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2022.02.03

中学受験に失敗…不合格の受け止め方、その後の人生をプラスに変える方法とは

親子でがんばってきたのに中学受験に失敗してしまった。志望校に落ちたり、すべての学校に落ちたり、失敗の基準はそれぞれですが、子どものがんばりが叶わなかったとき、子どもはもちろん親も大きなショックを受けると思います。失敗のショックをどう受け止め、その後の人生の汚点にしないためにどうすればいいのか、長年、多くの中学受験生や高校受験生・大学受験生を指導してきた、School Post主宰の石井知哉さんがアドバイスします。

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親が「立ち直れない…」と思うのも当然

二人三脚でがんばってきた中学受験の合格発表日。子どもが学校に行っている間に結果が分かる場合、最初に結果を知るのが保護者で結果は不合格…というケースもあります。

中学受験に失敗してしまったという事実が判明したとき。まず、大切なのは保護者自身が、どう受け止めるかということです。

なぜなら、子どもが不合格という大きなショックを前にしたときに、保護者がどんな気持ちで、どんな言葉を発するかということが、子どもの受け止め方に影響するからです。そのため、保護者の”不合格の受け止め方”には気をつけなければいけません。

まず、悲しい・悔しいといった感情は、あって当たり前のもの。親子ともども力を合わせて、何年間も一生懸命に頑張ってきた中学受験。合格できなかったときに「立ち直れないかもしれない…」と思うのは当然のことです。大切なわが子を思う保護者だからこそ、あなたも落ちこんでよいのです。

大事なのは”感情的”にならないこと

悲しんだり、落ち込んだり、“感情を抱く”ことは、人間なら当たり前のことです。しかし、“感情的になる”ことのないよう気をつける必要があります

”感情的になる”というのは、自分の感情のままに発言したり行動したりすること

例えば、怒りのままに相手を責めるようなことを言ったり、暴力をふるったりすることです。大人同士の付き合いでも、感情的な言動は相手を傷付け信頼を失うことにつながります。

大人同士でさえそうなのですから、わずか12歳の子どもならなおのこと。ましてや、受験に失敗して落ち込んでいる状態です。保護者の言動は、保護者自身が思っている以上に強い影響力があります。保護者の感情的な発言や行動は、不合格という結果以上に大きなダメージを子どもに与えることもあるのです。

だからこそ、子どもに不合格を伝えるとき、子どもと一緒に不合格を知ったときには、自分の感情をコントロールして冷静さを保つことが大切なのです。

子どもの立ち直りに向けて、まずは保護者自身が気持ちを切り替えるようにしましょう。

気持ちを切り替え、立ち直るための2つのコツ

とはいえ、立ち直らなければならないのは分かっていても、簡単に気持ちの整理がつかないものです。そんな場合に試して欲しい2つの方法を紹介しましょう。

【コツ①】ネガティブ思考を極める

「ポジティブ思考の間違いでしょ?」と思われるかもしれませんね。たしかに、ポジティブ思考になれるのであれば、それに越したことはありません。しかし、現実的に考えて、入試に落ちた状態でポジティブになるというのはかなり難しいことでしょう。

そこで、ポジティブになれないなら、とことんネガティブになりましょう

具体的には、今より悪い状況を想像してみるのです。「中学受験という枠」にとらわれなければ、「もっとひどい最悪の状況」はたくさんありますよね。口に出して言うのもはばかられるのですが、病気や怪我や事故、災害などを思い浮かべてみてください。健康面でも経済面でも、中学受験不合格よりも悪い状況はいくらでも思いつきますよね。

たとえ、志望校がすべて不合格だったとしても、地元の中学校に進むわけで、子どもの人生の道が閉ざされるわけではありませんたった12歳の子どもが無事入試本番を迎え、自分ひとりで試験会場で入試を受けてきたこと自体がすごいことなのです。

【コツ②】原点回帰をする

次に「何のための中学受験だったのか」を思い出してみましょう。そもそも、中学受験に挑んだ理由や目的(出発点)は、下記のような思考回路だったのではないでしょうか。

【目的】子どもが幸せな人生を送る
 ↑ そのために
【目標】子どもがより成長する
 ↑ そのために
【方針】子どもがより良い環境で教育を受ける
 ↑ そのために
【手段】中学受験に合格する

中学受験合格はあくまでも”手段の1つ”であり、受験自体が”目的”ではありませんよね。「幸せな人生を送る」という目的や「より成長する」という目標をかなえる方法は、ほかにもあるわけです。

冷静に原点に戻ってみることで、気持ちを切り替えやすくなることもありますよ。

子どもに落ちたことを伝えるときに大切な3つのこと

子どもに「不合格だった」という結果を伝えるときに大切なこと、心がけたいことを紹介します。

【大切なこと①】子どもへの敬意を込める

まず、子どもへの敬意を忘れないでおくことが大切です。たとえ不合格という結果であっても、過酷なレースを走り抜いたことは大いに評価されるべきことです。結果を伝える前に、子どもに対するリスペクトの気持ちをこめて伝えることは、子どもの自己肯定感につながります。

【大切なこと②】 子どもには事実を伝える

次に「受からなかった」という客観的な事実を伝えましょう。事実を伝えるといっても、「○○中学校ダメだった」という言い方は、子どもへのダメ出しにも聞こえてしまいます「○○中学校はご縁がなかった」というような柔らかい表現を使うことをおすすめします。

【大切なこと③】子どものリアクションを待つ

事実を伝えた後は、子どものリアクションを待ちましょう。もちろん、次の日に別の中学校の試験がある場合は、すぐに気持ちを切り替えたいところですが、試験がすべて終わっているのであれば、焦る必要はありません。子どもがひとりで結果を受け止める時間も大切です。

子どもの自信を奪う”NGワード”とは?

