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2020.09.17

小学3,4年で始まるギャングエイジとは?男女の違い、理解できない行動を教育カウンセラーが解説

小学校3年生になると学校から「ギャングエイジなので家庭でも目を配って…」などと言われますがギャングエイジって一体何? 何を心配して、どんな対応をしたらいいの? 教育カウンセラーでありベテラン教員の望月保美さんが、ギャングエイジを解説するとともに親の対応についてアドバイスします。

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ギャングエイジとは

言葉の響きからして危うい雰囲気が漂う「ギャングエイジ」ですが、文部科学省のホームページでは、ギャングエイジについて次のように解説されています。

9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」) 。

身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。

また、集団の規則を理解して、集団活動に主体的に関与したり、遊びなどでは自分たちで決まりを作り、ルールを守るようになる一方、ギャングエイジとも言われるこの時期は、閉鎖的な子どもの仲間集団 が発生し、付和雷同的な行動が見られる。

引用元:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題/文部科学省

付和雷同とは、他人の言動に同調するというような意味があり、つまりギャングエイジとは、小学3年生以降が当てはまり、子どもだけの集団で自分たちのルールに従って行動するものの、仲間たちの意見や行動に流されやすい時期ということ。

教育カウンセラーの望月保美さんによると、子どもたちはこの集団の中で人との付き合い方や仲間意識、大人を頼らず自分たちのルールで物事に取り組み、問題を解決していく力を身に付けていくのだそう。

「ギャングエイジというと、親御さんの中には集団で悪いことをするといったイメージをもつ方もいますが違います。ギャングエイジは集団の中でルールやモラルやマナーを身に付けていく時期なんですよ。グループになると試行錯誤する中で悪いことをしてしまうことがあるかもしれませんがそれも発達過程のひとつ。悪いこと・異常なことではないんですよ」(望月さん)

望月保美さん上級教育カウンセラー

上級教育カウンセラー、ガイダンスカウンセラー、特別支援教育士、東京都の元小学校教員。 教員生活の中で、生活指導・教育相談・特別支援教育のコーディネーターとして、子どもの声を聴くこと、保護者の思いを受け取れることに努めた。現在は、東京都の事業で高等学校での構成的グループエンカウンターの講師や東京都の特別支援教室巡回相談心理士として、小学校を訪問している。

親世代とは違う令和のギャングエイジとは

しかし、最近はギャングエイジの状況も親世代の頃とは変化しているようです。

ギャングエイジのない子どもも増えている

文部科学省のホームページでは、現在の小学高学年の課題に「ギャングエイジを経ないまま成長する子どもが増えている」とも記しています。

「本来のギャングエイジというのは、サッカーや野球ができるぐらいの大人数の集団なんです。ですが、今の子どもたちは習い事に忙しかったり、都心だと遊べる広い場所がなかったりして集団で遊ぶことが難しくなっています。時間的、スペース的にギャングエイジが成り立たなくなっているんです」(望月さん)

確かに放課後の公園などを見ていても3~4人ぐらいのグループで遊んでいる子どもたちが多い印象です。しかし、集団が少人数化することで何か問題はあるのでしょうか。

「本来は、大人数で遊ぶなかでガマンすることや他人と意見が違ったときに心の中でどう折り合いをつけていくのかというようなことを学び、小学校5,6年生になると、もっと気の合う少人数のグループになっていくのが発達の流れでした。ですが、今は大人数で遊ぶ機会がないので、大きな集団の中での立ち位置や調和のとり方が苦手な子が増えていたり、教師の立場でいえば学級もまとまりにくかったりする傾向があると思います」

しかし、時代の流れや社会事情にはあらがえないもの。令和を生きる子どもたちの令和の少人数グループ版ギャングエイジについてクローズアップしてみましょう。

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令和のギャングエイジ/男子の特徴と対応とは

では、親世代とは違い少人数で行動する令和版のギャングエイジですが、どんな特徴があるのでしょうか。

親より友人とのルール、流行りを優先

ギャングエイジは仲間意識の育つ時期であり、友達同士の中でできたルールや価値観を優先しがちな時期です。例えば、「〇時に帰宅すること」など親のいいつけを聞かないときがあったり、友達が使っている悪い言葉遣いや態度を使うこともあるかもしれません。

親としては、注意したくなるかもしれませんが、その態度の裏には集団の中で折り合いをつけて生きていくための葛藤が起きているのかもしれません。人の道を外れるようなことではない限り、黙って見守ることも必要です。

