづらいの?」「自分の娘に対して毒親になってしまわないか不安…」このような疑問や不安を抱いたことはありませんか?

この記事では、毒親と長女の関係に焦点を当て、その影響や対処法、そして自分が毒親にならないためのポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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この記事を執筆したのは…

あらいひさきさん

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

そもそも毒親とは?

「毒親」とは、正式な医学・心理学的な定義があるわけではありませんが、子どもにとって悪影響を及ぼす「毒」となるような親のことを指す言葉です。

毒親にもいくつかのパターンがみられ、以下の4つのタイプに分けることができます。

子どもに対して過干渉で、子どもの意志を尊重できない
子どもに無関心で、子どもが愛情を感じられない
暴力や暴言など身体的または心理的な虐待を行う
親自身が精神的に不安定で、感情の起伏が激しい

毒親の具体的なタイプや特徴については、こちらの【毒親チェック】毒親の4つのタイプと特徴・毒親にならない方法を専門家が解説のページで詳しく紹介していますので、気になる方は参考にしてみてください。

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毒親で悩む長女が多い理由とは

「なぜ親は妹や弟にはあんなに甘いのに、自分には厳しかったのか」
「私が盾のようになって弟や妹を守ってきた」

このような声がカウンセリングの場ではよく聞かれます。毒親に苦しむ子どもは多く存在しますが、特に長女からの悩みの相談がとても多いです。

その理由としては、以下のような長女特有の自己犠牲的な性格と母親との関係性が挙げられます。

①真面目で自己犠牲をしやすい

「お姉ちゃんなんだから」と言われて、何かを我慢させられた経験がある方も多いのではないでしょうか。長女は第一子として、親からの期待やプレッシャーを強く受け、弟や妹がいる場合には「小さなお母さん」として家族の面倒を見たり、家事を手伝ったりすることも少なくありません。

さらには弟や妹の世話だけでなく、親の機嫌を伺ったりピエロのようにふるまって家庭の雰囲気を良くしたりと親の感情のケアを担っていることもあります。

このようにして長女は大人の言うことをよく聞き、細かなことに気を配る、真面目で頑張り屋さんな性格になりやすいです。

その結果、「自分がしっかりしなければ」と、他者のために自己を犠牲にすることが当たり前のようになっていきます。この自己犠牲の精神は、大人になっても残り、家族以外の他者との関係においても自己犠牲的なパターンが繰り返されることが多く、生きづらさにつながっていきます。

②母親は特に長女に対して過干渉になりやすい

例えば進路や交友関係、服装に至るまで、母親は第一子であり性別が同じ長女に対して、特に強く過干渉になる傾向があります。このような状況では、長女は自己決定や自己表現の自由が制限され、常に母親の期待や意向に従わざるを得ないことが多いです。

自分の意思で物事を決める機会が少なく、感情や欲求が抑えられ続けると、精神的な自立が難しくなります。その結果、親への依存が強まり、母親もさらに干渉を深めていくという悪循環に陥ることがあります。この悪循環は、長女の自己評価を低下させ、その後の人間関係においても問題を引き起こす可能性が高まります。

毒親に育てられた長女の特徴とは

「妹は自分の意見をしっかり主張できるのに、自分はどうしても『No』と言えない……」
「親を悲しませてしまうのが怖くて、離れたいのに離れられない……」

長女は毒親の影響を強く受け、このような悩みを抱えることも多いです。
ここでは毒親に育てられた長女が抱えやすい悩みや特徴について解説します。

①罪悪感が強くNoと言えない

毒親のもとで育った長女は罪悪感を強く感じる傾向があり、これが「Noと言えない」ことと深く関わっています。具体的には次のような傾向がみられます。

・自己主張が苦手

妹や弟は自由に自分の意見を主張できるのに、自分だけがそれを許されないと感じます。自己主張をすることで親を失望させるかもしれないという恐怖が、心に深く刻み込まれており、その結果、自分の意見を言うことができなくなることもあります。

・親を悲しませてしまうという罪悪感

毒親は、子どもに罪悪感を抱かせることに長けています。そのような親の期待に応え続けていると、親を悲しませることがとても恐ろしいことに思えてくるでしょう。このため、親の要求を断ったり、理不尽な言動に抵抗することが難しくなっていきます。

②毒親へのアンビバレントな感情

毒親を持つ人は親に対して愛情と憎しみの間で揺れ動くという複雑な感情を抱えることが多いです。親に対する怒りや不満がある一方で、親からの愛情や承認を求めているというアンビバレント(両価的)な状態が続きます。

このアンビバレントな感情が、親との関係をますます複雑なものにし、精神的な葛藤を生み出します。

例えば、親のことを「毒親」と呼ぶことにも、罪悪感を抱くことがあります。親が時折見せた優しさや、楽しく過ごした瞬間を思い出すと、そうした良い面を否定するようで心が痛み、「こんなことを言ってしまうのは親不孝だ」と悩んでしまうのです。

