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2021.03.29

公立高校の学費無償化とは? 対象や無料になる教育費を詳しく解説します!

2020年に新たに導入された公立高校の学費無償化制度。“無償化”というワードは魅力的ですが、分かりにくい部分も多くありそうです。そもそも、高校に通わせるためにはいくら必要なのか。学費とは、そもそも何の費用なのか。対象となる年収の条件や手続きも気になるところです。公立高校の学費無償化について、分かりやすく説明します。

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公立高校に通う子どもにかかる教育費の総額は、年間55万円

まずは、公立高校でかかる費用について確認してみましょう。

全日制の高校の授業料は、年間11万8800円です。その他、授業料以外にかかる費用も知っておきましょう。

平成30年度文部科学省の「子供の学習費調査」によると、年間にかかる費用の平均は次の通り。

公立高校(全日制)における学校教育費の内訳

修学旅行・遠足・見学費:3万5579円
学校納付金等:5万5360円
図書・学用品・実習材料費等:4万1258円
教科外活動費:4万427円
通学関係費:7万9432円
その他:3053円

最も高いのが「通学関係費」で、通学のための交通費や制服などにかかる金額です。「学校納付金等」とは、PTA会費や生徒会費など。これら授業料以外の費用を合計すると、25万5109円になります。ここに年間授業料の11万8800円を加えた学校教育費総額は、37万3909円になります。

実際には、他にも費用が発生します。先の文部科学省の資料によると家庭内での学習費・塾代・地域活動費・図書費などの「学校外活動費」の総額は、年間17万6893円を費やしているという結果になっています。これに学校教育費総額を合算すると、年間55万802円。結構な金額を必要とすることが分かります。

学費無償化とはこうした費用を少しでも国が負担し、家計の助けになるように定められた制度です。

国が行う支援制度「高校無償化」の具体的な内容は?

そもそもこの制度は、2010年に成立した「高校無償化法」が始まりです。当初は公立高校の授業料が免除、私立高校に通う生徒の場合には同額の「就学支援金」が支給されるものでした。その後2014年に制度が改正され、現在の「高等学校等就学支援金」という名称になりました。

「高等学校等就学支援金」は支給対象になれば、公立の授業料が実質無料となります。また、2020年4月に制度がリニューアルされ私立高校に通う生徒への支援も手厚くなりました。一定の所得要件を満たす世帯の場合、私立高校の授業料も実質無償化となります。また、授業料以外の費用が支給される「高校生等奨学給付金」という制度もあります。

現在は、

  • 高等学校等就学支援金
  • 高校生等奨学給付金

この二つが、高校生を持つ家庭を対象とした国が行う支援制度となっています。ここでは、それぞれの制度についての概要を説明しましょう。

高等学校等就学支援金

国が行う「授業料支援」の制度。対象は、高等学校・特別支援学校(高等部)・高等専門学校(1~3年生)などに在学する、年収が約910万円未満の世帯です。

支援の内容は、公立高校の年間授業料に相当する11万8800円の支給。ただし、公立高等学校(定時制)や公立中等教育学校の後期課程(定時制)などのように授業料がこの金額に達しない場合は、授業料を限度として就学支援金が支給されます。

“支給される”という表現をしていますが、支給されるのは生徒本人やその保護者ではなく、学校に支給されるもの。都道府県や学校法人などが生徒本人に代わって受け取り授業料に充当するもので、生徒や保護者が直接受け取れるものではありません。

この制度のポイントは2つ。

  1. 支援されるのは、高校でかかる費用の中の「授業料」。「通学関係費」や「教材費」「学校納付金額等」などは含まれません。
  2. 支援を受けるためには、世帯年収の上限があります。この点については、後ほど詳しく説明しましょう。

高校生等奨学給付金

高等学校等就学支援金と同じく国が行う支援制度ですが、こちらは授業料以外にかかる教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・教科外活動費・生徒会費・PTA会費・入学学用品費・修学旅行費等などの教育費を支援するもの。授業料は含まれません。

