親を見下す息子の発言。その原因と親の対処法を解説します
成長に伴い、どんどん口が達者になっていくわが子。時に、親への感謝や尊敬の気持ちがないのでは!? と感じる発言をすることはありませんか? 特に、小学校中学年以上の子に見られるようですが、その原因と対処法についてを帝京平成大学 現代ライフ学部 児童学科 講師の鈴木邦明さんに教えてもらいます。
目次
親をけなすのは子どもが成長している証拠!
まず、親をばかにするような発言は多かれ少なかれ、多くの子どもに見られるものだと考えた方が良いでしょう。
特に、「第二次反抗期」において顕著になります。「こんな発言、うちの子だけかも」、「うちが異常なのかしら?」と不安に感じる親はいるかもしれませんが、ある程度はごく普通のこと。
あまり心配せず、子どもが成長している証拠だと捉えてください。少し距離を置き、見守るくらいの心持ちで子どもと関わっても良いでしょう。
ただし、こういった発言をするのは男子や一人っ子に多い傾向ともいわれます。
親への侮辱発言は、男子に多い?
女の子よりも、男の子の方にこういった発言が多いといわれることはあります。けれど、子どもの生物学的な性の違いというよりは、生まれた後の育て方が関係していると考えるのが自然でしょう。後ほど詳しく説明しますが、子どもを大事にするあまり、王様のように育ててしまったことも関係している場合があります。
一人っ子によく見られる傾向
育ってきた環境も、大きく影響を与えています。一人っ子の場合、家庭内においてわがままになってしまうこともあります。両親はしっかりしつけができていても、一人っ子ゆえ祖父母が甘やかすというケースもあるでしょう。
この点と反抗期が重なり、具体的な行動につながっている場合があります。
親への侮辱発言。考えられる5つの原因
親への侮辱発言はある程度は成長の一過程だということができますが、何らかの原因がある場合もあります。その原因について説明しましょう。
【1】子どもが“王様”状態
一つ目は、子どもが“わがまま”に育ってしまっている場合。一人っ子に限らず、あまり厳しいことを言われることなく育ってきた子どもに起きるものです。
この場合、家庭内における子どもはまるで“王様”。「家の中のことは自分の思い通りになる」と思ってしまっていることが影響しています。
【2】他者への予防線を張っている
小学校高学年くらいになると、他者と自分との違いを客観的に見ることができるようになってきます。それゆえ、劣等感も生まれやすくなります。
劣等感から自分を守るための予防線として、こういった発言をすることがあるのです。
他者(親や教師、友達など)にばかにされることが多いという経験が、結果として親を見下すような行動の原因として考えられる場合もあります。
【3】親への不信感
親への不信感がかたちにになって表れるのも、見下し発言の原因の一つ。
- 子どもの話をしっかりと聞かない
- いつも命令口調
- 怒ってばかりいる
といった親の態度により、子どもの心の中に「どうせ、親は分かってくれない」という気持ちが隠れていることが影響しています。
【4】両親の夫婦関係がアンバランス
両親の夫婦関係のパワーバランスが崩れている家庭でも、起こり得ます。
両親がお互いを尊重していなかったり、父親(夫)か母親(妻)のどちらかにパワーバランスが偏っているケースです。
子どもは大人の様子をよく観察しているため、一番身近な大人である両親の関係性が影響することもあるのです。
夫婦関係が子どもに与える影響については、こちらの記事をチェック!
【5】友達やテレビなどの影響
テレビのバラエティー番組などで誰かをばかにしたり、ののしったりすることが芸の一つとなっていることもあります。勢いで相手の頭をたたくのも、同様です。テレビ番組の影響を受け、子どもがまねてしまうことも考えられます。
また、学校の友達からの影響も大きいものです。友達とのやり取りの中で、“人をばかにする”発言を覚えてしまうのはよくあること。
子どもは成長が進むにつれ親より友達関係を大切にするようになるため、影響も強く受ける傾向があります。
次章では、こういった原因から見る対処法について解説します。
子どもが親を見下す原因から見る対処法とは
親を見下す発言は、多くの子どもの成長過程として多少は見られるものです。しかし先述したように、中には親の対処が必要な場合もあります。
- 子どもが王様状態
- 他者への予防線を張っている
- 親への不信感がある
- 夫婦関係がアンバランス
- 友達やテレビなど外部からの影響が強い
といったケースです。
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迷いを見せない。ダメなものはダメ!