こうした葛藤によって、自分の苦しみを表現することに強い抵抗感を持つケースは非常に多く見られます。

③パートナーとの不安定な関係

毒親に育てられた長女は、親との不安定な関係が影響し、他者との距離感も不安定になりがちです。特に恋愛関係において、その影響が顕著に現れます。

・モラルハラスメントや浮気の被害に遭いやすい

自己評価が低くなりがちな長女は、無意識のうちに自分を傷つけるような関係性を築いてしまい、モラハラや浮気の被害に遭いやすくなることがあります。

・相手を問い詰め、不安が募る

パートナーに対して過度に依存したり、不安から相手を問い詰めることで関係が悪化することがあります。これにより、パートナーとの関係がさらに不安定になり、相手の心が離れてしまうという悪循環に陥ることもあります。

・他者への信頼ができない

毒親に依存し、同時に裏切られ続けた経験から、他者を信用することが難しくなります。その結果、人間関係で常に不安を感じ、他者との距離をうまく調整できないことが多くなります。

④認知のゆがみ

毒親に育てられた長女は、認知のゆがみを抱えやすいです。認知のゆがみとは、物事を偏った視点で捉え、結果として不安やストレスを感じやすくなるような思考のパターンを指します。

例えば、テストで90点を取った場合、「90点も取れた」と捉えるとポジティブな気持ちになりますが、親から失敗を叱責されたり完璧を求められた経験があると、「100点じゃなかった」と落ち込んでしまうのです。

よく見られる認知のゆがみには次のようなものがあります。

・全か無か思考(完璧主義)

この思考パターンでは、物事が完全に成功するか、失敗するかのどちらかしかないと考えます。完璧でなければ自分の価値がないと思い込むことが、自己評価を低くし、自己肯定感の低下を招きます。この完璧主義は長女にとって大きな負担となり、生きづらさを感じる原因の一つです。

・べき思考

「〜すべき」といった「べき思考」も、よく見られる認知のゆがみです。この思考パターンでは、自分に対して高い理想を描き、現実とギャップを感じると大きなストレスを感じます。また、他者に対しても無意識のうちに高い理想を持ってしまい、他者の行動にイライラしたり不満を感じることもあります。

過去は変えられないけど…生きづらさを解消するためにできること

過去を変えることはできなくても、今の自分の生きづらさを解消するためにできることはたくさんあります。ここでは、そのための具体的な方法を解説します。

①毒親への自分の気持ちを整理する

まず最初に大切なことは、自分の中にある毒親への感情を整理することです。

ノートなどに書き出すのがおすすめです。親を憎む気持ちや、愛情を求める気持ちが交錯しているかもしれません。こうした感情を一度書き出して、自分の感情に気づくことで、少しずつ心が軽くなります。

カウンセリングを活用するのも効果的です。専門家と一緒に感情を言語化し、整理するプロセスを通じて、自分自身を理解することができます。

②毒親と距離を取る

毒親との関係において、物理的・心理的な距離を取り、自分と親の間に明確な境界線を引くことが非常に重要です。

「かわいそう」「親だから」という思いがある場合は、例えばLINEのやり取りを減らす、あるいは会う頻度を少しずつ調整するなど、無理をせずにできる範囲で距離を取ってみましょう。物理的な距離を取れない場合は、心の中で親に向かってシャッターを下ろすようなイメージをしてみましょう。

親との距離を調整することで、自分自身が少しずつ楽になっていくのを感じることができます。

③自己肯定感を高める

毒親に育てられた長女は、自己評価が極端に低くなりがちです。そこで、日々の小さな成功や良かったことを数える習慣を取り入れましょう。例えば、「今日はよく頑張った」と自分を認めたり褒めたりすることを意識的に行ってみましょう。

他にも、自分の趣味の活動や休息など、自分を労わる行為をタスクの一つとして予定に組み込んで、自分を大事にする感覚を身に着けていきましょう。

④自分の認知を観察し「認知のゆがみ」を修正する

認知のゆがみには、完璧主義や「〜すべき」という思い込みなど、さまざまな種類があります。これらを特定し、意識的に観察することで、少しずつ変えていくことが可能です。

例えば、「失敗するべきではない」という思考があるなら、それが自分に不必要なプレッシャーを与えていることに気づくことから始めましょう。

認知のゆがみを正すために、カウンセリングを活用することも有効です。専門家と一緒に、自分の思考パターンを分析し、少しずつ修正していくことで、生きづらさを解消し自分らしい生き方を取り戻すことができるでしょう。

「私ももしかして…」毒親は連鎖する?

毒親は連鎖することもありますが、親としての行動や自分の感情を意識的に見つめ直すことで、その連鎖を断ち切ることができます。

すでに子どもがいる場合、後述の連鎖を断ち切るポイントを参考に、自分の感情や行動に意識を向けることで、子どもとの関係をより良くしていくことができます。

まだ子どもがいない場合も、自分がどのように育てられてきたかを振り返り、その経験が自分にどう影響しているかを理解することで、将来どのような親になりたいか、どのような家庭を築きたいかを考えてみましょう。上述の、生きづらさを解消するためにできることもぜひ参考にしてください。

また、自分が毒親になってしまうのが怖いから、子どもを持ちたくないと感じる人もいるかもしれません。自分の気持ちを大切にしながら、将来の選択肢を考えることが重要です。

毒親を連鎖させないために、できることとは?

