父親の育児参加が、子どもの将来のメンタルヘルスに関係する?【最新の研究結果】
2022年10月より施行された「産後パパ育休」制度。男性がこれまで以上に積極的に育児に参加できるようにするため、また男女がどちらも仕事と育児を両立できるようにするために整えられた制度です。
こうして徐々に制度が整えられていますが、最近、気になる研究結果が発表されました。「父親の育児の関わりが、子どもの長期的なメンタルヘルスに関係する可能性」が出てきたのです。
父親の育児参加が、子どものメンタルヘルスに関係する
国立成育医療研究センター研究所 社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループは、2001年に生まれた子どもの家庭を対象にして、「乳児期における父親の育児への関わりが、子どもが16歳時点でのメンタルヘルスの不調とどのように関連しているのか」を調査、分析しました。
その結果、乳幼児期の子どもと父親の関わりが最も少ない層に比べて、最も多い層では、メンタルヘルスの不調のリスクが10%も下がっていることが分かりました。
この研究結果から、乳児期の父親の関わりが多いことが、長期的に見て子どものメンタルヘルスの不調を予防する可能性が出てきたのです。
ここでの父親の関わりとは、おむつを取り替える、入浴させるといった一般的なお世話のことを指しています。「イクメン」という言葉が浸透してきた現在でも、こういったお世話を母親任せにしているご家庭は少なくないのではないでしょうか。
このような研究は、日本を含むアジア圏では初の試み(イギリスなどではすでに行われているものの、結果は一致していないそう)。まだ始まったばかりとも言えるこの研究は、日本全体の子育てに対する意識改革に役立つのではないかと、期待が寄せられています。
現在、思春期の子どもたちのメンタルヘルスの不調は、先進諸国に共通する大きな課題です。インターネットの発達や近年のコロナ禍による休校等の影響で、現実での人間関係が希薄になり、「自分の居場所がない」と感じている子どもは少なくありません。
事実、2016年の内閣府の調査では、高校生以上の学生のうち、12.7%が「今の学校に自分の居場所がない」と感じていることが分かりました。
メンタルヘルスの不調の原因が一人一人違うことは言うまでもありませんが、今回の調査はこういった若年層のメンタルヘルスケアの解決の糸口となるかもしれません。
家庭も“共働き”が当たり前の社会に
今回、子育ての関わり方とメンタルヘルスの関係について明確な数値が出たものの、「なぜ乳幼児期の父親の関わりがメンタルヘルスに関係するのか」というところまでは明らかにはなっていません。
もしかすると、この結果は「保護者が良好な関わりをもち、協力しあっている家庭」で成長することの重要性を示しているのかもしれません。
「家事育児は年収換算すると数百万円以上にもなる」という言葉がよく聞かれるようになったり、国会でも「育休は休みではなく、子育てという仕事をする期間である」ということが話題になったりもしました。これらが示すように、子育ては決して楽ではなく、立派な仕事であるということは言うまでもありませんね。
それを両親のどちらか一方ばかりが負担していては、家庭内の雰囲気はよくならないでしょう。現在、日本では約6割以上もの世帯が共働きで家庭を支えているのですから、家庭内だって「共働き」で切り盛りするのが当たり前。
夫婦が助け合い、乳幼児期から子どもが安心して穏やかに過ごせるような雰囲気作りが、メンタルヘルスの面でも大切なのかもしれません。
科学的根拠も踏まえて、社会で子育てする体制を
ひと昔前は「子どもには母親の愛情が必要だ」と、子どものことは女性に任せきりにするのが当然だった日本。現在も「男が育休なんて取りづらい……」「男性社員に育休なんて必要なのか」と考えている人は少なくありません。
しかし、こうした科学的根拠も踏まえながら、少しずつ社会全体が変容していくことに期待したいですね。
<参考資料>
・内閣府「特集 若者にとっての人とのつながり」
・国立成育医療研究センター研究所 プレスリリース
・令和3年版男女共同参画白書
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1991年生まれ、ライター兼編集。小学生向けファッション誌のほか、小学校教員向け専門誌の編集を経て、2022年にフリーに。小学校教育や性教育、10代のトレンドなどについて執筆している。夫と猫の3人暮らし。