わが子が同じことをして、〝怒るときと怒らないとき“を作ることはありませんか?
例えば、子どもが約束の時間を過ぎてもゲームをやめない時。普段なら「もう時間が過ぎてるでしょ、終わりにしなさい!」と注意するのに、家事や仕事で子どもの相手をしてあげられないときには「ゲーム時間オーバーしているけど、いっか」なんてことはないでしょうか。
親の都合や状況によって子どもへの対応を変えることは、避ける必要があります。親の対応に違いがあると、子どもは「前は良かったのに!」と反発するでしょう。その場合は、自分(親)の誤りを認めることも大事。
「そうだね、前はOKで今回がダメというのはおかしいよね。これからは正しいことを伝えていくね」と、親の決意を子どもに示してあげましょう。
劣等感を強めないためにも褒める習慣を
子どもの発言だけではなく、より良い育ちに大きく関わるのが〝自己肯定感“。
自己肯定感が高い子どもは経験を自分の学びとしてつなげることができ、成長する可能性が高くなります。逆に自己肯定感が低い子どもは、同じ経験からも学びにつなげることができず、自分自身を卑下することにつながることもあります。
自己肯定感を高めるには、〝褒める“ことが有効だといわれています。小さなことで良いので、親が子どもを褒める習慣をつけましょう。日頃の子どもの行動をしっかり観察し、良い部分を見つけてくださいね。
自己肯定感について詳しく知りたい人は、次の記事も読んでみてくださいね。
子どもの目を見て話を聞こう
子どもの話を、“ながら聞き”してしまうこともあるのではないでしょうか。家事や仕事で忙しく、致し方ないときはあるものですが、子どもの話を聞いてあげるのは大切です。子どもの話は聞かないのに一方的に命令をしたり、叱ったりということでは、親子間の信頼関係も揺らいでしまいます。
もし話が聞けないときは「掃除が終わったら話そうね」などと伝え、〝あなたの話を聞きたい“という意思を示してあげてください。
夫婦のバランスを見直そう
母親が父親の悪口を子どもに言ってしまう状況というのは、意外と少なくないようです。
「なんでお父さんはいつも、靴下脱ぎっぱなしなのかしら」
「お父さんは、家事の負担が少なくてうらやましいわね」
など、何気なく口にしたことが子どもに与える影響は大きいものです。子どもから見た両親の関係性について、改めて見直してみましょう。
外部からの影響はある程度は見守る
友達関係、テレビ番組などの影響で、他人をばかにするのを覚えるというのはよくあることです。これは、ある程度は仕方のないことではないかと思います。
もちろん、テレビなどのメディア視聴に関して家で対処できることもあります。それは、親が“見せない”といった対応を取ること。暴力的なもの、不適切だと感じるものをシャットアウトするのです。
ただし、今まで見ていたのに突然見られなくなってしまうのは子どもにとっては納得できないことでしょう。したがって、できるだけ年齢の低い段階でテレビ視聴のルールを家庭で決めておくのが良いかもしれません。
親をけなす子どもへの対応3つのNG
子どもが自分に対してばかにするような発言や態度を示した時、イラっとするのは親であっても当然のことだと思います。しかし、その対応が間違ったものであると親子関係に溝を作ったり子どもの心に悪影響を及ぼしたりすることになってしまいます。
【1】感情的に怒ってしまう
大声で怒鳴る、叱り方があまりにも強いといった傾向が親に見られる場合、それが子どもの言動につながることもあります。
親が感情的に怒ることが多いと、子どもも感情的になりやすいのです。子どもの行動を変容させていくには、まず親が自分の行動を変容させていくことが大切でしょう。
【2】子どもの発言ではなく人格を否定する
子どもを叱るときは、人格を否定するのではなく行為を指摘することが大切です。
「全く、あなたはダメなのだから…」
「最低だね」
「何度も繰り返すなんて、ばかなのではないか」
などといった言葉は、子どもの人格を否定します。子どもの人格否定は、先述した自己肯定感にも関係します。
「遅刻することは良くないことだよ」
「他の人をぶってしまうのは良くないことだよ」
