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2020.02.04

モンスターペアレントの実態。具体的な事例と対応方法を現役教師が告白します

「モンスターペアレント」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。世間一般の常識を超えて、「それは無理でしょう。そんなことはできないでしょう」という不条理な要求を学校にする親のことです。教師は、そんな要求にどう対応しているのでしょうか。今回は、モンスターペアレントに焦点を置き、その実態と対応について解説しましょう。

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“モンスターペアレント”という言葉が登場したのは、10年ほど前でしょうか。今ではインターネットやメディアでよく見かけるワードですよね。

昔と今とで、親が教師に求める内容が変わったとは思いません。私自身、教師生活の中で親の対応に困ったという体験をしたのは数回ほど。けれども、モンスターペアレントについて同僚や周りから見聞きすることは以前と比べて増えているという感覚はあります。

今回は、私の体験談も踏まえながらモンスターペアレントの実態についてお話しようと思います。

教師が実際に遭遇したモンスターペアレント体験談

私が実際に体験したことです。かなり昔のことになりますが学校に電話をかけてきて長話をしたり、放課後に直接、学校を訪れて「こうしてほしい、ああしてほしい」と毎日のように求める親がいたりしました。

保護者から教師がアドバイスをもらうことは、決して悪いことではありません。しかし意見が合わなかったり、正反対だったりした場合には困ってしまいました。こういったことが毎日続くと、さすがに疲れてしまいます。

当時、「個人情報保護法」は成立しておらず、教職員、児童の住所や名簿なども保護者に渡していました。今は「個人情報保護法」により教職員や児童の住所、電話番号を保護者に教えない学校がほとんどです。今では考えられないことではありますが、当時は休日にも教師の家まで電話をかけて長話をする親もいたのです。これでは、教師も心身ともに休まる日がありません。先輩教師からは「そんなの、すぐに電話切っていいよ」「出なくていいよ」「4月当初に、家には電話するなと言っておくべきだったね」などと言われました。

知り合いの教師は、「うちの子は小学校2年生レベルの学習は理解しているから、うちの子だけ算数の時間に違う勉強をさせてほしい」と要求する親に出会ったそうです。しかしその子だけに、例えば“高校レベルの算数を教える”というわけにはいきません。したがって放課後、毎日のように「明日は、こう対応しよう」と学年の先生と一緒に話し合っていたようです。

個人面談や家庭訪問でも困った親に出会うことがあるようです。面談の際、教師が何を言っても子どもを褒めても課題を伝えても一切、黙ったままの親がいるのです。聞いてもらえているのかどうかさえ分かりません。どういう心境なのか判断できませんが、このような時には子どもが頑張っている様子を伝えた上で課題を伝え、「一緒に頑張りましょう」と伝えます。子どの様子を伝えるときには、できるだけエピソードを入れて話すようにします。

また、個人面談や家庭訪問は10~15分という短い時間で行われるため「何か話しておきたいこと、聞いておきたいことはありませんか」と一番初めに聞く先生は多いでしょう。私も先輩教師から「初めに親からの質問を聞いておくと良い」と教えてもらいました。最後に質問を聞いてしまうと、そこから話が広がって時間がなくなってしまう可能性があるのです。教師の中にはあらかじめ、「聞きたいことを準備しておいてください」と伝えている人もいるかもしれません。家庭訪問では次の家に行くまでの時間も必要ですし、個人面談では次の順番の保護者が待っています。スムーズに進行させるため一番に質問を投げかけますが、大幅に面談の時間に遅刻する親、時間が過ぎているのに話が止まらない親は意外と少なくありません。

意外と多い! よくいるモンスターペアレントの事例

次に教師の間で一般的に知られているモンスターペアレントの事例、「こんな親に教師が困っている」というものをいくつか挙げてみましょう。それに対して教師はどう対応するかについても紹介します。

