子どもの能力を育てる「早期教育」は、いいことばかりではない? デメリットや注意点まで知っておこう
乳幼児期は子どもの発達にとって非常に重要な時期です。この時期に適切な刺激を与えることで、子どもの知力や運動能力が大きく伸びることが期待できます。近年、注目されている「早期教育」は、子どもの成長にどのような影響を与えるのでしょうか? この記事では、早期教育の種類やメリット・デメリット、注意点について紹介します。
近年注目されている「早期教育」に関心を持つ保護者も多いでしょう。乳幼児期は子どもの成長と発達において極めて重要な時期です。しかし、早期教育には多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点も存在します。
この記事では、より良い教育環境を整え、子どもの健やかな成長をサポートするために知っておきたい早期教育のメリット、デメリット、注意点を紹介します。
早期教育とは
「早期教育」とは、そもそもどのようなものでしょうか。まずは、早期教育の定義や目的、効果などの基本情報を確認しておきましょう。
早期教育の定義と歴史
早期教育は、乳幼児期の子どもに対して行う、脳の発達をうながし、スキルや知識を習得させることを目的にした教育のことです。
組織的で体系的な教育や学習、訓練を通常よりも早い時期から子どもに課すことを早期教育という。
出典:広辞苑
早期教育は江戸時代よりも前から存在していたといわれますが、1970年代にソニー創業者の井深大さんが、著書『幼稚園では遅すぎる』で「0歳から3歳までの育て方次第で、どんな子も能力を伸ばしていける」と提唱したことで「第一次早期教育ブーム」が起こりました。
その後、1980年代にゆとり教育が実施されたことで下火になりましたが、1990年代に教育産業がサービスの対象年齢を引き下げると、再びブームに。この「第二次早期教育ブーム」は、昨今の小学校受験や中学受験の盛り上がりもあり、 現在まで続いています。
早期教育の目的と効果
早期教育に期待できる効果は、主に「脳の成長」「成功体験」「視野が広くなる」の3つです。
子どもの脳は、驚くほどのスピードで発達するため、刺激を脳へ吸収する力が高いと考えられています。この時期に脳を活性化させ、好奇心を刺激することで、潜在的な能力が開花するかもしれませんし、“得意の芽”が見つかれば、それをさらに伸ばしていくこともできるでしょう。
また、早期教育で得られた知識やスキルによって成功体験が得られれば、「やればできる」と認識という自己効力感が高まるうえに、子どもの自信を養うことができます。
早期教育では、特定の分野のスキルを伸ばすのはもちろんですが、先生やお友達との交流を通してたくさんの“気づき”も得られるでしょう。多様な価値観に触れることで、子どもの視野はどんどん広がっていきます。物事を多角的な視点から考えるスキルは大人になっても必要不可欠なので、幼いうちから持っておくと、何かと役立ちそうですね。
早期教育と幼児教育の違い
早期教育と似たものに幼児教育がありますが、両者は「教育の目的」が異なります。
早期教育:特定の分野の能力を高めることを目的とした教育です。乳幼児期の子どもが対象で、早い段階から学習や音楽、スポーツなど、専門の教育を施すことで、脳や体の発達をうながします。
幼児教育:主に非認知能力を高めることを目的とした教育です。幼児期の子どもが対象で、年齢に応じて主体性や社会性など、生きるために必要な能力を伸ばしていきます。
例えば、わが子に「運動神経の良い子になってほしい」と思うなら早期教育を、「人間関係を上手に築ける子になってほしい」思うなら幼児教育がおすすめです。
早期教育の種類
早期教育にはさまざまな種類や内容がありますが、ここではその中から5つご紹介します。
文字や数などの先取り教育
先取り学習は、小学校でスタートダッシュが切れるよう、ひらがな、カタカナ、漢字の読み書き、計算など、小学校入学後の学習内容を身につけることを指します。
未就学児向けの学習教室のほか、自宅で通信教育を受けたり、市販のドリルを活用した教育が行われています。
英語などの外国語教育
英語などの外国語教育は、“耳”が柔軟な乳幼児期から始めるのが望ましいといわれています。そのため、乳幼児の頃から英語教室に通ったり、通信教育を用いるなどして“本物の英語”に触れる機会を作る早期教育が、日本のみならず諸外国でも行われています。
運動教育
オリンピック選手など、トップアスリートの中には早期からその種目の運動教育を受けていた方がたくさんいます。運動を担う脳の部位が3~5歳くらいで発達のピークを迎えるため、保護者がこの時期を逃さずに教育をしたということもあるのでしょう。
アスリートを目指さずとも、身体能力や運動能力の向上を目的として運動神経の土台を作るために運動教育を行う家庭も多くあります。
芸術教育
芸術教育には、子どもの心を育てる情操教育としての側面もあります。幼いうちから音楽やアートに触れることで、美的センスが磨かれますし、表現力も身につきます。
また東京藝術大学は、「音楽分野では、世界的な状況を見た場合『早期教育』の有効性は明らかである」として、「早期教育プロジェクト」を実施。「早期教育を実施し、幼少期から継続的・段階的に指導を行うことで優れた才能を開花させ、世界への飛躍に繋げることを目指す」としています。
知能教育(右脳教育)
知能教育(右脳教育)では、パズルや積み木、フラッシュカードなどの教材を使い、主に右脳のトレーニングをおこないます。右脳を開発することで、集中力や記憶力が高まるといわれています。
早期教育のメリット
教育への興味関心が高い保護者は、早期教育を取り入れることがよくあります。それは早期教育にさまざまな効果を期待するとともに、メリットを感じているからです。早期教育で得られるメリットを3つ紹介します。