といったように、行為自体を指摘しましょう。
【3】子どもの発言を注意しない
感情的に怒る、人格否定をするという親の姿勢は避けるべきです。しかし、無干渉も絶対にNG。子どもは「親は、自分に興味がないんだ」と感じてしまうようになります。
また、子どもが取った行動に対して何も言わないのは「やっても良い」と認めたことになります。不適切な言動があったときには、その場で指摘をすることが大切です。
不適切な言動をその場で注意するというのは、教師の学級経営における基本的なスキルの一つ。子どもが不適切な行動をしたときに担任が何も反応しないと、集団の中で「やっても良いこと」として認識されるようになります。特に新しい集団ができた4月には、子どもが“新しい先生はどのくらいまでは許してくれるのか”ということを試すようなやり取りがあります。
家庭は、学級のような数十人の関係によって成り立つ集団ではありません。しかし、不適切なことを指摘することの大切さは同じなのです。
子どもと良い関係を築くための親の心得とは
最後に、親が子どもと接する際に大切にしていきたいことを解説します。
子育てというものは、どの段階でも途切れることなく悩みは生まれるもの。“親を見下す”という悩みもその一つでしょう。大抵はあまり神経質になりすぎずなくても良いものなので、少しラクな気持ちで関わることができると子どもにとっても親にとっても良いと思います。
自分の子ども時代を思い出してみる
子どもの頃、親に対して「親には分からない!」「子どもの気持ちを分かってない!」という感情は、誰しもが多かれ少なかれ抱いていた気持ちなのではないでしょうか。
親が自分の子ども時代を振り返ると「あ~、そういう時期もあったよな」と思えて、気持ちが軽くなることはあるものです。立場を変え、相手の立場になって考えてみると、違って見えてくることもあります。どうしても自分本位に物事を考えがちになるので、時には少し引いて親子関係を見るようにすることが必要です。
子育てで大切なのは、干渉ではなく見守り
小学校中学年くらいになると、子育てに手が掛かることは少なくなります。また、子ども自身も自我の芽生えで親の指示などを鬱陶しく感じることもあるかと思います。とはいえ、親としては愛情や心配ゆえつい口うるさく言ってしまうこともあるでしょう。
しかし、いつまでも“干渉”するのは子どもの成長に悪影響です。ある程度は、見守る姿勢を心掛けてください。
自分(親)の言動を見直してみる
誰でも不満や愚痴はあるものですが、親がそれを子どもの前で頻繁に言っているというのは良くないことです。親が、ポジティブな姿勢を子どもに見せるということも大切。
親が自分自身の言動を見直していくことは、本人(親)にとってだけではなく、子どもにとっても意味のあることになっていくはずです。
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鈴木邦明さんへの相談ページを見てみる「親に対して、その言い方はないんじゃない!?」と、怒りが湧くことはあるでしょう。しかし、子どもの発言を注意することはあっても、感情的になったり人格を否定したりするのはNG。
子どもが親を見下す言動を取るのは、成長の一部。ただし、親が子どもとどのように関わっているのかが影響を与えていることも多いものです。少し距離を置いて見守るくらいの心持ちで子どもと関わり、親自身も言動を見直すことで子どもの言動に変化が見られることもあるのです。
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平成7年東京学芸大学教育学部小学校教員養成課程卒業。平成29年放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務し、学級担任としてさまざまな子どもたちや保護者と関わる。現場での長年の経験を基に、教員・保護者向けに様々な教育関連情報サイトなどで役立つ情報を発信。現在は教員育成に軸足を移し、平成30年4月から帝京平成大学現代ライフ学部児童学科講師。(財)日本体育協会・スポーツリーダー、WSSA-JAPANスポーツスタッキング指導者。