対象になるのは、生活保護世帯・住民税所得割非課税の世帯に限られます。特別支援学校は除かれますが、「特別支援教育就学奨励費」による支援が用意されています。

支援が行われる目安としては、収入が約270万円未満の世帯。3万円~14万円が支給されます。

また、高等学校等就学支援金との併用も可能です。

補助金額は、以下の通り。

・生活保護受給世帯【全日制等・通信制】
国立・公立高等学校等に在学する者:年額3万2300円
私立高等学校等に在学する者:年額5万2600円
・非課税世帯【全日制等】(第一子)
国立・公立高等学校等に在学する者:年額8万4000円
私立高等学校等に在学する者:年額10万3500円
・非課税世帯【全日制等】(第二子以降)
国立・公立高等学校等に在学する者:年額12万9700円
私立高等学校等に在学する者:年額13万8000円
・ 非課税世帯【通信制・専攻科】
国立・公立高等学校等に在学する者:年額3万6500円
私立高等学校等に在学する者:年額3万8100円

授業料が無償となる「高等学校等就学支援金」の年収制限は?

「高等学校等就学支援金」は、先述したように年収の目安が約910万円未満の世帯が対象。

これは、以下で紹介する計算式での試算結果をもとにした目安の年収として文部科学省が打ち出しているモデルケースの数字です。

制度の適用判断になる所得基準は、扶養控除など各種控除を引いた後の金額で判定されるため、仮に世帯年収が同じでも子どもの数や年齢、配偶者が専業主婦(夫)か共働きかなどによって支援金額が変わる可能性があるのです。

「うちは該当するのだろうか?」

「微妙なラインで心配…」

「妻のパート代は含まれる?」

など、わが家が該当するのかしないのか正確に知りたい人は次に紹介する計算式で算出してみてくださいね。

ちなみに、両親2人分の合計金額で計算することになっています。夫の収入だけならぎりぎり基準を満たしていたけれど、妻がパートに出ることによって基準を満たさなくなり支援が受けられなくなるという場合もあります。

【高等学校等就学支援金】の計算式
「市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額」
(※政令指定都市の場合は「調整控除の額」に3/4を乗じる)

上記の算出額が30万4200円未満であれば公立高校の授業料が実質無償化の対象となり、11万8800円が支給されます。私立高校の授業料の場合は、上記の算出額が15万4500円未満であれば実質無償化の対象となり、39万6000円が支給されます。

けれど、計算式に出てくる「課税標準額」や「調整控除」などが何を指すものなのか分からない人もいるのではないでしょうか。

これを知るためには、毎年6月頃に届く横長の「住民税の決定通知書(特別徴収税額決定通知書)」で確認するのがおすすめです。

・課税標準額
「課税標準」欄に書かれている「総所得」の金額。「課税標準額」「課税総所得金額」などと記載されていることもあります。「総所得額」や「給与所得」の金額ではないので、注意しましょう。

・ 調整控除
決定通知書の左下にある「摘要」欄に記載されています。市区町村民税と都道府県民税それぞれに控除が行われるので、2つの数字を合計した金額が減税額として記載されています。

ただし、摘要欄に減税額の記載がない市区町村もあります。その場合は、右側の税額欄の「市区町村民税」と「都道府県民税」を見ましょう。それぞれの「税額控除額」に記載された数字を足した額が調整控除額になります。

ちなみに、調整控除とは調整控除として明記されているもの以外にも、寄付金控除(ふるさと納税など)、住宅ローン控除なども含まれます。

「課税標準額」や「調整控除の額」については、上記の決定通知書で知る以外に「マイナポータル」という政府が運営するオンラインサービスを利用する方法もあります。

ここでは、東京都在住の「夫婦、子ども2人(中学生と高校生)、妻はパートで扶養内」をモデルに計算してみましょう。

夫+妻(扶養範囲内・パート)+子ども2人(中学生・高校生)の家庭の場合

夫+妻(扶養範囲内でパート勤務)+子ども2人(中学生・高校生)の4人家族(東京都在住)