長文の連絡帳を書いてくる親

朝、教師が教室に行くと、机の上には連絡帳が置かれています。ほとんどが欠席連絡ですが、違う内容のものもあります。

ある連絡帳には、8ページ以上にわたる長文の連絡事項が書かれていたそうです。

「お友達の傘を、わざとぐちゃぐちゃに壊す子がいるなんて驚きました! こんなにひどいことができる子がいるなんて、信じられません」という内容だったそうです。

【教師の対応】

「後ほどお電話します」とだけ連絡帳に書き、直接その親と話をして解決しました。「子どもはまだ、善悪の判断ができない部分もあります。だから、これから一緒に育てていきましょう」と話をして親に分かってもらい、信頼関係を結ぶことができました。

長文で教師へ要求を書くよりも直接、会って話を聞いてもらう方がお互いの誤解もなく解決できます。文章や電話ではお互いの顔、表情が見えないので誤解も生まれやすいからです。

朝から電話で一方的に話し続ける親

朝から電話で長話をする親、学校に来て話をする親もいます。朝は、教師たちはできるかぎり早めに自分の受け持ちの教室に行きたいのです。特に低学年の教室では何が起きているか分かりません。子ども同士のけんかが起きているかもしれません。

【教師の対応】

よほどの緊急事態でない限り、話が長くなる場合は子どもたちの学校生活にも支障を来す場合があります。放課後などじっくり時間を話せるスケジュールを教師と親とで決め、朝の時間帯はできるだけ早く子どもたちの待つ教室に向かうようにしています。教師と親、お互いの表情を見ながら話をした方が誤解を防ぐこともできます。

実際に私が小学1年生を教えていた時、教室に向かうと自分の席に上半身裸で座っている男の子がいました。「体育着どうしたの?」と聞くと「ない」。じゃあ「どこかに行っちゃたの?」と聞くと、「ううん、体育着忘れた」。つまり、体育着がないのに着替えようとしていたのです。

後で分かったことですが、体育着に着替えようとしている途中に教室を出て3階まで行き、そこに洋服を置いてきてしまったのです。

このように何が起きているのか分からないのです。

授業参観でガムをかむ親、お喋りが止まらない親

授業参観中、教室でガムをかんでいる親。また、授業中に親同士が話をしててうるさくて困ったという話もよくあります。

ガムをかんでいる親に注意したところ、「どうしていけないんだ!」と逆に怒られてしまった教師もいます。

授業参観中、子どもが集中して計算問題などを解く時間などがあります。そんなシーンとしている中、教室の後ろから声が聞こえてくる。目を向けると、親同士が話しをしているというのはよく見られる光景です。

親の私語により、集中できない子どももいるでしょう。

【教師の対応】

その場で、丁寧な言葉で注意を促します。しかし、中には逆ギレする親もいます。そういったトラブルを避けるために「ガムをかまないでください」「授業中に保護者同士でお話することはご遠慮ください」といったように、授業参観の前に手紙や学級通信などであらかじめ伝える教師もいます。

教師一人ではモンスターペアレントに対応しない

モンスターペアレントへの対応は、担任など教師一人でやっていると思う人も多いでしょう。しかし、モンスターペアレントへの対応は一人では行いません。学年主任や管理職などを含め、複数の教師で行うことが一般的です。教師の世界では「一人で対応するな」というのがよく言われること。新卒の教師や経験の浅い教師の場合、責任感が強すぎたり一人で解決できなければ恥ずかしいと思い込んでしまったりと、自分ひとりだけで対応しようとしがちです。

一人の教師が話を聞き、もう一人の教師が親とのやり取りを記録するということもあります。トラブルを最小限にとどめるために学年主任や管理職なども含め、一緒に対応方法を話し合います。教師一人より多くの教師で話し合うことで、自分一人では思いつかなかった対応方法が生まれることもあります。

今回はモンスターペアレントは教師側から見てどういった親なのか、そのような親に対して学校側はどのような対策を取っているのかをまとめました。

この記事を読んだ保護者の中には、「私は大丈夫かな? モンスターペアレントだと思われていないかな?」と気になる人もいるかもしれません。

次回の記事では、保護者が学校に意見を言う時どのようなことに気を付けたら良いか、モンスターペアレントとモンスターペアレントではない境目は何なのかについて解説しましょう。

【記事はこちら】 

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須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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