教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.05.20

いじめを認識している親は約2割…いじめ発見のきっかけをつくる大人の対応とは

いじめ事件を知り「まわりの大人は何をしていたんだ!?」と思う人もいるかもしれません。大人がいじめに対してできることはたくさんありますが、データから見ると大人が積極的にいじめを見つけ出すのは難しいことが分かります。それでもできることはないのでしょうか。6000件以上のいじめ事件に関わってきたいじめ探偵が考えるいじめ発見のために大人ができることとは?

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約8割の親がいじめを相談してくれると思っているが…

子どもたちの中で起きるいじめは、おもに大人が居ないところで行われます。

 

そして、多くの場合、加害者にいじめ後の変化はあまりありません。被害者には変化が出やすい傾向にありますが、隠す傾向が強いため、よく観察していても見落とすことが多いのです。


こう書くと、多くの保護者は「私は見落とさない」と思うでしょう。しかし、国立教育政策研究所のデータによれば、小学4年生から中学3年生までの6年間でいじめの加害行為もしくは被害を受けたと申告した生徒の割合は全体の9割となっています。


一方で、私が代表を務める「NPO法人ユース・ガーディアン」が行ったアンケートによると、「わが子がいじめの加害行為もしくは被害を受けたとことがある」と回答した保護者の割合は2割弱、「わが子がいじめの被害を受けたら保護者に相談してくれる」と回答した割合は8割強でした。

 

つまり、知らぬは保護者ばかりで、子どもの世界ではいじめ、いじめられは、頻発しているのです。

 

 

現場を目撃するだけではいじめを判断できない

では、学校での子どもの様子を知る教師であれば、いじめに気付けるのでしょうか。

 

例えば、体格のいいA君がB君にプロレス技をかけていたとします。一見、一方的に見えるプロレス技であったとしても、それが遊びの範疇であればいじめではありません。現場を見るだけでは分からないものの、もしかするとB君の方がA君よりも力も気も強くて、あえてプロレス技をかけさせているかもしれません。


いじめ防止対策推進法のいじめの定義によれば、いじめは被害を受けた側が精神的肉体的な苦痛を感じたらいじめだとされています。つまり、B君が辛いと感じていない限り、いじめとはならないのです。


一方で、A君は本当はプロレス技などかけたくはなく、非暴力を好んでいたのに、B君に無理やりプロレス技をかけるように強要されていたとしたらどうでしょう。表面上楽しそうにしているだけのA君が精神的には苦痛を感じているかもしれません。


ですから、大人がその行為を見ただけでいじめだと判断するのは難しいという側面があるのです。

 

 

 

いじめ発覚は8割以上が子どもからの発信

平成27年文部科学省初等中等教育局児童生徒課の調査では「いじめの発見のきっかけ」についての結果が公表されています。

 

「学校の教職員などが発見」と「学校職員以外からの情報により発見」の2つに大きく分けて統計が取られており、前者は66%、後者は34%でした。

 

これを、「大人が能動的に発見」と「子どもの申告などにより発見」に分けると、前者は15.2%、後者は84.8%でした。つまり、8割以上が子どもたちからの申告や相談でいじめは発見されているのです。

 

 

ときには親が強引にでも干渉する必要がある

働き方が多様化し、共働きも増えた現代社会において子どもとのコミュニケーションが疎かになっている家庭もあることでしょう。部活や塾、習い事などで帰宅するのが深夜という子どももおり、顔を合わせるのは週末だけとい家庭もあるかもしれません。


それでも、多くの親子は紆余曲折ありながらも、コミュニケーションの濃度を高めるなどして工夫をすべきです。

 

最近、私が面談をした中で保護者に注意をしたケースでは、子どもが泣きながらいじめの被害を告白しているときに父親がスマホでゲームをしていたというのがあります。子どもが言うには、普段からその父母は、スマホをしているかテレビを見ているかで顔を見て子どもの話に聞いたことがなかったそうです。

 

こういう家庭では、まずは親子間でのコミュニケーションを取ることをおすすめします。例えば、毎朝6時に起床して今日の抱負と昨日の反省を宣言する家庭朝礼です。ふざけているようにも感じるかもしれませんが、これが素晴らしい効果があるのです。


さらに、私はコミュニケーションのみでは足りず、観察と適度な干渉が必要だと確信しています。親子間にしっかりとしたコミュニケーションがあり、その上で経験値ある大人が子どもの様子をしっかりと観察し、何かの違和感や異変を感じたところで干渉をするのです。わが子を守るためであれば、適度な干渉はあって然るべきだと思うのです。

 

私が関わった1つの事例ですが、いじめで自殺未遂をしたA子さんは、部活で起きたいじめがクラスまで波及し逃げ道がなくなってしまっていました。心配させまいと保護者の前では笑顔で取りつくろっていましたが、精神的な疲労はピークであり、普段はしない忘れ物をしたり、帰宅後すぐに疲れて寝てしまうという変化がありました。

 

この変化に気がついたA子さんの母は、何度か夕飯の時に質問をしましたが、A子さんは生返事でごまかしていました。そしてある朝、A子さんは自宅のマンションの廊下で「このまま飛び降りたら、楽になるかもしれないし、いじめた子達に一矢報いることができるかもしれない」と思いが頭をよぎり、ボーッと階下を覗き混んでいたところで、異変の気づきを行動に移した母によって止められました。


子どもは確かに親とは違う人格であり、それは尊重すべきですが、あなたが保護者で子どもが心配ならば、余計な気を使うことはなく適度に干渉をすべきだと私は思います。

 

 

 

大人がいじめと向き合う姿勢を示すこと

いじめについては様々な教育の専門機関が調査し研究を重ねてきたはずです。それでも、大人がいじめを効率よく発見できる仕組みは存在していません。いじめ発見のきっかけは、子どもたちからの申告がほとんどだという現実を踏まえて対策をする必要があります。

 

いじめ対策というと大人は子どもとのコミュニケーションを深めようと啓発したり、「自己肯定感」を高めようと言い始めますが、それだけでは、いじめ発見と早期解決できる件数は変化していきません。いじめを隠蔽をしたり、いじめの定義を否定するような対応はもってのほかです。

 

大人がいじめ対策を積極的に取り組む意思があるのであれば、“コミュニケーション・観察・過度な干渉”など、その姿勢を明確に示さなければ何も変わらないのです。

 

阿部泰尚

阿部 泰尚

特定非営利活動法人ユース・ガーディアン 代表。 1977年、東京都中央区生まれ、東海大学卒業。 2004年に、日本で初めて探偵として子どもの「いじめ調査」を行ない、当時ではまだ導入されていなかった「ICレコーダーで証拠を取る」など、革新的な方法を投入していき解決に導く。 それ以来、250件を超えるいじめ案件に携わり、NHK「クローズアップ現代」をテレビ朝日、TBSラジオ、朝日新聞、産経新聞他多くのメディアから「いじめ問題」に関する取材を受け、積極的に発言をし続けている。日本テレビ「世界仰天ニュース」でもいじめ探偵として取り上げられている。 著書に「いじめと探偵」 (幻冬舎新書 2013/7/28)。日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー、国内唯一の長期探偵専門教育を実施するT.I.U.探偵養成学校の主任講師・校長も務めている。

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