ハメを外した行動を取る

公園の噴水でずぶぬれになるまで遊んだり、大人がドキッとするような高いところから飛び降りたり、ギャングエイジの男子たちはハメを外した行動を取ることも多いよう。

「『赤信号、みんなで渡れば怖くない』みたいな心理があるんですよね。ひとりではできないような悪いことを仲間と一緒ならできると思ってしまったり、ちょっと悪いことをすることによって結束力を強くしたり。親としてはびっくりするような行動をするかもしれませんが、ギャングエイジの年代なら本当にやってはいけないことは分かっているはずなので必要以上に心配する必要はありません」

ただし、集団のあり方によっては注意したほうがいい場合もあるそう。

「子どもたちがみんな横の関係で話しあえるグループなら、試行錯誤しながらもグループは成熟していきます。そして例えば、万引きのように羽目を外しすぎた悪いことをしようとしたときに『おいやめろよ』という声が出てきます。しかし、集団が上下の関係で成り立っている場合は『おい、〇〇やってこいよ』という感じで悪いことを起こしかねません

本格的な思春期の始まる前の小学3,4年生であれば、わが子の様子を観察したり、同じグループの親同士が連携をとったりすることでグループ内の人間関係や雰囲気は把握できるそう。

「リーダー格だったり、悪い方向へグループを引っ張っていくような子がいても何となく見ている大人の目があるとグループのタガは外れにくいものですよ」

令和のギャングエイジ/女子の特徴と対応とは

女子にもギャングエイジはあり、グループを作り始めますが親の心配する方向性は男子とは違うよう。

女子のギャングエイジで心配なのはいじめですね。気を付けないとグループ同士で対立したり、グループ内で仲間外れにしたりします。私がこの年代の子たちを受け持つときはグループ同士の抗争を防ぐために小グループ化はあんまりさせないようにしていましたね。

グループの規模が大きければ必ずいじめが起きないというわけではないのですが、グループの人数が多いほうが正義感があって統率力がある子がリーダーになりやすい。

特に女子のグループはリーダーによって傾向が変わっていきます。ネガティブな気持ちが強い子がリーダーのグループは、グループ内外問わず誰かを批判するグループになりやすいですね」

女子の場合はギャングエイジのための対応よりも、そろそろいじめが始まる年代なのだと意識しながら子どもを見守っていたいもの。

いじめへの対応はいじめ探偵の阿部泰尚さんの記事もチェック!

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また、望月さんは日常的に「友達のいいところみつけ」を繰り返し行うと子どもたちは、おのずと友達のポジティブな面に目を向けるようになると言います。

ギャングエイジなのにひとり…親のすべき対応とは

グループで行動する子どももいる一方でひとりで過ごす子もいます。親としては「ギャングエイジと聞くけど、うちの子はいつもひとりで大丈夫なのだろうか」と心配になります。

ひとりでいたいタイプの場合

「放課後はひとりで過ごしたいという子や自分のペースで好きなことをしたい子など本人が選択してひとりでいる子については心配する必要はありません」

社会人でもランチタイムはあえてひとり行動をする人や休日はインドアで趣味に没頭するという人、家でダラダラしたいという人もいますよね。子どもも同じかもしれません。

グループに入れない子の場合

グループに入れなくてひとりでいる場合、さまざまな理由が考えられます。例えば、引っ込み思案で「仲間に入れて欲しい」と自分から言えない場合はどうすればよいのでしょうか。

「子どもには『勇気を出して自分から声をかけてごらん』と言っておき、一方で仲のいい親御さんに根回しして『うちの子が声をかけたら仲間に入れてもらえないかな?』とお願いしてみるのはどうでしょう。

とはいえ、もし合わなかったらやっぱりグループに居続けることはできません。何かの理由でまわりの子が引いちゃうようなら、何があったのかを子どもから聞き「そのときはこうするといいよ」というようなアドバイスやフォローをしながら様子を見ていきます」

ただし、空気を読まないで行動したり、変なことをして遊びを壊したり子どもたちが仲間に入れたくないと思われている子の場合、特性が関わってきている場合もあるとのこと。

「ギャングエイジの始まる小学校3,4年生ごろというのは、個人の特性により周囲との違いが出やすい時期でもあるんですよね。人間関係の悩みがそこに起因するのであれば、一般論でコミュニケーションについて話すよりもその子の特性にあったアドバイスをしてあげたほうがいいかもしれません。

まずは担任教員に『友人関係に悩んでいるのだけど、学校での様子はどうですか?』と相談してみてはいかがでしょうか?」

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保護者にとっては心配事がつきないギャングエイジ。ハメを外した行動、女子グループの駆け引き、なかなかグループに所属できないなど、すべては子どもの成長の過程なのだと親も自分自身に言い聞かせながら、基本的には見守るスタンスで接していきましょう。

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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