中学受験は不登校でも不利が少ない? メリットや塾・家庭教師の選び方をプロに聞いた
不登校とは「年間30日以上の欠席がある者のうち、病気や経済的理由以外の理由で登校しない、あるいはしたくてもできない」子どものこと。
不登校により、子どもが勉強についていけないという悩みをもつ保護者も少なくないでしょう。2022年11月に著書『不登校からの進学受験ガイド』を発売した個別指導塾ココロミルの山田佳央氏は「そんな子こそ、ぜひ中学受験に挑戦してほしい」と話します。その真意や「不登校のための教育機関選びのコツ」をお聞きしました。
中学受験は不登校でも挑戦しやすい受験
ーー山田さんの著書では、「実は中学受験は、不登校の子どもの生活スタイルに合っている」というお話があります。それはどうしてでしょうか?
中学受験は、基本的に学校の勉強とは異なることを求められます。もちろん、必要な基礎知識は同じですが、それを「活用して解く」問題を問われるので、受験校の傾向に合わせた対策が必要になるんですね。ということは、学校の宿題だけでなく、「受験のための勉強時間」も必要になるのです。
その点、不登校の子どもとそうでない子どもでは自由時間の量が異なります。自由に使える時間がたっぷりある不登校の子は、1日の多くの時間を受験勉強に費やすことができます。学校の勉強が遅れている場合はそこを補う必要がありますが、「受験」という明確な目的を持てば、効率的に遅れを取り戻すことができます。
ーーなるほど。しかし、受験勉強は精神的にも体力的にも簡単なことではないと思います。不登校の子どもにとって、勉強が苦痛になることはないのでしょうか?
不登校となる理由はさまざまですが、小学生の不登校理由は友人関係や、教師との関係によるものが多くを占めています。逆を言えば、これらが理由で不登校となっている子どもたちは、環境が整いさえすればもっと学びたいと思っている子も多いんですよ。もちろん、全ての子どもに受験が合っているとは言えませんが、環境を変えてまた学校を楽しめるのであれば、受験はむしろチャンスなんです。
内申点や出席日数は加味されないの? 高校受験との違い
ーー中学受験では、出席日数などは加味されないのですか?
学校にもよりますが、試験の成績だけで見てくれる学校が高校よりも多い印象です。例えば埼玉県の私立中学の多くは、ほとんどが当日の試験の成績だけで判断してくれます。内申点が重要な場合が多い高校受験に比べて、中学受験は不登校の子でもいくらでも挽回できます。自分の行きたい学校の合格基準を知りたい場合は、学校に問い合わせたり塾などの講師を頼って調べてみるのがおすすめです。
高校や大学とは違い、中学までは同じ学区に住んでいるという理由だけで集められていますが、私立や国立の中学を目指せば、最初から「こんな環境で学校生活を過ごしたいな」と同じ志をもっている子ども同士が集まることができます。そのような環境に置かれる方が、子どもたちのやる気にもつながるのではないかと思いますね。
塾や家庭教師は「実態」と「経歴」を確認して
その通りです。一緒に勉強をしていく塾、あるいは家庭教師がとても重要になってきます。著書『不登校からの進学受験ガイド』でも選ぶポイントを紹介していますが、私はやはりその塾の講師の経歴と実態をみることが大事だと思います。
ーー実態、とはどういうことでしょう? 実績ではないのですか?
実績ももちろん大事ですが、実績を見るよりも先に、「担当する講師が正社員のか、アルバイトなのか」「きちんと指導するスキルを持っているか」という実態を確認してほしいです。
不登校の子が集団塾にいきなり通うことはかなりハードルが高いと思いますので、家庭教師や個別指導塾に頼るケースが多いと思います。そこで重要なのは塾のブランドではなく、担当する講師の質、つまり実態です。また経験上、学歴は指導力に直結し、講師の質に欠かせないものだと私は考えています。担当講師の卒業証明書もできることなら見せていただくとよいでしょう。
「正社員なのか、アルバイトなのか」は不登校の子にとって特に重要です。90%以上の個別塾の講師や家庭教師はアルバイトです。理由は「給与が安く済むから」でしょう。しかし、すぐに辞めてしまうデメリットもあります。アルバイトは大学生が主体のため、「週1回のみ」「受験期は大学のテストと重なるから休みがちになる」など子ども第一に動いてくれるわけではありません。
そういった学生のバイト講師が担当になり、数回授業を行い、ようやく慣れてきた段階で講師交代となった場合、子どもはどう思うでしょうか?
ーー何の予告もなく、講師の交代が起こってしまうのでしょうか?
そうです。しかし泣き寝入りせざるを得ない……。そうすると、1番可哀想な思いをするのは子どもです。人に慣れることが大変な子にも容赦無く講師交代が起こってしまい、結局勉強を辞めてしまうケースも多く見てきました。
不登校になるお子さんは繊細な子が多く、通常の塾でも講師が変わってしまうと「自分の成績がよくないから、先生が愛想を尽かしたんだ」と自分を責めてしまうこともあります。
また、大学生のアルバイトでは経験が伴っておらず、講師の教え方が下手な場合も多いです。しかし不登校の子は「分かりにくい」と言い出せない子が多いため、結果が出ないままわかりにくい授業を受け続けてしまうケースもあります。
中には学歴を詐称している場合もありますから、塾や家庭教師の質、つまり指導力の確認をするのも親がやるべきことです。不登校だからと負い目を感じる必要はありません。決して安い金額ではないのですから、子どもがつらい思いをしないためにも子どもにも多くの講師と面談、あるいはトライアルさせ、良し悪しを判断させるくらいの態度で塾選びをした方がよいと思います。
受験で自分の居場所が見つかる子も
受験は、ただつらいだけのものではありません。自分の所属する場所を自分で決められるという大きな利点があるものです。著書では、具体的な受験経験者のエピソードをいくつか紹介しています。
家から出るのが難しい子ども、塾や学校と折り合いがよくない子どもなど、さまざまな理由で不登校となっている子どもが、中学受験に挑戦することで新たな自分の居場所を見つけて新生活を送っています。また、受験を通して外の世界とつながることができたことで親子の会話が増えるなど、家庭の雰囲気がよくなったという声もありました。
多くの方が想像するとおり、中学受験はお金がかかることではあります。しかし、子どもの居場所をつくるチャンスとなり、将来の選択肢を広げる可能性となる進路という意味では、費用以上の効果をもたらす可能性もあるんです。
ーー不登校の子どもにとってハードルの高い選択肢のイメージがありましたが、必ずしもそうではないということですね。
そうですね。「難関に挑む」ことだけが受験ではありませんから、学力のほか、校風や学校所在地などを家族で話し合って決めていただきたいです。
現在、コロナ禍で増えている「不登校」。休校期間や自粛期間などを経て人とのつながりを感じる機会が減ってしまったことにより、「どこにも自分の居場所がない」と感じている子どもも少なくありません。
費用面やサポート面も考えれば簡単なことばかりではありませんが、「受験」という選択肢を踏まえて、子どもが毎日楽しく過ごせる環境を見出せるとよいですね。
<不登校の子が通いやすいおすすめの塾についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。>
<参考資料>
・PR TIMES(株式会社ココロミル)
・文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
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1991年生まれ、ライター兼編集。小学生向けファッション誌のほか、小学校教員向け専門誌の編集を経て、2022年にフリーに。小学校教育や性教育、10代のトレンドなどについて執筆している。夫と猫の3人暮らし。