自分が親になったとき、無意識のうちに毒親のような振る舞いをしてしまうのではないかと不安に感じる人は多いかもしれません。その気づきこそが、毒親を連鎖させないための第一歩です。ここでは、毒親の連鎖を断ち切るための方法を解説します。

①子どもの人格を尊重する

毒親は、子どもを自分の所有物のように扱ったり、自分の価値観や期待を押し付ける傾向があります。

自分が子どもに対して過剰な期待をかけたり、干渉しすぎていると感じたら、少し距離を置いてみましょう。子どもが自分で考え、行動できる余地を与えることが大切です。子どもは別の人格を持つ個人であり、親とは異なる考えや感情を持っていることを意識しましょう。

例えば、子どもが将来の進路を選ぶ際に、自分の期待と違う進路を希望したとき、頭ごなしに否定するのではなく、「なぜその進路を選びたいと思ったのか、その理由や目標についてもっと教えてくれる?」といった具合に、子どもの考えや目標について理解しようとする姿勢を示すことが大切です。

このように、対話を通じて子どもの考えや感情を理解し、尊重することが、親と子どもの関係を築くためには欠かせません。親が支援しながらも、子どもが自分らしく成長できるように見守る姿勢を持つことが大切です。

②自分の感情のケアとコントロール

毒親に育てられた人は、ストレスや不安を感じたときに、無意識のうちに自分が親から受けたような態度を子どもに取ってしまうことがあります。親自身が自分の感情を自分でケアし、コントロールできていると子どもは安心してのびのびと過ごすことができます。

そのためには、以下のような方法が効果的です。

・リラクゼーション

深呼吸やストレッチなど、手軽にできるリラクゼーション法を取り入れ、感情をリセットする時間を作りましょう。これにより、落ち着いた気持ちで子どもに接することができるようになります。

・ネガティブな感情を発散させる手段を持っておく

子どもに感情をぶつけてしまわないよう、ストレスや不安を解消する手段をできるだけたくさん見つけましょう。趣味や運動、友人との交流など、複数の手段を持っておくことが大切です。

・アンガーマネジメント

イライラして子どもに強く当たってしまったり、ヒステリックな態度を取ってしまって後悔することがあるかもしれません。こうした感情は練習によってある程度コントロールすることが可能です。怒りの感情をコントロールする技術を学び、冷静に対応する力を身に付けていきましょう。

・マインドフルネス

今この瞬間に意識を向けることで、心を落ち着けるのがマインドフルネスです。過去や未来のことにとらわれず、「今」に集中することで、不安やストレスを和らげることができます。

・体調管理

体調が悪いと気分もネガティブに傾きがちです。心身のバランスを保つためにも十分な睡眠や栄養を心がけましょう。

感情のコントロールが難しいと感じたときは、カウンセリングを利用するのもおすすめです。専門家の助けを借りながら、自分の感情や行動パターンを見つめ直すことで、安定した親子関係を築くことができます。

まとめ

この記事では、毒親と長女の関係に焦点を当て、その影響や対処法、自分が毒親にならないためのポイントについて解説しました。

毒親とは子どもにとって悪影響を及ぼす「毒」となるような親のことを指す言葉です。そして、特に長女が毒親の悪影響から生きづらさを抱えやすくなる理由は以下の2つです。

①長女は真面目で自己犠牲をしやすい
②長女は母親に干渉されやすい

また、そのような毒親に育てられた長女には以下の4つの特徴があります。

①Noと言えない
②親にアンビバレントな感情を抱く
③パートナーとの関係が不安定になりやすい
④認知のゆがみがある

そこで生きづらさの解消法として、以下の4つを試してみましょう。

①気持ちを整理する
②毒親と距離を取る
③自己肯定感を高める
④認知のゆがみを修正する

また毒親の連鎖を断ち切るためのポイントは以下の2つです。

①子どもの人格を尊重する
②自分の感情のケアとコントロール

過去を変えることはできませんが、毒親の影響を理解し、これらの対策を試してみることで、より自分らしい人生を歩み、毒親の連鎖を断ち切ることができるでしょう。

【参考文献】

Price, J. (1969). Personality differences within families: comparison of adult brothers and sisters. Journal of Biosocial Science, 1(2), 177-205.

Hilton, I. (1967). Differences in the behavior of mothers toward first-and later-born children. Journal of Personality and Social Psychology, 7(3p1), 282.

Earley, L., & Cushway, D. (2002). The parentified child. Clinical child psychology and psychiatry, 7(2), 163-178.

Gao, X., Yan, R., Fang, X. et al. Intrusive Psychological Control and Children’s Behaviors in Chinese Multigenerational Families: Role of Children’s Temperamental Reactivity. J Child Fam Stud 31, 2582–2593 (2022). https://doi.org/10.1007/s10826-021-02048-5

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あらいひさき

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

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