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2023.12.22

息子に「男の子」を押し付けない親でいたいけど

インスタグラムで育児にまつわる情報を発信している「ソクたまアンバサダー」。そんなアンバサダーのみなさんに、子育てや教育について、それぞれの視点で執筆してもらうコラムです。今回は、知育インスタグラマーとして活躍中の、論文ママさいとうさんの子育てコラムをお届けします。

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「息子には、ちびまる子ちゃんに出てくる花輪くんみたいな男子になってほしい」

それはかねてからの私の理想であり、希望であった。

女の子に優しくて、頭が良くて(あんまり描写ないけど多分良いだろう)、顔が良くて、お金持ちなのに庶民のまる子達を気兼ねなく自宅に招いてくれるところも優しいし、好きではない女の子に言い寄られても無神経に傷つけたりしない。

忙しい両親と離れ、まだ小学生なのにひでじいと暮らしていて意外に苦労人だ。

なかでも、「女の子に優しい男の子」の要素は女の私からしたらかなり重要である。


なぜなら私が小学生の頃、「女の子に優しい男の子」なんてものは皆無で、スカートめくりは蔓延していたし、自己表現が苦手なのかいちいち手を出してくるし、嫌なことは言うし、男の子は常に意地悪で暴力的な存在であった。

それを親や親戚の前で話すと「男の子は好きな子に意地悪するもの」と、なぜか微笑ましいやり取りとして処理されるのもかなり不快で、学校に行くのが億劫になるレベルの被害感情をあやふやにしてくるのも謎だった。

「男子」に対する嫌な記憶が、私の中で花輪くんを過剰に持ち上げる要因になっていることに気付いたのは最近である。


それと同時に、息子には「男の子だから」を押し付けないよう育児してきた。

男性の加害性や暴力性は、幼少期から「有害な男らしさ」を押し付けられて生きてきたことが原因のひとつであるというのは有名な話である。

昔の男子はカワイイものが好きだと言えば「オカマ」「女みたい」とからかわれ、誰もが男らしくあるよう育てられてきたが、令和はもうそんな時代ではない。

ジェンダーに関する絵本もたくさんあるし、可愛いものが好きな男の子だってあたたかく見守られている。

息子は3歳の頃、スカートを履いている私を見て「スカート履きたい」と言ったことがある。

一瞬躊躇したものの、履きたいのなら履けばいいと思い、私が子供の頃のワンピースを着せるとご機嫌でお出かけしていた。



スイミングでゴーグルを買うとき、「どの色がいい?」と尋ねると、息子はピンクを選んだ。毎週ピンクのゴーグルをつけて頑張っている。

実は「ピンクが女の子の色」になってから70年ほどしか経っていない。

それまで女の子といえばブルーだった。不思議の国のアリスも、オズの魔法使いのドロシーだってブルーのワンピースを着ている。

しかしメディアによって「ピンクは女の子」が定着していった。本能的に女の子はピンクが好きなわけでも、男の子はブルーが好きなわけでもない。

今では女の子でも黒や水色や茶色のランドセルを背負っているのをよく見かける。

ピンクのランドセルを背負う男の子はまだお目にかかったことはないものの、髪をピンクに染めている男性も大勢いるのだから、ピンクが好きな男の子が、ピンクのランドセルを気兼ねなく選べる時代になればいいなと思う。

と、ここまではいいとして……。

反面「男らしさ」を押し付けないことが過剰になりすぎると、今度は「男の子が本能的に大切にしたい感情」をも、奪うことにならないだろうか。

きっかけは、ある一冊の本だった。

男の子を育てる上で、「男らしさ」を押し付けることがいかに害悪かを説いたその本は、前半こそ共感するものであったが、著者の息子が友人たちとの遊びに夢中になり、「男ならここはやるっしょ!」的な気合いの入れ方をした際に、「男だから、みたいな言い方はやめて。男とか女とか関係ないでしょ」とその場で咎めたというエピソードを読んだ瞬間、私の中の何かがサーっと引いていった。

単純に、男の子が男らしくありたい、かっこよくありたい、と思う気持ちは果たしてジェンダーバイアスなのだろうか。

男の子や男性が、「男らしさ」を発揮する機会の全てを奪うことは正解なのか。
それ自体が加害性に繋がると思い込むのは、いささか早合点ではないか?

私は、息子の「ピンクが好き」という気持ちを認めてあげたいと思っているのと全く同じ熱量で、「僕は男の子」という本能的な自我も尊重してあげるべきだと思っている。

となってくると、冒頭の花輪くんのようになって欲しいという私のエゴはどうなのだろう。

決して花輪くんが男らしくないと言っているわけではない。あれはあれで一周回った男らしさである。いわばジェントルマンなのだ。小学生男子に求める理想像としてはハードルが高い。(ちなみに花輪くんの元々のモデルは女の子)


しかも私の場合「女の子に優しい男の子になってほしい」と無意識に優しさのベクトルが「女の子」に限定されているのも、己の小学校時代のトラウマがめちゃくちゃ反映されていて苦笑いするしかない。

別に「人に優しい男の子」でも良いはずだ。

もし花輪くんのような男子が実在したとして、現実の小学生男子社会で彼は一体どういう存在なのか。もしや浮くのではないか。

私は息子に、なにも男子社会の中で孤立して欲しいわけではない。


一体花輪くんはどう立ち回るのか?

男社会の全貌は、女の私には分からない。

もちろん「暴力性」だけが男社会の優劣を決めるわけでないことくらいは分かっているし、「暴力は悪」は常に認識させていかねばならないけど。


男性コミュニティ独自のヒエラルキーや過剰な競争意識など、女の自分には理解できない領域だし、バカらしいとさえ思うようなことも正直ある。

が、現実それらが部活や学校、はたまた会社など、あらゆる男社会の中で機能している以上、無視できないのではないか。

「女親目線で見る理想の男の子」を押し付けることで、はなからその土俵にすら上がらせないというのは、息子を生きづらくさせてしまうのではないかとゾッとした。

そう思い始めてから、これまで一切戦隊モノに興味を持たなかった息子が、最近幼稚園ではお友達と「戦いごっこ」を楽しんでいるという先生からの言葉を聞き、少しずつ男子の世界に順応してきていることに安心している自分もいる。

結局、1番大切な事は、男女の垣根をなくそうと躍起になることではなく、
好きなものを好きなときに好きなだけ選ぶことができる人間になるということ。

そして他人の好きなものを認めてあげられるようになるということ。

何がジェンダーバイアスで、どこまでならいいのか、細かいことは私には分からないけど、シンプルでいいのではないか。

男らしさや女らしさを押し付けない事は、いつだって「他人を認める」というその延長線上にあるべきだ。

先日、百貨店を徘徊しているとランドセル屋さんの前を通った。

どの色がいい? と試しに息子に聞いてみると、息子はピンクを指差した。

ピンク可愛いよね、と答えるのと全く同じタイミングで、からかわれやしないか、という不安が頭に浮かぶ。


口では最もなことを言いつつも、30年以上蓄積された先入観や偏見が、私の中にもまだ残っている。

息子が小学校に入学するまであと3年。それまでに私も、今より強くなれますように。

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