基礎学力が身につく
先取り教育や英語学習の場合、小学校入学以降に役立つ基礎学力を身につけられます。また「自分はできる」「できた!」という経験は、子どもの自信にもつながります。この自信は、他のことにも積極的にチャレンジする原動力になるでしょう。
子どもの「好き」や「得意」が見つかる
早期教育を通じて、子どもはさまざまな体験をすることができます。その中から、好きなことや得意なことが見つかる場合もあるでしょう。子どもの「好き」や「得意」を逃さず、就学後に専門的な教育を受けさせてあげると、さらに才能が伸びていくかもしれません。
子どもの興味関心が広がる
早期教育は、「なぜ?」「どうして?」という疑問や好奇心を持つきっかけになり得ます。そして疑問や好奇心が満たされれば、子どもはまた別のことに興味を持つものです。時には思いもよらないことに興味が移るかもしれませんが、それも子どもの可能性が伸びている証といえるでしょう。
時にはお子さんが失敗することもあるかもしれません。しかし、どのようなときでも「がんばったね」など肯定的な言葉をかけてあげてくださいね。
早期教育のデメリット
メリットがフォーカスされがちな早期教育ですが、一方でデメリットも存在します。このデメリットも知っておくことで、子どもにとって良い教育環境を整えてあげることができます。
子どもの精神的な負担になることがある
早期教育は子どもの可能性を伸ばしますが、それが過度な期待になってはいけません「毎週〇〇に通っているんだからこれくらいできるよね?」など親がプレッシャーを与える言動をしてしまうと、お子さんは負担に感じてしまうでしょう。
早期教育は訓練ではありません。子どもが伸び伸びした環境の中で楽しく学べるように、親はサポーター的なポジションでいるのがベストです。
自主性が育たない可能性がある
早期教育のやり方はスクールごとに異なります。
スクールの中には、先生が一方的にやり方を伝えるだけのものもあります。そのようなスクールに身を置いていると“受け身”の姿勢が当たり前になってしまうでしょう。
入会前には、体験入会などのシステムを活用して、子どもが主体的に学べる環境かどうかを確認することをおすすめします。
保護者間で競争が生じることがある
同じ早期教育を選ぶと特に、保護者間で競争が生じることが珍しくありません。
「できる」「できない」が目に見えるため、他の親に「うちの子のほうがすごい」といったマウントを取られることもあるでしょう。ここで競争心に火がついて「〇〇ちゃんには負けちゃダメよ」などお子さんにプレッシャーを与える発言をしてしまうと、子どもにとって早期教育の場所が窮屈になってしまうので注意したいですね。
「よそはよそ、うちはうち。成長速度は人それぞれ」と割り切って、他の子と比較せず、我が子の成長だけにフォーカスするようにしましょう。
早期教育を行う前に知っておきたい注意点
早期教育には大きく分けて3つの注意点があります。早期教育をスタートする前に、注意点もしっかり理解しておきましょう。
他の子と比べず、過度な期待をかけない
早期教育を受けても成長速度は人それぞれです。時には、同じスクールに通う他の子のほうが、成長が早いこともあるでしょう。しかし他の子と比べてはいけません。同じように学んでも、能力の出方にはどうしても差が出るのです。
「〇〇ちゃんはできているのに、どうしてあなたはできないの」などお子さんにプレッシャーを与えてしまうと、逆に委縮したり、やる気を失ったりするかもしれません。
いつでも、「あなたはあなた」と、お子さんをあるがままに受け入れるようにしましょう。
学びと遊びのバランスを意識する
早期教育は子どものスキルを伸ばすのに最適ですが、早期教育に傾きすぎた生活は望ましくありません。
特に乳幼児期は、遊びを通して学んでいく時期です。自由に工作したり絵を描いたりすれば、子どもは思考力や想像力を身につけます。また他のお友達と関わることで社会性が育まれていくでしょう。
早期教育で特定のスキルを伸ばすのも良いですが、遊びの時間も確保してあげてくださいね。
子どもが楽しんでいるかどうか
早期教育で最も大切なのは、子ども本人の気持ちです。
どれほど一流の教育環境を用意しても、お子さんが「楽しくない」「興味がない」と思っていたらむしろ逆効果でしょう。
入会時は楽しんでいても、半年経つころには嫌がるように……と心変わりするケースもあるので、子どもが本当にその早期教育を楽しんでいるのかどうか、子どもの様子を注意深く観察し、定期的に子どもの意見を聞くことをおすすめします。
早期教育にはメリットがたくさんありますが、必ずしもメリットだけではなくデメリットもや注意点もあることを知り、子どもの気持ちを第一にしながら、親子で楽しく早期教育が受けられたらいいですね。
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【参考サイト】
・中村学園大学短期大学部「幼花」論文集|早期教育について
・会社ニュース・教育情報サイト|早期教育とは?最新のデータや論文を元に効果や弊害などを詳しく解説!
・コクリコ|前頭葉の発達ピークは10代! 脳科学的に子どもの「ならいごと」を検証
・ウィズダムアカデミー|早期教育とは?受けさせるメリット・デメリットと2つの注意点
・ほいくらし|早期教育とは?幼児教育との違いやメリット・デメリットも
・comottoコラム|早期教育のメリットとデメリットは?子どものために注意すべきことも解説
・Gakken|早期教育は子どものためになる? 早期教育のよさと行うときの注意点とは
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