結果を伝える際に、逆に避けたいことも紹介します。

【NGワード①】マイナス評価を植え付ける

  • あなたは●●が苦手だから…
  • あなたは本番に弱いから…
  • あなたはいつも肝心な時に体調を崩すから…

【NGワード②】兄弟姉妹、同級生などと比較する

  • ●●くんは受かったのに…
  • お姉ちゃんは手がかからなかったのに…
  • 私が受けたとき、こんな学校は簡単に合格したわよ。

【NGワード③】結果をなじる

  • あなたはどうしてできないの?
  • 何回言ったらできるようになるの!?
  • ●●中に落ちたなんて、恥ずかしいわ。どうするの?

【NGワード④】全否定する

  • どうせやっても無理なんだから…
  • あなたは何をやってもダメね…
  • ハァ…(ため息をつく)

上記のような言い方は、たった一言で子どもの自信を奪います

保護者としては、子どもを奮起させるつもりで言っているのかもしれませんが、相手は努力が報われずにショックを受けている12歳の子どもです。

傷口に塩をぬられるようなもので、プラスになることはありません。大人が仕事で結果が出なかったときに、同僚や上司から同じようなことを言われたと想像してみると分かりやすいのではないでしょうか。

子どもの心を切り替える声の掛けかた

結果を伝えた後は、落ち込んだ子どもの気持ちがポジティブに向いて行くように声掛けをしていく必要があります。

そこで、次の2つのケースに分けて、気持ちを切り替える声掛けの仕方を紹介します。

第1志望に落ちたが滑り止めには受かっている場合

私立中学校に進学するが、第1志望に入れなかったことで落ち込んでいる場合です。この場合に掛けたい言葉は、「この中学校も良いところいっぱいありそうだね」です。

進学先の中学校の良い面に目を向けるようにしましょう

どんな学校にも、その学校にしかない良さがあります。たとえ滑り止めの学校だったとしても、そこで出会う友だちや先輩たちと過ごす時間は、第1志望校では得られないものです。

ホームページやパンフレット、紹介動画などを見て、進学する学校の良さをたくさん発見してみてください。春からの入学に向けて気持ちを前向きに切り替えやすくなりますよ。

すべての学校に落ちて公立校に行く場合

すべての学校に落ちてしまい、公立校に行くことになった場合に掛けたい言葉は、「受験で勉強したことを中学校でいかそう」というもの。

中学受験という経験を通じて得た”成長”に目を向けるようにしましょう。不合格という事実を前にするとつい忘れがちですが、中学受験の勉強はハイレベルで、高校入試より難しい問題が出ることもあります。ですから、中学受験生は公立中学校でも上位の成績を取りやすいのです。

実際、中学受験で志望校に落ちた悔しさをバネに、地元の中学校では3年間、学年トップを守り続けた子がいます。その後、高校受験で第1志望だった中学校より難易度の高い国立の附属校に合格、最難関の国立大学に現役で受かっています。

中学受験で勉強したことは、子どもの成長につながっており、全落ちという経験ですらプラスに作用することがあるのです。

中学受験に失敗はない

中学受験は、第1志望校合格が最高の結果です。それ以上の結果はないといってよいでしょう。

しかし、合格だけがすべてでもはありません。合格を目指すプロセス、すなわち”受験そのもの”に、学力アップ、メンタルの強化、自立心の芽生えといったメリットがあります。

<中学受験のメリットに詳しい記事はこちら>
なぜ中学受験をするの?私立中学へ行くメリット、デメリット、子どもの向き・不向きを解説します

合格するために本気で取り組んできたことによる子どもの成長、それこそ中学受験で得られたものです。

もし不合格でも、子どもが成長したのあれば、その中学受験は、”失敗”ではなく成功です。その意識を親子で共有することができれば、中学受験という経験を後の人生に生かすことができるでしょう。

「幸福の扉の1つが閉じる時は、別の1つが開きます。けれど私たちは閉じたほうばかりながめていて、こちらに向かって開かれているもう1つのほうに気付かないことが多いのです」これはヘレン・ケラーの言葉です。

不合格という結果によって、第1志望校への進学という1つの幸福の扉は閉じました。しかし、一方で、別の中学校への進学というもう1つの幸福の扉が開いたのです。

子どもやあなた自身が落ち込んでいるときは、ヘレン・ケラーの言葉に耳を傾けてみて、幸福の扉の先へ進んでいく子どもの姿を思い描いてくださいね。

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石井知哉

教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー。高校受験Webサイト「School Post」(https://school-post.com)主宰。塾指導歴20年以上。小学生から大学浪人生まで、教科を問わず個々の成長を引き出す指導を得意とする。現在は、個別指導塾2校舎を統括する傍で、千代田区麹町に超少人数制個人指導道場「合格ゼミ」を開設。長年の経験と知見を記事にして発信中。アイデアと文面の大半は、こよなく愛するビーグル犬との散歩中に生まれる。

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