決定通知書で「課税標準」欄の「総所得」を見ると、361万2000円と記載されていました。これが、「課税標準額」です。

次に「税額」欄の中、特別区民税の「税額控除額」には1500円、都民税の「税額控除額」には1000円と記されていたので、合計すると「調整控除の額」は2500円となります。


「課税標準額」361万2000円×6%=21万6720円 21万6720円-「調整控除の額」2500円=21万4220円

という結果になりました。

このモデルケースの世帯で算出された金額は、21万4220円。公立高校の基準額(授業料全額相当)の支給対象になりますが、私立高校の場合は授業料の全額は支給されないということになります。

先述した通り、夫婦共働きの場合は夫婦の収入を合算します。では、夫婦に加えて同居祖父母にも収入がある場合は、どうなるのでしょうか。就学支援金の支給額は、「保護者等」の所得で判断することになっています。親権者である両親がいる場合、祖父母に収入があっても加える必要はありません。

ちょっと面倒に感じる計算ですが、「課税標準額」と「調整控除の額」さえ分かれば簡単。「年収が〇〇円だから支援を受けられる!」と早合点せずに、正確な数字をもとに計算式で算出するようにしましょう。

なお、高校生の就学支援については国の助成の他、各都道府県独自の制度もあります。私立高校の授業料を充填する役割のものが主流ですが、国の「高等学校等就学支援金」と併用可能な制度もあるので詳細は各自治体で確認してみましょう。

公立高校の「学費無償化」。申請方法と支給の流れが知りたい!

最後に、「高等学校等就学支援金」を利用するための手続きについてを解説しましょう。

制度を利用するためには、申請が必要です。申請から支給までの流れは、

  1. 入学説明会時や入学後などに、学校から申請書が配布される。
  2. 申請書に記入し、必要な書類と併せて学校に提出する。
  3. 申請が通れば国から支援金が学校に直接振り込まれ後日、授業料が還付される。

「高等学校等就学支援金」は、基本的に後払いとなります。入学時には、ある程度まとまったお金が必要になるので、計画的に資金準備をしておくことは必要です。

申請が通らなかったら…?

高等学校等就学支援金の申請をするにあたり、「申請に落ちたらどうなる?」というのも気になりますよね。

就学支援金の支給額を判断するための収入状況の確認は、毎年度行われています。1年生については4月と7月の2回、2・3年生については7月の1回です。

判定の判断になる地方住民税の情報は、毎年6月頃に前年中の所得に基づくものが出されるので、そのタイミングで再申請になります。

文部科学省のサイトを見ると、例えば「令和2年4月入学者の申し込み・届出の時期とそれに添付する課税証明書等の年度、就学支援金の支給期間」についてを以下のように紹介しています。

令和2年4月入学者の届出の時期と添付の課税証明書等の年度、就学支援金の支給期間

申請・届出時期:令和3年7月頃
提出する課税証明書等:令和3年度(令和2年1月1日~令和2年12月31日の収入に対する税額)
就学支援金の支給期間:令和3年7月~令和4年6月

申請・届出時期:令和4年7月頃
提出する課税証明書等:令和4年度(令和3年1月1日~令和3年12月31日の収入に対する税額)
就学支援金の支給期間:令和4年7月~令和5年6月

<参考>文部科学省 「高校生等への就学支援」

入学時の申請で支給対象外となった場合でも、その後の世帯状況等の変化によって支給を受けることもできます。その場合も改めて申請が必要になるので、学校に確認して申し込みを行います。

「高等学校等就学支援金」は公立高校の授業料が実質無料になる制度、「高校生等奨学給付金」は教科書費や教材費など授業料以外にかかる料金の支援制度です。国の制度なので、全国どこの公立高校でも支援が受けられるのは大きな魅力ですね。

けれども、高校在学時に必要な全ての費用が無料になるわけではありません。基本的に“後払い”制度なので、入学時にはまとまった資金の準備が必要な点は覚えておきましょう。

中学生のお小遣い事情を解説した記事も合わせてご覧ください。

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